はじめに
発達障害を持つ子どもは、「なぜ?」が多い行動を示すことがあります。
たとえば、こんな事例に心当たりはありませんか?
- 突然パニックを起こす → 新しい環境や強い刺激に圧倒されてしまう
- 特定の音を嫌がる → 聴覚過敏による感覚的な不快感
- 繰り返し同じ言葉を言う → 不安を和らげるための自己刺激行動
こうした行動の背景には、脳の情報処理の仕組みや感覚特性が関係していることがあります。
本記事では、親として知っておきたい「行動の原因」と、日常で試せる具体的な「対応策」を解説します。
私の実体験
私は、発達障害について深く学ぶ前、子どもの行動に対して、「どうしてこんなことをするんだろう?」「なぜ何度言ってもわかってくれないの?」と感じることが多くありました。
イライラしたり、悲しくなったり、疲れ果てたりすることもありましたが、療育の勉強会や医師への相談を通じて、子どもの行動を新たな視点から見る方法を学びました。
背景を理解せずに叱るだけでは、行動は改善されるどころか、親子ともにストレスが増えるばかりです。
何度言っても改善が見られない場合や、他のさまざまな状況を考慮して、発達障害の可能性を疑ってみることも重要だと感じています。
私自身、こうした理解が進むにつれて、子どもとの接し方が大きく変わり、親子に前向きな変化が生まれました。
目次
- 子どもの行動背景と対応策:
「うろうろする」- ① 家の中でのケース
- ② 幼稚園や学校でのケース
- ③ 訪問先でのケース
- 子どもの行動背景と対応策:
「周囲と同じ行動ができない」- ④ お片づけの時間
- ⑤ 幼稚園で一斉行動ができない
- ⑥ 友達との遊びのトラブル
- ⑦ 朝のルーティンが進まない
- 子どもの行動背景と対応策:
「友達をたたいてしまう」- ⑧ ブロック遊び中のトラブル
- 子どもの行動背景と対応策:
「走り回る」- ⑨ 公園で突然走り出す
- ⑩ ショッピングモールでの買い物中
- ⑪ レストランで席からの脱走
- ⑫ 病院の待合室で落ち着かない
- 子どもの行動背景と対応策:
「突然パニックを起こす」 - 子どもの行動背景と対応策:
「特定の音を嫌がる」 - 子どもの行動背景と対応策:
「繰り返し同じ言葉を言う」 - 発達障害に関連する特性とサポート方法
● 1. 自閉スペクトラム症(ASD)
● 2. ADHD(注意欠陥・多動性障害)
● 3. その他の関連特性 - よくある質問
- おわりに
1. 子どもの行動背景と対応策:
「うろうろする」
行動の背景
- 体が動いてしまう:
エネルギーが余っている場合や注意が散漫な場合。 - 不快な感覚による動き:
触覚過敏で衣服が不快に感じ、じっとしていられない場合。 - 次に何をすればよいかわからない:
環境や指示が理解しにくく、落ち着きがなくなる場合。
① 家の中でのケース
- リビングから寝室、廊下を行き来する。
- 例: 家族がテレビを見ている間も部屋中を歩き回る。
- 理由: 椅子に座る感覚が不快、視覚的刺激が強い。
- 背景: リズミカルに歩くことで安心感を得る。
対応方法
- 感覚の安定をサポート
- 揺れるイスやバランスボールなど、動きながら過ごせる環境を用意する。
- 手触りが快適な衣服や、触覚を和らげるインナーを選ぶ。
- エネルギーを発散できる時間を設ける
- 一緒にダンスや運動をして、身体を動かす時間を取り入れる。
- 室内用トランポリンやストレッチ用具を活用する。
- 見通しをつける工夫
- 「○分後にここで座ってみようね」など、短い目標を伝えて少しずつ座る時間を伸ばす。
- 絵カードやタイマーを活用し、視覚的に次の行動を知らせる。
② 幼稚園や学校でのケース
- 朝の会や話し合いの場面で席を離れて歩き回る。
- 理由: 集団活動のプレッシャーや指示の理解が難しい。
- 背景: 緊張を和らげる自己調整行動。
対応方法
- 活動前のリラックス時間を設ける
- 深呼吸や簡単なストレッチを取り入れる。
- 小さなマッサージボールや手持ちアイテムを持たせて、安心感を与える。
- 参加しやすい環境を整える
- 少し離れた場所や、動きながら話を聞けるスペースを用意する。
- 指示を短くし、視覚的なサポート(カードや絵)を活用する。
- 成功体験を積む
- 短い時間だけ席に座れたら褒めるなど、小さな達成を認める。
- 集団活動が始まる前に先生が個別に声掛けを行う。
③ 訪問先でのケース
- 家族や友人の家で部屋中を歩き回る。
- 理由: 知らない環境への不安。
- 背景: 安全確認や落ち着ける場所探し。
対応方法
- 事前準備を行う
- 訪問先の写真や動画を見せて、環境を予習させる。
- 「この家にはこういう場所があるよ」と具体的に説明する。
- 安心できる持ち物を持たせる
- お気に入りの絵本やおもちゃを持参して、知らない場所でも安心できるアイテムを活用する。
- 安心できるスペースを確認する
- 訪問先の人と相談し、子どもが落ち着けるスペースを事前に用意しておく。
- 「疲れたらここで休んでいいよ」と伝えておく。
2. 子どもの行動の背景と対応策:
「周囲と同じ行動ができない」
行動の背景
- 何をすればよいかわからない: 状況や指示の理解が難しい。
対応方法
- 前もって時間の区切りを伝える
(例: 「あと5分で片づけだよ」)。 - 小さな目標を設定する
(例: 「3つだけおもちゃを集めてみよう」)。
④ 幼稚園でのお片づけ
- 他の子どもが片づけを始めても遊び続ける。
- 背景: 楽しい時間を切り替えられない。
対応方法
- 事前に声かけし、小さな目標でスムーズに切り替え。
⑤ 幼稚園での「一斉行動ができない」
背景
- 指示を聞き取るのに時間がかかる。
- 集団の動きを観察して動くのが苦手。
対応方法
- 動きの手順を絵カードなどで具体的に示す。
- 繰り返し練習する時間を作る。
⑥ 友達との遊びのトラブル
背景
- 相手の気持ちを理解するのが難しい。
- 自分のやりたいことを優先してしまう。
対応方法
- 遊びの中で「順番」や「交代」を意識させるルールを設ける。
- 一緒に遊ぶ際の声かけ例を親が見せて練習する。
⑦ 朝のルーティンが進まない
背景
- 切り替えが苦手で、新しい行動を始めるのに時間がかかる。
- 「何からやればいいか」が曖昧になりがち。
対応方法
- 絵やリストで視覚的に「やることリスト」を示す。
- タイマーを使って「あと○分で始めるよ」と準備させる。
3. 子どもの行動背景と対応策:
「友達をたたいてしまう」
行動の背景
- どうしてよいかわからない: 社会的スキル不足。
- 感情のコントロールが難しい: 言葉での表現が苦手。
- 個人空間の理解不足: 距離感や接触の仕方が分からない。
対応方法・対策
- 簡単な言葉や動作で気持ちを伝える練習。
- 事前に遊びのルールを説明
(例: 「順番で使おうね」)。
⑧ ブロック遊び中のトラブル
- 状況: 友達の手をたたいてしまう。
- 背景: 自分の意図が伝わらず混乱。
対応方法
- 対応: 「何をしてほしかったの?」と尋ね、具体的な言葉を教える。
4. 子どもの行動の背景と対応策:「走り回る」
行動の背景
- 気になるものが見えた:
好奇心や視覚刺激への反応。 - 何をしてよいかわからない:
明確な指示がない。 - 不快な感覚がある:
触覚過敏でその場にいられない。
⑨ 公園で突然走り出す
- 背景: 視覚や音の刺激に興奮、またはリズム感を得るため。
対応方法
- 事前に行動の枠を伝える
- 「遊ぶエリアはこの範囲だよ」と地面に線を引いたり、目印を決めておく。
- 見通しを持たせるため、次の行動(例: 5分後に砂場で遊ぼう)を具体的に伝える。
- 一緒に走る時間を確保
- あらかじめ走り回れる時間をスケジュールに組み込み、エネルギーを発散させる。
- 刺激をコントロールする
- 公園が混雑する時間帯を避け、比較的落ち着いた環境で遊ぶ。
⑩ ショッピングモールでの買い物中
- 背景: 広い空間でワクワクし、抑えきれない興奮。
対応方法
- 役割を与える
- 「カートを押してね」「次は○○を探してね」と簡単なミッションを与えて集中させる。
- 安全なルートを確保
- 手をつなぐ、または子ども用リードを活用して行動範囲を制限する。
- 短時間で終わらせる
- 買い物の時間を短縮し、子どもが飽きないよう工夫する。
- 買い物前に遊びや運動をしてエネルギーを発散させる。
⑪ レストランで席からの脱走
- 背景: 長時間の静止が苦手、環境を探検したい。
対応方法
- 環境の準備
- 窓際や他の席と距離がある場所を選び、周囲への影響を抑える。
- テーブルに集中できるよう、簡単なおもちゃや好きな本を用意する。
- 短い休憩を挟む
- 「少し歩こうか」と短時間の散歩を挟むことで、長時間の着席を和らげる。
- 事前に練習をする
- レストランに行く前に家で「座って待つ練習」を行い、短時間から慣らす。
⑫ 病院の待合室で落ち着かない
- 背景: 緊張や不安を解消するために歩く。
対応方法
- 安心感を与えるアイテム
- お気に入りのぬいぐるみやブランケットを持参して、不安を和らげる。
- 代替行動を提案する
- 「このシールブックで遊ぼう」「絵本を読もう」と落ち着ける活動を提供する。
- 待ち時間を区切る
- 「あと10分で順番だよ」とタイマーを使って見通しを持たせる。
5. 子どもの行動の背景と対応策:
「突然パニックを起こす」
理由: 新しい環境に慣れるまで時間がかかり、視覚や聴覚の刺激に圧倒されてしまう。
背景: 不安感や緊張を解消するために感情が一気に爆発する自己防衛行動。
対応方法
- 事前準備を行う
- 写真や動画で場所の雰囲気を伝え、「次はここに行くよ」と予告する。
- 簡単な説明を繰り返し行い、行動の流れをイメージできるようサポートする。
- 環境の配慮を行う
- 大きな音を避けるためにノイズキャンセリングイヤホンを準備する。
- 静かな場所を探して慣れる時間を確保する。
- パニックの緩和に集中する
- 落ち着くまで無理に急がせず、安心できるアイテムを持たせる。
- 親が一緒に深呼吸をするなど、リラックスできる方法を見せる。
6. 子どもの行動の背景と対応策:
「特定の音を嫌がる」
理由: 聴覚過敏により特定の音が強いストレスを与えている。
背景: 不快な音を避けることで自分を守ろうとする自然な反応。
対応方法
- 音を軽減する準備
- 耳栓やイヤーマフを活用し、嫌な音から耳を守る。
- 柔らかいマットを敷いて食器音を軽減するなど、物理的な工夫を行う。
- 事前に予告する
- 嫌がる音が出る場合は、事前に「これから掃除機をかけるね」など説明して心の準備を促す。
- 自己対処法を教える
- 音が気になるときは耳栓を取り出す、別の部屋に移動するなど、自分で行える方法を教える。
7. 子どもの行動の背景と対応策:「繰り返し同じ言葉を言う」
理由: 次の日への不安や予定が不明瞭なことで、安心感を求めている。
背景: 不安を繰り返し確認することで、自己安心を図ろうとする行動。
対応方法
- 視覚的サポートを提供する
- カレンダーや予定表を活用し、「明日は〇〇だよ」と見える形で伝える。
- 予定が明確であることを示す工夫を日常に取り入れる。
- 安心感を与える言葉がけ
- 「何回でも聞いていいよ」と優しく伝え、不安が軽減されるよう対応する。
- リラックス環境を整える
- 寝る前にお気に入りの絵本を読む、静かで心地よい音楽を流すなど、落ち着ける時間を作る。
共通のポイント
- 感覚の調整
- 走り回る前に運動や感覚刺激を提供し、体のバランスを整える。
- 視覚的サポート
- 次の行動やスケジュールを絵やカードで示し、行動の流れを明確にする。
- ポジティブな声掛け
- 落ち着けた時間を見つけて褒め、成功体験を積み重ねる。
これらの対応を通して、子どもが走り回る理由を理解し、適切にサポートすることで行動を少しずつ改善することが可能です。
8. 発達障害に関連する特性とサポート方法
1. 自閉スペクトラム症(ASD)
- 対人関係や社会性の特性:
周囲の状況を理解しにくく、適切な行動をとることが難しいことがあります。
例えば、人の表情や感情を読み取るのが苦手で、他者の意図を誤解しやすい場合があります。 - コミュニケーションの特性:
その場に適した返答が難しかったり、好きなことを一方的に話すものの、相手とのやり取りが成立しないことがあります。
相手の話を受けて会話を続けるのが難しい場合もあります。 - 限定した常同的な興味や行動:
物の位置が変わることや日常のルーティンが乱れることに敏感で、変化に対応するのが難しいことがあります。
また、手をひらひらさせるなどの反復行動が見られることもあります。
2. ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- 多動性、衝動性、不注意:
- 不注意型:
気が散りやすく、物事を忘れやすいのが特徴です。 - 多動性・衝動性優位型:
落ち着きがなく衝動的に行動する場合があり、学習環境に適応する支援が求められます。 - 混合型:
不注意と多動性・衝動性の両方の特徴を持つ場合があります。
- 不注意型:
3. その他の関連特性
発達障害に関連する特性は多岐にわたり、それぞれの特性に応じたサポートが必要です。
子どもの行動や特性の背景を理解することは、適切な支援を行うための第一歩となります。
① 実行機能の特性
段取りを立てる、集中する、行動を切り替えるといった実行機能が苦手な場合があります。
- 対応方法
- 時間の見通しを持たせるためにスケジュールを視覚化する。
- 小さなタスクに分けて取り組む。
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② 感覚の特性
感覚刺激に対して、過敏または鈍感に反応することがあります。
特に触覚や視覚、聴覚への過敏さが生活の困難につながることもあります。
- 対応方法
- 子どもに合った素材や環境を選ぶ。
- 過敏さを和らげる工夫(例: 感覚統合アプローチ)を取り入れる。
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③ 体の使い方の特性
全身の運動がぎこちない、手先が不器用といった特徴が見られることがあります。
- 対応方法
- バランス感覚を養う運動遊びを取り入れる。
- 指先を使う簡単なトレーニングを日常に組み込む。
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④ 注意・記憶の特性
細部に注意を向けることが苦手、または注意が散りやすいことがあります。
また、短期記憶・作業記憶(ワーキングメモリ)が弱い一方、長期記憶が優れている場合もあります。
- 対応方法
- 短期記憶を鍛えるトレーニングを継続する。
- 視覚的なサポートや、繰り返しを活用して学びを定着させる。
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9. よくある質問
発達障害と診断された場合、親として何をすれば良いですか?
療育や専門家の支援を受け、子どもの特性に合わせた環境を整えましょう。
うちの子が幼稚園で友達をたたいてしまいます。どう対処すれば良いですか?
感情を言葉で表現する練習を増やし、行動の背景を理解しつつ具体的なルールを教えましょう。
子どもがじっとしていられないのは普通ですか?
発達の特性や環境による場合もあります。一度専門家に相談するのも良いでしょう。
療育を始めるべきタイミングは?
子どもが日常生活で困難を感じている場合、早めに相談するのがおすすめです。
発達障害の可能性がある場合、どこで相談すれば良いですか?
発達相談センターや小児科、保健センターなどに相談できます。
家庭でできる発達支援方法はありますか?
明確なルールを設定し、具体的な指示や視覚的な支援を取り入れると良いです。
子どもが急に泣き出す理由は何でしょうか?
感覚過敏や不安が原因の可能性があります。状況を観察し、原因を特定しましょう。
親がストレスを感じたとき、どう対処すれば良いですか?
専門家に相談したり、親のサポートグループに参加することを検討しましょう。
発達検査を受けるべきか悩んでいます。どう決めれば良いですか?
困りごとが増えている場合、早めに検査を受けることで適切な支援が受けられます。
子どもが環境の変化に不安を感じているようです。どう支えれば良いですか?
事前に環境の情報を伝えたり、慣れるための時間を十分に設けましょう。
まとめ
子どもの行動には、さまざまな背景や理由が隠れています。
日々の生活で困難を感じたら、一度背景を見つめ直し、適切なサポートを考えてみましょう。
特に発達障害が関連する場合、その背景を理解し、適切な支援やサポートを提供することが、子どもが安心して成長できる環境づくりに繋がります。
もし気になる行動が見られたら?
- お子さんの行動を観察し、記録をつける(行動の頻度や状況を把握する)
- 信頼できる専門家(発達障害支援センター、児童精神科医など)に相談する
- 家庭でできる工夫(耳栓、静かな時間を確保する、絵本で社会的ルールを教えるなど)を試してみる
子どもの行動を理解し、その背景に寄り添うことで、親子関係に前向きな変化が生まれます。
すべてを完璧に対応するのは難しいですが、小さな成功体験の積み重ねが、子どもにとっても親にとっても大きな成長につながります。
一歩ずつ、共に歩む道を大切にしていきましょう。
発達障害の特性について、詳しくは「厚生労働省:発達障害の理解のために」をご参照ください。
次回予告
次回は、「自閉症スペクトラム症の子どもの行動を理解する:その背景とサポート方法」についてさらに詳しくご紹介します。
お楽しみに!