はじめに|「個性かな?」と思っていた違和感が、支援につながるまで
「うちの子、ちょっと他の子と違うかも」
「まだ小さいから様子見でいいのかな」
「これって性格?それとも発達の特性?」
子どもの発達が気になり始めたとき、こんなふうに迷うことはありませんか。
わが家の長男・ナガネギ君も、小さい頃からいくつか気になる様子がありました。
友達との距離感が近すぎる。
洋服のチクチクを極端に嫌がる。
外出先で癇癪が強い。
片付けや準備が苦手。
体の使い方が少し不器用。
思ったことをそのまま言ってしまう。
最初は「個性かな」「男の子だからかな」「成長すれば落ち着くかな」と思っていました。
でも、幼稚園に入り、集団生活の中で困りごとがはっきり見えるようになったことで、発達相談や療育につながっていきました。
この記事では、4歳の息子に実際に見られた発達障害のサインと、家庭で取り組んだサポートを、体験談としてまとめます。
前回の記事では、発達障害の兆候を一般的なサインとして整理しました。
今回は、より具体的に「わが家ではどんな場面で気づいたのか」「どんな対応をしてきたのか」に絞ってお伝えします。
※この記事は診断を目的としたものではありません。気になる様子がある場合は、保健センター、自治体の発達相談、小児科、発達外来、療育センターなどに相談してください。
この記事でわかること
- 4歳頃までに見られた発達障害のサイン
- ASD・ADHD・DCD・感覚過敏が疑われた具体的な場面
- 幼稚園生活で見えてきた困りごと
- 家庭でできる声かけ・視覚支援・遊びの工夫
- 早期相談につながったきっかけ
発達障害の早期発見で大切なのは「小さな違和感の積み重ね」
発達障害のサインは、ひとつだけを見ると「よくあること」に見える場合があります。
たとえば、
- 友達のおもちゃを取ってしまう
- 服のタグを嫌がる
- じっとしていられない
- 片付けが苦手
- 空気を読まない発言をする
これだけなら、幼児期にはよくあることかもしれません。
でも、それが何度も続いたり、家庭や園で困りごとになったり、本人がつらそうだったりする場合は、発達特性が関係していることもあります。
厚生労働省では、発達障害について、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などを挙げています。また、吃音や場面緘黙なども発達障害に含まれるとされています。
参考:厚生労働省 発達障害者支援施策
大切なのは、子どもを決めつけることではありません。
「何に困っているのか」
「どんな支援があると過ごしやすいのか」
を知ることです。
1. 友達との距離感が近い|対人関係のつまずき

ナガネギ君は、友達との関係づくりに苦戦する場面がよくありました。
特に困っていたのが、距離感の取り方と力加減です。
本人に悪気はありません。
むしろ、友達と関わりたい気持ちは強くありました。
でも、その関わり方がうまく伝わらず、トラブルになってしまうことがありました。
実際にあったエピソード
2歳頃から、公園で他の子のおもちゃを力ずくで取ろうとして、相手の子が泣いてしまうことがありました。
3歳で幼稚園に入園してからは、
- おもちゃを突然取ってしまう
- 友達に近づきすぎる
- 不意に体や顔に触れてしまう
- 遊びのつもりでも力が強くなってしまう
といった様子が目立つようになりました。
ある日、幼稚園で「顔を触る遊び」が流行したことがありました。
ナガネギ君も真似をしたのですが、力加減がうまくできず、強く触ってしまい、先生から注意を受けました。
そのとき私は、
「やめなさいと言うだけでは伝わらないんだ」
「本人は悪気がないからこそ、具体的に教える必要があるんだ」
と感じました。
家庭で取り組んだこと
- ぬいぐるみを使って「やさしく触る」練習をする
- 「顔は大事な場所だから触らないよ」と具体的に伝える
- 「貸して」「入れて」「やめて」をロールプレイで練習する
- 絵本やカードで相手の気持ちを考える
- トラブル後は怒るだけでなく、あとから一緒に振り返る
声かけは、できるだけ具体的にしました。
「ちゃんとして」ではなく、
「お友達の顔は触らないよ」
「貸してって言ってみよう」
「近すぎるから、一歩後ろに下がろう」
のように、何をすればいいか分かる言葉に変えました。
2. 洋服のチクチク・汚れがつらい|感覚過敏のサイン

ナガネギ君は、小さい頃から感覚に敏感なところがありました。
特に強かったのが、洋服の感触、汚れ、濡れへの反応です。
実際にあったエピソード
食事中、服に少し食べ物がついただけで、
「着替えたい!」
「汚れた!」
と強く嫌がることがありました。
外遊びでも、泥や水が少し服につくと、遊びを続けるどころではなくなってしまいました。
また、服のタグや縫い目、首元、脇、腰まわり、靴下の縫い目を気にして、
「痛い」
「イヤ」
「これ着たくない」
と訴えることも多かったです。
最初は「そんなに気になる?」と思ってしまったこともあります。
でも、感覚過敏について知ってからは、本人にとっては本当に不快で、がまんしにくい感覚なのだと分かりました。
家庭で取り組んだこと
- タグなしの服を選ぶ
- 縫い目の少ないインナーを選ぶ
- 肌ざわりのよい素材を選ぶ
- お気に入りの服は複数枚用意する
- 外出時は着替えを持ち歩く
- 泥遊びやスライムは無理にさせない
- 苦手な感触は袋越し・道具越しから試す
感覚過敏への対応は、「慣れさせる」よりも「安心できる選択肢を増やす」方がうまくいきました。
服選びは毎日のことなので、ここを整えるだけでも親子のストレスはかなり減りました。
3. 落ち着きがない・集中が続かない|ADHD傾向を感じた場面
ナガネギ君には、一つのことに集中し続けるのが難しい様子もありました。
興味が次々に移り、目の前の活動から離れてしまうことがあります。
実際にあったエピソード
おもちゃで遊び始めても、すぐに別のおもちゃが気になってしまう。
片付けを始めても、途中で別の遊びに切り替わってしまう。
幼稚園の運動会では、かけっこのスタート後に逆方向へ走ってしまったこともありました。
周りは驚き、本人も少し混乱しているようでした。
「ふざけている」というより、刺激に引っ張られやすく、今やることに意識を向け続けるのが難しいのだと感じました。
家庭で取り組んだこと
- タイマーで短く区切る
- 2〜3分で終わる課題から始める
- 「まずこれだけ」と目標を小さくする
- 終わったらシールや言葉で達成感を見える化する
- 指示は1つずつ伝える
- できた行動を具体的にほめる
たとえば、
「全部片付けて」ではなく、
「まず車だけ箱に入れよう」
「ちゃんと座って」ではなく、
「タイマーが鳴るまで座ってみよう」
のように変えました。
小さな成功体験を積み重ねることで、「できた」という感覚が少しずつ増えていきました。
ミニ目標の例
- タイマーが鳴るまで2分だけ片付ける
- 絵本を1冊最後まで聞く
- テーブルを1回拭く
- 靴下だけペアでそろえる
- 食事中に5分だけ座ってみる
- 「こんにちは」「ありがとう」を1回言えたらシールを貼る
ポイントは、最初から長く頑張らせないことです。
できる形に小さくして、成功しやすくする方が、親子ともにうまくいきました。
4. 手先や体の使い方が不器用|DCD傾向を感じた場面
ナガネギ君は、手先や体の使い方にぎこちなさがありました。
いわゆる「不器用さ」です。
発達性協調運動症(DCD)のような特徴として、日常動作や運動で困りごとが出ることがあります。
実際にあったエピソード
手先の動きでは、
- シールがなかなか剥がせない
- ボタンをはめる・外すのが難しい
- 塗り絵で線から大きくはみ出す
- ハサミを使うのを嫌がる
といった様子がありました。
体の動きでは、
- 少しの段差で転びやすい
- ドアの角や家具にぶつかりやすい
- 走り方がぎこちない
- ダンスや体操の動きを真似しにくい
といったことがありました。
最初は「不注意なのかな」と思っていました。
でも、体の位置や動きの感覚、空間認知、力加減の難しさが関係しているのかもしれないと知ってから、対応を変えるようになりました。
家庭で取り組んだこと
- 洗濯ばさみ遊び
- ピンセット遊び
- シール貼り
- ブロック遊び
- 風船バレー
- ペットボトルボウリング
- カラーテープ平均台
- クッションを使った室内サーキット
運動が苦手な子にとって、競争や評価がある活動はつらくなりやすいです。
だからわが家では、「練習」よりも「遊び」にしました。
「できるようにしよう」ではなく、
「ちょっと遊んでみよう」
このくらいの軽さの方が、本人も取り組みやすかったです。
5. 思ったことをそのまま言う|言葉の特性と空気の読みづらさ
ナガネギ君は、思ったことをそのまま口にしてしまうことがありました。
周囲がびっくりするような発言でも、本人に悪気はありません。
実際にあったエピソード
赤ちゃんを見て、
「髪が少ないね。なんで?」
と何度も真顔で聞いたことがありました。
初対面の人に向かって、
「この人なんか怖い」
と言ってしまったこともあります。
近所の人に挨拶されたときに、「怖い」と返してしまったこともありました。
親としてはヒヤッとします。
でも本人は、相手を傷つけようとしているわけではありません。
感じたこと、気になったこと、疑問に思ったことを、そのまま言葉にしているだけでした。
ASD傾向とADHD傾向で背景が違うこともある
同じ「空気を読まない発言」に見えても、背景は子どもによって違います。
| 観点 | ASD傾向 | ADHD傾向 |
|---|---|---|
| 発言の理由 | 自分なりの疑問や理屈をそのまま言う | 思いついたことを衝動的に言う |
| 相手への配慮 | 相手がどう感じるか想像しにくい | 分かっていても止めにくい |
| タイミング | 場面に関係なく自分のペースで話す | 話の途中でも割り込んでしまう |
| 対応の方向性 | 場面ごとの言い方を具体的に教える | 待つ・順番・言う前に止まる練習をする |
実際には、ASDとADHDの特性が重なっている子もいます。
ナガネギ君も、「相手の気持ちを想像しにくい」と「思いついたら言ってしまう」の両方があるように感じる場面がありました。
家庭で取り組んだこと
- 「そんなこと言っちゃダメ」と強く叱るだけにしない
- あとから落ち着いて振り返る
- 「今の言い方だと相手はどう思うかな」と一緒に考える
- ぬいぐるみで言い換え練習をする
- 「あとで聞こうね」とタイミングを教える
- 言い換え例を具体的に伝える
たとえば、
「怖い」と言ってしまったときは、
「びっくりしたんだね」
「でも相手に聞こえると悲しくなるかもしれないね」
「そういうときはママに小さい声で教えてね」
のように伝えました。
一度でできるようにはなりません。
でも、繰り返し練習することで、少しずつ言い方を考えられる場面が増えてきました。
6. 片付け・準備が苦手|実行機能の弱さ
ナガネギ君は、片付けや準備がとても苦手でした。
「ママ、あれどこ?」
「さっき使ってたのにない!」
と探し物をすることも多かったです。
実際にあったエピソード
- 遊んだおもちゃを元の場所に戻せない
- カバンの中がぐちゃぐちゃになる
- 使っていたものをすぐなくす
- 片付けの途中で別の遊びを始める
- 「片付けて」と言っても何から始めればいいか分からない
以前は「どうして何度言ってもできないの?」と思っていました。
でも、実行機能の弱さを知ってからは、本人のやる気だけの問題ではないのだと分かりました。
実行機能とは、行動を計画する、順番に進める、途中で気持ちを切り替える、最後までやりきるといった力のことです。
ここが弱いと、「片付け」という一見簡単な行動も、子どもにとっては難しい課題になります。
家庭で取り組んだこと
- おもちゃ箱に写真やラベルを貼る
- 「車だけ」「ブロックだけ」と片付ける物を分ける
- タイマーで短く区切る
- 片付けチャレンジ表を作る
- できたらシールを貼る
- 親が最初の一歩だけ一緒にやる
「全部片付けて」ではなく、
「まず青い箱に車を入れよう」
「次は絵本だけ戻そう」
と分けることで、動きやすくなりました。
視覚支援カードや写真カードは、こうした場面でとても役立ちます。
7. 幼稚園で一人だけ浮いてしまう|集団生活で見えた困りごと

家庭では気づきにくかったことも、幼稚園に入るとはっきり見えてきました。
ナガネギ君の場合、集団生活が始まってから、発達の特性がより分かりやすくなりました。
実際にあった様子
- 先生の一斉指示が入りにくい
- みんなと同じタイミングで動けない
- 活動の切り替えが苦手
- ダンスや体操の動きが真似しにくい
- 静かにする場面で声が出る
- 友達との距離感でトラブルになる
家では「ちょっと大変だけど、こんなものかな」と思っていたことが、集団の中では目立つようになりました。
この経験が、療育を考える大きなきっかけになりました。
園と共有してよかったこと
- 家で困っていること
- 苦手な音や感触
- 癇癪が起きやすい場面
- 落ち着きやすい声かけ
- できるようになったこと
- 療育で取り組んでいること
園と情報を共有することで、「家だけで頑張る」のではなく、先生と一緒に考えられるようになりました。
早期発見で大切だったこと
わが家が振り返って「大切だった」と感じるのは、次の3つです。
1. 親の違和感をなかったことにしない
「気のせいかも」
「みんなこんなものかも」
と思うこともあります。
でも、毎日見ている親だからこそ気づける違和感があります。
その違和感は、相談する理由になります。
2. 困りごとをメモしておく
相談するとき、口だけで説明しようとすると忘れてしまいます。
メモしておくとよいのは、
- いつ起きたか
- どこで起きたか
- 何がきっかけだったか
- どんな行動が出たか
- どう対応したら落ち着いたか
です。
発達相談、3歳児健診、療育相談、病院受診のときに役立ちました。
3. 診断より先に、支援を考える
診断名がつくかどうかも気になります。
でも、それ以上に大切なのは、
「今、何に困っているのか」
「どんな工夫があると楽になるのか」
を考えることでした。
診断がまだなくても、家庭でできる支援はたくさんあります。
よくある質問
発達障害のサインは何歳頃から見られますか?
1歳半〜3歳頃に、言葉の遅れ、癇癪、感覚過敏、こだわり、集団生活での困りごとなどに気づく保護者もいます。ただし個人差が大きいため、年齢だけで判断せず、生活上の困りごとが続くかどうかを見ることが大切です。
4歳で発達障害に気づくのは遅いですか?
遅くありません。幼稚園や保育園などの集団生活で初めて困りごとが見える子もいます。気づいた時点で相談すれば大丈夫です。
友達とのトラブルが多いと発達障害ですか?
必ずしも発達障害とは限りません。ただ、距離感が分からない、力加減が難しい、相手の反応に気づきにくいなどが続く場合は、発達相談を利用してみると安心です。
感覚過敏は成長すれば治りますか?
成長とともに付き合い方が上手になる子もいます。ただ、本人が強い苦痛を感じている場合は、服選びや音環境の調整など、早めに環境を整えることが役立ちます。
片付けが苦手なのはしつけの問題ですか?
しつけだけの問題とは限りません。実行機能の弱さや注意の切り替えの苦手さが関係している場合もあります。写真ラベル、視覚支援カード、タイマーなどで見える化すると動きやすくなることがあります。
思ったことをそのまま言ってしまう子にはどう対応すればいいですか?
強く叱るだけではなく、あとから落ち着いて「別の言い方」を一緒に考えることが大切です。ロールプレイや絵カードを使って、場面ごとの伝え方を練習すると分かりやすいです。
どこに相談すればいいですか?
市区町村の発達相談、保健センター、こども家庭センター、かかりつけ小児科、発達外来、療育センター、発達障害者支援センター、園の先生などに相談できます。
まとめ|発達障害の早期発見は、子どもを決めつけることではない
発達障害の早期発見は、子どもを決めつけるためのものではありません。
その子が何に困っていて、どんな支援があると過ごしやすいのかを知るためのものです。
ナガネギ君の場合、
- 友達との距離感が近い
- 感覚過敏がある
- 集中が続きにくい
- 手先や体の使い方が不器用
- 思ったことをそのまま言う
- 片付けや準備が苦手
- 集団生活で一人だけ違う行動が目立つ
といったサインがありました。
最初は「個性かな」と思っていました。
でも、小さな違和感を見逃さず、相談し、療育につながったことで、親子ともに少しずつ楽になっていきました。
発達が気になると、不安になるのは自然なことです。
でも、一人で抱え込まなくて大丈夫です。
気になることがあれば、メモを取って、園や自治体、専門機関に相談してみてください。
その一歩が、子どもに合った支援につながるかもしれません。