はじめに
発達障害や発達特性のある子どもを育てていると、毎日の生活の中で「どう支援したらいいんだろう」と悩む場面がたくさんあります。
わが家の長男には、ASD・ADHD・DCD・吃音があります。
幼児期から、次のような困りごとがありました。
- 服のタグや縫い目を嫌がる
- 服が少し濡れるだけで着替えたがる
- 片付けが苦手
- 遊びからお風呂、テレビから寝る準備などの切り替えが苦手
- 集団指示が入りにくい
- ボタンやハサミなど手先を使う作業が苦手
- ダンスや体操の動きをまねするのが難しい
- 友達との距離感や力加減が難しい
最初は、私も「どうしてできないんだろう」「何度言えば伝わるんだろう」と悩むことが多くありました。
でも、療育や児童発達支援、家庭での試行錯誤を通して分かったのは、発達特性のある子どもには「できない理由」があるということです。
そして、家庭での小さな工夫が、子どもの安心感や「できた!」につながることも少しずつ実感してきました。
この記事では、発達障害の子どもに家庭でできる支援を、
- 実行機能
- 感覚過敏
- DCD・不器用さ
- ワーキングメモリ・注意力
- 気持ちの切り替え
の困りごと別に、わが家の体験談を交えながらまとめます。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。気になる様子がある場合は、小児科、発達外来、療育センター、自治体の発達相談などに相談してください。
発達障害の子どもに家庭支援が大切な理由
発達障害の支援というと、療育や専門機関を思い浮かべる方も多いと思います。
もちろん、専門的な支援はとても大切です。
でも、子どもが一番長く過ごすのは家庭です。
家庭での関わり方や環境を少し変えるだけで、子どもが過ごしやすくなることがあります。
たとえば、
- 予定を見える化する
- 指示を短くする
- 服の刺激を減らす
- 片付けを小さな手順に分ける
- 遊びの中で体や手先を使う
- 苦手なことを無理にさせず、段階を小さくする
こうした工夫は、特別な療育道具がなくても始められます。
家庭支援で大切なのは、「完璧にできるようにすること」ではありません。
子どもが安心して過ごせる形を見つけること。
そして、「できない」ではなく「どうしたらできる形になるか」を一緒に考えることです。
実行機能が弱い子への家庭支援

実行機能とは、やることを考え、順番を決め、気持ちを切り替えながら最後まで進める力のことです。
発達特性のある子どもは、この実行機能が弱いことがあります。
わが家でも、長男は片付けや朝の準備でよくつまずいていました。
「着替えて、歯みがきして、カバンを持ってきて」
とまとめて言っても、途中で別のものが気になったり、何をすればよいか分からなくなったりすることがありました。
よくある困りごと
- 取りかかるまでに時間がかかる
- 途中で気が散る
- 片付けが終わらない
- やる順番が分からない
- 切り替えが苦手
- 「早くして」と言われると余計に動けない
家庭でできる支援
1つずつ伝える
一度にたくさん言うと、子どもは混乱しやすくなります。
「着替えて、歯みがきして、カバン持ってきて」ではなく、
「まずズボンをはこう」
「次に靴下をはこう」
「終わったら歯みがきしよう」
のように、1つずつ伝える方が動きやすくなります。
やることを見える化する
視覚支援カードやホワイトボードを使うと、今やることが分かりやすくなります。
わが家では、朝の準備を、
- 着替え
- 朝ごはん
- 歯みがき
- トイレ
- カバン
- 靴を履く
のように分けて見える化すると、声かけの回数が少し減りました。
「次は何だっけ?」と聞くと、本人がカードを見て動けることも増えました。
タイマーを使う
「あと5分で終わり」と言葉だけで伝えるより、タイマーで時間を見える形にすると分かりやすいです。
ただし、タイマーの音が苦手な子もいるため、音なしタイプや視覚的に残り時間が分かるものを選ぶと安心です。
小さな成功体験を作る
片付け全部を目標にすると大変です。
最初は、
- ブロックだけ箱に入れる
- ぬいぐるみだけ戻す
- 1分だけ片付ける
- 3個だけ片付ける
くらいで十分です。
「全部できた」よりも、「少しできた」を積み重ねる方が、自信につながりやすいと感じています。
感覚過敏がある子への家庭支援

感覚過敏とは、音・光・におい・味・触覚などの刺激を強く感じやすい状態です。
息子は、特に触覚過敏がありました。
服のタグ、縫い目、濡れた服、泥、スライム、のりなどが苦手で、少しの刺激でも強く嫌がることがありました。
最初は「わがままなのかな」と思ったこともあります。
でも、感覚過敏について知ってからは、本人にとっては本当に不快な感覚なのだと分かりました。
よくある困りごと
- タグや縫い目を嫌がる
- 靴下の縫い目を気にする
- 服が濡れると着替えたがる
- 泥やスライムを触れない
- 大きな音を怖がる
- においや食感で食べられないものがある
家庭でできる支援
服の刺激を減らす
触覚過敏の子には、服選びがとても大切です。
わが家で意識しているのは、
- タグを切る
- タグなしの服を選ぶ
- 縫い目が少ない服を選ぶ
- 肌ざわりのよい素材を選ぶ
- 締めつけが少ない服を選ぶ
- 外出時は着替えを持つ
ということです。
服の不快感が減ると、朝の準備や外出のストレスもかなり変わります。
苦手な感触は段階を小さくする
泥やスライムが苦手な子に、いきなり「触ってみよう」と言っても難しいことがあります。
わが家では、
- 見るだけ
- 道具で触る
- 袋越しに触る
- 指先だけ触る
- すぐ手を洗えるようにする
という形で、少しずつ取り入れました。
無理に慣らすより、「安心して試せる形」を作る方がうまくいきやすかったです。
音や刺激から逃げられる場所を作る
聴覚過敏や刺激に疲れやすい子には、家の中に落ち着ける場所があると安心です。
- クッション
- 毛布
- ぬいぐるみ
- 絵本
- イヤーマフ
- 静かな照明
などを置いて、クールダウンできる場所を作るのもおすすめです。
DCD・不器用さがある子への家庭支援

DCDは、発達性協調運動症のことで、体の動きや手先の操作がぎこちなくなりやすい特性です。
息子も、手先の不器用さや体の使い方の難しさがありました。
ボタン、ハサミ、塗り絵、ダンス、体操などで困ることが多かったです。
年少の頃は、ダンスの時間に棒立ちになってしまうこともありました。
でも、療育や児童発達支援、家庭での遊びを通して、少しずつ体を動かすことを楽しめる場面が増えてきました。
よくある困りごと
- ボタンやファスナーが苦手
- ハサミや鉛筆が苦手
- 塗り絵がはみ出しやすい
- 姿勢が崩れやすい
- 転びやすい
- ダンスや体操のまねが苦手
- ボールを投げる、受けるのが苦手
家庭でできる支援
着替えやすい服を選ぶ
不器用さがある子には、服の形も大切です。
- ゴムウエストのズボン
- ボタンが少ない服
- 大きめボタン
- かぶりやすい服
- 前後が分かりやすい服
を選ぶと、着替えのハードルが下がります。
「練習しなきゃ」と思いすぎると親子で疲れてしまうので、まずは自分でできる形を整えることも大事だと思います。
手先を使う遊びを取り入れる
手先の練習は、遊びの中で取り入れると続けやすいです。
おすすめは、
- ブロック
- パズル
- ひも通し
- ビーズ
- 粘土
- シール貼り
- 洗濯ばさみ遊び
- 折り紙
- 塗り絵
です。
息子も、好きな遊びの中で少しずつ手先を使う経験を増やすことで、細かい作業への抵抗感が減ってきました。
体幹を育てる遊びをする
姿勢が崩れやすい子には、体幹を使う遊びが役立つことがあります。
家庭では、
- クッション渡り
- ジャンプ遊び
- バランスボール
- トランポリン
- 平均台ごっこ
- 動物歩き
- 親子ストレッチ
などが取り入れやすいです。
大事なのは、運動を「練習」にしすぎないことです。
息子の場合も、「やりなさい」より「遊びながらやる」方がずっと続きました。
ワーキングメモリ・注意力への家庭支援
発達特性のある子どもは、複数の指示を覚えて行動することが苦手な場合があります。
わが家でも、息子は集団指示や複数指示が苦手でした。
「これをしてから、次にこれをしてね」と言っても、途中で抜けてしまうことがあります。
でも、これは「聞いていない」のではなく、覚えておく力や注意を向け続ける力に負荷がかかっている場合があります。
よくある困りごと
- 長い指示が入りにくい
- 途中で忘れる
- 何をするのか分からなくなる
- 集団指示を聞き逃す
- 気が散りやすい
- 直前のことは忘れるのに、昔のことはよく覚えている
家庭でできる支援
指示は短く具体的にする
「ちゃんとして」
「早く準備して」
「片付けて」
は、子どもにとって分かりにくいことがあります。
代わりに、
- ブロックを箱に入れてね
- 靴下をはこう
- 水筒をカバンに入れよう
- 青い本を棚に戻そう
のように、具体的に伝えると動きやすくなります。
目で見て分かる形にする
言葉だけで覚えるのが難しい子には、視覚支援が役立ちます。
- 写真カード
- イラストカード
- チェックリスト
- ホワイトボード
- 予定表
- 付箋
などを使うと、何をすればよいか確認しやすくなります。
振り返りを短くする
記憶を育てたいときは、寝る前や夕食時に、
「今日楽しかったことは何?」
「幼稚園で何した?」
「今日できたことは何?」
と軽く振り返るのもおすすめです。
ただし、答えられない日もあります。
そのときは無理に聞き出さず、「ママは今日、〇〇してたの見てうれしかったよ」と親から言葉にしてあげるだけでも十分です。
気持ちの切り替えが苦手な子への家庭支援
発達特性のある子どもは、遊びから次の行動へ移るのが苦手なことがあります。
息子も、テレビやゲーム、好きな遊びを終えるときに癇癪になることがありました。
切り替えが苦手な子にとって、「今すぐ終わり」はとてもつらいことがあります。
家庭でできる支援
予告する
急に終わりにするのではなく、
「あと5分でおしまい」
「この動画が終わったらお風呂」
「あと3回やったら終わり」
のように、終わりの見通しを伝えます。
選択肢を出す
「お風呂に入って」だけだと嫌がるときは、
「歩いて行く?抱っこで行く?」
「青いタオルにする?黄色いタオルにする?」
のように、小さな選択肢を出すと動きやすくなることがあります。
次の楽しみを用意する
切り替えの先に、少し楽しみがあると動きやすいこともあります。
「お風呂のあとに絵本を読もう」
「歯みがきしたらシール貼ろう」
「着替えたら好きな歌を流そう」
など、次の行動が少し前向きになる工夫をします。
家庭支援で大切にしていること
いろいろな支援方法がありますが、わが家で大切にしているのは、子どもを変えようとしすぎないことです。
もちろん、生活の中で身につけてほしいことはたくさんあります。
でも、子どもの困りごとには理由があります。
服が嫌なのも、片付けが苦手なのも、指示が入りにくいのも、本人が困らせようとしているわけではありません。
だからこそ、
「どうしてできないの?」ではなく、
「どうしたらできる形になるかな?」
と考えるようにしています。
親も毎日完璧にはできません。
怒りすぎて反省する日もあります。
うまくいかない日もあります。
それでも、少しずつ子どもの特性を知り、家庭でできる工夫を増やしていくことで、親子ともにラクになる場面が増えてきました。
よくある質問
発達障害の子どもに家庭でできる支援はありますか?
あります。予定の見える化、指示を短くする、感覚刺激を減らす、手先や体を使う遊びを取り入れるなど、家庭でできる支援はたくさんあります。
家庭療育とは何ですか?
家庭療育とは、専門機関だけでなく、家庭の生活や遊びの中で子どもの発達を支える関わりのことです。特別な教材がなくても、声かけや環境調整から始められます。
実行機能が弱い子にはどう対応すればいいですか?
やることを小さく分け、視覚支援やタイマーを使い、1つずつ伝えることが大切です。できたことを具体的にほめると自信につながります。
感覚過敏の子に家庭でできることは?
タグを切る、柔らかい服を選ぶ、静かな場所を作る、苦手な感触を無理に触らせないなどの工夫があります。
DCDの子にはどんな遊びがよいですか?
クッション渡り、ジャンプ遊び、ボール遊び、ブロック、ひも通し、粘土など、体や手先を使う遊びがおすすめです。
長い指示が入りにくい子にはどうすればいいですか?
指示を短くし、1つずつ伝えます。写真カードやチェックリストなど、見て分かる形にするのも効果的です。
片付けが苦手な子への支援は?
「全部片付ける」ではなく、「ブロックだけ箱に入れる」など小さく分けます。片付ける場所を写真やイラストで示すと分かりやすくなります。
切り替えが苦手な子にはどう声をかければいいですか?
急に終わりにせず、「あと5分」「あと3回」など予告します。次にすることを見える形で伝えると安心しやすいです。
家庭での支援だけで十分ですか?
困りごとが強い場合は、家庭だけで抱え込まず、発達相談、療育センター、小児科、発達外来、児童発達支援などに相談することが大切です。
親が一番大切にしたいことは何ですか?
子どもの困りごとの理由を理解し、できる形を一緒に探すことです。できないことを責めるより、できたことを積み重ねる関わりが大切です。
まとめ
発達障害や発達特性のある子どもには、日常生活の中でさまざまな困りごとが出ることがあります。
わが家でも、
- 感覚過敏
- 片付けの苦手さ
- 切り替えの難しさ
- 複数指示の入りにくさ
- DCDによる不器用さ
- 注意力やワーキングメモリの弱さ
に悩んできました。
でも、家庭での小さな工夫を積み重ねることで、子どもが少しずつ動きやすくなったり、安心して過ごせる場面が増えたりしました。
家庭でできる支援は、特別なことばかりではありません。
予定を見える化する。
指示を短くする。
タグを切る。
着替えを用意する。
遊びの中で手先や体を使う。
できたことを具体的に伝える。
そんな小さな積み重ねが、子どもの「できた!」につながります。
発達障害の支援は、子どもを無理に変えることではありません。
その子が暮らしやすくなる形を、親子で一緒に探していくことだと思います。
焦らなくて大丈夫です。
今日できる小さな工夫から、少しずつ始めていきましょう。