「子ども向けの絵本だと思って読んだら、想像以上に考えさせられた」
そんな声が多いのが、『かべのむこうになにがある?』です。
ひらがな中心で読みやすい一方、
2019年度の青少年読書感想文全国コンクール・小学校高学年の部 課題図書にも選ばれた本作。
なぜこの絵本は、子どもだけでなく大人の心にも深く刺さるのでしょうか。

この記事では、
👉 あらすじ
👉 登場人物の意味
👉 絵本に込められた教訓と考察
を中心に、親子読書や読書感想文にも役立つ視点で解説します。
目次
はじめに|子ども向けだけど大人も考えさせられる絵本
1. 『かべのむこうになにがある?』はどんな絵本?
2. あらすじ|かべの向こうに広がっていた世界
3. 登場する動物たちが象徴する「人の考え方」
・ねずみ|好奇心と臆見のあいだ
・ねこ|恐怖による現状維持
・くま|疑わない「当たり前」
・きつね|考えないことで得る幸福
・ライオン|虚無と絶望
4. この絵本の教訓|「本当のものを見る勇気」とは?
5. 読み方で変わる印象|子どもと大人で違う受け取り方
6. 読書感想文に向いている?|高学年におすすめな理由
7. 注意点|「勇気」と「無謀」は違う
8. こんな家庭・こんな子におすすめ
9. 3歳・5歳のリアルな感想
10. よくある質問(FAQ)
まとめ|「かべ」はどこにでもある
1. 『かべのむこうになにがある?』はどんな絵本?
- 作:ブリッタ・テッケントラップ
- 原作:Little Mouse and the Red Wall(2018年)
- 日本語版:ひらがな中心で低学年でも読みやすい構成
作者のブリッタ・テッケントラップは、旧西ドイツ・ハンブルク生まれ。
ロンドンで絵画を学び、シンプルな絵の中に深いメッセージを込める作風で知られています。
一見すると優しい動物絵本ですが、
その中身は「思い込み」「恐れ」「真実を見る勇気」といった、
非常に哲学的なテーマを扱っています。

2. あらすじ|かべの向こうに広がっていた世界
物語の舞台は、赤い壁(かべ)に囲まれた世界。
そこでは、ねずみ・ねこ・くま・きつね・ライオンたちが暮らしています。
好奇心旺盛なねずみは、ずっと前から疑問に思っていました。
「かべのむこうには、なにがあるんだろう?」
ある日、壁の外からやってきた鳥と出会い、
ねずみはついに壁の向こうへ連れて行ってもらいます。
するとそこには、
暗くて怖い世界ではなく、
色とりどりで自由な世界が広がっていました。
ねずみは気づきます。
自分たちを閉じ込めていた壁は、
「本当に存在していたもの」ではなかったのだと。
3. 登場する動物たちが象徴する「人の考え方」
この絵本が印象的なのは、
登場する動物たちがそれぞれ異なる価値観を体現している点です。
ねずみ|好奇心と臆見のあいだ
一番勇敢に見えるねずみですが、
実は「壁の外は怖い」とどこかで思い込んでもいました。
好奇心と恐れの両方を持つ、私たちに一番近い存在です。
ねこ|恐怖による現状維持
「外は危険だから、壁が守ってくれている」
恐れから変化を拒む姿は、
未知を避けて安全圏に留まろうとする人の象徴です。
くま|疑わない「当たり前」
「壁は昔からあるもの」
疑うこと自体をしない態度は、
思考停止した「常識」を表しています。
きつね|考えないことで得る幸福
「知らなくても楽しく生きられる」
考えない選択をすることで、
心の平穏を保とうとする姿です。
ライオン|虚無と絶望
「外は果てしない闇」
何も見ようとせず、
絶望だけを語る存在として描かれています。
4. この絵本の教訓|「本当のものを見る勇気」とは?
鳥が語る、この物語の核心はこうです。
「ほんとうのものを みる ゆうきが あれば、
かべなんて なくなるんだよ」
この「かべ」とは、
思い込みの象徴です。


- 知らないものを「怖い」と決めつける
- 人から聞いた話を事実だと思い込む
- 確かめる前に距離を置く
こうして、私たちは自分の中に壁を作ってしまいます。
ただし重要なのは、
「知りたい気持ち」=「勇気」ではないという点です。
本当の勇気とは、
👉 真実を知ったあとに
👉 自分の思い込みを認め
👉 受け入れること
ねずみが成長したのは、
外の世界を見たからではなく、
自分の間違いと向き合えたからなのでは。
5. 読み方で変わる印象|子どもと大人で違う受け取り方
子どもにとって
- 冒険の物語
- 勇気を出すお話
- 世界は広い、という気づき
大人にとって
- 偏見や情報操作の比喩
- 社会の分断
- 「常識」を疑う視点
同じ絵本でも、
年齢や経験によってまったく違う読み方ができます。
6. 読書感想文に向いている?|高学年におすすめな理由
『かべのむこうになにがある?』は、
読書感想文に非常に向いている絵本です。
- 正解が一つではない
- 自分の経験と結びつけやすい
- 「もし自分だったら?」と考えやすい
たとえばこんな問いが書きやすいです。
- 自分の中にも「かべ」はあるか
- ねずみ以外の動物の気持ちは理解できるか
- 勇気と無謀の違いは何か
7. 注意点|「勇気」と「無謀」は違う
ただし、この絵本を読むうえで、
一つ大切にしたい視点があります。
この絵本はハッピーエンドですが、
現実世界では「壁の向こう」が必ずしも安全とは限りません。
- 情報が正しいとは限らない
- 知らない世界には危険もある
- 勇気と無謀は別物
だからこそ、
この絵本は「考えること」そのものの大切さを教えてくれます。
8. こんな家庭・こんな子におすすめ
- 考えるのが好きな子
- 感受性が強い子
- 親子で対話を楽しみたい家庭
- 読書感想文で一歩深い内容を書きたい子
9. 👶3歳・5歳のリアルな感想
3歳・5歳の反応は?
わが家では3歳と5歳の子どもに読み聞かせをしました。
物語自体は短く、文字数も多くないため、最後まで集中して聞くことができました。
色とりどりの動物が次々に登場するので、
見た目の楽しさは十分あったようです。
ただ、終盤の
「実は壁はなかった?」
という展開については、理由までは理解できていない様子でした。
親が解説してみても、
「ふーん…?」という反応で、いまいちピンときていない印象。
それでも、
✔ お話としては楽しめた
✔ 絵本自体に嫌な反応はない
という点から、
もっと大きくなってから、もう一度読みたい絵本だと感じました。
10. よくある質問(FAQ)
『かべのむこうになにがある?』は何歳から読めますか?
文章は短く、3〜4歳でも読み聞かせは可能ですが、内容理解は小学生以降がおすすめです。
読書感想文に向いていますか?
はい。課題図書にも選ばれており、高学年の感想文に特に向いています。
絵本の教訓は何ですか?
思い込み(臆見)を疑い、本当のものを見る勇気の大切さです。
壁は本当に存在していなかったのですか?
物理的な壁ではなく、心の中の思い込みを象徴しています。
子どもには難しすぎませんか?
表面的には楽しめ、成長とともに理解が深まる「長く読める絵本」です。
親が解説した方がいいですか?
無理に説明せず、「どう思った?」と問いかける程度がおすすめです。
大人が読んでも楽しめますか?
社会や偏見の比喩として、大人の方が深く考えさせられます。
他の動物たちは何を表していますか?
恐れ・思考停止・諦めなど、さまざまな人の価値観を象徴しています。
ハッピーエンドの絵本ですか?
結末は明るいですが、現実への問いを残す余韻のある終わり方です。
繰り返し読む価値はありますか?
年齢や経験によって受け取り方が変わるため、再読に向いています。
まとめ|「かべ」はどこにでもある
『かべのむこうになにがある?』は、
「未知は怖いもの」という思い込みに、
そっと問いを投げかけてくれる絵本です。
壁の向こうにあるのは、
必ずしも楽園ではないかもしれません。
それでも、
見ようとすること・考えようとすることをやめない。
その姿勢こそが、
この絵本が私たちに伝えている最大のメッセージなのかもしれません。
親としては、「今は分からなくてもいい絵本」だと感じました。
成長したときに、ふと心に残る一冊になる。
そんな絵本こそ、そっと本棚に置いておきたいと思います。