はじめに|「集中できない」「疲れやすい」は栄養も関係する?
発達障害や発達特性のある子どもを育てていると、
「集中が続かない」
「すぐイライラする」
「疲れやすい」
「落ち着きがない」
「偏食があって栄養が足りているか心配」
と感じることはありませんか?
ASDやADHDなどの発達特性は、栄養だけで変わるものではありません。
でも、子どもの脳や体は、毎日の食事から作られています。
鉄や亜鉛は、成長期の子どもにとって大切な栄養素です。鉄は血液や酸素の運搬に関わり、亜鉛は成長や味覚、免疫、皮膚の健康などにも関係します。
私自身も、発達に不安がある息子を育てる中で、食事や栄養の大切さを意識するようになりました。
きっかけは、友人から聞いた話です。
友人の子どもは、病院の血液検査で鉄や亜鉛の不足を指摘され、医師の助言のもとで食事を見直したそうです。
すると数か月後、
「前より落ち着いて話を聞けるようになった」
「集中が少し続くようになった気がする」
と感じたと話してくれました。
もちろん、これは一人の体験談であり、すべての子に同じ変化が起こるわけではありません。
それでも私は、「食事を整えることも、家庭でできるサポートのひとつなんだ」と感じました。
この記事では、発達障害の子どもに必要な栄養の中でも、鉄・亜鉛に注目し、家庭でできる食事サポートを体験談を交えながら紹介します。
※この記事は医療的な診断や治療を目的としたものではありません。貧血や栄養不足が心配な場合、サプリメントを使いたい場合は、小児科や管理栄養士など専門家に相談してください。
発達障害と栄養の関係|まず知っておきたいこと

発達障害は、食事だけで治るものではありません。
ただし、栄養不足があると、子どもの体調や機嫌、集中力、疲れやすさに影響することがあります。
たとえば、鉄が不足すると、貧血だけでなく、疲れやすさや集中しにくさにつながることがあります。
亜鉛が不足すると、味覚、食欲、皮膚、免疫などに影響することがあります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」でも、鉄や亜鉛は成長期に必要なミネラルとして扱われています。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」
発達特性がある子の場合、
- 偏食が強い
- 食感に敏感
- 新しい食材を嫌がる
- 同じものばかり食べる
- 肉や魚をあまり食べない
- 野菜や海藻を嫌がる
といった理由で、栄養が偏りやすいことがあります。
だからこそ、「まずは食事でできる範囲から見直す」という視点が大切です。
鉄が不足すると子どもにどんな影響がある?
鉄は、血液中のヘモグロビンの材料になる栄養素です。
ヘモグロビンは、体に酸素を運ぶ役割があります。
鉄が不足すると、体に十分な酸素が届きにくくなり、子どもによっては次のような様子が見られることがあります。
- 疲れやすい
- 顔色が悪い
- 集中が続きにくい
- 朝起きにくい
- イライラしやすい
- ぼーっとしやすい
- 運動するとすぐ疲れる
ただし、これらは鉄不足だけで起こるものではありません。
睡眠不足、ストレス、発達特性、体調不良、環境の変化などでも似た様子が出ることがあります。
「鉄不足かも」と自己判断するのではなく、気になる場合は小児科で相談し、必要に応じて血液検査を受けると安心です。
鉄を多く含む食材

鉄には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や豆類などに含まれる「非ヘム鉄」があります。
一般的に、ヘム鉄の方が体に吸収されやすいとされています。
鉄を含む食材
| 食材の種類 | 食材例 |
|---|---|
| 肉類 | 牛赤身肉、豚肉、レバー、ひき肉 |
| 魚介類 | かつお、まぐろ、いわし、あさり、しじみ |
| 大豆製品 | 納豆、豆腐、厚揚げ、きなこ |
| 野菜 | 小松菜、ほうれん草、枝豆 |
| 海藻・乾物 | ひじき、切り干し大根 |
| その他 | 卵、プルーン |
子どもに取り入れやすいのは、牛ひき肉、納豆、豆腐、卵、あさり水煮缶、小松菜あたりです。
レバーは鉄が多い一方で、苦手な子も多く、ビタミンAの過剰摂取にも注意が必要です。毎日大量に食べさせるのではなく、食べられる子が少量取り入れる程度で十分です。
鉄を吸収しやすくするコツ
鉄は、食べ合わせで吸収されやすくなります。
特に、植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCを含む食材と一緒に摂ると吸収されやすくなります。
おすすめの組み合わせは、
- 小松菜+パプリカ
- 納豆+ブロッコリー
- 牛肉+ピーマン
- あさり+トマト
- 豆腐+野菜スープ
- きなこヨーグルト+果物
などです。
逆に、食事中や食後すぐの濃いお茶は、鉄の吸収を妨げることがあります。
子どもの食事では、基本的には水や麦茶などにしておくと安心です。
亜鉛が不足すると子どもにどんな影響がある?
亜鉛は、体の成長、味覚、皮膚、免疫などに関わる栄養素です。
子どもの成長期には、とても大切なミネラルです。
亜鉛が不足すると、次のような様子が見られることがあります。
- 食欲が落ちる
- 味を感じにくい
- 偏食が強くなる
- 皮膚が荒れやすい
- 傷が治りにくい
- 風邪をひきやすい
- 元気が出にくい
亜鉛不足も、見た目だけで判断することはできません。
気になる場合は、食事内容を見直しつつ、必要に応じて医師に相談してください。
亜鉛を多く含む食材
亜鉛は、肉、魚介、大豆製品、卵、乳製品などに含まれます。
亜鉛を含む食材
| 食材の種類 | 食材例 |
|---|---|
| 肉類 | 牛肉、豚肉、鶏肉、ひき肉 |
| 魚介類 | 牡蠣、ほたて、いわし、しらす |
| 大豆製品 | 納豆、豆腐、厚揚げ、きなこ |
| 卵・乳製品 | 卵、チーズ、ヨーグルト |
| 種実類 | ごま、アーモンド、カシューナッツ |
牡蠣は亜鉛が多い食材として知られていますが、子どもには食べにくいこともあります。
無理に牡蠣を食べさせるより、牛肉、ひき肉、卵、チーズ、納豆、豆腐、ごまなど、日常的に取り入れやすい食材から始める方が続けやすいです。
※ナッツ類は窒息リスクがあります。小さな子どもにはそのまま与えず、年齢や噛む力に応じて、すりごま・きなこ・ペースト状など安全な形にしてください。
発達特性のある子におすすめの「鉄・亜鉛」食事サポート
発達特性がある子は、味、におい、食感、見た目に敏感なことがあります。
そのため、「栄養があるから食べて」と言っても、なかなか食べられないことがあります。
大切なのは、完璧な栄養バランスを目指すことではなく、食べられる形で少しずつ増やすことです。
1. ひき肉を使う
赤身肉が苦手な子でも、ひき肉なら食べやすい場合があります。
おすすめは、
- ハンバーグ
- ミートソース
- そぼろ丼
- 肉団子スープ
- ドライカレー
です。
野菜を細かく混ぜやすく、鉄・亜鉛だけでなく、たんぱく質も取り入れやすくなります。
2. 納豆・豆腐・卵を活用する
肉や魚が苦手な子には、大豆製品や卵が使いやすいです。
- 納豆ごはん
- 豆腐ハンバーグ
- 卵焼き
- 厚揚げの甘辛炒め
- きなこヨーグルト
などは、子どもにも取り入れやすいメニューです。
3. あさり水煮缶を使う
あさりは鉄を含む食材ですが、下処理が面倒ですよね。
水煮缶なら、味噌汁、スープ、炊き込みごはん、パスタに入れやすいです。
わが家でも、あさり水煮缶は「少し足すだけ」で使えるので便利だと感じています。
4. 小松菜は細かくする
小松菜やほうれん草は鉄を含みますが、葉物野菜が苦手な子も多いです。
その場合は、
- 細かく刻んで卵焼きに入れる
- 味噌汁に入れる
- そぼろに混ぜる
- チーズ焼きにする
など、食感が目立ちにくい形にします。
5. 「食べられた」を大切にする
発達特性のある子の食事では、「量」よりも「経験」が大切なことがあります。
一口食べた。
においをかげた。
お皿にのせられた。
触れた。
それだけでも大きな一歩です。
無理に食べさせるより、「今日は少し近づけたね」と認める方が、長い目で見ると食べられるものが増えやすいです。
わが家で取り入れた簡単メニュー

私が家庭で取り入れやすかったのは、特別な栄養メニューではなく、いつもの食事に少し足す方法でした。
たとえば、
- 納豆にすりごまを混ぜる
- 小松菜を細かくして卵焼きに入れる
- 豆腐ハンバーグにチーズを足す
- きなこをヨーグルトに混ぜる
- ひき肉でそぼろを作る
- あさり水煮缶を味噌汁に入れる
などです。
どれも「頑張って栄養食を作る」というより、今ある食事に少し足す感覚です。
栄養だけで子どもの困りごとが全部なくなるわけではありません。
でも、「今日できるサポートをひとつした」と思えるだけで、親の気持ちも少し楽になりました。
友人の体験談|血液検査で不足が分かり、食事を見直した話
私が鉄や亜鉛を意識するようになったきっかけは、友人の話でした。
友人の子どもは、落ち着きのなさや集中の続きにくさがあり、病院で相談したところ、血液検査で鉄や亜鉛の不足を指摘されたそうです。
医師からは、食事で赤身肉、ほうれん草、牡蠣などを意識すること、必要に応じて補助的な方法を使うことを提案されたと聞きました。
その後、食事を見直して数か月たつと、
「前より落ち着いて座っていられる時間が増えた」
「集中が少し続くようになった」
「癇癪が減った気がする」
と友人は話していました。
もちろん、それが栄養だけの効果だったとは言い切れません。
成長、環境、声かけ、睡眠、園や学校での支援など、いろいろな要素が関係していたと思います。
それでも私は、その話を聞いて「食事は家庭でできる土台づくりなんだ」と感じました。
サプリメントは使ってもいい?
鉄や亜鉛のサプリメントは市販されています。
ただし、子どもに自己判断で使うのはおすすめしません。
理由は、
- 不足しているかどうかは検査しないと分かりにくい
- 摂りすぎによる体調不良のリスクがある
- 鉄剤は便秘や胃の不快感が出ることがある
- 亜鉛の摂りすぎは他のミネラルとのバランスに影響することがある
- 発達障害の症状改善を目的に安易に使うものではない
からです。
国立健康・栄養研究所の情報でも、子どもの栄養はまず食事を基本に考えること、サプリメントの利用には注意が必要であることが示されています。
参考:国立健康・栄養研究所「サプリメントと子どもの食事」
サプリメントを検討する場合は、小児科や管理栄養士に相談し、必要性を確認してからにしましょう。
栄養だけでなく、睡眠・生活リズムも一緒に見る
集中力や感情の安定を考えるとき、栄養だけを見るのではなく、睡眠や生活リズムも大切です。
たとえば、
- 夜眠れているか
- 朝ごはんを食べられているか
- 便秘がないか
- 園や学校で疲れすぎていないか
- 感覚過敏で食事が負担になっていないか
- 偏食が強くなりすぎていないか
も一緒に見ていくと、子どもの困りごとの背景が分かりやすくなります。
食事は、療育や支援の代わりではありません。
でも、子どもの体と心を支える土台のひとつです。
よくある質問
発達障害は鉄や亜鉛で改善しますか?
鉄や亜鉛だけで発達障害が治るわけではありません。ただし、不足がある場合は、体調、疲れやすさ、集中しにくさなどに影響することがあります。気になる場合は医師に相談してください。
鉄不足かどうかはどうすれば分かりますか?
血液検査で確認できます。顔色が悪い、疲れやすい、集中しにくいなどが続く場合は、小児科で相談すると安心です。
亜鉛不足は家庭で判断できますか?
家庭だけで判断するのは難しいです。食欲低下、味覚の変化、皮膚トラブルなどが気になる場合は、医師に相談してください。
偏食が強くても鉄や亜鉛は摂れますか?
食べられるものの中で工夫できます。納豆、豆腐、卵、ひき肉、チーズ、きなこ、ごまなど、少量から取り入れやすい食材を使うと続けやすいです。
レバーを食べさせた方がいいですか?
レバーは鉄が多い食材ですが、苦手な子も多く、食べすぎにも注意が必要です。無理に食べさせる必要はありません。赤身肉、魚、大豆製品など、他の食材でも鉄は摂れます。
牡蠣が食べられないと亜鉛不足になりますか?
牡蠣は亜鉛が多い食材ですが、必ず食べなければいけないわけではありません。牛肉、豚肉、卵、チーズ、納豆、豆腐、ごまなどからも亜鉛は摂れます。
子ども用サプリを使ってもいいですか?
自己判断ではなく、医師や管理栄養士に相談してからが安心です。サプリメントは食事の代わりではなく、必要な場合に補助的に使うものです。
鉄や亜鉛を意識した食事は何から始めればいいですか?
まずは、いつもの食事に「ひき肉」「卵」「納豆」「豆腐」「小松菜」「きなこ」「ごま」などを少し足すところから始めると続けやすいです。
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参考資料
まとめ|栄養は「治す」ものではなく、子どもを支える土台
発達障害や発達特性のある子どもにとって、食事だけですべての困りごとが解決するわけではありません。
でも、鉄や亜鉛などの栄養が不足すると、疲れやすさ、集中しにくさ、食欲、皮膚の調子、体調に影響することがあります。
大切なのは、
- 発達障害が栄養で治ると考えない
- まずは食事でできる範囲から整える
- 偏食のある子には食べられる形で少しずつ試す
- サプリメントは自己判断で使わない
- 気になる場合は小児科や管理栄養士に相談する
ことです。
わが家でも、特別な食事療法ではなく、納豆、卵、豆腐、きなこ、小松菜、ひき肉など、日常の食材を少し意識するところから始めました。
「完璧な食事」を目指さなくて大丈夫です。
今日のごはんに、鉄や亜鉛を含む食材をひとつ足してみる。
そんな小さな積み重ねが、子どもの体と心を支える土台になっていくのだと思います。