はじめに|「バカ!」「嫌い!」と言われてショックだった日
「バカ!」
「もう嫌い!」
「あっち行って!」
幼稚園くらいの子どもが、急に強い言葉を使うようになると、親はドキッとしますよね。
私も、息子から強い言葉をぶつけられたとき、かなりショックでした。
「どこでそんな言葉を覚えたの?」
「私の言い方が悪かったのかな」
「このまま乱暴な言葉が増えたらどうしよう」
そんなふうに不安になったことがあります。
でも、発達クリニックの先生や療育先の心理士さん、言語聴覚士さんに相談する中で、少しずつ考え方が変わっていきました。
幼児期の乱暴な言葉は、単に「悪い言葉を言いたい」だけではないことがあります。
本当は、
悔しい。
嫌だった。
分かってほしい。
思い通りにならなくて苦しい。
びっくりした。
助けてほしい。
そんな気持ちを、まだうまく言葉にできないだけかもしれません。
大切なのは、乱暴な言葉をただ禁止することではなく、気持ちを伝えるための別の言葉を教えていくことだと感じています。
この記事では、幼児が乱暴な言葉を言う原因と、家庭でできる対応法を、わが家の体験談を交えながら紹介します。
きつい言い方を、少しずつ「気持ちを伝える言葉」に変えていくヒントになればうれしいです。
※この記事は医療的な診断や治療を目的としたものではありません。言葉の発達や行動面で気になることが続く場合は、園の先生、保健センター、自治体の発達相談、医療機関などに相談してください。
幼児が乱暴な言葉を言うのはなぜ?

幼児が乱暴な言葉を使う背景には、いくつかの理由があります。
もちろん、子どもによって原因は違います。
ただ、わが家で相談した専門職の方々からも、「強い言葉の裏には気持ちや発達段階が関係していることがある」と教えてもらいました。
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1. 聞いた言葉をそのまま真似している
子どもは、周りの言葉をよく聞いています。
テレビ、動画、友達、きょうだい、大人の会話。
意味を十分に分かっていなくても、耳に残った言葉をそのまま使うことがあります。
特に、
「バカ」
「うざい」
「きらい」
「どけ」
「やめろ」
のような強い言葉は、音のインパクトが大きく、子どもの記憶に残りやすいことがあります。
わが家でも、「え、そんな言葉どこで覚えたの?」と思うことがありました。
でも本人は、相手を傷つけようとしているというより、「強そうな言葉」「目立つ言葉」として使っているように見えることもありました。
2. 感情が爆発して言葉が追いつかない
幼児期の子どもは、怒りや悔しさを感じても、それを上手に言葉にする力がまだ育っている途中です。
たとえば、
ゲームで負けた
おもちゃを取られた
思い通りにいかなかった
予定が変わった
疲れていた
眠かった
こうした場面で、気持ちが一気にあふれてしまうことがあります。
本当は「悔しい」「嫌だった」「もう一回やりたい」と言いたいのに、出てくる言葉が「バカ!」「嫌い!」になってしまう。
そんなこともあります。
3. 大人の反応を見ている
乱暴な言葉を言ったとき、大人が大きく反応すると、子どもはその反応に注目することがあります。
「この言葉を言うと、ママがすぐこっちを見る」
「この言葉を言うと、大人が慌てる」
「強い言葉を言うと場が動く」
と学習してしまうこともあります。
もちろん、相手を傷つける言葉を放置してよいわけではありません。
ただ、毎回大きく怒鳴るように反応すると、かえってその言葉が目立ってしまうこともあるため、冷静に対応することが大切だと感じました。
4. 自分の気持ちに合う言葉をまだ知らない
言語聴覚士さんに相談したとき、印象に残った言葉があります。
「子どもは、自分の気持ちに合う言葉をまだ探している途中です」
乱暴な言葉は、知っている言葉の中で一番強く気持ちを表せる言葉なのかもしれません。
たとえば、
「悔しい」
「悲しい」
「びっくりした」
「やめてほしい」
「貸してほしかった」
「まだ遊びたかった」
という言葉を知らない、または使い慣れていないと、強い言葉に頼ってしまうことがあります。
だからこそ、親ができるのは「その言葉ダメ!」だけではなく、気持ちに合う別の言葉を一緒に増やしていくことなのだと思います。
乱暴な言葉を言ったときに親が気をつけたいこと
子どもが強い言葉を言うと、親もつい反射的に怒りたくなります。
私も何度もあります。
でも、少し落ち着いて対応できると、その場がこじれにくくなることがありました。
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1. 大きく反応しすぎない
子どもが乱暴な言葉を言ったとき、まず意識したいのは、大きく反応しすぎないことです。
もちろん、相手を傷つける言葉は伝える必要があります。
でも、
「なんてこと言うの!」
「そんな子は嫌い!」
「もう知らない!」
と強く返すと、親子で感情がぶつかり合ってしまうことがあります。
わが家では、まず一呼吸おいて、
「その言葉は使わないよ」
「今の言い方は痛い言葉だったね」
と短く伝えるようにしました。
2. 言葉の裏にある気持ちを見る
乱暴な言葉が出たとき、すぐに言葉だけを直そうとすると、子どもの気持ちが置き去りになることがあります。
たとえば、
「バカ!」
と言った背景に、
負けて悔しかった
貸してほしかった
急に止められて嫌だった
痛くてびっくりした
という気持ちがあるかもしれません。
まずは、
「悔しかったんだね」
「嫌だったんだね」
「びっくりしたね」
と気持ちを言葉にしてあげると、子どもも落ち着きやすくなります。
3. 代わりの言葉を短く教える
「そんな言葉を言わないで」だけだと、子どもは次に何と言えばよいか分かりません。
そのため、代わりの言葉を短く伝えます。
たとえば、
「バカ!」ではなく「悔しい」
「どけ!」ではなく「通りたい」
「貸せ!」ではなく「貸して」
「嫌い!」ではなく「今は怒ってる」
「うざい!」ではなく「少し離れて」
のように、使いやすい言葉へ言い換えます。
長い説明より、短い言葉の方が子どもには伝わりやすかったです。
きつい言い方をやさしい言葉に変える言い換え例

家庭で使いやすいように、言い換え例をまとめます。
| 乱暴な言葉 | 言い換え例 |
|---|---|
| バカ! | 悔しい! |
| もう嫌い! | 今は怒ってる |
| どけ! | 通りたい |
| 貸せ! | 貸して |
| うざい! | 少し離れて |
| あっち行け! | 今はひとりになりたい |
| うるさい! | 静かにしてほしい |
| やだ! | それは嫌だよ |
| もう絶対しない! | もう一回やるか考える |
| ママのせい! | びっくりした、痛かった |
言い換えは、一度で身につくものではありません。
何度も同じ場面で、同じように伝えることで、少しずつ使える言葉になっていきます。
ふわふわことば・ちくちくことばで伝える

療育先で教えてもらって分かりやすかったのが、「ふわふわことば」と「ちくちくことば」です。
ふわふわことばは、言われるとうれしい言葉。
たとえば、
ありがとう
いいね
一緒にやろう
大丈夫?
楽しいね
などです。
ちくちくことばは、言われると心が痛くなる言葉。
たとえば、
バカ
嫌い
どけ
うざい
あっち行け
などです。
「その言葉はダメ!」と言うより、
「今の言葉は、心がちくちくする言葉だったね」
「こう言うと、ふわふわことばになるよ」
と伝えると、幼児にもイメージしやすいです。
わが家でも、乱暴な言葉が出たときに、
「今のはちくちくことばだったね」
「ふわふわことばに変えるなら何て言えるかな?」
と聞くことがあります。
すぐに答えられないこともありますが、少しずつ「言葉には相手の気持ちを変える力がある」と分かってきたように感じます。
【体験談】わが家で強い言葉が出た場面と対応
勝負で負けてしまったとき
ある日、息子がカードゲームで負けてしまったときのことです。
悔しさのあまり、
「バカ!」
「なんで!」
「もう絶対しない!」
と強い言葉が出ました。
私は思わず「そんな言い方しないで!」と言いそうになりました。
でも、ぐっとこらえて、
「負けて悔しかったんだね」
と気持ちを受け止めました。
そのうえで、
「悔しいときは、『もう一回やろう』って言ってもいいよ」
と伝えました。
すると、すぐに完璧に言い換えられたわけではありませんが、次の対戦では「もう一回!」と言える場面がありました。
「乱暴な言葉をやめさせる」より、「次に使える言葉を教える」方が息子には合っていると感じた出来事でした。
きょうだいげんかで「どけ!貸せ!」と言ったとき
弟とおもちゃの取り合いになったとき、
「どけ!」
「貸せ!」
「もう嫌い!」
と強い言葉が出ることがありました。
親としては、すぐに止めたくなります。
でもその前に、
「そのおもちゃが欲しかったんだね」
「まだ使いたかったんだね」
と状況を整理するようにしました。
そのあとで、
「貸してって言おうか」
「終わったら貸してって言えるかな」
と一緒に言い換える練習をしました。
何度も繰り返すうちに、少しずつですが、「貸して」と言える場面が増えてきました。
自分の意見が通らなかったとき
夕飯のとき、息子が「唐揚げがいい!」と言ったことがありました。
でも、その日の夕飯はカレー。
すると、
「なんで?」
「もうイヤだ!」
「ママのバカ!」
「絶対食べない!」
と怒ってしまいました。
そのとき私は、
「カレーはイヤだったんだね」
「唐揚げが食べたかったんだね」
と気持ちを言葉にしました。
そのうえで、
「今日はカレーだけど、次のごはんで唐揚げにしようか」
と提案しました。
しばらくして息子は「分かった」と落ち着きました。
もちろん、いつもこんなにうまくいくわけではありません。
でも、「気持ちを言葉にすると聞いてもらえる」という経験を重ねることが、強い言葉を減らす一歩になると感じています。
人のせいにしてしまう場面
わが家でよくあるのが、「自分のせいじゃないのに、人のせいにしてしまう」場面です。
たとえば、転んだとき。
机の角にぶつけたとき。
思い通りに積み木が積めなかったとき。
本当は誰のせいでもないのに、
「ママのせいだ!」
「○○ちゃんが見てたからだ!」
と強い言葉で気持ちをぶつけてくることがあります。
最初は「違うでしょ!」と正したくなりました。
でも、後から考えると、息子は痛みや悔しさ、びっくりした気持ちをどう処理していいか分からなかったのだと思います。
最近はまず、
「びっくりしたね」
「痛かったね」
「悔しかったね」
と気持ちを受け止めるようにしています。
そのあとで、
「ママのせい、じゃなくて『痛かった』って言えると伝わるよ」
と短く言い換えを伝えます。
少しずつですが、怒りの矛先が人に向かう前に、
「痛かった」
「びっくりした」
と言える場面も出てきました。
乱暴な言葉が続くときに見直したいこと
乱暴な言葉が続くときは、言葉だけを直そうとするより、生活の背景を見直すことも大切です。
たとえば、
疲れていないか
眠れているか
刺激が多すぎないか
動画やゲームの言葉が強くないか
園でトラブルが続いていないか
親も強い口調になっていないか
を確認します。
子どもの言葉は、心や体の疲れとつながっていることがあります。
わが家でも、疲れている日や眠い日は、強い言葉が出やすいと感じます。
そんな日は、言葉の練習よりも、まず休むことを優先するようにしています。
親も強い言い方をしてしまうとき
子どもの乱暴な言葉に対応していると、親の方も疲れます。
私も、余裕がないときには強い口調になってしまうことがあります。
そんなときは、あとからでも、
「さっきはママも強い言い方だったね」
「ごめんね」
「次はゆっくり話すね」
と伝えるようにしています。
親が完璧である必要はありません。
でも、大人も言い直していい姿を見せることで、子どもも「言い方は変えられる」と学んでいくのだと思います。
よくある質問
幼児が乱暴な言葉を言うのは普通ですか?
幼児期にはよく見られることがあります。聞いた言葉を真似したり、怒りや悔しさをうまく表現できずに強い言葉が出たりすることがあります。ただし、頻度が高い、友達関係に影響している、家庭で対応しても困りごとが続く場合は、園や専門機関に相談してみると安心です。
乱暴な言葉はすぐに叱った方がいいですか?
相手を傷つける言葉であることは伝える必要があります。ただし、頭ごなしに強く叱るより、「その言葉は使わないよ」「悔しかったんだね。次はこう言おう」と、気持ちを受け止めて代わりの言葉を教える方が伝わりやすいことがあります。
「バカ」と言ったときはどう対応すればいいですか?
まずは落ち着いて「その言葉は使わないよ」と伝えます。そのあとで、「悔しかったのかな」「嫌だったのかな」と気持ちを確認し、「悔しい」「やめてほしい」などの言い換えを教えます。
友達に乱暴な言葉を言ったときはどうすればいいですか?
その場では短く「今の言葉は言わないよ」と伝え、必要なら相手の子や先生にもフォローします。落ち着いてから、「本当は何を伝えたかったのか」を一緒に考え、次に使える言葉を練習します。
何度言っても直らないときは?
一度で直るものではありません。同じ場面で同じ言い換えをくり返し伝えることが大切です。また、疲れ、眠気、刺激の多さ、動画や周囲の言葉など、背景にある要因も見直してみましょう。
動画やテレビの影響はありますか?
あります。子どもは印象に残った言葉を真似しやすいです。言葉が強い動画やアニメを見たあとに乱暴な言葉が増える場合は、視聴内容や時間を見直すのも一つの方法です。
発達障害と関係がありますか?
乱暴な言葉だけで発達障害と判断することはできません。ただし、感情の切り替えが難しい、言葉で気持ちを説明しにくい、衝動的に言葉が出やすいなどの特性がある場合は、乱暴な言葉につながることもあります。気になる場合は専門機関に相談してください。
ふわふわことば・ちくちくことばは効果がありますか?
幼児には分かりやすい伝え方のひとつです。「ダメな言葉」と言うより、「心がちくちくする言葉」「言われるとうれしい言葉」とイメージで伝えることで、言葉の影響を理解しやすくなる子もいます。
親も強い言い方をしてしまったらどうすればいいですか?
あとから言い直して大丈夫です。「さっきは強い言い方だったね。ごめんね」と伝えることも、子どもにとって大切な学びになります。大人も言い方を直せる姿を見せることで、子どもも言葉を選ぶ練習がしやすくなります。
園の先生には相談した方がいいですか?
友達に強い言葉を言ってトラブルになっている、園でも頻繁に出ている、本人が困っている場合は相談した方がよいです。家庭で使っている言い換えの言葉を先生にも共有すると、園でも同じ対応をしてもらいやすくなります。
まとめ|乱暴な言葉を「気持ちを伝える言葉」に変えていこう
幼児が乱暴な言葉を使うと、親は驚いたり、悲しくなったり、不安になったりします。
でも、その言葉の裏には、
悔しい。
嫌だった。
分かってほしい。
痛かった。
びっくりした。
助けてほしい。
そんな気持ちが隠れていることがあります。
大切なのは、乱暴な言葉をただ禁止することではなく、子どもが気持ちを伝えられる言葉を増やしていくことです。
「バカ!」ではなく「悔しい」。
「どけ!」ではなく「通りたい」。
「貸せ!」ではなく「貸して」。
「ママのせい!」ではなく「痛かった」。
こうした言い換えを、日常の中で少しずつ積み重ねていくことで、子どもは自分の気持ちを伝える方法を学んでいきます。
親も完璧でなくて大丈夫です。
強い言葉に傷つく日もあります。
うまく対応できずに反省する日もあります。
それでも、子どもと一緒に言葉を選び直していくことはできます。
きつい言い方を、少しずつ気持ちを伝える言葉へ。
焦らず、親子で練習していきましょう。