「自分の気持ちをうまく言葉にできない」
「怒ったり泣いたりしたとき、どう関わればよいか分からない」
「相手の気持ちを考えるきっかけになる絵本を探している」
そんな悩みはありませんか?
わが家には、ASD・ADHD・DCD・吃音のある小学生と、4歳の子どもがいます。
私は児童発達支援アドバイザーの資格を持ち、家庭でも絵本や視覚支援を使いながら、気持ちを言葉にする方法を子どもと一緒に考えてきました。
子どもは心の中に気持ちがあっても、それが「怒り」「悲しさ」「悔しさ」「不安」のどれなのか、自分では分からないことがあります。
そんなとき、絵本の登場人物を通してなら、少し離れたところから気持ちを見つめられる場合があります。
この記事では、子どもの心を育てる絵本を、年齢とテーマ別に12冊紹介します。
- 喜びや安心感に触れられる絵本
- 怒りや不安を考えられる絵本
- 思いやりや友達関係を描いた絵本
- 自分のよさや個性に気づける絵本
などを選びました。
ただし、絵本を読めば必ず共感力や自己肯定感が高まるわけではありません。
気持ちを教え込む教材としてではなく、親子で物語を楽しみながら話すきっかけとしてご覧ください。
結論|子どもの心を育てる絵本は「今の悩み」から選ぼう
心を育てる絵本は、年齢だけでなく、子どもが今どのようなことで困っているかを手がかりに選ぶと見つけやすくなります。

| 子どもの様子・悩み | 選びやすい絵本のテーマ |
|---|---|
| 気持ちを言葉にしにくい | 喜怒哀楽や表情が分かる絵本 |
| 怒りがなかなか収まらない | 怒りの理由や体の感覚を描いた絵本 |
| 失敗すると「もうできない」と言う | 失敗や完璧主義を扱った絵本 |
| 自分のよいところが分からない | 個性や長所に気づける絵本 |
| 友達との関わりが難しい | あいさつ・思いやり・譲り合いの絵本 |
| 相手の気持ちを考えるのが難しい | 登場人物の表情や行動が分かりやすい絵本 |
| 不安が強い | 安心できる場所や親子の触れ合いを描いた絵本 |
同じ年齢でも、楽しめる文章量や理解しやすい表現には個人差があります。
対象年齢より簡単な絵本でも、子どもが繰り返し読みたがるなら、今のその子に合っている一冊です。
子どもの心を育てる絵本の選び方
1.今感じている気持ちに近い本を選ぶ
怒ることが増えたときは怒りを扱った絵本、失敗を怖がっているときは挑戦や自己肯定感を扱った絵本など、今の様子に近いテーマから選びます。
ただし、子どもが落ち込んでいる最中に「あなたと同じだから読もう」と勧めると、責められているように感じる場合があります。
親子ともに落ち着いている時間に、まずは一つの物語として楽しむのがおすすめです。
2.表情や場面が分かりやすい本を選ぶ
登場人物の表情や行動が分かりやすい絵本は、言葉だけで気持ちを理解することが難しい子にも取り入れやすくなります。
- 顔の表情が大きく描かれている
- 登場人物が多すぎない
- 出来事と気持ちの変化が分かりやすい
- 同じ言葉や場面が繰り返される
といった点も確認してみましょう。
3.答えを教えすぎない本を選ぶ
心を育てる絵本は、「このときはこうするのが正解」と教えるためだけのものではありません。
子どもが、
- 自分ならどうするか
- 登場人物はなぜそうしたのか
- どのような気持ちだったのか
を自由に考えられる本も選択肢になります。
感想が出てこなくても問題ありません。黙って物語を味わうことも、大切な絵本の楽しみ方です。
0~2歳頃|安心感や気持ちの土台に触れる絵本
1.『いないいないばあ』
「いないいない」と「ばあ」の繰り返しを楽しめる赤ちゃん絵本です。
顔が隠れても再び現れる展開は分かりやすく、親子のやり取りへ広げやすいのが特徴です。
この絵本から楽しめること
- 「次は出てくる」という期待
- 顔や表情を見る楽しさ
- 親子で同じ場面を楽しむやり取り
言葉をまねさせる必要はありません。「ばあ」の場面で笑う、絵を見る、体を動かすことも立派な参加です。
2.『おつきさま こんばんは』
夜空に現れたお月さまの表情と、静かな言葉を楽しめる絵本です。
雲に隠れたお月さまが再び姿を見せる場面から、心配・安心・喜びなど、表情の変化に触れられます。
この絵本から話しやすいこと
- お月さまはどんな顔をしているか
- 見えなくなったとき、どんな気持ちだったか
- 再び会えたときの安心感
寝かしつけの効果を期待しすぎず、子どもが落ち着いて楽しめる時間に読みましょう。
3.『だるまさんの』
だるまさんの体の一部が、ユーモラスに描かれた絵本です。
言葉だけでなく、体を揺らす、指差す、同じ動きをまねするなど、さまざまな方法で参加できます。
この絵本から楽しめること
- 自分の体への関心
- 親子で同じ動きをする楽しさ
- 驚きや笑いを共有する経験
心を育てる読み聞かせは、難しい感情について話すことだけではありません。一緒に笑う時間も大切な心のやり取りです。
3~4歳頃|気持ち・あいさつ・思いやりに触れる絵本
4.『きもちってなあに?』
さまざまな気持ちを知り、「今どんな気持ちかな」と考えるきっかけになる絵本です。
まだ気持ちを言葉にしにくい子には、言葉を覚えさせようとするのではなく、絵や表情を見るところから始めます。
この絵本から話しやすいこと
- うれしいときの顔
- 悲しいときの体の様子
- 同じ出来事でも感じ方が違うこと
子どもが答えなければ、親が「私はちょっとドキドキするかも」と自分の気持ちを話すだけでも構いません。
▶ 『きもちってなあに?』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
5.『まめうしくんとこんにちは』
「こんにちは」「ありがとう」などの言葉を、さまざまな表情や声で楽しめる絵本です。
あいさつを言わせる練習ではなく、声の大きさや表情によって言葉の印象が変わることを親子で楽しめます。
この絵本から楽しめること
- 声の強さや話し方の違い
- 表情と気持ちのつながり
- 親子で声を出してまねする遊び
あいさつが苦手な子に、無理に声を出させる必要はありません。聞くだけ、親の表情を見るだけでも楽しめます。
▶ 『まめうしくんとこんにちは』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
6.『どうぞのいす』
「どうぞ」と置かれた椅子をきっかけに、動物たちの思いやりがつながっていく物語です。
誰かのために残しておく気持ちや、受け取ったものを次の相手へつなげる様子が描かれています。
この絵本から話しやすいこと
- 「どうぞ」と言われたときの気持ち
- 次の相手へ残した理由
- 誰かにしてもらってうれしかったこと
「人には必ず譲らなければならない」と教えるのではなく、登場人物が何を考えたのかを一緒に味わいましょう。
7.『くれよんのくろくん』
くれよんたちが絵を描くなかで、くろくんの役割やよさが見えてくる物語です。
自分と友達の違いや、一見すると必要がないように思えるものにも役割があることを考えるきっかけになります。
この絵本から話しやすいこと
- 仲間に入れないときの気持ち
- 一人ひとりの得意なこと
- みんなと違っていてもよいこと
「みんな仲良くしなければならない」という結論を急がず、くろくんやほかのくれよんの気持ちを自由に話してみましょう。
▶ 『くれよんのくろくん』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
4~6歳頃|怒りや不安と向き合う絵本
8.『おこりたくなるのはどんなとき?』
子どもが怒りたくなるさまざまな場面を通して、怒りには理由があることを考えられる絵本です。
「怒ってはいけない」と抑えるのではなく、どのようなときに怒りが生まれるのかを見つめるきっかけになります。
この絵本から話しやすいこと
- どんなときに腹が立つか
- 怒ったとき、体がどうなるか
- 怒りの奥にある悲しさや悔しさ
子どもの経験を無理に聞き出さず、「この子は嫌だったのかもしれないね」と登場人物の話から始めましょう。
▶ 『おこりたくなるのはどんなとき?』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
9.『ぼくのなかには おこりんぼうがいます』
強い怒りを感じたときの本人の体験が、子どもの視点から描かれています。
怒りが外からは「困った行動」に見えても、本人の中では止めにくいことや、苦しさがあることを考えられる一冊です。
この絵本から話しやすいこと
- 怒りが大きくなったときの感覚
- 周囲にはどのように見えているか
- 落ち着くために何があると助かるか
わが家でも、怒った行動だけを見るのではなく、その前に何があったのかを考えることの大切さを感じてきました。
絵本を読んだ直後に反省を求めず、子どもが話したくなったときに耳を傾けましょう。
▶ 『ぼくのなかには おこりんぼうがいます』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
5歳頃~小学校低学年|自信・失敗・自分らしさを考える絵本
10.『ダメダメだー』
うまくできないことがあると、「自分はダメ」と感じてしまう子に寄り添う絵本です。
失敗と自分自身の価値を切り離して考えるきっかけになります。
この絵本から話しやすいこと
- 失敗したとき、どんな気持ちになるか
- 「できなかった」と「自分はダメ」の違い
- もう一度試すときに何があると安心か
完璧主義や失敗への不安が強い子には、「頑張ろう」と励ます前に、悔しさや怖さを受け止めることも大切です。
▶ 『ダメダメだー』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
11.『ぼくのいいとこ』
自分のよいところが分からず悩む子が、周囲との関わりのなかで自分の長所に気づいていく物語です。
学校で「自分のよいところを書きましょう」と言われても思いつかない子にとって、自分を見る視点を増やすきっかけになります。
この絵本から話しやすいこと
- 得意なことだけが「よいところ」なのか
- 家族や友達から見た自分
- 優しさや丁寧さなど、見えにくい長所
わが家でも、「自分のいいところは?」と急に聞くだけでは答えにくいことがありました。
「弟に貸してあげたね」「最後まで話を聞いていたね」のように、具体的な行動を伝えると、自分のよさを理解しやすくなります。
▶ 『ぼくのいいとこ』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
12.『ぼくのニセモノをつくるには』
自分の代わりになるロボットを作るために、「自分とはどんな人なのか」を考えていく絵本です。
好きなもの、苦手なもの、できること、できないことなど、さまざまな面を含めて自分を知るきっかけになります。
この絵本から話しやすいこと
- 自分の好きなもの
- 得意なことと苦手なこと
- 家族や友達から見た自分
- 自分でもまだ分からない自分
一度にすべて理解しようとせず、気になったページだけ話しても構いません。
親子で「自分の取扱説明書」や「自分を表すもの」を描いてみる遊びにも広げられます。
▶ 『ぼくのニセモノをつくるには』を実際に読んだ感想と、親子での楽しみ方を見る
子どもの心を育てる読み聞かせのコツ
1.感想を無理に聞かない
読み終わるたびに「どう思った?」「何が分かった?」と質問すると、子どもが試されているように感じることがあります。
何も聞かずに終わっても問題ありません。
子どもが話し始めたときに、「そう思ったんだね」と受け止めましょう。
感想を聞かずに楽しむ方法や、子どもが答えやすい質問の順番については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
▶ 読み聞かせで質問しすぎないための声かけと、感想を聞くときの工夫を見る
2.気持ちを決めつけない
登場人物が下を向いていても、必ずしも「悲しい」とは限りません。
「悲しいね」と決める代わりに、
- 悲しいのかな
- 疲れているのかな
- 何か考えているのかな
と、複数の可能性を示す方法があります。
同じ表情でも感じ方が異なることを知るきっかけになります。
3.子どもの経験と結びつけすぎない
「あなたも昨日、同じことをしたよね」と言われると、注意されているように感じる子もいます。
最初は登場人物の話として楽しみ、子ども自身が経験を話し始めたら聞くようにしましょう。
4.親の気持ちも短く伝える
子どもに答えを求める代わりに、親が自分の気持ちを話す方法もあります。
- 「私はこの場面、少し寂しいな」
- 「ここはほっとしたよ」
- 「この子、頑張ったなと思ったよ」
親にもさまざまな気持ちがあることを、自然に伝えられます。
5.途中でやめてもよい
怖い場面や悲しい場面を嫌がったら、最後まで読む必要はありません。
好きな場面だけ読む、絵だけ見る、別の日に読むなど、子どもの反応に合わせて調整しましょう。
発達が気になる子と読むときの工夫
発達が気になる子の場合、登場人物の気持ちを想像する質問が負担になることがあります。
その場合は、最初から抽象的な質問をせず、目に見えることから確認します。
例えば、
- 「この子は泣いているね」
- 「大切なものが壊れたんだね」
- 「悲しかったのかもしれないね」
という順番で伝えると、出来事と気持ちを結びつけやすくなります。
また、
- 選択肢を2つにする
- 表情の絵を見せる
- 同じ本を繰り返す
- 文章を短くして読む
- 好きなページから始める
といった工夫もできます。
ただし、絵本の読み聞かせは療育や治療そのものではありません。
気持ちのコントロールや友達関係について強い困りごとがある場合は、園・学校・小児科・地域の発達相談なども利用してください。
よくある質問
心を育てる絵本は何歳から読めますか?
決まった開始年齢はありません。
0~2歳頃は、親子で表情や音を楽しむ絵本から始められます。
年齢が上がるにつれて、怒り・不安・友達関係・自己肯定感など、扱うテーマを少しずつ広げられます。絵本を読めば共感力が育ちますか?
絵本を読むだけで、必ず共感力が高まるとはいえません。
登場人物の経験や気持ちに触れ、親子で話すきっかけのひとつになります。
感想を言わせることより、物語を一緒に楽しむことを大切にしましょう。怒っているときに感情の絵本を読んでもよいですか?
強く怒っている最中は、絵本を読んだり話し合ったりする余裕がない場合があります。
まず安全を確保し、落ち着いてから別の時間に読みましょう。
怒った直後の反省教材として使わないことも大切です。同じ絵本ばかり読んでもよいですか?
問題ありません。
内容を知っている本には、安心して読めるよさがあります。
同じ場面でも、成長によって感じ方が変わることもあります。子どもが質問を嫌がる場合はどうすればよいですか?
質問をしなくても大丈夫です。
親が短い感想を伝えたり、ただ一緒に絵を見たりするだけでも、絵本を共有する時間になります。
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まとめ|絵本を「正解を教える教材」にしなくて大丈夫
子どもの心を育てる絵本には、次のようなテーマがあります。
- 喜びや安心感
- 怒りや悲しさ
- 思いやりや友達関係
- 失敗や挑戦
- 自分のよさや個性
- 相手と自分の感じ方の違い
絵本を読んだからといって、すぐに感情を言葉にできたり、友達に優しくできたりするとは限りません。
それでも、登場人物の姿を通して、
「こんな気持ちもあるんだ」
「自分だけではないんだ」
「同じ出来事でも、違う感じ方があるんだ」
と気づくきっかけになることがあります。
子どもに正解を教えることより、親子で同じ物語を見て、笑ったり驚いたり、ときには何も話さず余韻を味わったりする時間を大切にしてみてください。
子どもの今の悩みや興味に合う一冊が、気持ちについて話せる小さなきっかけになればうれしいです。