はじめに
「対象年齢より簡単なパズルなのに、なかなか完成できない。」
「合わないピースを、力いっぱい押し込もうとする。」
「枠から作ろうと伝えても、自分のやり方で進めたがる。」
そんなことはありませんか?
我が家の長男は、現在6歳です。
ASD・ADHD・DCDがあり、言葉や記憶には強みがある一方で、
図形を見比べたり、手先を使って形を合わせたりすることに苦手さがあります。
ジグソーパズルも、以前から苦手な遊びの一つでした。
6~8ピース程度のパズルなら一人で完成できますが、24ピースくらいになると、途中で手が止まってしまいます。
特に難しかったのが、次のような進め方です。
- 最初に全部のピースを表向きにする
- 角や周りのピースを探す
- 絵や色がつながるか確認する
- ピースの向きを変える
- 合わなかったら別のピースを試す
長男の場合は、裏向きのピースが残ったまま始めてしまうこともありました。
一つの気になる絵の部分を見つけると、その部分に強くこだわり、手当たり次第にピースを当てはめようとすることもありました。
私が、
「先に周りの枠から作ろう。」
「まっすぐなところを探して。」
「それは絵が合っていないよ。」
と声をかけても、なかなか伝わりません。
何度も同じことを言ううちに、親子でイライラしてしまうこともありました。
そこで今回、口頭で何度も注意しなくても、パズルを作る順番や、合わないときの対処法を確認できるように、
ジグソーパズルの作り方が分かる視覚支援カード
を作りました。
この記事では、視覚支援カードを無料公開するとともに、ジグソーパズルが苦手な子への教え方や、家庭でできる工夫を紹介します。
ジグソーパズルが苦手なのはなぜ?
ジグソーパズルを完成させるためには、いろいろな力を同時に使います。
例えば、
- 完成した絵をイメージする
- 見本とピースの絵を見比べる
- 色や線がつながる場所を探す
- ピースの形を見分ける
- ピースの向きを変える
- どこから作るか順番を考える
- 合わなかったら別の方法を試す
- 手先で位置や向きを細かく調整する
などです。
大人にとっては、
「角を探して、周りの枠から作ればいい」
という当たり前の手順でも、子どもにとっては簡単ではない場合があります。
特に、
- 全体よりも細かい部分に注目しやすい
- 自分で決めた手順を変えることが苦手
- 言葉だけの説明を理解しにくい
- 見本と同じ場所を探すことが苦手
- 合わなかったときに気持ちを切り替えにくい
- 手先の細かな操作が苦手
というお子さんは、ピース数が増えると負担が大きくなることがあります。
ただし、ジグソーパズルが苦手だからといって、知的な遅れがあるとは限りません。
言葉、記憶、運動、図形、手先の操作など、子どもの得意・不得意にはそれぞれ違いがあります。
パズルの対象年齢だけを見て、
「もう6歳なのにできない。」
と考えるのではなく、どの段階で困っているのかを見つけることが大切です。
我が家の長男がつまずいていたところ
長男の場合、パズルの仕組みがまったく分かっていないわけではありませんでした。
6~8ピース程度なら、自分で完成できます。
しかし、24ピースくらいになると、次のような様子が見られました。
一つの絵のピースにこだわる
気になる絵のピースを見つけると、その部分を先に完成させようとします。
周りの枠を作るよりも、
「この木のピースをつなげたい。」
という気持ちが強くなり、合いそうなピースを手当たり次第に当てはめていました。
合わなくても無理に押し込もうとする
絵や形が合っていなくても、
「ここに入るはず。」
と思うと、力いっぱいピースを押し込もうとすることがありました。
ピースを回してみたり、別の場所を探したりするよりも、最初に決めた場所に入れようとする様子が見られました。
「まっすぐ」が伝わらない
私は最初、
「まっすぐなピースを探して。」
と伝えていました。
しかし、長男には「まっすぐ」が、ピースのどの部分を指しているのか分かりにくかったようです。
そこで、
- たいらなところが2つあるピースは「角」
- たいらなところが1つあるピースは「周り」
- 全部デコボコしているピースは「中」
と、ピースの形を実際に見せながら伝えることにしました。
「まっすぐ」という言葉だけで説明するよりも、どの部分を見るのかが分かりやすくなりました。
自分の手順で進めたがる
「枠から作ろう」と伝えても、長男は自分が気になった部分から作りたがりました。
何度も声をかけると、
「今やってる!」
「分かってる!」
と怒ってしまうこともありました。
そこで、口頭で同じことを繰り返すのではなく、作る順番をイラストで確認できるようにしました。
ジグソーパズルの視覚支援カードを無料公開
今回作った視覚支援カードは、全部で3枚です。
①「パズルをはじめるまえに」視覚支援カード
最初のカードでは、パズルを始める前の準備を伝えます。
手順は、
- ぜんぶ表にする
- 絵が見えるように広げる
の2つです。
ピースが裏返っていたり、重なっていたりすると、必要なピースを見つけにくくなります。
最初にすべてのピースを表向きにして、絵が見えるように広げるだけでも、探しやすくなります。

②「パズルはわくからつくろう」視覚支援カード
2枚目のカードでは、パズルを作る基本的な順番を伝えます。
- かどを見つける
- まわりを集める
- わくをつなげる
- なかを作る
角のピースは、たいらなところが2つあります。
周りのピースは、たいらなところが1つあります。
「まっすぐなピース」と言われても分かりにくい子には、
「たいらなところはいくつある?」
と一緒に確認すると、探しやすくなります。

③「ピースがあわないときは?」視覚支援カード
3枚目のカードでは、ピースが合わなかったときの対処法を伝えます。
- 無理に押さない
- 色と絵を見る
- ピースを回す
- 別のピースを試す
子どもに、
「違うよ。」
「そこじゃないよ。」
と伝えるだけでは、次に何をすればよいのか分からないことがあります。
そこで、
「合わなかったら、どうするか」
まで具体的に見えるようにしました。
失敗しないことを目指すのではなく、
合わないことに気づき、別の方法を試せるようになること
が大切だと考えています。

パズル視覚支援カードまとめ(①②③)

画用紙にパズルの外枠を書いてあげても大丈夫

台紙のないジグソーパズルでは、完成したときの大きさや、ピースを置く位置が分かりにくいことがあります。
特に、枠から作ることに慣れていない子は、
- 4つの角をどこに置けばよいか分からない
- 周りのピースをどちら向きに置けばよいか分からない
- パズルが横に広がりすぎる
- ピースをつないでも全体の形が崩れてしまう
- 完成する範囲をイメージしにくい
といったところで、つまずくことがあります。
そのような場合は、画用紙に、完成したパズルよりもほんの少し大きな四角い枠を書いておく方法もおすすめです。
大人がパズルの枠を完成させて渡すのではなく、ピースを置く場所の目印となる枠線を用意します。
枠線があると、
「この四角の中にパズルを作る」
という完成範囲が分かりやすくなります。
また、4つの角を置く場所や、たいらな面を外側に向けることも、目で確認しやすくなります。
これは、子どもの代わりにパズルを作ることではありません。
「どこに作ればよいか分からない」という困りごとを、画用紙の枠線で見えるようにする視覚支援です。
画用紙の外枠の作り方
- 一度、大人がパズルを完成させる
- 完成したパズルを画用紙の上に置く
- パズルの外側に沿って、四角い枠を書く
- パズルを崩し、枠を書いた画用紙の上で子どもに作ってもらう
枠線は、子どもが見つけやすいように、少し太めに書くと分かりやすくなります。
ただし、線がパズルの下に完全に隠れてしまわないよう、完成したパズルよりもほんの少しだけ外側に書くのがおすすめです。

4つの角に目印を付ける方法も
四角い枠だけでは、まだ角の位置が分かりにくい場合があります。
そのようなときは、画用紙の4つの角に、小さな丸や色の目印を付けても構いません。
例えば、
- 左上に赤い丸
- 右上に青い丸
- 左下に緑の丸
- 右下に黄色い丸
などの目印を付けます。
最初に4つの角のピースを置き、その間を周りのピースでつないでいくと、枠を作りやすくなります。
ただし、色の情報が増えることで混乱する子もいます。
まずはシンプルな四角い枠だけを使い、必要に応じて角の目印を加えるとよいでしょう。
少しずつ枠線を減らしていく
画用紙の枠を使って作れるようになったら、すぐに枠をなくす必要はありません。
同じパズルで何度か繰り返し、
「角を置く」
「たいらなところを外側にする」
「周りをつなげる」
という手順に慣れてから、枠線なしの状態に挑戦します。
例えば、次のように段階を分けることができます。
STEP1 太い外枠を使う
最初は、はっきり見える太めの線で四角い枠を書きます。
4つの角を置く場所も、一緒に確認します。
STEP2 細い外枠を使う
慣れてきたら、枠線を少し細くします。
子どもが線だけに頼らず、ピースの形も確認できるようにします。
STEP3 角だけ目印を付ける
四角い線をなくし、4つの角を置く場所だけに小さな目印を付けます。
角を置いた後は、周りのピースを自分でつないでもらいます。
STEP4 目印なしで作る
最後は、画用紙の枠や角の目印を使わず、視覚支援カードを見ながら作ります。
このように、子どもの様子に合わせて少しずつ目印を減らすことで、枠線がなくても作れる状態につなげていきます。
画用紙の枠を使うときのポイント
画用紙の枠は、必ず使わなければならないものではありません。
枠がなくても作れる子や、好きな絵の部分から作る方が分かりやすい子もいます。
また、画用紙の上ではピースが滑って動きやすいことがあります。
ピースがずれて作りにくそうな場合は、画用紙の下に滑り止めマットを敷いたり、縁のあるトレーの中に画用紙を置いたりすると、取り組みやすくなります。
枠線の目的は、正しいやり方を無理に守らせることではありません。
「どこに作ればよいか分からない」という困りごとを、線で見えるようにすること
です。
子どもが画用紙の枠を手がかりにして完成できたら、
- 角を正しい場所に置けたね
- たいらなところを外側にできたね
- 枠に沿ってつなげられたね
- 四角い形ができたね
と、できた行動を具体的に伝えます。
画用紙の枠も、視覚支援カードと同じように、子どもが自分で進めるための手がかりとして活用してみてください。
視覚支援カードの使い方
パズルの近くに置く
カードは、パズルをしている子どもから見える場所に置きます。
壁に貼るよりも、机の上やパズルの箱の近くに置く方が、必要なときに確認しやすくなります。
最初は大人と一緒に見る
カードを置くだけで、すぐに一人で使えるとは限りません。
最初は一緒にカードを見ながら、
「まずは、どれだった?」
「①は、全部表にするだね。」
「合わないときは、どのカードを見る?」
と確認します。
注意する代わりにカードを指さす
子どもが自分の方法で進めていると、つい、
「枠からやって。」
「無理に押さないで。」
「ちゃんと絵を見て。」
と何度も言いたくなります。
しかし、注意が続くと、子どもも大人も疲れてしまいます。
一度手順を確認した後は、
「カードを見てみよう。」
と声をかけたり、カードを指さしたりするだけにします。
口頭での注意を減らすことで、親子の言い合いも減らしやすくなります。
すべてを一度に求めない
最初から、
- 全部表にする
- 枠から作る
- 絵を見る
- 向きを変える
- 別のピースを試す
のすべてを完璧にできなくても大丈夫です。
まずは、
「全部表向きにできた。」
次は、
「角を一つ見つけられた。」
というように、一つずつ練習していきます。
できた行動を具体的に伝える
「上手だね」だけでなく、
- 全部表にできたね
- たいらなピースを見つけたね
- ピースを回してみたね
- 合わなかったから、別のピースを試せたね
- カードを見て自分で分かったね
と、できた行動を具体的に伝えます。
完成したことだけでなく、途中で考え方を変えられたことも大切な成長です。
手当たり次第に合わせるときは、選択肢を減らす
たくさんのピースが並んでいると、どれを選べばよいのか分からなくなることがあります。
そのようなときは、合いそうなピースを2~4個だけ選び、
「この中にあるよ。」
と渡しても構いません。
選択肢が少なくなると、
- 色
- 絵
- 形
- 向き
を見比べやすくなります。
慣れてきたら、少しずつ提示するピースの数を増やします。
「よく見て」ではなく、見る場所を伝える
「ピースをよく見て。」
という声かけも、子どもにとっては少し抽象的です。
何を見ればよいか分からない子には、
- 空の青はつながっている?
- 木の線はつながっている?
- ここと同じ色はどこにある?
- ピースの出っ張りと穴は合っている?
- 1回回したらどうなる?
と、見る場所を具体的に伝えます。
一度にすべてを確認するのではなく、
「まず色を見よう。」
「次は絵がつながるか見よう。」
と、一つずつ確認すると分かりやすくなります。
短い時間で終わっても大丈夫
パズルが苦手な子にとって、長時間取り組むことは大きな負担になります。
最初は、
- 1日3~5分だけ
- 角を見つけたら終わり
- 枠が完成したら休憩
- 最後の5ピースだけ取り組む
という方法でも構いません。
「全部完成するまで終われない」とすると、パズルそのものが嫌になってしまうことがあります。
少し物足りないくらいで終わり、
「またやってみたい。」
と思える経験を積むことも大切です。
子どもに合ったピース数から始めよう
パズルの箱には対象年齢が書かれていますが、対象年齢はあくまで目安です。
年齢より簡単なパズルを使っても問題ありません。
今の子どもが、
少し頑張れば完成できるピース数
から始めます。
我が家でも、6歳だからと難しいパズルに進むのではなく、まずは一人で完成できる6~8ピースのパズルで、作る順番を確認することにしました。
慣れてきたら、
- 8ピース
- 12ピース
- 16ピース
- 20~24ピース
というように、少しずつ増やしていきます。
一度にピース数を大きく増やさないこともポイントです。
こんなお子さんにおすすめ
今回の視覚支援カードは、次のようなお子さんにおすすめです。
- ジグソーパズルが苦手
- 対象年齢より少ないピースでも難しい
- どこから始めればよいか分からない
- ピースを全部表向きにできない
- 気になる絵の部分だけにこだわる
- 合わないピースを無理に押し込む
- ピースの向きを変えることが苦手
- 合わないとすぐに怒ったり諦めたりする
- 大人に何度も注意されることを嫌がる
- 言葉より絵で確認する方が分かりやすい
ASD・ADHD・DCDなどの特性があるお子さんをはじめ、言葉だけの説明よりも、絵で手順を確認する方が分かりやすい幼児や小学校低学年のお子さんにも活用できます。
家庭だけでなく、幼稚園、保育園、学校、療育などでも、必要に応じて活用してください。
よくある質問
何歳から使えますか?
文字を一人で読めないお子さんでも、イラストを見ながら大人と一緒に使えます。
幼児から小学校低学年くらいまでを想定していますが、年齢ではなく、お子さんの理解しやすさに合わせて使ってください。
何ピースから始めればよいですか?
一人で完成できるピース数、または少し手伝えば完成できるピース数から始めることがおすすめです。
年齢に合ったピース数にこだわる必要はありません。
毎回、枠から作らなければいけませんか?
必ず枠から作る必要はありません。
枠から作る方法は、完成しやすくするための一つの作戦です。
子どもが好きな絵の部分から作りたい場合は、その部分を少し作ってから枠へつなげても構いません。
画用紙に外枠を書くと、子どもの練習にならないのでは?
画用紙に外枠を書いても、子どもの代わりにパズルを完成させることにはなりません。
外枠は、パズルを置く範囲や、4つの角の位置を分かりやすくするための目印です。
子ども自身がピースを探し、向きを考え、枠に沿ってつなげる練習はできます。
枠を手がかりに作れるようになったら、線を細くする、角だけに目印を付ける、目印をなくすというように、少しずつ支援を減らしていきます。
カードを見たがらないときはどうすればよいですか?
無理に見せなくても大丈夫です。
パズルを始める前の落ち着いているときに、一緒にカードの内容を確認しておきます。
困ってから急にカードを出すと、「注意された」と感じる子もいるため、最初に使い方を共有しておくことが大切です。
合わないピースを何度も押し込むときは?
「違う」と言うだけでなく、
「すっと入ったら合っている。ぎゅっと押すときは一度止まる」
と伝えます。
カードの「無理に押さない」を指さし、次に「色と絵を見る」「ピースを回す」へ進みます。
パズルが嫌いなら、無理に取り組ませなくてもよいですか?
嫌がっているときに無理に続ける必要はありません。
パズル以外にも、ブロック、型はめ、迷路、絵合わせなど、形や位置を見る力につながる遊びがあります。
好きな遊びを大切にしながら、短時間で楽しく取り組める方法を探してみてください。
視覚支援カードを使うときのお願い
今回のカードは、家庭や学校、療育などで、お子さんを支援するために使用できます。
お子さんによって、理解しやすい言葉や必要な手助けは異なります。
カードの手順を必ず守らせるのではなく、お子さんの様子に合わせて、使うカードや手順を調整してください。
また、視覚支援カードは、診断や治療を目的としたものではありません。
パズル以外にも、図形、工作、書字、着替えなど、日常生活のさまざまな場面で困りごとが見られる場合は、必要に応じて学校の先生や支援者、専門職へ相談してください。
まとめ
ジグソーパズルは、絵を見てピースを合わせるだけの遊びに見えます。
しかし、実際には、
- ピースを表向きにする
- 角や周りを探す
- 色や絵を見比べる
- ピースの向きを変える
- 合わなかったら別の方法を試す
- 手先で位置を調整する
など、たくさんの力を使います。
そのため、対象年齢より簡単なパズルができなくても、子どもが怠けているわけでも、考えていないわけでもありません。
何をすればよいのか分からない中で、自分なりの方法を使って一生懸命取り組んでいる場合があります。
そんなときは、
「ちゃんと見て。」
「枠からやって。」
と何度も伝える代わりに、作る順番や、ピースが合わないときの行動をイラストで見えるようにすると分かりやすくなります。
どこにパズルを作ればよいのか分かりにくい場合は、画用紙に、完成したパズルよりもほんの少し大きな四角い枠線を書いておく方法もあります。
画用紙の枠があると、パズルを作る範囲や、4つの角を置く位置が分かりやすくなります。
慣れてきたら、枠線を細くする、角だけに目印を付ける、最後は目印なしで作るというように、少しずつ手がかりを減らしていきます。
目標は、年齢相応のピース数を急いで完成させることではありません。
カードを見ながら、自分で次の行動を選べること。
合わなかったときに、別の方法を試せること。
そして、
「自分でできた!」
という経験を積むことです。
今回の視覚支援カードが、パズルが苦手なお子さんと、何度も声をかけることに疲れている保護者の方の助けになればうれしいです。