はじめに|登園後の準備が毎日なかなか進まなかった息子
幼稚園や保育園に着いたあと、
靴を脱ぐ。
上靴に履き替える。
バッグを棚にかける。
タオルやコップを出す。
連絡帳を提出する。
大人から見ると、毎日の決まった流れに見える登園後の準備。
でも、ASDやADHDなど発達特性のある子どもにとっては、この一連の流れがとても難しいことがあります。
わが家の息子も、3歳のときの発達検査ではIQ99と平均域でした。
それでも、登園後の準備になると毎日のようにつまずいていました。
「次は靴を脱ごう」
「バッグをかけてね」
「タオルとコップを出そう」
一つひとつ声をかけないと、なかなか次の行動に移れません。
年少の頃は「まだ小さいからかな」と思っていました。
でも、年中になっても準備がスムーズに進まず、他の子の棚に物を入れてしまったり、連絡帳を出し忘れたり、途中で気が散ってしまったりすることが続きました。
その中で感じたのは、登園準備ができないのは、やる気がないからではないということです。
手順を覚えること。
順番通りに動くこと。
自分の持ち物を見分けること。
周りの刺激の中で集中すること。
細かい作業をすること。
こうした力がいくつも必要だからこそ、発達特性のある子には負担が大きいのだと思います。
この記事で扱う「登園準備」は、家を出る前の朝の支度ではなく、幼稚園・保育園に着いてから行う準備のことです。
靴を脱ぐ、上靴に履き替える、バッグをかける、タオルやコップを出す、連絡帳を提出するなどの流れを中心に紹介します。
この記事では、発達障害・ASD・ADHDの子どもが登園後の準備でつまずきやすい理由と、家庭や園でできるサポート方法を、わが家の体験談を交えながら紹介します。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。発達や園生活で気になることがある場合は、園の先生、保健センター、自治体の発達相談、医療機関などに相談してください。
登園後の準備でよくある困りごと
登園後の準備でつまずく子には、次のような様子が見られることがあります。
- 靴の履き替えに時間がかかる
- バッグを決まった場所にかけられない
- タオルやコップを出し忘れる
- 連絡帳を提出できない
- 他の子の棚に入れてしまう
- 途中で友達や掲示物に気を取られる
- シール貼りや細かい作業に時間がかかる
- 先生の声かけがないと次に進めない
- 何度も同じことを聞く
- 準備の途中で遊び始めてしまう
わが家の息子も、まさにこのタイプでした。
特に困っていたのは、「次に何をするか」が分からなくなってしまうことです。
靴を脱いだあとに止まる。
バッグを持ったまま立ち尽くす。
タオルを出したのに、コップを忘れる。
連絡帳を出す前に別のものが気になってしまう。
一つひとつは小さなことに見えますが、毎日のことなので、本人にとっても親にとっても大きな負担になります。
発達障害の子どもが登園準備を苦手とする理由

1. 複数の手順を順番に進めるのが難しい
登園後の準備には、たくさんの手順があります。
靴を脱ぐ。
上靴を履く。
バッグを棚にかける。
タオルを出す。
コップを出す。
連絡帳を提出する。
シールを貼る。
大人にとっては「いつもの流れ」でも、子どもにとっては複数の作業を順番にこなす必要があります。
ASDやADHDのある子は、手順を頭の中で整理したり、順番通りに進めたりすることが苦手な場合があります。
息子も、最初の一つはできても、次の行動で止まることがよくありました。
「靴を脱いだら次は上靴」
「バッグをかけたら次はタオル」
という流れが、自然にはつながりにくかったのだと思います。
2. 口頭指示だけでは分かりにくい
先生や親が、
「準備してね」
「いつものようにやってね」
と言っても、子どもには何をすればよいのか分かりにくいことがあります。
特に、複数の行動をまとめて言われると混乱しやすくなります。
たとえば、
「靴を脱いで、上靴を履いて、バッグをかけて、タオルとコップを出してね」
と言われても、途中で何を言われたか忘れてしまうことがあります。
息子も、声かけをしても反応が遅かったり、別のことに気を取られたりすることがありました。
言葉だけで伝えるより、写真やイラストで見える形にした方が分かりやすかったです。
3. ワーキングメモリに負担がかかる
ワーキングメモリとは、簡単にいうと「今やることを一時的に覚えておく力」です。
登園後の準備では、
次に何をするか覚えておく
どこに何を入れるか覚えておく
先生に言われたことを覚えておく
持ち物を出したか確認する
といった力が必要になります。
わが家の息子は、検査上のワーキングメモリが極端に低いわけではありませんでした。
それでも、実際の園生活では、周りの音や友達の動き、掲示物などの刺激が多く、複数の作業を同時に進めるのは負担だったようです。
検査結果だけでは分からない、生活場面での難しさがあるのだと感じました。
4. 空間認識や持ち物管理が苦手
登園準備では、自分の場所を見つける力も必要です。
自分の靴箱。
自分の棚。
自分のフック。
自分のバッグ。
自分の連絡帳。
似たようなものが並んでいる中から、自分の場所や持ち物を見つけなければなりません。
息子は空間認識が苦手で、自分の棚を間違えたり、他の子の場所に物を入れてしまったりすることがありました。
ADHDの影響もあって、途中で別のものに注意が向くと、どこまで準備したか分からなくなることもありました。
5. 周囲の刺激で注意がそれやすい
登園後の教室は、意外と刺激が多い場所です。
友達の声。
先生の声。
靴箱の音。
廊下の動き。
掲示物。
おもちゃ。
他の子の準備。
ADHD傾向のある子は、こうした刺激に注意が向きやすく、今やるべき準備から気持ちがそれてしまうことがあります。
息子も、準備の途中で友達の動きが気になったり、掲示物を見始めたりして、作業が止まることがありました。
「やる気がない」のではなく、注意があちこちに向いてしまっていたのだと思います。
6. 手先の不器用さで時間がかかる
登園後の準備には、手先を使う作業もあります。
連絡帳を出す。
シールを貼る。
袋からコップを出す。
タオルをかける。
ファスナーを開け閉めする。
上靴を履く。
DCD傾向や手先の不器用さがある子は、こうした作業に時間がかかることがあります。
息子も、シール貼りや細かい作業は苦手でした。
本人は一生懸命やっていても、うまくできないことで時間がかかり、焦ってしまうこともありました。
家庭でできる登園準備のサポート

1. 手順を写真やイラストで見える化する
登園後の準備は、言葉だけで伝えるよりも、写真やイラストで手順を見える化すると分かりやすくなります。
たとえば、
- 靴を脱ぐ
- 上靴を履く
- バッグをかける
- タオルを出す
- コップを出す
- 連絡帳を出す
という流れを、写真やイラストで並べます。
子どもが「次に何をすればいいか」を目で確認できると、声かけに頼りすぎずに動きやすくなります。
わが家でも、視覚支援カードのように「次にすること」が見える形にすると、息子が自分で動きやすくなりました。
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2. 1ステップずつ練習する
最初から全部を一人でやろうとすると、子どもにとって負担が大きくなります。
まずは、
「靴を脱ぐ」
「上靴を履く」
だけを練習する。
それができたら、
「バッグをかける」
を追加する。
さらに慣れてきたら、
「タオルとコップを出す」
を追加する。
このように、少しずつステップを増やしていくと、子どもも成功体験を積みやすくなります。
息子も、一度に全部を求めるより、「今日はここまでできたらOK」と決める方が取り組みやすそうでした。
3. 幼稚園ごっこでロールプレイする
家庭で「幼稚園ごっこ」をするのもおすすめです。
玄関や部屋の一角を園の入り口に見立てて、
靴を脱ぐ
上靴を履く
バッグをかける
タオルを出す
連絡帳を出す
という流れを遊びながら練習します。
実際の園と同じような流れを家で体験しておくと、子どもが本番でイメージしやすくなります。
わが家でも、「幼稚園についたら何する?」と遊びの中で確認することで、流れを覚えやすくなりました。
4. バッグの中身を取り出す順番に入れる
園に着いてからスムーズに準備できるように、バッグの中身の入れ方を工夫します。
たとえば、登園後すぐに出すものを上に入れます。
連絡帳を一番上にする。
タオルやコップを取り出しやすい場所にする。
袋を分けすぎない。
同じ場所に同じものを入れる。
バッグの中が分かりにくいと、それだけで準備が止まってしまうことがあります。
「出す順番に入れる」だけでも、子どもにとってはかなり分かりやすくなります。
5. カレンダーやシール貼りを家で練習する
園によっては、登園後に日付シールを貼る活動があることもあります。
シール貼りが苦手な子は、家で練習しておくと安心です。
家でも、園で使っているものに近い日めくりカレンダーや卓上カレンダーを用意します。
「今日は何月何日だね」
「ここにシールを貼ろう」
と一緒に確認しながら練習します。
シールを貼るだけでなく、日付を見る、場所を探す、指先で貼るという複数の力を使うため、意外とよい練習になります。
6. 朝の支度はゲーム感覚で練習する
家庭で朝の支度や持ち物準備を楽しく練習したい場合は、無料ゲーム「おしたく探検隊」も使いやすいです。
「まず」「つぎ」「できた」という流れを遊び感覚で経験できると、登園後の準備にもつながりやすくなります。
関連記事:
おしたく探検隊|朝の支度・持ち物準備をゲーム感覚で練習
園にお願いしやすいサポート

1. 棚や靴箱に分かりやすい目印をつける
自分の場所が分かりにくい子には、棚や靴箱に目印をつけると分かりやすくなります。
名前だけでなく、
好きなマーク
色シール
写真
大きめの名前
同じキーホルダー
などを使うと、見つけやすくなります。
息子も、自分の場所に目印があると分かりやすくなりました。
2. 最初は先生と一緒に確認する
最初から一人でやらせるのではなく、先生と一緒に確認する時間を作ってもらうと安心です。
「靴を脱げたね」
「次はバッグだね」
「連絡帳はここだね」
と短く確認してもらえると、子どもも流れを思い出しやすくなります。
慣れてきたら、先生の声かけを少しずつ減らしていきます。
3. 友達が少ない時間に準備する
教室がにぎやかすぎると、注意がそれやすい子は準備に集中しにくくなります。
可能であれば、
少し早めに登園する
友達が少ない時間に準備する
静かな場所で準備する
最初だけ先生の近くで準備する
といった工夫が役立つことがあります。
4. 連絡帳は大人が最終確認する
連絡帳は、出し忘れや入れ間違いが起こりやすいものの一つです。
最初は、
「これは〇〇くんの連絡帳だね」
「ここに出そうね」
と大人と一緒に確認します。
慣れてきたら、
「連絡帳を出したら先生に見せる」
「出したあとにチェックする」
という流れにします。
先生と家庭で同じ確認方法にすると、子どもも混乱しにくくなります。
5. できたことを具体的にほめてもらう
登園準備で大切なのは、「できなかったこと」より「できたこと」に目を向けることです。
たとえば、
「今日は靴を自分で脱げたね」
「バッグを自分の場所にかけられたね」
「連絡帳を出せたね」
「タオルを忘れずに出せたね」
と具体的に言葉にします。
「えらいね」だけより、何ができたのかを具体的に伝えると、子どもも次に同じ行動をしやすくなります。
年中から増えた「持ち帰り忘れ」への対策
年中になると、園によっては「自分で連絡帳を持って帰る」「自分で荷物をまとめる」など、子ども本人に任されることが増えます。
わが家でも、年中になった頃から連絡帳の持ち帰り忘れが増えました。
年少の頃は先生が手伝ってくれていたことも、年中になると自分でやる場面が増えます。
そこで、バッグに分かりやすいワッペンやキーホルダーをつけました。
「これが自分のバッグ」
「連絡帳はここに入れる」
と分かりやすくするためです。
また、帰る前に確認する流れも作りました。
バッグを見る。
連絡帳が入っているか見る。
水筒があるか見る。
帽子があるか見る。
一度に全部確認するのが難しい場合は、写真カードやチェックリストにすると分かりやすいです。
感覚過敏がある場合は服や靴にも配慮する
登園準備が進まない背景に、感覚過敏が関係していることもあります。
服のタグが気になる。
靴下の縫い目が気になる。
上靴の締めつけが嫌。
服が濡れていると着替えたくなる。
制服やスモックの感触が苦手。
こうした不快感があると、準備どころではなくなってしまいます。
息子も、服のチクチクや濡れた感覚が苦手で、着替えに時間がかかることがありました。
服や靴の不快感が強い場合は、準備のやり方だけでなく、衣類そのものを見直すことも大切です。
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よくある質問
発達障害の子どもが登園準備に時間がかかるのはなぜですか?
複数の手順を順番に進めること、口頭指示を覚えておくこと、自分の持ち物や場所を見分けること、周囲の刺激の中で集中することが難しい場合があります。やる気がないのではなく、必要な力がいくつも重なっているため負担が大きいことがあります。
先生から「準備が遅い」と言われたらどうすればいいですか?
まずは、どの手順で止まっているのかを具体的に聞くとよいです。「靴の履き替え」「バッグをかける」「連絡帳を出す」など、つまずく場所が分かると、家庭でも園でも対策しやすくなります。
家庭でも登園準備の練習は必要ですか?
必要に応じて家庭でも練習すると役立ちます。幼稚園ごっこや写真カード、チェックリストを使って流れを確認しておくと、園での準備をイメージしやすくなります。
準備が進まないとき、叱ってもいいですか?
強く叱るよりも、どこで止まっているのかを見て、手順を分けたり、視覚支援を使ったりする方が効果的なことがあります。「早くして」より「次は上靴だよ」のように具体的に伝えると分かりやすいです。
視覚スケジュールはどんな形がいいですか?
写真やイラストで、次にすることがひと目で分かる形がおすすめです。実際に使う靴、バッグ、タオル、コップ、連絡帳の写真を使うと、子どもが自分の行動と結びつけやすくなります。
準備を遊び感覚でさせても大丈夫ですか?
大丈夫です。「準備ミッション」「できたらチェック」「タイマーでチャレンジ」など、遊び感覚を取り入れると取り組みやすくなる子もいます。ただし、急かしすぎるとプレッシャーになるため、子どもに合う方法を選びましょう。
園での支援を先生にお願いしてもいいですか?
お願いして大丈夫です。「この手順で止まりやすい」「目印があると分かりやすい」「最初だけ一緒に確認してほしい」など、具体的に伝えると先生も対応しやすくなります。
他の子の棚に入れてしまうときはどうすればいいですか?
棚やフックに、名前だけでなくマークや写真、色シールなどをつけると分かりやすくなります。バッグや連絡帳にも同じマークをつけると、自分のものと場所を結びつけやすくなります。
年中になって持ち帰り忘れが増えたのはなぜですか?
年中になると、自分で荷物をまとめる場面が増えることがあります。先生の手助けが減る分、確認する力が必要になります。チェックリストや帰る前の確認カードを使うと、忘れ物対策になります。
将来的に自分で準備できるようになりますか?
子どもによってペースは違いますが、スモールステップと成功体験を積み重ねることで、少しずつ自分でできることが増えていきます。最初は大人の支援が必要でも、徐々に見守りへ移行していくことが大切です。
まとめ|登園準備は「やる気」ではなく「分かりやすさ」で変わる
発達障害・ASD・ADHDの子どもが登園後の準備でつまずく背景には、さまざまな理由があります。
複数の手順を覚える難しさ。
口頭指示だけでは分かりにくいこと。
周囲の刺激で注意がそれやすいこと。
自分の持ち物や置き場所を見分ける難しさ。
手先の不器用さ。
感覚過敏による不快感。
わが家の息子も、年少から年中にかけて、登園後の準備で何度もつまずきました。
でも、写真やイラストで手順を見える化したり、バッグの中身を取り出しやすい順番に入れたり、園の先生と同じ声かけを共有したりすることで、少しずつ自分でできることが増えていきました。
大切なのは、「どうしてできないの?」と責めることではありません。
「どこで止まっているのかな?」
「何が見えたら分かりやすいかな?」
「どの手順なら一人でできるかな?」
と、子どもに合った方法を探していくことです。
登園準備は、毎日の小さな積み重ねです。
完璧にできなくても大丈夫。
靴を脱げた。
バッグをかけられた。
連絡帳を出せた。
自分の棚に入れられた。
そんな小さな「できた」を積み重ねることで、子どもの安心と自信につながっていきます。