はじめに
「感覚統合ってよく聞くけれど、結局どういうこと?」
「服のタグを嫌がるのも、転びやすいのも、感覚統合と関係あるの?」
「家庭でできる遊びやサポートを知りたい」
そんなふうに感じたことはありませんか。
わが家の長男には、ASD・ADHD・DCD・吃音があり、幼児期から感覚過敏や体の使い方の不器用さがありました。
たとえば、
- 服のタグや縫い目を嫌がる
- 服が少し濡れるだけで着替えたがる
- 泥やスライムなどの感触が苦手
- ダンスや体操の動きをまねするのが苦手
- 姿勢が崩れやすい
- 友達との距離感や力加減が難しい
という困りごとがありました。
最初は、私も「わがままなのかな」「練習不足なのかな」と思ってしまうことがありました。
でも、療育や児童発達支援で「感覚統合」という考え方を知ってから、息子の困りごとの見方が変わりました。
「嫌がっている」のではなく、本人にとって本当に不快な感覚がある。
「やる気がない」のではなく、体の感覚をうまく整理できず、動きにくいことがある。
そう分かると、家庭での関わり方も少しずつ変わっていきました。
この記事では、感覚統合とは何か、発達障害や感覚過敏とどう関係するのか、家庭でできる感覚統合遊びや支援法を、わが家の体験談を交えながらまとめます。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。気になる様子がある場合は、自治体の発達相談、療育センター、小児科、発達外来、作業療法士などの専門家に相談してください。
感覚統合とは?
感覚統合とは、目・耳・皮膚・筋肉・関節・バランス感覚などから入ってくる情報を、脳が整理して、体の動きや行動につなげる働きのことです。
少し簡単に言うと、
「いろいろな感覚を脳の中で整理して、ちょうどよく動いたり、反応したりする力」
です。
私たちは普段、意識しなくてもたくさんの感覚を使っています。
たとえば、椅子に座って話を聞くときも、
- 目で先生を見る
- 耳で話を聞く
- 体で姿勢を保つ
- 足の裏で床を感じる
- 周りの音を気にしすぎない
- 手元の物を触りすぎない
というように、たくさんの感覚を同時に処理しています。
感覚統合がうまく働いていると、体を動かすこと、集中すること、人と関わることがスムーズになりやすいです。
一方で、感覚の整理がうまくいかないと、日常生活の中で困りごとが出ることがあります。
感覚統合に関係する主な感覚

感覚統合というと、音や触覚だけをイメージしがちですが、実はいくつかの感覚が関係しています。
| 感覚 | 内容 | 困りごとの例 |
|---|---|---|
| 触覚 | 肌で感じる感覚 | タグが痛い、泥やのりが苦手、服が濡れるのを嫌がる |
| 聴覚 | 音を聞く感覚 | 大きな音を怖がる、人混みで疲れる |
| 視覚 | 目で見る感覚 | まぶしい光が苦手、情報が多い場所で疲れる |
| 前庭覚 | 揺れ・傾き・バランスの感覚 | ブランコが苦手、転びやすい、姿勢が崩れやすい |
| 固有受容覚 | 筋肉や関節で体の位置を感じる感覚 | 力加減が難しい、ぶつかりやすい、強く押しすぎる |
| 味覚・嗅覚 | 味やにおいの感覚 | 偏食、においで気持ち悪くなる |
感覚統合の困りごとは、ひとつだけでなく、いくつか重なって出ることもあります。
息子の場合は、触覚過敏に加えて、体の使い方の不器用さや力加減の難しさもありました。
感覚統合がうまくいかないと出やすいサイン
感覚統合の課題があると、次のような様子が見られることがあります。
服や身の回りの感覚を強く嫌がる
- タグや縫い目を嫌がる
- 靴下の縫い目を気にする
- 服が濡れるとすぐ着替えたがる
- 髪を切る、爪を切る、歯みがきを嫌がる
- 泥・のり・スライムなどを触りたがらない
わが家でも、長男は服が少し濡れただけで「着替えたい」と強く訴えることがありました。
外出先でも着替えを求められることがあり、当時はかなり大変でした。
でも、触覚過敏を知ってからは、「本人にとっては本当に不快なんだ」と理解できるようになりました。
体の使い方がぎこちない
- 転びやすい
- 姿勢が崩れやすい
- ダンスや体操のまねが苦手
- ボールを投げる、受けるのが苦手
- 階段や遊具を怖がる
- ハサミや箸、ボタンが苦手
息子は、幼稚園のダンスで動きをまねするのが苦手でした。
年少の頃は、みんなが踊っている中で棒立ちになってしまうこともありました。
でも、療育や児童発達支援で少しずつ体の使い方を練習するうちに、年長ではダンスを楽しめる場面も増えていきました。
落ち着きにくい・刺激を求める
- 走り回る
- ジャンプしたがる
- 体を強く押しつける
- 高いところに登りたがる
- 物にぶつかりやすい
- 力加減が強くなりやすい
これは「落ち着きがない」だけではなく、体の感覚を入れることで安心しようとしている場合もあります。
その子に合った運動遊びを取り入れることで、気持ちが落ち着きやすくなることもあります。
感覚統合と発達障害の関係
感覚統合の困りごとは、ASDやADHD、DCDなどの発達特性のある子どもに見られることがあります。
ASDの子では、音・光・触覚などに過敏さが出ることがあります。
ADHDの子では、刺激に気が散りやすかったり、体を動かしたい欲求が強く出たりすることがあります。
DCDの子では、体の動かし方や手先の使い方に不器用さが見られることがあります。
ただし、感覚の困りごとがあるからといって、必ず発達障害というわけではありません。
大切なのは、診断名だけで判断するのではなく、
子どもが何に困っているのか
どんな環境なら過ごしやすいのか
どんな遊びなら安心して取り組めるのか
を見ていくことだと思います。
感覚統合療法とは?
感覚統合療法とは、作業療法士などの専門職が、子どもの感覚や体の使い方の特徴を見ながら、遊びを通して発達を支える支援です。
トランポリン、ブランコ、バランスボール、マット、ボール遊び、触覚遊びなどを使いながら、子どもが楽しく体験できる形で進められることが多いです。
目的は、無理に苦手を克服させることではありません。
子どもが安心して感覚を経験し、少しずつ体の使い方や刺激への反応を整えていくことが目的です。
感覚統合療法で使われることがある活動
| 活動 | 期待できること |
|---|---|
| トランポリン | 体幹、バランス感覚、エネルギー発散 |
| ブランコ・スイング | 前庭覚、姿勢調整、リズム感 |
| バランスボール | 体幹、姿勢保持、リラックス |
| マット運動 | 全身運動、体の使い方 |
| 粘土・砂遊び | 触覚刺激、手先の発達 |
| ボール遊び | 目と手の協応、力加減 |
息子も、児童発達支援で体を使った遊びや手先の活動を経験する中で、少しずつ姿勢や動きに変化が見られるようになりました。
家庭でできる感覚統合遊び
感覚統合のサポートは、家庭でも取り入れることができます。
ただし、「毎日トレーニングしなきゃ」と考えると親子ともに疲れてしまいます。
家庭では、遊びの中で楽しく取り入れるくらいが続けやすいです。
ボール遊び
柔らかいボールを転がす、投げる、キャッチする遊びは、目と手の連携や力加減の練習になります。
おすすめの遊び方は、
- 親子で転がしキャッチ
- カゴに入れる的当て
- 近い距離からキャッチボール
- ボールを足で止める
- 壁に向かって軽く投げる
などです。
最初から上手にキャッチできなくても大丈夫です。
「取れた」「転がせた」「入った」という小さな成功体験を大切にします。
トランポリン・ジャンプ遊び
ジャンプ遊びは、体幹やバランス感覚、固有受容覚への刺激につながります。
室内トランポリンを使う場合は、必ず安全に配慮し、大人が見守るようにします。
家庭で取り入れるなら、
- クッションを並べてジャンプ
- マットの上でジャンプ
- 「10回跳んだらおしまい」と回数を決める
- 動物まねジャンプをする
などもおすすめです。
わが家でも、体を動かす時間を作ると、その後に少し落ち着いて過ごしやすくなることがありました。
バランス遊び

バランス遊びは、前庭覚や体幹を育てる遊びです。
家庭では、
- バランスストーン
- 平均台風のマット
- クッション渡り
- 床にテープを貼って線の上を歩く
- 片足立ち
- ケンケンパ
などで取り入れられます。
苦手な子には、いきなり難しい遊びをさせるより、手をつないで安心してできる形から始めるのがおすすめです。
粘土・砂・スライムなどの触覚遊び

触覚遊びは、手の感覚や指先の発達につながります。
ただし、触覚過敏がある子に無理に触らせるのは逆効果になることがあります。
わが家の息子も、泥やスライムは苦手でした。
そのため、最初は、
- スライムを袋に入れて触る
- 粘土用の道具を使って直接触らない
- 乾いた砂から始める
- 好きなごっこ遊びに混ぜる
- 短時間で終わる
という形にしていました。
「触れたら成功」ではなく、「嫌がらずに近くで見られた」だけでも一歩です。
ぎゅーっとする遊び・重い物を運ぶ遊び

固有受容覚への刺激は、気持ちを落ち着ける助けになることがあります。
家庭では、
- 布団でくるむ
- バスタオルで包む
- 親子でぎゅーっとハグする
- クッションを運ぶ
- 洗濯物を運ぶ
- 買い物袋を少し持ってもらう
などがあります。
ただし、圧が苦手な子もいるため、本人が嫌がる場合は無理に行いません。
「強めが好き」「軽くが好き」など、子どもの反応を見ながら調整します。
手先を使う遊び
手先の不器用さがある子には、遊びの中で指先を使う経験を増やすと取り組みやすいです。
おすすめは、
- ブロック
- パズル
- ひも通し
- ビーズ
- シール貼り
- 洗濯ばさみ遊び
- 折り紙
- 塗り絵
- 粘土
などです。
息子も、最初は細かい作業が苦手でしたが、好きな遊びの中で少しずつ取り入れると、嫌がらずに続けやすくなりました。
感覚統合遊びを家庭で取り入れるときの注意点

家庭でできる遊びはたくさんありますが、いちばん大切なのは、子どもに無理をさせないことです。
嫌がる刺激を無理に慣らそうとしない
感覚過敏がある子にとって、苦手な刺激は本当につらいことがあります。
「慣れれば大丈夫」と無理に触らせたり、音の大きい場所に連れて行ったりすると、かえって不安が強くなることもあります。
まずは、安心できる距離や方法から始めます。
安全に配慮する
トランポリン、バランスボール、室内遊具などは、必ず安全面を確認します。
- 対象年齢を確認する
- 滑りにくい場所で使う
- 周りに危ない物を置かない
- 大人が見守る
- 疲れているときは無理にしない
楽しい遊びでも、ケガにつながらないように気をつけます。
「できた・できない」より気持ちを見る
感覚統合遊びは、上手にできることが目的ではありません。
子どもが安心して、楽しく、自分の体を使う経験を積むことが大切です。
「できなかったね」ではなく、
- やってみたね
- ここまで来られたね
- さっきより少し長くできたね
- 嫌だったって言えたね
と、過程を見て声をかけるようにしています。
感覚統合を促す遊具の選び方
感覚統合を家庭でサポートしたいとき、遊具やおもちゃを取り入れるのもひとつの方法です。
ただし、何でも買えばよいわけではありません。
子どもの特性に合ったものを選ぶことが大切です。
体を動かしたい子におすすめ
- トランポリン
- バランスボール
- バランスストーン
- 室内ジャングルジム
- すべり台
- クッション遊び
体を動かすことで落ち着きやすい子には、室内で安全に運動できる遊具が役立つことがあります。
手先を使うのが苦手な子におすすめ
- ブロック
- パズル
- ひも通し
- ビーズ
- 粘土
- シール遊び
手先の練習は、机に向かって練習するより、遊びの中で取り入れる方が続けやすいです。
感触が苦手な子におすすめ
- 感触ボール
- スクイーズ
- 触覚パネル
- 袋入りスライム
- 乾いた砂遊び
- 粘土道具
苦手な感触は、直接触るよりも「道具越し」「袋越し」から始めると安心しやすいです。
詳しい遊具選びは、こちらの記事でもまとめています。
関連記事:
発達障害の子どもにおすすめの室内遊具10選|感覚統合・体幹・集中力を育てる家庭遊び
専門機関に相談した方がよい目安
家庭で工夫しても困りごとが強い場合は、専門機関に相談するのがおすすめです。
たとえば、
- 服や食事のこだわりで生活に支障がある
- 音や光への反応が強く、外出が難しい
- 園や学校で活動に参加しにくい
- 転びやすい、ケガが多い
- 手先の不器用さが生活に影響している
- 癇癪や不安が強く、親子ともにつらい
- 感覚の困りごとで登園・登校しぶりがある
このような場合は、ひとりで抱え込まず相談して大丈夫です。
相談先としては、
- 市区町村の発達相談
- 保健センター
- 療育センター
- 小児科
- 発達外来
- 児童発達支援事業所
- 作業療法士のいる医療機関
- 園や学校の先生
などがあります。
わが家も、市の療育や児童発達支援につながったことで、家庭だけでは気づけなかった視点を教えてもらえました。
わが家で効果を感じた工夫
息子に対して、わが家で特に効果を感じたのは次のような工夫です。
服はタグ・縫い目・濡れに配慮する
触覚過敏があるため、服選びはかなり大切でした。
- タグを切る
- 肌ざわりのよい服を選ぶ
- 替えの服を持ち歩く
- 濡れたときは早めに着替えられるようにする
- 靴下の縫い目も確認する
これだけでも、朝の着替えや外出時のストレスが減りました。
苦手な感触は段階を小さくする
泥やスライムが苦手な息子には、いきなり触らせるのではなく、
- 見るだけ
- 道具で触る
- 袋越しに触る
- 指先だけ触る
- 短時間で終わる
というように、段階を小さくしました。
「無理に克服」ではなく、「安心できる範囲を広げる」イメージです。
運動遊びは楽しく取り入れる
息子は体の使い方に不器用さがありましたが、運動を「練習」としてやると嫌がることもありました。
そこで、
- 戦いごっこ
- クッション山を越える
- ジャンプ遊び
- ボール遊び
- 公園遊び
のように、遊びの中で取り入れるようにしました。
楽しいと、子どもは自然に何度もやります。
その積み重ねが、少しずつ体の使い方の成長につながったと感じています。
よくある質問
感覚統合とは何ですか?
感覚統合とは、視覚・聴覚・触覚・前庭覚・固有受容覚などの感覚を脳が整理し、行動や体の動きにつなげる働きのことです。
感覚統合がうまくいかないとどうなりますか?
服の感触を強く嫌がる、音に敏感、転びやすい、姿勢が崩れやすい、力加減が難しい、落ち着きにくいなどの困りごとが出ることがあります。
感覚統合の問題は発達障害と関係がありますか?
ASD、ADHD、DCDなどの発達特性がある子に見られることがあります。ただし、感覚の困りごとがあるからといって必ず発達障害というわけではありません。
家庭でできる感覚統合遊びはありますか?
ボール遊び、ジャンプ遊び、バランス遊び、粘土遊び、砂遊び、ブロック、パズル、ぎゅーっとする遊びなどがあります。
トランポリンは感覚統合にいいですか?
ジャンプ遊びは、体幹やバランス感覚、固有受容覚への刺激につながります。ただし、安全面に注意し、大人が見守ることが大切です。
感触遊びを嫌がる場合はどうすればいいですか?
無理に触らせず、まずは見るだけ、道具で触る、袋越しに触るなど、安心できる段階から始めるのがおすすめです。
感覚統合療法はどこで受けられますか?
療育センター、医療機関、児童発達支援事業所などで、作業療法士などの専門職が関わる場合があります。地域によって異なるため、自治体や医療機関に確認してください。
感覚統合の困りごとは成長すればなくなりますか?
成長とともに対応しやすくなる子もいますが、困りごとが強い場合は環境調整や専門的な支援が役立つことがあります。
親がまずできることは何ですか?
子どもが何を嫌がるのか、どんな場面で落ち着くのかを観察することです。困りごとをメモしておくと、相談時にも役立ちます。
感覚統合の遊びは毎日やらないといけませんか?
毎日きっちりやる必要はありません。親子で無理なく、楽しくできる範囲で取り入れることが大切です。
まとめ
感覚統合とは、さまざまな感覚を脳が整理し、体の動きや行動につなげる力のことです。
感覚統合がうまく働きにくいと、
- 服のタグや縫い目が苦手
- 音や光に敏感
- 泥やスライムを嫌がる
- 転びやすい
- 姿勢が崩れやすい
- 力加減が難しい
- 落ち着きにくい
といった困りごとにつながることがあります。
わが家も、最初は息子の反応を「わがままなのかな」と思ってしまうことがありました。
でも、感覚統合や感覚過敏について知ることで、
「この子にはこの刺激がつらいんだ」
「この遊びなら安心して取り組めるんだ」
「苦手にも段階を作ればいいんだ」
と考えられるようになりました。
感覚統合の支援は、特別な訓練だけではありません。
家庭でのボール遊び、ジャンプ遊び、粘土遊び、ぎゅーっとする時間、服や環境の調整も、子どもにとって大切なサポートになります。
大切なのは、無理に克服させることではなく、子どもが安心して過ごせる方法を一緒に探していくこと。
「できない」を責めるより、
「どうしたらできる形になるかな?」と考える。
その積み重ねが、子どもの安心感と自信につながっていくのだと思います。