はじめに
発語が遅いお子さんを見て、「いつ話せるようになるのか」「どうやってサポートしたらいいのか」と悩んでいませんか?
「発語」は子どもの成長における重要なステップです。
自分の気持ちや要求を言葉で伝えられるようになることで、親子のコミュニケーションが深まり、日常生活の充実にも繋がります。
しかし、発語が遅いお子さんにとって、言葉を覚える過程は一足飛びにはいきません。
ですが、確実に進めるための「ステップ」があります。
発語を育むには、まず子どもの興味を引き出し、「模倣」を楽しむことから始めましょう。
本記事では、「動作模倣」を活用した発達支援の具体的なステップを解説します。
また、日常生活で楽しく取り入れられる工夫や実用的な「動作模倣リスト」もご紹介します。
親子で楽しく学びながら、発語をサポートするヒントを見つけてみましょう。
この記事を通じて、お子さんと一緒に楽しくスキルを育てていくヒントが見つかりますように。
目次
- 発語を育む3つのステップ:言葉の初期課題とゴール
① 表出系(発音と口の動きの練習)
② 受容系(音の聞き取りとマッチング)
③ 要求系(マンド・トレーニング) - 動作模倣リスト:基礎から応用まで
- 声かけのポイント
- まとめ:日常に取り入れるスキル練習
発語を育む3つのステップ:言葉の初期課題とゴール
「言葉」を育てる初期課題は、主に以下の3つに分けられます。
それぞれのゴールと具体的なアプローチを見ていきましょう。
①表出系(発音と口の動きの練習)
- 目的(ゴール):正しい口の形を習得し、発音をきれいにする。
- 方法(ステップ):
- 全身の大きな動作模倣(バンザイなど)から始め、全身の模倣を促す。
- 細かい動作模倣(指や手の動き)に移行。
- 口の動き(形を真似る)に進む。
💡 ポイント:
- 動作模倣を繰り返す中で「バンザイ」といった簡単な言葉を合わせると、自然に口の動きに繋げやすくなります。
- 鏡を活用して、子どもが自分に視覚的に自分の動きを確認させることで理解を深められます。
活用方法
- 鏡を使う練習:
親と子どもが鏡を見ながら口の動きを真似る。「ぱ・ぱ・ぱ」と音を出しながら練習。 - 動作と音の組み合わせ:
例えば、手を上げながら「ばんざい」と声を出す。動作を言葉とセットにすることで、発語のきっかけを作る。 - 段階的に進める:
最初は「バイバイ」「ハイタッチ」など簡単な動作模倣から始め、徐々に「ありがとう」や「ごめんね」のような場面に応じた言葉に発展させる。
②受容系(音の聞き取りとマッチング)
- 目的(ゴール):言葉の概念を理解し、音を聞き取る力を育てる。
- 方法(課題例):
- 物のマッチング:「同じもの」「似たカテゴリー」を結びつける練習。
(例:お皿とコップ=食器、リンゴとバナナ=果物)
- 物のマッチング:「同じもの」「似たカテゴリー」を結びつける練習。
💡 ポイント:
- 視覚的な偏りがある場合、マッチングの準備としてシンプルな形や色の一致から始めるとスムーズです。
- 「これと同じものを見つけて」といった具体的な指示を使い、段階を踏んで難易度を上げるとよいでしょう。
活用方法
- 実物でマッチング:
色と形のカードや、果物のおもちゃを使って「これと同じものはどれ?」と尋ねる。 - 絵本の活用:
「あかいりんごど~れだ?」のように、絵本を指さしながらマッチングする。 - 視覚補助の工夫:
図形や簡単なパズルを使い、視覚的な手がかりを増やす。
③要求系(マンド・トレーニング)自分の気持ちや欲求を伝える
- 目的(ゴール):欲しい物や気持ちを言葉で表現できるようにする。
- 方法:物を欲しがるタイミングで、対象の名前を声に出させる。
(例:「ボールがほしい→ボールと言わせる」)
💡 ポイント:
- 最初は「まねして」「○○って言って」など、短い指示を繰り返す。
- 欲しい物を目の前に提示し、言葉を引き出しやすい状況を作る。
- 言葉が出たらすぐに渡すことで成功体験を積ませる。
活用方法
- おもちゃを活用:
子どもが好きなおもちゃを目の前に置き、「ボールって言ったら渡すね」と声かけをし、発語を引き出す。 - 食事で練習:
おやつの時間に、欲しいお菓子を指さしたら「クッキーちょうだい」と言うよう促す。 - 指差しとセット:
「ここ!どれ?」など、指差しを先に習得させ、少しずつ言葉を加える。
声かけのポイント
- 短く:簡潔な指示を心がける
例:「まねして」「座って」⇒ 〇
「ママのまねして」「このまねして」「こうやって」「手を動かして」「椅子に座って」「ここに座って」⇒ × - 大きく:はっきりした声で伝える。
- 決まった言い方:同じフレーズを繰り返し使い、繰り返すことで理解を促します。
全体の進め方
- 表出系・受容系・要求系を並行して進めると、バランスよくスキルが伸びやすくなります。
- 小さな成功体験を積み重ねることで、子どもに自信をつけさせましょう!
- 日常生活の中で楽しく行える工夫(歌や遊びを取り入れるなど)が継続のカギです
日常生活の中で楽しく行える工夫
- 歌を取り入れる
- 手遊び歌やリズム遊びを活用します(例:「グーチョキパーでなにつくろう?」)。
歌詞に動作を加え、子どもの模倣意欲を引き出します。
- 手遊び歌やリズム遊びを活用します(例:「グーチョキパーでなにつくろう?」)。
- キャラクターになりきる
- 子どもが好きなキャラクターの声真似や動きを取り入れる。
例えば、「アンパンマンみたいに『バイバイ』してみよう!」と声をかける。
- 子どもが好きなキャラクターの声真似や動きを取り入れる。
- ごっこ遊び
- 「お医者さんごっこ」で「もしもし~」と電話をする動作や、道具を使うジェスチャーを自然に練習させる。
- ゲーム形式にする
- 親子で「まねっこ競争」をする。
「だれが一番じょうずにまねできるかな?」とゲーム化して競いながら楽しむ。
- 親子で「まねっこ競争」をする。
- ルーチンに組み込む
- 毎日の挨拶や食事の準備・片付け時に、声かけと動作をセットで行う。
例:「おはよう」「いただきます」をジェスチャー付きで。
- 毎日の挨拶や食事の準備・片付け時に、声かけと動作をセットで行う。
動作模倣リスト:基礎から応用まで
動作模倣は言葉を学ぶための土台となる重要なステップです。
このリストを活用して、楽しく取り組みましょう。
動作模倣リスト(基本動作)
- つくえトントン
- ぱちぱち(回数指定で数の学びにつながる)
- バイバイ
- ハイタッチ
- はーい
- ばんざい(目に見えない動作を鏡を使って練習)
- いただきます
具体的な活用方法:
(例)
「バイバイ」「ハイタッチ」:お別れや挨拶の場面で自然に取り入れる。
「いただきます」:食事前の習慣に取り入れ、毎日繰り返す。
体のパーツを指さす/触る
- あたま
- 耳
- 口
- 鼻(口と混乱しやすいためゆっくり)
- 目
- もも
- おなか
- 足(しゃがむ動作を含む)
- 肩
- 膝
具体的な活用方法:
(例)
指さし遊び:「目はどこ?」「鼻は?」とクイズ形式で楽しく練習。
触った後に親が「め~」「は~な」と声を出して教える。
動く動作
- 動く
- その場で行進
- ジャンプ
- 腕を水平に広げる
- 腕をぐるぐる回す
- ぞうさん(腕を鼻のように揺らす)
- かえる(しゃがんで跳ぶ)
- ウサギ(両足でジャンプ)
具体的な活用方法:
(例)
①準備
子どもの興味を引く音楽を選ぶ。
例えば「ぞうさんの歌」や「かえるの合唱」など、リズムがわかりやすく、歌詞が簡単なものを用意します。
動作がイメージしやすいキャラクターの絵本やカードがあれば一緒に用意します。
親が先にやって見せて、子どもに「まねっこしてね」と声かけする。
②親が見本を見せる
「ぞうさん」の場合:
手を鼻のように前に垂らし、腕を左右に揺らす動作を見せながら「パオーン」と声を出す。
子どもに「ぞうさんになってみよう!」と声をかけます。
「かえる」の場合:
両手を体の前でくっつけてジャンプする動作を見せ、「ケロケロ」と言いながら「かえるさんみたいに飛んでみよう!」と誘います。
③子どもと一緒にやる
親が子どものそばで「まねっこしてね」と言いながら一緒に動作を繰り返します。
音楽に合わせて「パオーン、パオーン」や「ケロケロケロ」と声を出すことでリズムを取りやすくします。
④遊びに取り入れる
動作をゲーム化する。
「ぞうさんになって部屋の端まで歩けるかな?」「かえるさんでジャンプしてここまで来られるかな?」などミッション形式にすると楽しみが増えます。
⑤フィードバックをする
子どもが真似できたらすぐに「上手だね!ぞうさんみたい!」や「かえるさんのジャンプ、バッチリだね!」と褒める。
動作ができない場合も「少しずつやってみようね」と声をかけ、挑戦する気持ちを応援します。
ジェスチャー
- うんうん(首を縦に振る)
- イヤイヤ(首を横に振る)
- グーパー(じゃんけんやハサミの使い方の基礎)
- 手はどこ?(手を見せる動作)
- 人差し指トントン(指で物を指す)
- OKサイン
- チョキ(じゃんけんの動作。難易度高め)
具体的な活用方法:
(例)
①「グーパー」
やり方:
親が「グー(手を握る)」「パー(手を開く)」をリズムに乗せて繰り返す。
最初はゆっくり行い、「パパもやってみて!」と声をかけ、子どもが真似できるようサポートします。
応用:
「グーで叩こう!」「パーでなでよう!」と動作を具体的な行動につなげる。
じゃんけん遊びにも発展させ、ルールを楽しく覚えられるようにします。
②.「うんうん(首を縦に振る)」
やり方:
質問形式にして、「ジュースが飲みたい人?」や「外で遊びたい?」と聞いて、親が「うんうん」と首を縦に振る動作を見せます。
子どもが首を振ったら「そうだね!ジュース飲みたいんだね!」と即座に答えを繰り返して確認します。
応用:
同じ方法で「イヤイヤ(首を横に振る)」も練習。
「嫌なときはこうやって首を振って教えてね」と場面に応じた活用を促します。
③「人差し指トントン」
やり方:
テーブルやおもちゃを指さし、「これをトントンしてみよう!」と声をかけて動作を促す。
おもちゃや食べ物を使って「トントンしたいものどれ?」と選択肢を提示する。
応用:
絵本やイラストで「りんごはどれ?」と質問し、指差しトントンで選んでもらうことで、発語の練習につなげます。
ものを使った動作
- コップごくごく
- タンバリンたんたん
- くるまプップー
- もしもーし(電話の真似)
- ラッパぷっぷー
- 帽子をかぶる
- ふきふき(タオルや布を使う)
- お絵描き(殴り書きから)
- スタンプ
- マラカス(振る)
- つみき(2個からスタート)
- おかたづけ(親と一緒に数個ずつ→10個)
具体的な活用方法:
(例)
「くるまプップー」「コップごくごく」:おもちゃや実物を使い、見せながらやらせる。
指示理解
- ここ押して
- 電気をつけて
- ぱちぱち
- ばんざーい
- 名前を呼ばれて「はーい」
- バイバイ
- ごみ捨て
- こっち来て
- 座って
- 置いて
- ドアをしめて
- ドアをあけて
- 貯金箱に硬貨を入れる
- コップを取って
- お皿を取って
- ●●を取って
- タッチ(近く→遠くへ)
- 渡して
具体的な活用方法:
(例)
「座って」「ドアをあけて」:簡単な場面で日常的に指示を出す。
「ごみ捨てに行こうか?」など生活の流れの中で実践する。
このリストを元に、状況やお子さんのペースに合わせて、段階的に導入すると良いですね!
また、楽しい声かけやご褒美などを取り入れて、お子さんが「もっとやりたい!」と思える工夫も効果的です😊
アドバイス
1. 段階的に進める
最初は基本的な動作からスタートし、慣れてきたらパーツや道具を使った動作に進むと良いです。
- ステップ1:基本動作から始める
最初は「バイバイ」「ハイタッチ」のようなシンプルでわかりやすい動作を練習します。
親が動作をオーバーに見せ、子どもに「同じことやってみよう!」と誘導。 - ステップ2:体のパーツに移行
次に「目」「鼻」「手」など、体の部位を使った動作を追加します。
「目はここだよ」と言いながら指差しし、子どもに指差しを真似させます。 - ステップ3:道具を使った動作へ
コップを「ごくごく」と飲む動作や、スプーンで「もぐもぐ」と食べる動作を練習します。
本物のおもちゃや食器を使い、リアルな体験を伴わせると理解が深まります。 - ステップ4:複数の動作を組み合わせる
「コップを持って、テーブルに置こう」のように、指示を増やしていきます。
親が一連の動作を見本として見せながら、「さあ、やってみよう!」と声をかけます。 - ステップ5:応用動作でスキルを高める
じゃんけんや歌遊びの中で複雑な動作を取り入れ、複数の手順を覚える練習を行います。
2. 難易度の調整
子どもが苦手な動作は、部分練習に切り替えます
(例:指の動きだけ先に練習する)。
3. 観察
子どもが好きな動作を見つけ、それを褒めることで「できた」という自信を育てます。
たくさん褒めてあげてください!
4. 楽しくできる工夫:親子の楽しみを大事にする
お子さんの好きな音楽やキャラクターを取り入れることで、子どもの集中力を引き出します。
まとめ
動作模倣は、言葉を学ぶための最初のステップとして非常に重要です。
家庭で取り組む際には、楽しみながら繰り返し行うことが成功のカギです。
本記事を参考に、子どもの成長を温かく見守りながら、一緒にスキルアップを目指しましょう!