はじめに|「何て言えばいいの?」が分からなかった息子
友達に「一緒に遊ぼう」と誘われても、固まってしまう。
本当は遊びたいのに、「入れて」が言えない。
断られたらどうしようと不安になり、遊びの輪に近づけない。
そんな姿を見ると、親としては心配になりますよね。
わが家の息子も、年中の頃、友達に誘われても返事ができず、逃げるようにその場を離れてしまうことがありました。

最初は、
「どうして返事しないの?」
「遊びたいなら行けばいいのに」
「せっかく誘ってくれているのに」
と思ってしまったこともあります。
でも、息子を見ているうちに気づきました。
息子は友達が嫌だったわけではなく、その場で何と言えばいいのか分からなかったのです。
「遊ぼう」と言われたら何て返すのか。
「入れて」と言いたいときはどう言うのか。
断られたときはどうすればいいのか。
遊びをやめたいときは何て言えばいいのか。
大人にとっては自然なやりとりでも、子どもにとっては練習が必要なことがあります。
この記事では、3歳〜6歳の子どもが遊びに入れないときに使える声かけ例を、場面別に40個まとめました。
ASDの息子との体験談を交えながら、家庭でできるSST・会話練習の方法も紹介します。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。発達や集団生活で気になることがある場合は、園の先生、保健センター、自治体の発達相談、医療機関などに相談してください。
SSTとは?家庭でできる「人との関わり方」の練習
SSTとは、ソーシャルスキルトレーニングのことです。
簡単にいうと、人との関わり方を練習する方法です。
たとえば、
- あいさつをする
- 順番を待つ
- 友達を誘う
- 「入れて」と言う
- 断られたときに切り替える
- 気持ちを言葉で伝える
- トラブルのあとに謝る
こうしたやりとりを、実際の場面でいきなりやるのではなく、家庭や療育の中で少しずつ練習していきます。
SSTというと難しく聞こえますが、家庭でできることもたくさんあります。
ぬいぐるみを使ってごっこ遊びをする。
親が友達役になって会話を練習する。
絵カードで流れを見える化する。
よく使う言葉を短く決めておく。
これだけでも、子どもにとっては大きな助けになります。
声かけ例は「暗記」ではなく「安心材料」

ここで紹介する声かけ例は、子どもに丸暗記させるためのものではありません。
「こう言わなければいけない」という正解でもありません。
大切なのは、子どもが困ったときに、
「こう言えばいいんだ」
「この言葉を使えば伝わるんだ」
「失敗しても次の言い方があるんだ」
と安心できることです。
年齢や発達段階に合わせて、短くしても大丈夫です。
たとえば、
「ぼくも入れて」
が難しければ、
「入れて」
だけでも十分です。
言葉が出にくい子は、うなずく、手をあげる、カードを見せるなどから始めても大丈夫です。
「遊びに入れない理由」から知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
3歳〜6歳の子どもが遊びに入れない理由|友達と遊べないときの声かけと家庭でできる練習【体験談】
絵カードや写真カードで練習したい方は、こちらも使いやすいです。
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遊びに誘われたときの声かけ例
友達から「一緒に遊ぼう」と言われたとき、返事がすぐに出ない子もいます。
まずは、短く返せる言葉を練習します。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| 遊びたいとき | 「いいよ」 |
| 少し考えたいとき | 「ちょっと考えるね」 |
| 何をするか分からないとき | 「何して遊ぶ?」 |
| 今は見ていたいとき | 「今は見てるね」 |
| あとで遊びたいとき | 「あとで遊ぼう」 |
家庭での練習例:
親:「一緒に遊ぼう」
子:「いいよ」
親:「何して遊ぶ?」
子:「鬼ごっこ」
最初はこれだけで十分です。
わが家でも、まずは「いいよ」と「何して遊ぶ?」だけを練習しました。
言葉の選択肢が少ない方が、実際の場面で出やすかったです。
自分から「入れて」と言いたいときの声かけ例
友達の遊びに入りたいけれど、自分から声をかけられない子もいます。
この場合は、「入れて」の言い方をいくつか練習しておくと安心です。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| 遊びに入りたいとき | 「入れて」 |
| 少し丁寧に言いたいとき | 「ぼくも入っていい?」 |
| 何をしているか聞きたいとき | 「何してるの?」 |
| 一緒にやりたいとき | 「ぼくもやりたい」 |
| 友達の名前を呼んで入りたいとき | 「○○くん、入れて」 |
ポイントは、長い言葉にしすぎないことです。
「仲間に入れてもらってもいいですか?」のような丁寧な言葉より、幼児期は「入れて」「ぼくもやりたい」の方が使いやすいです。
断られたときの声かけ例
「入れて」と言えたとしても、必ず入れてもらえるとは限りません。
ここで大切なのは、断られたときの切り替え方も練習しておくことです。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| 今は入れないと言われたとき | 「そっか、またあとでね」 |
| 別の遊びをしたいとき | 「じゃあ違う遊びをするね」 |
| もう一度聞きたいとき | 「あとで入ってもいい?」 |
| 悲しいとき | 「入れなくて残念だった」 |
| 親に助けてほしいとき | 「ママ、一緒に来て」 |
断られたときに「怒らない練習」をするのは、とても大切です。
ただし、子どもが傷ついているときに、
「そんなことで泣かないの」
と言う必要はありません。
まずは、
「残念だったね」
「入りたかったんだよね」
と気持ちを受け止める方が、次の行動に進みやすくなります。
遊びの途中で困ったときの声かけ例
遊びに入れたあとも、困る場面はたくさんあります。
ルールが分からない。
順番が待てない。
思った遊びと違う。
途中で疲れてしまう。
そんなときの言葉も練習しておくと安心です。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| ルールが分からないとき | 「どうやるの?」 |
| 順番を待ちたいとき | 「次、ぼくの番にしてね」 |
| 手伝ってほしいとき | 「手伝って」 |
| もう一度やりたいとき | 「もう一回やりたい」 |
| やめたいとき | 「ちょっと休むね」 |
| 怖いとき | 「その遊び、ちょっと怖い」 |
| 違う遊びをしたいとき | 「次は○○したい」 |
| 貸してほしいとき | 「終わったら貸してね」 |
「イヤ!」
「やめて!」
だけになってしまう子には、言い換えの言葉を用意しておくと使いやすいです。
たとえば、
「イヤ!」ではなく「ちょっと怖い」
「もう無理!」ではなく「休むね」
「貸して!」ではなく「終わったら貸してね」
という形です。
トラブルになったときの声かけ例
幼児期の遊びでは、トラブルも起こります。
おもちゃの取り合い。
順番のすれ違い。
ぶつかってしまう。
相手を押してしまう。
トラブルのあとに使える言葉も、家庭で練習しておくと安心です。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| ぶつかったとき | 「ごめんね、大丈夫?」 |
| 強く言いすぎたとき | 「さっきはごめんね」 |
| 相手が泣いたとき | 「痛かった?」 |
| 仲直りしたいとき | 「また一緒に遊ぼう」 |
| 相手に謝られたとき | 「いいよ」 |
| まだ嫌な気持ちがあるとき | 「まだちょっと嫌だった」 |
| 先生に助けてほしいとき | 「先生、手伝って」 |
「ごめんね」がすぐに言えない子もいます。
その場合は、無理やり謝らせるより、親が横で
「ぶつかっちゃったね。大丈夫?って聞いてみようか」
と支える方がよいこともあります。
気持ちを伝える声かけ例
遊びに入れない子の中には、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な子もいます。
気持ちが言葉にならないと、逃げる、怒る、泣く、黙るという行動で表れることがあります。
| 気持ち | 声かけ例 |
|---|---|
| うれしい | 「一緒に遊べてうれしい」 |
| 楽しい | 「これ楽しいね」 |
| 悲しい | 「入れなくて悲しかった」 |
| 怖い | 「ちょっと怖い」 |
| 困った | 「どうしたらいいか分からない」 |
| 疲れた | 「少し休みたい」 |
| 嫌だった | 「それは嫌だった」 |
| もう一回したい | 「もう一回やりたい」 |
家庭では、親が先に気持ちを代弁してあげると練習になります。
「入りたかったんだね」
「急に言われてびっくりしたね」
「断られて悲しかったね」
こうした言葉を聞くことで、子どもも少しずつ自分の気持ちを表現しやすくなります。
家庭でできるSST・会話練習のやり方

1. 親が友達役になる
一番簡単なのは、親が友達役になって練習する方法です。
親:「一緒に遊ぼう」
子:「いいよ」
親:「入れて」
子:「いいよ」
親:「何して遊ぶ?」
子:「鬼ごっこ」
短いやりとりを、遊びの中でくり返します。
2. ぬいぐるみや人形を使う
直接言うのが恥ずかしい子には、ぬいぐるみや人形を使うと練習しやすいです。
ぬいぐるみが、
「一緒に遊ぼう」
と言い、子どもが
「いいよ」
と返すだけでも立派な練習です。
3. 絵カードで流れを見せる
言葉だけだと分かりにくい子には、絵カードが役立ちます。
たとえば、
- 友達が「遊ぼう」と言う
- 「いいよ」と返事をする
- 「何して遊ぶ?」と聞く
- 一緒に遊ぶ
- 「またね」と言う
という流れを見える形にします。
視覚支援カードや写真カードを使うと、子どもが「次に何をすればいいか」を理解しやすくなります。
4. 1回5分で終わる
練習は長くしなくて大丈夫です。
むしろ、長くやりすぎると嫌になってしまうことがあります。
わが家では、1回の練習は短くしました。
「いいよ」を1回言えたら終わり。
「入れて」を1回練習したら終わり。
それくらいでも、くり返すことで少しずつ身についていきました。
【体験談】「いいよ」が言えた日のこと
息子が4歳の頃、友達に誘われても返事ができず、逃げるように離れてしまうことがありました。
私は最初、どうして逃げるのか分かりませんでした。
でも、家でロールプレイをしてみると、息子は「遊ぼう」と言われたあとに何を言えばいいのか分かっていない様子でした。
そこで、まずは「いいよ」だけを練習しました。
私が友達役になって、
「一緒に遊ぼう」
と言い、息子が
「いいよ」
と返す。
それだけです。
最初は小さな声でした。
恥ずかしそうに笑って、言えない日もありました。
でも、ぬいぐるみを使ったり、何度も同じやりとりをしたりするうちに、少しずつ言えるようになっていきました。
そしてある日、公園で友達に誘われたとき、息子が小さな声で「いいよ」と言えました。
その瞬間、私は本当にうれしかったです。
大人から見れば、たった一言です。
でも息子にとっては、「友達と遊ぶ入口」に立てた大きな一歩でした。
それからも、うまくいく日ばかりではありません。
固まる日もあります。
近づきすぎてしまう日もあります。
途中で抜けてしまう日もあります。
それでも、「入れて」「何して遊ぶ?」と言える場面が少しずつ増えてきました。
声かけの練習は、すぐに劇的な変化が出るものではありません。
でも、子どもの中に「こう言えばいいんだ」という安心の引き出しを増やしてくれるものだと感じています。
練習するときのポイント
家庭でSSTや会話練習をするときは、次のことを意識すると続けやすいです。
- 長いセリフにしない
- まずは1つの言葉だけでOKにする
- できたらすぐに具体的にほめる
- 失敗しても言い直しを強制しない
- 子どもの好きな遊びに混ぜる
- 園で使う言葉と家庭で使う言葉をそろえる
- うまくいかない日は休む
「ちゃんと言わせる」よりも、「言えたら安心できる」を目標にすると、親子ともに楽になります。
園の先生に共有するとよいこと

家庭で練習している言葉は、園の先生にも共有しておくと効果的です。
たとえば、
「友達に誘われたときは、『いいよ』『何して遊ぶ?』を練習しています」
「入りたいときは、『入れて』と言えるように練習中です」
「断られたときは、『またあとでね』と切り替える練習をしています」
と伝えておくと、園でも同じ言葉でサポートしてもらいやすくなります。
家庭と園で言葉がそろうと、子どもも混乱しにくくなります。
よくある質問
家庭だけでもSSTはできますか?
家庭でも簡単なSSTはできます。「遊ぼう」「いいよ」「入れて」「またね」など、実際の生活で使う短い言葉を、親子でごっこ遊びのように練習するだけでも十分です。
何歳から練習できますか?
3歳頃から、あいさつや返事など短いやりとりで練習できます。ただし、年齢よりも子どもの発達段階に合わせることが大切です。
会話が少ない子でもできますか?
できます。言葉で言うのが難しい場合は、うなずく、指さす、カードを見せる、親が一緒に言うなどから始めるとよいです。
練習を嫌がるときはどうすればいいですか?
無理に続けなくて大丈夫です。ぬいぐるみ遊びやごっこ遊びの中に短く入れると、練習感が減って取り組みやすくなります。
1回の練習時間はどれくらいがいいですか?
1回5分以内で十分です。「いいよ」を1回言えたら終わり、くらいでも大丈夫です。短く、楽しく、くり返すことが大切です。
「ごめんね」が言えないときはどうすればいいですか?
無理に謝らせるより、まずは状況を整理します。「ぶつかっちゃったね」「大丈夫?って聞いてみようか」と親が言葉を添えると、少しずつ謝る場面を理解しやすくなります。
断られると怒ってしまいます。どう練習すればいいですか?
断られたときの言葉を先に練習しておくと安心です。「そっか、またあとでね」「じゃあ違う遊びをするね」など、切り替えの言葉を短く決めておくと使いやすいです。
兄弟と一緒に練習してもいいですか?
兄弟と一緒に練習するのもよい方法です。ただし、からかったり勝ち負けになったりすると嫌になってしまうことがあるため、親が間に入って楽しい雰囲気で行うのがおすすめです。
ASDの子には声かけ例を覚えさせた方がいいですか?
丸暗記させる必要はありません。ただ、よく使う言葉をいくつか知っておくと、実際の場面で安心しやすくなります。「いいよ」「入れて」「またね」など短い言葉から始めるとよいです。
効果が出るまでどれくらいかかりますか?
個人差があります。数回で使える子もいれば、何か月もかけて少しずつ身につく子もいます。すぐに使えなくても、家庭で練習した言葉が子どもの中に残っていることがあります。
まとめ|声かけ例は、子どもの安心材料になる
3歳〜6歳の子どもが遊びに入れないとき、必要なのは「勇気を出しなさい」と背中を押すことだけではありません。
「こう言えばいいんだ」と分かる言葉を、あらかじめ一緒に練習しておくことが大切です。
誘われたときは「いいよ」。
入りたいときは「入れて」。
分からないときは「どうやるの?」。
断られたときは「またあとでね」。
疲れたときは「休むね」。
こうした短い言葉が、子どもにとって友達との関わりに入るための小さな助けになります。
わが家の息子も、最初から上手に言えたわけではありません。
でも、家庭でロールプレイを重ねるうちに、「いいよ」「何して遊ぶ?」と言える場面が少しずつ増えていきました。
大切なのは、完璧な会話を目指すことではありません。
子どもが安心して友達に近づけること。
困ったときに使える言葉をひとつ持てること。
小さな成功体験を積み重ねること。
その積み重ねが、子どもの「友達と遊べた」という自信につながっていきます。
焦らず、比べず、その子に合った言葉から始めてみてください。