はじめに|5歳の息子が道路に飛び出しそうになった日
5歳の息子が道路に飛び出しそうになり、私は思わず激怒してしまいました。
その日は、3歳の次男を抱っこしながら、療育先へ息子を迎えに行った帰り道でした。
先生が「危ないよ」と声をかけた瞬間、息子はなぜか道路の方へ体を向け、飛び出そうとするような動きをしました。
私はとっさに息子の服をつかみ、道路へ出る前に止めました。
事故にはなりませんでした。
でも、心臓が飛び出るかと思うほど怖かったです。
その瞬間、私は冷静ではいられませんでした。
「何してるの!」
「危ないって言ってるでしょ!」
「車が来たらどうするの!」
と、強い口調で怒ってしまいました。
あとから考えると、息子は本気で事故に遭いたかったわけではありません。
でもそのときの私は、「わざと?」「あまのじゃくでも、これは絶対にダメでしょ」と思ってしまいました。
家に帰ってからも、私の中には怒りと怖さと後悔が残りました。
「どうして、危ないと分かっているようなことをするの?」
「私の叱り方はこれでよかったの?」
「怒鳴ってしまったあと、どうフォローすればよかったんだろう?」
この記事では、わが家の体験談をもとに、子どもが道路に飛び出しそうになる理由、危険行動への叱り方、そして怒ってしまった後のフォローについてまとめます。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。飛び出しや危険行動が続く場合は、園・療育先・発達相談・医療機関などに相談してください。
この記事でわかること
- 子どもが道路に飛び出しそうになる理由
- 「危ない!」と言うと逆に動いてしまう子の背景
- 発達特性と危険行動の関係
- 命に関わる場面での叱り方
- 怒ってしまった後のフォロー方法
- 家庭でできる安全ルーティン
子どもが道路に飛び出しそうになる理由

子どもが危険な行動をすると、大人はつい「わざとやった」と感じてしまいます。
でも、幼児期の子どもや発達特性のある子の場合、必ずしも大人を困らせたいわけではありません。
背景には、いくつかの理由が考えられます。
1. 「ダメ」と言われると気になってしまう
子どもは、「やってはいけない」と言われたことほど気になってしまうことがあります。
たとえば、
「道路に出ないで」
「走らないで」
「触らないで」
と言われると、頭の中に「道路」「走る」「触る」というイメージが残ります。
息子も、先生に「危ないよ」と言われたことで、逆に道路の方へ意識が向いてしまったのかもしれません。
大人から見ると「なんでわざとやるの?」と思う行動でも、子どもの中では、禁止されたことが強い刺激になっている場合があります。
2. 衝動を止める力がまだ育ち途中
5歳頃の子どもは、「やりたい」と思った行動を止める力がまだ発達途中です。
特にADHD傾向がある子は、思いついた瞬間に体が動いてしまうことがあります。
「道路に行ったら危ない」と頭では少し分かっていても、その前に体が動いてしまう。
これは、しつけ不足というより、ブレーキ機能がまだ育っている途中だと考えると分かりやすいです。
3. 気持ちの切り替えがうまくいっていない
療育の帰り、園の帰り、遊びの後などは、子どもにとって切り替えが難しい時間です。
楽しかった活動が終わる。
疲れている。
お腹が空いている。
眠い。
次に何をするのか分かりにくい。
こうした状態では、普段よりも衝動的な行動が出やすくなります。
わが家の息子も、療育後の帰り道だったため、気持ちの切り替えがうまくいっていなかった可能性があります。
4. 大人の反応を確認している
子どもによっては、大人の反応を見て安心を確認することがあります。
「ここまでしたら、ママは止めてくれる?」
「先生は見ている?」
「自分は守られている?」
もちろん、本人がはっきり意識しているわけではありません。
でも、不安がある子ほど、大人の反応を強く引き出すような行動をすることがあります。
5. 危険のイメージがまだつながっていない
大人は、道路に飛び出すと車にぶつかる危険があると分かっています。
でも子どもは、
道路に出る
→ 車が来る
→ ぶつかる
→ 大きなケガをする
という流れを、まだ十分に想像できないことがあります。
「危ない」と言われても、何がどう危ないのか、具体的にイメージできていないことがあるのです。
発達特性がある子は危険行動が出やすい?
ASD、ADHD、DCDなどの発達特性がある子は、危険行動が出やすいことがあります。
理由としては、次のような特性が関係します。
- 衝動を止めにくい
- 注意がそれやすい
- 切り替えが苦手
- 見通しを持ちにくい
- 体の距離感や動きの調整が難しい
- 言葉だけの指示が入りにくい
- 感情が高ぶると行動が先に出る
わが家の息子も、ASD・ADHDの特性があります。
そのため、「危ないと分かっているはずなのに、なぜやるの?」ではなく、
「分かっていても止める力がまだ弱いのかもしれない」
「言葉だけでは安全行動に結びつきにくいのかもしれない」
と考えるようになりました。
命に関わる危険は、短く強く止めていい
子どもが道路に飛び出しそうになったとき、親が強く止めるのは当然です。
命に関わる場面では、穏やかに説明している余裕はありません。
まずは安全確保が最優先です。
「止まって!」
「ストップ!」
「手をつなぐ!」
このように、短く、強く、分かりやすい言葉で止めます。
長い説明は、危険な場面では入りにくいです。
私もこのとき、息子の服をつかんで止めました。
それは必要な対応だったと思っています。
ただし、その後のフォローは大切です。
強く止めたあとに、子どもが落ち着いてから、
「ママ、びっくりして大きい声になったよ」
「車にぶつかったら大きなケガをするから止めたよ」
「あなたを守りたかったんだよ」
と伝えることで、子どもは「怒られた」だけで終わらず、「守られた」と理解しやすくなります。
怒鳴ってしまった後にできるフォロー

危険な場面では、親も冷静でいられないことがあります。
私も、息子に強く怒ってしまったあと、後悔しました。
でも、怒ってしまった後でも、フォローはできます。
1. まず親の気持ちを短く伝える
落ち着いたあとに、こう伝えます。
「さっきは大きい声で怒ってごめんね」
「ママ、すごくびっくりしたんだ」
「車にぶつかったら大ケガをすると思って怖かったんだよ」
ポイントは、子どもを責め続けるのではなく、親がなぜ怒ったのかを伝えることです。
2. 「守りたかった」と伝える
子どもにとって、怒られた記憶だけが残ると、不安や反発につながることがあります。
だからこそ、
「ママはあなたを守りたかったんだよ」
「大事だから止めたんだよ」
「ケガしてほしくなかったんだよ」
と伝えます。
怒りの根っこにあるのは、心配や愛情です。
そこを言葉にすることで、子どもも安心しやすくなります。
3. 次にどうするかを一緒に決める
フォローは、謝って終わりではなく、次の行動につなげることが大切です。
「次に道路の近くに行くときは、どうする?」
「ママと手をつなごうね」
「道路の前ではストップしようね」
子どもが答えられない場合は、選択肢にします。
「道路の前では、走る?止まる?」
「車がある場所では、一人で行く?手をつなぐ?」
正解を一緒に確認します。
「危ない!」より伝わりやすい声かけ
危険な場面では、つい「危ない!」と言ってしまいます。
もちろん、とっさの場面では必要なこともあります。
ただ、普段の練習では、できるだけ具体的な言葉に置き換えると伝わりやすいです。
| 言いがちな声かけ | 伝わりやすい声かけ |
|---|---|
| 危ない! | 道路の前で止まるよ |
| 走らないで! | 歩道を歩こう |
| 飛び出さないで! | ママと手をつなごう |
| そっち行かないで! | こっちの白線の中を歩こう |
| ちゃんとして! | 右手はママ、左手はカバンだよ |
特に発達特性がある子には、「何をしないか」より「何をするか」を伝える方が動きやすいことがあります。
わが家で取り入れた安全ルーティン

今回の出来事をきっかけに、わが家では道路の近くでのルーティンを決めました。
出発前
「今日は道路の近くでは手をつなぐよ」
「車がある場所ではストップだよ」
道路の前
「ストップ」
「右手はママ」
「車を見るよ」
歩くとき
「歩道を歩こう」
「白線の内側だよ」
「手をつないで歩けてるね」
渡りきったあと
「止まれたね」
「手をつないで歩けたね」
「安全に歩けたね」
同じ言葉を繰り返すことで、息子も少しずつ「道路の前では止まる」という流れを覚えやすくなりました。
体験談から学んだこと
今回の出来事で、私はとても怖い思いをしました。
そして、息子に強く怒ってしまいました。
でも、あとから振り返ると、息子の行動には理由があったのだと思います。
先生に「危ないよ」と言われたことで、道路に注意が向いた。
療育帰りで気持ちの切り替えが難しかった。
衝動を止める力がまだ弱かった。
大人の反応を確認したかったのかもしれない。
もちろん、道路に飛び出すことは絶対に止めなければいけません。
でも、「なんでそんなことするの!」で終わらせるのではなく、
「次はどうしたら安全か」
「どう伝えたら動きやすいか」
「どんな準備があれば防げるか」
を考えることが大切だと感じました。
危険行動を防ぐために家庭でできる工夫
1. 先に予告する
子どもは急な指示が苦手なことがあります。
道路の直前で言うより、出発前に伝えておくと安心です。
「今日は道路の前で止まる練習をしようね」
「駐車場では手をつなぐよ」
2. 言葉を固定する
毎回違う言い方をすると、子どもが混乱することがあります。
「ストップ」
「手をつなぐ」
「歩道を歩く」
など、短い言葉に固定すると入りやすくなります。
3. 視覚支援を使う
道路、駐車場、公園など、危険が起きやすい場所は、写真やイラストでルールカードを作ると分かりやすいです。
例:
- 道路では手をつなぐ
- 駐車場では走らない
- 横断歩道の前で止まる
- 車を見る
- 大人と一緒に歩く
実際の場所の写真を使うと、子どもが自分の生活と結びつけやすくなります。
4. できた瞬間に褒める
安全行動ができたら、その場ですぐ褒めます。
「止まれたね」
「手をつなげたね」
「車を見られたね」
「歩道を歩けたね」
抽象的な「えらいね」より、何がよかったのかを具体的に伝える方が効果的です。
5. 必要なら安全グッズも使う
飛び出しが強い場合は、子ども用GPSや迷子防止グッズなどを検討するのも一つです。
安全グッズは、親が楽をするためではありません。
子どもの命を守り、親子が安心して外出するための補助です。
「もう5歳だから使わない方がいい」と年齢だけで決めず、その子の安全に必要かどうかで考えてよいと思います。
園や療育先に共有したいこと
危険行動があった場合は、家庭だけで抱えず、園や療育先にも共有しておくと安心です。
伝えるとよい内容は、次のようなことです。
- どんな場面で飛び出しそうになったか
- どんな声かけで動きやすいか
- とっさの場面では何と言うか
- 家庭で使っているルールの言葉
- 手つなぎや視覚支援が必要な場面
伝え方の例:
「道路や駐車場の近くで、急に体が動いてしまうことがあります。家庭では『ストップ』『手をつなぐ』という短い言葉で練習しています。療育先でも同じ言葉で声をかけてもらえると助かります。」
家庭と支援先で同じ言葉を使うと、子どもも覚えやすくなります。
よくある質問
子どもが道路に飛び出しそうになるのは、わざとですか?
わざとのように見えることもありますが、幼児期や発達特性のある子では、衝動性、好奇心、切り替えの難しさ、禁止されたことへの反応などが関係していることがあります。
「危ない!」と言うと逆に動いてしまうのはなぜですか?
「危ない」という言葉で道路や危険な行動に注意が向いてしまうことがあります。普段の練習では「道路の前で止まる」「手をつなぐ」など、してほしい行動を具体的に伝えると分かりやすいです。
道路に飛び出しそうになったとき、強く叱ってもいいですか?
命に関わる場面では、短く強く止めて大丈夫です。まず安全確保が最優先です。その後、落ち着いてから「守りたかった」「次は手をつなごう」とフォローすることが大切です。
怒鳴ってしまった後、どうフォローすればいいですか?
「びっくりして大きい声になった」「ケガをしてほしくなかった」「守りたかった」と伝えたうえで、次にどうするかを短く確認します。親が完璧でなくても、後から修復できます。
発達障害があると飛び出しが多くなりますか?
ASDやADHDなどの特性がある子は、衝動性、注意の切り替え、見通しの持ちにくさから、飛び出しや危険行動が出やすいことがあります。ただし、飛び出しだけで発達障害と判断することはできません。
何度言っても手をつなげない場合はどうすればいいですか?
言葉だけでなく、毎回同じルーティンにする、短い言葉に固定する、視覚支援カードを使う、できた瞬間に褒めるなどを組み合わせます。必要に応じて支援機関にも相談してください。
兄弟がいて手が足りないときはどうすればいいですか?
下の子を抱っこしているときほど、上の子の安全確保が難しくなります。出発前にルールを確認し、道路や駐車場では上の子の手を優先してつなぐ、必要に応じて安全グッズを使うなど、現実的な対策を考えてよいです。
子ども用GPSや迷子防止グッズは使ってもいいですか?
安全確保の補助として使うのは一つの方法です。特に飛び出しや迷子が心配な子には、親子の安心につながることがあります。
園や療育先にはどこまで伝えるべきですか?
危険行動があった場面、家庭で使っている声かけ、効果があった対応を共有するとよいです。同じ言葉やルールで関わってもらうことで、子どもが理解しやすくなります。
親が怒りすぎてしまうのはよくないですか?
怒りすぎたと感じたら、あとからフォローすれば大丈夫です。危険場面で親が強く反応するのは、子どもを守りたいからこそです。大切なのは、怒ったあとに安心と次の行動を伝えることです。
まとめ|危険行動は「叱って終わり」ではなく、次の安全行動につなげる
5歳の息子が道路に飛び出しそうになった日、私は本当に怖くて、強く怒ってしまいました。
その瞬間は、冷静ではいられませんでした。
でも、あとから考えると、息子の行動には理由があったのだと思います。
衝動を止める力。
切り替える力。
危険を想像する力。
言葉を行動に変える力。
それらがまだ育っている途中だったのかもしれません。
もちろん、命に関わる危険は真剣に止める必要があります。
でも、その後に、
「守りたかった」
「次は手をつなごう」
「道路の前では止まろう」
と伝えることで、叱った経験を学びにつなげることができます。
親も毎回完璧にはできません。
怒ってしまう日もあります。
あとから反省する日もあります。
それでも、気づいたときにフォローし、次の安全行動を一緒に練習していけば大丈夫です。
子どもの安全力は、叱るだけではなく、経験と練習と安心感の中で育っていきます。
今日のヒヤッとした出来事も、次に命を守るための学びに変えていきましょう。