はじめに|「一緒に遊ぼう」と言われたのに逃げてしまった息子
年中の頃、公園で息子が幼稚園の友達に「一緒に遊ぼう」と誘われたことがありました。
私はその場で、少し衝撃を受けました。
友達は普通に誘ってくれている。
息子も本当は遊びたい気持ちがある。
それなのに、息子は返事をせず、戸惑ったように固まったり、逃げるようにその場を離れたりしてしまったのです。

当時の私は、
「どうして一緒に遊ばないの?」
「せっかく誘ってくれているのに」
「友達と遊ぶのが嫌なのかな?」
と、不思議でたまりませんでした。
でも後から考えると、息子は友達が嫌だったわけではありません。
急に声をかけられて、どう返事をすればいいか分からなかった。
どんな遊びが始まるのか想像できなかった。
友達との距離感や会話の流れがつかめなかった。
つまり、遊びたくないのではなく、遊びに入るための手順が分からなかったのだと思います。
息子はASDの診断がありますが、発達障害の診断がなくても、3歳〜6歳頃の子どもには「友達の遊びに入れない」「誘われても返事ができない」「集団遊びが苦手」という悩みはよくあります。
この記事では、3歳〜6歳の子どもが遊びに入れない理由と、家庭でできる声かけ・練習方法を、わが家の体験談を交えながら紹介します。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。発達や集団生活で気になることがある場合は、園の先生、保健センター、自治体の発達相談、医療機関などに相談してください。
3歳〜6歳の子どもが遊びに入れない理由

子どもが友達の遊びに入れないとき、大人から見ると「恥ずかしいのかな」「人見知りかな」と見えることがあります。
もちろん、それも理由のひとつです。
でも実際には、いくつかの困りごとが重なっていることがあります。
1. 急に誘われて戸惑っている
友達から突然「遊ぼう」と言われると、頭の中で処理が追いつかない子がいます。
特に、見通しがないことや急な予定変更が苦手な子は、
「え?今?」
「何をするの?」
「どう返事するの?」
と混乱してしまうことがあります。

わが家の息子も、急に誘われると、その場で固まることがありました。
本人は無視しているつもりではありません。
でも、返事を考えている間に時間が過ぎ、結果的に何も言えないままになってしまうのです。
2. 返事の言葉が分からない
「一緒に遊ぼう」と言われたとき、大人なら自然に
「いいよ」
「何して遊ぶ?」
「あとでね」
と返せます。

でも幼児にとっては、この返答が意外と難しいことがあります。
特にASD傾向のある子や、会話のやりとりが苦手な子は、場面に合った言葉をその場で選ぶのが難しい場合があります。
わが家の息子も、「遊びたい気持ち」はあるのに、何と言えばいいか分からず、逃げるような行動になってしまうことがありました。
3. 遊びの内容がイメージできない
子どもにとって「遊ぼう」は、少しあいまいな言葉です。
鬼ごっこなのか。
砂場なのか。
戦いごっこなのか。
ただ一緒に走るだけなのか。
遊びの中身が分からないと、不安になる子もいます。
特に、ルールのある遊びやごっこ遊びが苦手な子は、「何をすればいいのか分からない」ことで遊びに入れないことがあります。

4. 友達との距離感が分からない
友達と遊ぶには、
- 近づきすぎない
- 順番を待つ
- 相手の表情を見る
- 嫌がっていたらやめる
- 自分の希望を言葉で伝える
など、たくさんの社会的な力が必要です。
幼児期の子どもにとって、これはとても難しいことです。
息子も、友達と関わりたい気持ちは強いのに、近づきすぎたり、急に触ってしまったりして、相手を驚かせてしまうことがありました。
「遊びたい」気持ちと、「うまく関わる力」がまだ一致していなかったのだと思います。
5. 失敗した経験が不安につながっている
過去に、
「入れて」と言ったけれど断られた
遊び方が分からず注意された
友達にびっくりされた
先生に止められた
という経験があると、次に遊びに入ること自体が怖くなることがあります。

子どもは言葉で説明できなくても、
「また失敗するかも」
「どうせうまくいかない」
と感じていることがあります。
この場合、無理に「行っておいで」と背中を押すだけでは、かえって不安が強くなることもあります。
遊びに入れない子に言わない方がいい声かけ
子どもが友達の輪に入れないと、親はつい焦ってしまいます。
私も、公園で息子が固まっている姿を見ると、
「ほら、行ってきなよ」
「一緒に遊べばいいじゃん」
「なんで逃げるの?」
と言いたくなることがありました。
でも、こうした声かけは、子どもによってはプレッシャーになることがあります。
避けたい声かけは、次のようなものです。
- 「なんで遊ばないの?」
- 「せっかく誘ってくれたのに」
- 「恥ずかしがらないで」
- 「早く行きなさい」
- 「みんな遊んでるよ」
子どもは、遊びたくないのではなく、どうすればいいか分からないだけかもしれません。
責めるよりも、まずは「入り方」を教えてあげる方が効果的でした。
遊びに入れない子への声かけ例
子どもが友達の遊びに入れないときは、短く、具体的な言葉でサポートします。
誘われたけれど固まっているとき
声かけ例:
「びっくりしたね」
「一緒に遊びたいときは、『いいよ』って言えば大丈夫だよ」
「ママと一緒に言ってみようか」
ポイントは、子どもの戸惑いを先に受け止めることです。
いきなり「返事しなさい」と言うより、
「びっくりしたね」と気持ちを代弁すると、落ち着きやすくなります。
自分から入りたいけれど言えないとき
声かけ例:
「入れてって言ってみる?」
「一緒に『いれて』って言おうか」
「近くまで行けたら今日はOKにしよう」
最初から一人で言わせなくても大丈夫です。
親が一緒に言う。
先生にそばにいてもらう。
まず近くに行くだけにする。
それだけでも、大切な一歩です。
何をして遊べばいいか分からないとき
声かけ例:
「何して遊ぶ?って聞いてみよう」
「鬼ごっこかな?砂場かな?」
「分からないときは、見てから入ってもいいよ」
遊びの中身が分からない子には、選択肢を見せると安心しやすくなります。
断られたとき
声かけ例:
「残念だったね」
「今は別の遊びをしていたのかもしれないね」
「またあとで聞いてみようか」
「ママと少し遊んでから、もう一回見てみよう」
断られた経験は、子どもにとって大きなショックになることがあります。
「気にしないの」ではなく、「残念だったね」と受け止めてから、次の行動を一緒に考えると安心しやすいです。
家庭でできる練習方法

友達の遊びに入る力は、自然に身につく子もいますが、練習が必要な子もいます。
わが家では、家庭で簡単なロールプレイを取り入れました。
1. 決まった返事を練習する
まずは、返事の型を決めました。
使いやすいフレーズは、次のようなものです。
- 「いいよ」
- 「なにして遊ぶ?」
- 「いれて」
- 「ぼくもやりたい」
- 「あとでね」
- 「今は見てるね」
最初からいろいろな返事を覚えなくても大丈夫です。
わが家では、まず「いいよ」と「なにして遊ぶ?」だけを練習しました。
2. ぬいぐるみや人形でロールプレイする
親が友達役になり、子どもが自分役になります。
例:
親:「一緒に遊ぼう」
子:「いいよ」
親:「何して遊ぶ?」
子:「鬼ごっこ」
親:「入れて」
子:「いいよ」
最初は声が出なくても、うなずくだけでもOKにしました。
ぬいぐるみを使うと、直接言うより恥ずかしさが減り、遊び感覚で練習しやすかったです。
3. 絵カードで流れを見える化する
言葉だけで説明しても分かりにくい子には、絵カードや簡単なイラストが役立ちます。
たとえば、
- 友達が「遊ぼう」と言う
- 「いいよ」と返事をする
- 「何して遊ぶ?」と聞く
- 一緒に遊ぶ
- 終わったら「またね」と言う
という流れを、カードや紙に描いて見せます。
視覚支援があると、子どもは「次に何をすればいいか」が分かりやすくなります。
わが家では、遊びに入る流れをカードのように見せることで、言葉だけで説明するよりも理解しやすくなりました。
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4. 実際の場面では段階を小さくする

練習しても、いきなり本番でうまくいくとは限りません。
わが家では、次のように段階を分けました。
| ステップ | 目標 |
|---|---|
| 1 | 友達の遊びを少し離れて見る |
| 2 | 近くまで行く |
| 3 | 親と一緒に「入れて」と言う |
| 4 | 自分で短く返事をする |
| 5 | 短時間だけ一緒に遊ぶ |
| 6 | 好きな遊びを自分から提案する |
「今日は近くまで行けた」
「今日は返事はできなかったけど逃げなかった」
それだけでも十分な成長です。
【体験談】ロールプレイで少しずつ遊びに入れるようになった息子
息子が4歳の頃、公園で友達に「一緒に遊ぼう」と誘われても、恥ずかしさや戸惑いから逃げてしまうことがよくありました。
返事をしようとしても、頭が真っ白になっているように見えました。
私は最初、
「どうして返事しないの?」
「遊びたいなら行けばいいのに」
と思っていました。
でも、息子にとっては「遊ぼう」と言われた後の流れが分からなかったのだと思います。
そこで家庭で取り入れたのが、ロールプレイです。
私が友達役になって、
「一緒に遊ぼう」
と言い、息子が
「いいよ」
「なにして遊ぶ?」
と返す練習をしました。
最初は恥ずかしがって声が出ませんでした。
でも、ぬいぐるみを使ったり、セリフをカードに書いて見せたりすると、少しずつ答えられるようになりました。
何度も練習するうちに、息子の中で、
「遊ぼう」と言われたら、とりあえず「いいよ」と言えば大丈夫
という安心感ができてきたように感じます。
そしてある日、公園で友達に誘われたとき、息子が小さな声で「いいよ」と返せたのです。
その瞬間、私は本当にうれしかったです。
大人から見たら、たった一言かもしれません。
でも、息子にとっては大きな一歩でした。
その後も完璧に遊べるようになったわけではありません。
近づきすぎてしまうこともあるし、遊びの途中で分からなくなって抜けてしまうこともあります。
それでも、「入れて」「なにして遊ぶ?」と自分から言える場面が少しずつ増えてきました。
小さな練習の積み重ねが、息子の「自分にもできるかも」という自信につながったのだと思います。
園の先生に伝えておくとよいこと
遊びに入るのが苦手な子は、家庭だけでなく園との連携も大切です。
先生に伝えておくとよいことは、次のような内容です。
- 急に誘われると固まりやすい
- 「いいよ」「入れて」など決まった言葉があると返しやすい
- 最初は先生が間に入ると安心しやすい
- 遊びのルールを先に教えてもらうと参加しやすい
- 断られたときのフォローが必要
伝え方の例:
「友達と遊びたい気持ちはあるのですが、急に誘われると返事が出にくいことがあります。家庭では『いいよ』『なにして遊ぶ?』という言葉を練習しています。園でも使えそうな場面があれば、声をかけてもらえると助かります。」
家庭と園で同じ言葉を使うと、子どもも混乱しにくくなります。
よくある質問
遊びに入れないのは発達障害のサインですか?
遊びに入れないことだけで発達障害と判断することはできません。恥ずかしさ、経験不足、性格、環境などでも起こります。ただし、言葉の遅れ、強いこだわり、感覚過敏、集団生活での困りごとなどが重なる場合は、園や自治体の発達相談に相談してみると安心です。
友達に誘われても逃げるのはなぜですか?
突然の声かけに驚いたり、返事の仕方が分からなかったり、遊びの内容がイメージできず不安になっている可能性があります。まずは「びっくりしたね」と受け止め、家庭で短い返事の練習をしておくと安心しやすいです。
親が代わりに「入れて」と言ってもいいですか?
最初は親が代わりに言っても大丈夫です。慣れてきたら、親子で一緒に言う、子どもが小さな声で言う、最後は自分で言う、というように少しずつサポートを減らしていくとよいです。
「入れて」と言って断られたときはどうすればいいですか?
まずは「残念だったね」と気持ちを受け止めます。そのうえで、「今はその遊びをしていたのかもしれないね」「あとでまた聞いてみようか」と次の選択肢を一緒に考えます。断られた経験を責めずに終われることが大切です。
家でできる練習はありますか?
ロールプレイ、絵カード、ぬいぐるみ遊びがおすすめです。「遊ぼう」「いいよ」「何して遊ぶ?」「入れて」など、よく使う言葉を短く練習すると実際の場面で使いやすくなります。
ASDの子は友達と遊びたくないのですか?
必ずしもそうではありません。遊びたい気持ちはあっても、誘い方、返事の仕方、距離感、ルール理解が難しくてうまく入れないことがあります。本人の気持ちを決めつけず、入り方を具体的に教えることが大切です。
何歳頃から練習できますか?
3歳頃から、短い言葉やごっこ遊びで少しずつ練習できます。ただし、年齢よりも子どもの発達段階に合わせることが大切です。言葉が難しい場合は、うなずく、カードを見せる、手をつなぐなどでも十分です。
園の先生には相談した方がいいですか?
相談した方がよいです。家庭で練習している声かけや、子どもが安心しやすい対応を伝えておくと、園でも同じ方法でサポートしてもらいやすくなります。
人見知りと発達特性による「遊びに入れない」は違いますか?
はっきり分けることは難しいですが、人見知りの場合は慣れると自然に遊べることも多いです。一方で、返事の仕方、遊びのルール、距離感、予定変更など複数の場面で困りごとが続く場合は、発達特性が関係していることもあります。
SSTは家庭でもできますか?
家庭でも簡単なSSTはできます。「遊ぼう」「いいよ」「入れて」などの短いやりとりを、ぬいぐるみや絵カードを使って練習するだけでも十分です。大切なのは、実際の場面で使いやすい言葉をくり返し練習することです。
まとめ|遊びに入れない子には「入り方」を教えてあげる
3歳〜6歳の子どもが友達の遊びに入れないとき、そこにはいろいろな理由があります。
恥ずかしい。
急な誘いに戸惑う。
返事の言葉が分からない。
遊びの流れが見えない。
過去の失敗が不安になっている。
大人から見ると「行けばいいのに」と思う場面でも、子どもにとってはとても勇気がいることがあります。
わが家の息子も、最初は友達に誘われても逃げてしまうことがありました。
でも、家庭でロールプレイをしたり、決まった言葉を練習したり、少しずつ成功体験を積むことで、「いいよ」「入れて」と言える場面が増えていきました。
大切なのは、無理に友達の輪へ押し出すことではありません。
遊びに入るための手順を、子どもに分かる形で教えてあげること。
そして、小さな一歩を見逃さずに、
「近くまで行けたね」
「返事できたね」
「見ていられたね」
と具体的に認めていくことです。
焦らなくて大丈夫です。
その子のペースで、少しずつ「一緒に遊べた」という経験を増やしていきましょう。