はじめに|「何度言っても伝わらない」と感じたら
ADHD(注意欠如・多動症)の子どもと暮らしていると、
「どうして何度言っても忘れるの?」
「さっき注意したばかりなのに、また同じことをしている」
「叱りたくないのに、毎日怒ってしまう」
そんなふうに感じることはありませんか?
私も、発達特性のある息子を育てる中で、何度も同じように悩んできました。
おもちゃを片づけ始めたと思ったら、別のおもちゃに気を取られる。
朝の支度をしているはずなのに、途中で遊び始める。
園では連絡帳やタオルを違う場所に入れてしまう。
先生の話より、壁の飾りや友達の動きに注意が向いてしまう。
最初は、
「ちゃんと聞いていないの?」
「わざとやってるの?」
「私の言い方が悪いのかな?」
と、親の私も戸惑ってばかりでした。
でも、ADHDの特性を知り、家庭での関わり方を少し変えていくうちに、息子も私も少しずつラクになっていきました。
この記事では、ADHDの子どもへの関わり方として、家庭で試しやすい5つの対応法と、わが家で実際に取り入れた工夫をまとめます。
※本記事は筆者の体験と公的資料をもとにした一般的な情報です。診断や治療を目的とするものではありません。気になる行動が続く場合は、小児科・発達外来・発達相談窓口などにご相談ください。
ADHDの子どもへの関わり方で大切な視点
ADHDの子どもに見られる不注意・多動性・衝動性は、本人の努力不足や親のしつけ不足ではありません。
発達障害教育推進センターでは、ADHDのある子どもは「故意に取り組まない」「怠けている」「自分勝手」と見なされやすく、特性に応じた指導や支援が必要だと説明されています。
参考:発達障害ナビポータル|注意欠如多動性障害(ADHD)のある子どもの指導・支援
つまり、ADHDの子どもへの関わり方で大切なのは、
- 叱って直す
- 気合いで頑張らせる
- 何度も注意して覚えさせる
ことではなく、
- できる形に変える
- 見て分かるようにする
- 行動を小さく分ける
- できた瞬間を認める
- 親だけで抱え込まない
という視点です。
わが家の体験談|怒ってばかりだった毎日から変わったこと
息子は3歳の頃にASDの診断を受け、その後、就学前の発達検査をきっかけにADHDとDCDの診断も追加されました。
小さい頃から、家でも園でも「なぜ?」と思う行動が多くありました。
家では、おもちゃを探して大騒ぎ。
片づけようとしても、途中で別の遊びに移ってしまう。
園では、連絡帳やタオルをお友達のバッグに入れてしまう。
持ち帰るはずの物を忘れてくる。
先生の話を聞いているようで、教室の掲示物や周りの動きに気を取られてしまう。
そのたびに私は、
「また忘れたの?」
「ちゃんと聞いてた?」
「早くして!」
と言ってしまっていました。
でも、あとから振り返ると、息子はわざと困らせていたわけではありません。
「次に何をするか」が頭から抜けやすい。
「どこに置くか」が分かりにくい。
「気になるもの」があると、そちらに注意が引っ張られる。
「今は待つ時間」と分かっていても、体が動いてしまう。
そう考えるようになってから、私の関わり方も少しずつ変わりました。
叱る前に、まず「できる形に変えられないかな?」と考える。
これが、わが家にとって大きな転機でした。
ADHDの子どもへの対応法1|ルールと予定を見える化する

ADHDの子どもは、頭の中だけで予定や手順を整理することが苦手な場合があります。
そのため、口頭で何度も言うよりも、見える形にしたほうが伝わりやすいことがあります。
厚生労働省の資料でも、発達障害のある人への配慮として、肯定的・具体的・視覚的な伝え方や、スモールステップでの支援が紹介されています。
参考:厚生労働省|発達障害の特性(代表例)
家庭でできる工夫
- 朝の支度を絵カードにする
- 「着替え→朝ごはん→歯みがき→カバン」の順番を貼る
- タイマーで残り時間を見えるようにする
- カレンダーで予定を確認する
- 持ち物チェックリストを玄関に貼る
- 片づける場所に写真やラベルを貼る
わが家の実践例
朝の支度がなかなか進まなかった時期、わが家では「朝の準備ボード」を作りました。
文字だけではなく、イラストや写真を使って、
- 着替える
- ごはんを食べる
- 歯みがき
- カバンを持つ
- いってきます
のように流れを見える化しました。
すると、私が何度も「次は?」と言わなくても、息子がボードを見て動ける日が少しずつ増えていきました。
もちろん、毎日完璧ではありません。
でも、「親が言い続ける」よりも、「子どもが見て分かる」形にしたことで、朝のイライラはかなり減りました。
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声かけ例
「次は何かな?ボードを見てみよう」
「着替えまでできたね。次はごはんだね」
「カバンを持てたら出発できるよ」
ADHDの子どもへの対応法2|指示は短く、具体的に伝える

ADHDの子どもは、一度にたくさん言われると、途中で抜けてしまうことがあります。
親としては、
「着替えて、歯みがきして、カバン持って、靴下も忘れないで!」
と言いたくなりますよね。
でも、これだと子どもにとっては情報量が多すぎることがあります。
伝わりにくい声かけ
「ちゃんとして」
「早くして」
「片づけて」
「何回言ったら分かるの?」
「いい加減にして」
これらは、親の気持ちはよく分かるのですが、子どもにとっては「何をすればいいか」が分かりにくい言葉です。
伝わりやすい声かけ
「ブロックを箱に入れよう」
「靴下をはこう」
「椅子に座ろう」
「鉛筆を筆箱に入れよう」
「まず1つだけやろう」
ポイントは、短く・具体的に・行動で伝えることです。
わが家の実践例
以前は、息子に「部屋を片づけて」と言っていました。
でも、息子は部屋全体を見て固まってしまい、何から始めればいいか分からない様子でした。
そこで、
「まずブロックを箱に入れよう」
「次に絵本を棚に戻そう」
「最後にぬいぐるみをカゴに入れよう」
と、行動を小さく分けました。
すると、一つひとつなら動けることが増えました。
「片づけができない」のではなく、「片づけを分解するとできる」だったのだと気づきました。
声かけ例
「まずこれだけやろう」
「終わったら次を教えるね」
「ブロックを箱に入れられたね」
「あと1つで終わりだよ」
ADHDの子どもへの対応法3|できた瞬間を具体的に褒める
ADHDの子どもは、注意される機会が多くなりやすいです。
「座って」
「待って」
「走らない」
「忘れないで」
「話を聞いて」
こうした注意が毎日続くと、子どもは「自分は怒られてばかり」と感じやすくなります。
だからこそ、できた瞬間を見つけて、具体的に認めることが大切です。
効果的な褒め方
「えらいね」だけでも嬉しいですが、行動を具体的に伝えると、子どもは何がよかったのか分かりやすくなります。
- 「順番を待てたね」
- 「今、座って聞けたね」
- 「ブロックを箱に入れられたね」
- 「カバンを自分で持てたね」
- 「途中で戻ってこられたね」
- 「気持ちを言葉で言えたね」
わが家の実践例
息子がお風呂の準備を手伝ってくれたとき、以前なら「ありがとう」で終わっていました。
でも、具体的に、
「タオルを準備してくれて助かったよ」
「自分で気づいて持ってきたね」
と伝えるようにしました。
すると、息子は「できた」という感覚を持ちやすくなったようで、次もやってみようとすることが増えました。
小さなことでも、本人にとっては大きな成功体験です。
ごほうびは使ってもいい?
シールやスタンプなどのごほうびは、使い方によっては有効です。
ただし、「ごほうびがないとやらない」にならないように、物だけでなく、親の言葉や達成感とセットにすると続きやすいです。
例:
「シール貼れたね」
「今日も準備を最後までできたね」
「3日続いたね。見えると分かりやすいね」
ADHDの子どもへの対応法4|集中できる環境を整える
ADHDの子どもは、周りの音・物・人の動きに注意が向きやすいことがあります。
「集中しなさい」と言う前に、集中しやすい環境を作ることが大切です。
家庭でできる環境調整
- 学習スペースには必要な物だけ置く
- テレビを消す
- おもちゃが見えない向きに座る
- 机の上をシンプルにする
- 5分で終わる課題から始める
- 勉強する場所と遊ぶ場所を分ける
- 落ち着けるスペースを作る
わが家の実践例1|折り紙専用スペース
息子は折り紙を始めても、近くにおもちゃやテレビがあるとすぐ気が散ってしまいました。
そこで、リビングの一角に折り紙用のスペースを作り、机の上には、
- 折り紙
- はさみ
- のり
だけを置くようにしました。
すると、以前よりも集中して取り組める時間が増えました。
環境を変えるだけで、子どもの「できる」が増えることを実感しました。
わが家の実践例2|落ち着きスペース
イライラしたり、気持ちがざわざわしたりしたときのために、部屋の一角に小さな落ち着きスペースを作りました。
もともとボールプールとして使っていたテントに、クッションや毛布を置き、
「ここは静かに過ごせる場所だよ」
と伝えました。
気持ちが高ぶったとき、自分からそこへ行って落ち着くこともありました。
「落ち着きなさい」と言うだけではなく、「落ち着ける場所」を用意することも大切だと感じています。
おすすめグッズ例
残り時間が分かりにくい子には、時間の減り方が目で見えるタイマーが役立つことがあります。
- 視覚スケジュールボード
- 時っ感タイマー
- 学習用デスクパーテーション
- キッズ用収納ボックス
- 座りやすいクッション
- テント型の落ち着きスペース
- イヤーマフ
- ラベルシール・写真カード用品
ADHDの子どもへの対応法5|動く時間を味方にする
ADHDの子どもにとって、じっとしていることは大きな負担になる場合があります。
「動かないで」と止め続けるより、動く時間を先に作るほうが、その後の活動に入りやすいことがあります。
家庭で取り入れやすい運動
- 公園で走る
- ボール遊び
- 縄跳び
- トランポリン
- ダンス
- ストレッチ
- 布団の上でごろごろ遊び
- 動物歩き
- ジャンプ10回してから着席
わが家の実践例
息子は、幼稚園ではなんとか座って過ごせていても、児童発達支援の場では「座って話を聞くのが苦手」と言われることがありました。
そこで意識したのが、毎日の生活の中に「思いきり動ける時間」を入れることです。
夕方に公園へ行き、20分ほど走ったり、ボールを蹴ったり、追いかけっこをしたりしました。
すると、夜に眠りやすくなったり、家でのイライラが少し減ったりする日がありました。
もちろん、運動だけで全部が解決するわけではありません。
でも、「動きたいエネルギー」を悪いものとして止めるのではなく、うまく発散できる形にすることは、わが家には合っていました。
声かけ例
「先に5分ジャンプしてからプリントをしよう」
「走りたい気持ちがあるね。公園で走ろう」
「体を動かしたら、少し落ち着いたね」
困りごと別|ADHDの子どもへの関わり方早見表
| 困りごと | 親の対応 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 朝の支度が進まない | 手順を見える化する | 「次は何かな?ボードを見よう」 |
| 片づけができない | 1つずつ具体的に伝える | 「まずブロックを箱に入れよう」 |
| すぐ席を立つ | 座る時間を短く区切る | 「3分座れたら休憩しよう」 |
| 忘れ物が多い | 持ち物リストを一緒に確認 | 「リストを見て入れよう」 |
| 話を遮る | 合図や順番を練習する | 「言いたいことがあるね。手を上げよう」 |
| すぐ怒る | 落ち着く場所を用意する | 「一回クッションの場所で休もう」 |
| 集中できない | 刺激を減らす | 「机の上はこれだけにしよう」 |
| 危ない行動をする | 短く止めてあとで説明 | 「ストップ。ここは歩こう」 |
親がイライラしてしまうときの考え方
ADHDの子どもへの関わり方で、一番難しいのは「親が冷静でいること」かもしれません。
私も、何度も怒ってしまいました。
「また?」
「さっき言ったよね?」
「どうしてできないの?」
と言ったあとで、自己嫌悪になることもありました。
でも、親も人間です。
毎日完璧に対応するのは無理があります。
大切なのは、怒らない親になることではなく、怒ってしまったあとに戻れることです。
怒ったあとにできる声かけ
「さっきは大きな声になってごめんね」
「ママもびっくりして怒っちゃった」
「次は一緒にやり方を考えよう」
「あなたが嫌いで怒ったんじゃないよ」
親が謝る姿を見せることも、子どもにとって大切な学びになります。
園・学校・療育と連携するとラクになる
ADHDの子どもへの支援は、家庭だけで完結しなくて大丈夫です。
園や学校、療育先と対応を共有すると、子どもも混乱しにくくなります。
発達障害ナビポータルでも、発達障害のある人の暮らしを支えるために、教育・医療・保健・福祉などの連携が大切であることが示されています。
参考:発達障害ナビポータル
先生に伝えるとよいこと
- どんな場面で困りやすいか
- 家庭でうまくいった声かけ
- 苦手な指示の出され方
- 落ち着きやすい環境
- パニックや癇癪の前兆
- できたときの褒め方
先生への共有メモ例
家庭では、朝の支度や片づけのときに、口頭だけだと途中で気がそれやすいです。
絵カードやチェックリストで手順を見せると動きやすいです。
声かけは、
「ちゃんとして」よりも
「まず〇〇をしよう」のように短く具体的だと伝わりやすいです。
園でも似た場面があれば、家庭でも同じ声かけを練習したいので教えていただけると助かります。
よくある質問
ADHDの子どもには、まず何から始めればいいですか?
まずは、困りごとを1つにしぼるのがおすすめです。
朝の支度、片づけ、宿題、忘れ物など、全部を一度に変えようとすると親子で疲れてしまいます。
「今いちばん困っている場面」を1つ選び、そこだけ見える化・短い声かけ・環境調整を試してみましょう。
ADHDの子どもは褒めたほうがいいですか?
はい。特に「できた直後に」「具体的に」褒めることが大切です。
「えらいね」だけでなく、
「順番を待てたね」
「自分でカバンを持てたね」
「ブロックを箱に入れられたね」
のように、行動を言葉にすると分かりやすいです。
ごほうびシールは使ってもいいですか?
使っても大丈夫です。
ただし、ごほうびだけが目的にならないように、「できたことを見える化する道具」として使うのがおすすめです。
シールと一緒に、「今日もここまでできたね」と言葉で認めると、達成感につながります。
ADHDの子どもに叱ってはいけませんか?
危険な行動や人を傷つける行動は、短く止める必要があります。
ただし、長く叱り続けるより、
「ストップ」
「手は出さない」
「ここは歩こう」
と短く伝え、落ち着いてからどうすればよかったかを教えるほうが伝わりやすいです。
家庭での対応だけでよくなりますか?
家庭での工夫は大切ですが、困りごとが強い場合は、園・学校・療育・医療機関との連携も大切です。
家庭だけで抱え込まず、相談できる場所を増やしておくと安心です。
忘れ物が多いときはどうすればいいですか?
「忘れないで」と言うだけではなく、忘れにくい仕組みを作ることが大切です。
- 持ち物リストを玄関に貼る
- バッグの中を写真で確認する
- 前日に一緒に準備する
- 置き場所を固定する
- ラベルを貼る
などが役立ちます。
宿題や勉強に集中できないときは?
最初から長時間取り組ませるのではなく、5分・1問・1ページなど、小さく区切るのがおすすめです。
机の上には必要なものだけ置き、終わったら短い休憩を入れると続きやすくなります。
親が疲れてしまったときはどうすればいいですか?
親が疲れるのは当然です。
一人で抱えず、家族、園や学校、療育先、発達相談窓口などに相談してください。
親が休むことも、子どもを支えるために必要なことです。
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まとめ|ADHDの子どもへの関わり方は「できる形に変える」こと
ADHDの子どもへの関わり方で大切なのは、叱って変えようとすることではなく、子どもができる形に整えることです。
家庭で試しやすい対応は、次の5つです。
- ルールと予定を見える化する
- 指示は短く具体的に伝える
- できた瞬間を具体的に褒める
- 集中できる環境を整える
- 動く時間を味方にする
子どもの困った行動の裏には、本人の困りごとが隠れていることがあります。
「どうしてできないの?」ではなく、
「どうしたらできる形になるかな?」と考える。
その視点が、親子の毎日を少しラクにしてくれます。
完璧にできなくて大丈夫です。
今日できる小さな工夫を、ひとつだけ。
その積み重ねが、子どもの安心と自信につながっていきます。