はじめに:怒りは「悪」ではなく、扱い方で変わる感情です

毎日こんなことありませんか?
- つい強い言い方になってしまう
- 子どもが言うことを聞かずイラッとする
- 怒ったあとに後悔してしまう
- 「もっと穏やかな育児がしたい」と思う
「怒らないようにしなきゃ」「優しく接しなきゃ」
子育てをしていると、頭ではわかっていてもイライラしてしまう瞬間は誰にでもあります。
実は――
怒りは止められないけれど、ぶつけるかどうかはコントロールできます。
本記事では、心理学(認知行動療法)の考え方をもとに、
「怒りとうまく付き合う方法」をわかりやすく紹介します。
目次
- 怒りは止められない。でも「選ぶ」ことはできる
- 今日からできるアンガーコントロール実践法
- 認知行動療法①|怒りを数値化しよう
- 認知行動療法②|怒りのパターンを知る
- 認知行動療法③|怒らないための具体的トレーニング
- コントロールには限界がある|「自分の怒りだけ」扱おう
- 怒りの逃げ道を作る|タイムアウト&伝え方
- よくある質問
- まとめ|怒りは上手に扱えば「味方になる」
1. 怒りは止められない。でも「選べる」感情です
怒りは自動的に湧き上がるもので、完全にゼロにはできません。
でも――
怒りを相手にぶつけるかどうかは「選択」できます。
ポイントはここです👇
- 感情は止められない
- 行動は変えられる
特に子育てだと、
親は「自分の子には怒ってしまう」のに、よその子には怒らないことがあります。
👉 これこそが 「怒りはコントロール可能」 の証拠。
無理に「優しいふり」をする必要はありません。
大切なのは、感情と行動を切り分けることです。
2. 今日からできるアンガーコントロールの実践法
① 数秒だけ立ち止まる(6秒ルール)
怒りのピークは6秒。
この6秒を「やり過ごせるか」が勝負です。

- 深呼吸をする
- 一歩だけ後ろに下がる
- 水を一口飲む
どれでもOK。「間」をつくるだけで衝動は弱まります。

② 言わないセリフを事前に決める
怒りが強くなると、私たちの脳は「短い・強い・命令形」の言葉を選びがちです。
これは人間の本能的な反応ですが、子どもにとっては 「責められている」 と受け取られやすい状態。
ここで役立つのが ユーメッセージ(You-message)ではなく、アイメッセージ(I-message)を使う技法 です。
▼ ユーメッセージが怒りを増やしやすい理由
- 相手の行動を否定する構造
- 命令・指示・責めの印象になる
- 子どもは「防御モード」に入り、話が届きにくくなる
- 結局、親のイライラが長引く
▼ アイメッセージのメリット
- 「私」を主語にするため責められた感が少ない
- 子どもが「受け取りやすい」
- 衝突が減り、コミュニケーションがスムーズ
- 親自身も感情が落ち着きやすい
▼ 深掘りテクニック:3つの形に落とし込む
アイメッセージは以下の3ステップで構成するとスムーズです。
- 事実を伝える
- 自分の気持ちを伝える
- 希望(お願い)を伝える
▼ 例文(3ステップ版)
● 着替えしないとき
×「早く着替えて!」
○「着替えがまだ終わってないね。(事実)
ママ、そろそろ出たい気持ちなんだ。(気持ち)
手伝うから一緒にやろうか?」(希望)
● 片付けないとき
×「なんで散らかしたままなの!」
○「おもちゃが床に出たままだね。(事実)
踏んじゃいそうでちょっと心配なの。(気持ち)
2個だけ一緒に片付けようか?」(希望)
▼ 深掘りポイント
「言わないセリフ」を決める=「感情のショートカット」を作ること
怒ったときにとっさに出てしまう言葉は 癖(パターン) です。
あらかじめ言い換えを決めておくと、感情に飲まれにくくなります。
例:
- ×「いい加減にして!」
- ×「何回言わせるの?」
- ×「早くしなさい!」
⬇ 事前にストックしておく言い換え例
- ○「どうしたのか教えて?」
- ○「困ってることある?」
- ○「あと少し一緒に頑張ろうか」
ストックが多いほど「怒りに飲まれない育児」に近づきます。
✅ 怒りにくくなる「言い換えストック30」一覧表
| NGワード(言いがち) | 言い換えアイメッセージ(優しい・伝わる) |
|---|---|
| 早くして! | もう少し急いでくれると助かるよ |
| なんでできないの? | どこが難しいか一緒に考えようか |
| いい加減にして! | 今どう感じているか、教えてほしいな |
| 何回言わせるの? | 忘れちゃうときは一緒にやろうか |
| ちゃんとして! | どうすればやりやすいかな? |
| やりなさい! | まずどれからやってみる? |
| どうしてやらないの? | 困ってることある? |
| 早く片付けて! | 2個だけ一緒に片付けてみようか |
| 静かにして! | 少し声を小さくしてくれると嬉しいな |
| ダメでしょ! | こうしてもらえると助かるよ |
| 何してるの! | 今、何をしたかったの? |
| 遅いよ! | ペースを教えてくれる? |
| そんなことしないの! | こうすると安全だよ、やってみよう? |
| ふざけないの! | 今は◯◯の時間だよ、どうする? |
| やめなさい! | 一度ストップしよう、話せる? |
| しつこいよ! | 次はどうしたいと思っている? |
| 言うこと聞いて! | こうしてほしい理由、伝えてもいい? |
| まだなの? | あとどれくらい必要かな? |
| 早く行くよ! | 出発の時間になったよ、どうしようか? |
| そんなの簡単でしょ! | どこがむずかしく感じる? |
| どうして言った通りにしないの? | やりやすいやり方、探してみよう |
| 無理でしょ! | 一緒に少しだけ挑戦してみる? |
| 泣かないの! | 気持ち、教えてくれる? |
| もう知らない! | 落ち着いたら一緒に考えようね |
| ちゃんと聞いて! | 大事なことだから聞いてほしいな |
| 早く食べて! | ママ(パパ)ゆっくりで大丈夫だよ |
| もうやめて! | いったん休憩しようか |
| 注意したよね? | どうしたら覚えていられそうかな? |
| ダラダラしないの! | 何から始めるとやりやすいかな? |
| どうしてそんなことするの? | そうした理由を教えてほしいな |
📌 補足:使い方のポイント
- 完全に言い換える必要はない
→ 自分の言葉でアレンジしてOK - まずは3つだけ覚えると使いやすい
- 「責めない・命令しない・気持ちを伝える」が基本
③ 1日だけ『怒らない日』を作る
ずっとは無理でも、1日だけなら挑戦できます。
「怒らないとどうなる?」を体験するための小さな実験です。
3. 認知行動療法①|怒りを数値化しよう
「怒りを数字にする」だけで、客観的に見えてきます。
- 0〜100点でスコア化
- 「何度以上でトラブルになるか」を把握

例:
・30〜40…イライラ
・60…口調が強くなる
・80…怒ってしまう
怒りを温度計でイメージするだけでも冷静さが戻ります。
4. 認知行動療法②|怒りのパターンを知る
怒りの点数化が続くと、次のことが分かります👇
- どんな状況で怒りやすいか
- どの相手が苦手なのか
- どんな言葉に反応しやすいか
怒りの奥には「瞬間的な考え」があり、
さらにその奥には自分の 信念 が潜んでいます。
例:
「子どもは言うことを聞くべきだ」
「親はしっかりしていなければ」
これに気づくだけで、怒りの深さが変わります。
5. 認知行動療法③|怒らないための具体的練習
✔ 認知(考え)・感情・行動を分ける
怒ったとき、全部がひとまとめになってしまいがち。
まずは分類するだけでOK。
✔ 「怒らなかったらどうなる?」を想像
ほとんどは「怒らなくても大丈夫な場面」だったりします。
✔ 守ってほしいルールは事前に伝える
怒る前に、言語化が必要です。
✔ 「スルーする力」を鍛える

- スルーする場面
- スルーしない場面
この線引きがあるとラクになります。
✨「スルーする力」を鍛えると、子育てがぐっとラクになる
アンガーコントロールで大切なのは、
「スルーすべき場面」 と「スルーしないほうがよい場面」 を見分ける力です。
全部に反応していると、エネルギーはあっという間に枯渇します。
逆に、反応しなくてもいい場面を見抜けるようになると、
日常のストレスが驚くほど軽くなります。
▶ スルーする場面(反応しても効果が薄いパターン)
以下は、注意してもお互いの消耗が大きいだけの場面です。
✔ ① そのときだけの「気分」での行動
・なんとなくグズグズする
・ぼーっとして動けない
→ 一旦スルーして、落ち着いてから声かけすると成功率が上がる。
✔ ② こちらがイライラしているだけの場面
・時間に余裕があるのに「早くして!」と言いたくなる
→ 自分要因なので、一度スルーして深呼吸が効果的。
✔ ③ 「成長の過程で自然に覚えること」
・靴を左右逆に履いた
・ハンカチを忘れた
→ 危険でなければ見守りでOK。後から練習したほうが定着しやすい。
▶ スルーしない場面(安心・安全に関わる大事なポイント)
ここは「反応したほうがいい」場面です。
✔ ① 危険が伴う行動
・走って道路に出る
・ふざけて机に登る
→ 命に関わるので止めるのが最優先。
✔ ② 他者を傷つける行動
・叩く/押す
・お友達のおもちゃを乱暴に扱う
→ 行動のストップと簡潔な説明が必要。
✔ ③ ルールを学ぶ良い機会
・順番を守れない
・片付けを放置して次の遊びへ行く
→ 事前に「どうしたらいいか」を伝えておくとスルーしない線が明確に。
▶ 線引きがあると、本当にラクになる理由
● 反応するべき場面が減る
→ 無駄なエネルギー消費がなくなる。
● 注意する場面に一貫性が出る
→ 子どもも「これはダメなんだ」と理解しやすくなる。
● 親の「怒りの暴発」が激減する
→ イライラの予防になる。
✨まとめ
「スルーする」といっても、ただ我慢するのではありません。
「自分で線を引く=怒りの取捨選択ができる」ということ。
- 危険・他害・大事なルール → スルーしない
- その場の気分・成長で身につくこと・自分要因のイライラ → スルーする
この2つの線引きがあるだけで、
「怒りに飲まれない育児」に一歩近づけます。
6|コントロールには限界がある|扱えるのは「自分の怒りだけ」
残念ですが、どれだけ努力しても…
- 怒らせてくる人
- 苦手なタイプ
- ストレスを増やす状況
これらは避けられません。
だからこそ、
「自分の怒りだけ」コントロールするのが最も現実的。
失敗しても、またやり直せばいい。
継続こそがアンガーコントロールです。
7. 怒りの逃げ道をつくろう|タイムアウト&伝え方
✔ できること/できないことを区別する
「全部自分で抱えよう」とすると怒りは増えます。
✔ 苦手な相手や状況を知る
知るだけで怒りの予測がつくようになります。
✔ その場から離れてOK(タイムアウト)
逃げるのは悪ではありません。
むしろ上手な感情コントロールの方法です。
✔ 相手を尊重しながら自分の気持ちも大切にする伝え方を身につける
相手を尊重しながら、自分の気持ちも大切にできる伝え方を練習していきます。
押しつけにならず、受け身にもならない、ちょうどよい距離感のコミュニケーションです
例:
「こう考えているんだけど、どう感じる?」
8. よくある質問(FAQ)
怒りをゼロにすることはできますか?
できません。
怒りは「自動で湧く感情」なので止めることは不可能です。
でも、ぶつけるかどうか・どう表現するかはコントロールできます。6秒我慢すれば怒らなくなりますか?
6秒で怒りのピークが下がり、衝動が弱まります。
完全に収まらなくても、言動の荒さを確実に減らせる「黄金ルール」です。子ども相手にアイメッセージは本当に効きますか?
効きます。
幼い子でも「責められていない」と感じやすく、協力しやすくなります。言い換えを覚えられません…どうすれば?
3つだけストックするところから始めましょう。
言い換え30個を全部覚える必要はありません怒らない日を作るメリットは?
「怒らなくても大丈夫な場面」が見つかり、負担が減ります。
イライラの原因が子どもではないときは?
外部ストレスを切り離す意識が必要です。
睡眠不足・多忙・体調などが影響している場合が多いです。数値化しても怒りが減らないのですが…?
数値化は「怒りのパターンを知る」のが主目的です。
続けることで「怒りやすい状況・時間・相手」が明確になります。タイムアウト(その場を離れる)は甘やかしですか?
いいえ。
むしろ感情の暴走を防ぐ「大人のセルフケア」です。パートナーの怒りにも効果がありますか?
相手を変える方法ではありませんが、
まず自分の怒りを整えることが、自分と家庭の安定につながります。アンガーコントロールはどのくらいで習慣になりますか?
目安は3週間。
「考える→言い換える」の流れが自然にできるようになります。
まとめ 怒りは「悪者」じゃない。扱い方を変えれば味方になる
怒りを感じるのは自然なこと。
大切なのは、
- 感情と行動を切り離す
- 数秒の「間」をつくる
- 自分の怒りのクセを知る
- 怒ってもいいけど使いどころを選ぶ

ということです。
怒りはゼロにはできませんが、
扱い方を変えれば、あなたと家族の味方になります。
今日から少しずつ、一緒にやっていきましょう🌿
📢次回予告
お楽しみに!
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