はじめに|VSIは「目で見て形や位置をとらえる力」
WISC検査の結果で、
「VSIが低めです」
「視空間に苦手さがあります」
「空間認知の課題が見られます」
と言われても、保護者としては少し分かりにくいですよね。
VSIとは、視空間指標のことです。
簡単に言うと、目で見た形や位置関係をとらえ、頭の中で整理する力です。
たとえば、
- 図形の形を見分ける
- 積み木やブロックを組み立てる
- 地図や位置関係を理解する
- 板書を見てノートに写す
- 文字や図形の向きをとらえる
- パズルや図形問題に取り組む
といった場面に関係します。
VSIが高い子は、図形やパズル、ブロック、地図などを理解しやすいことがあります。
一方で、VSIが低めの子は、図形問題、板書、空間の位置関係、工作や運動の一部でつまずきやすいことがあります。
ただし、VSIの数値だけで子どもの力を決めることはできません。
WISCでは、視空間だけでなく、言語理解、流動性推理、ワーキングメモリ、処理速度なども合わせて見ます。
この記事では、WISCのVSIについて、
- VSIとは何か
- VSIが高い子の特徴
- VSIが低い子の特徴
- 図形・板書・空間認知での困りごと
- DCDや不器用さとの関係
- 家庭でできる支援
- 学校で相談できる配慮
- わが家の体験談
を、保護者向けにわかりやすく解説します。
WISC検査の対象年齢・費用・検査内容・結果の見方を先に知りたい方は、こちらの記事にまとめています。
WISC検査とは?子どもの対象年齢・費用・結果の見方をわかりやすく解説
VSI(視空間指標)とは?
VSIは、Visual Spatial Indexの略で、日本語では「視空間指標」と呼ばれます。
WISC-Vの主要指標のひとつで、目で見た情報をもとに、形や位置関係を理解する力を見ます。
VSIでは、主に次のような力が関係します。
- 形を見分ける力
- 位置関係をとらえる力
- 全体と部分を見る力
- 図形を頭の中で組み立てる力
- 見本を見て再現する力
- 空間の中で向きや配置を考える力
たとえば、積み木で見本と同じ形を作る、パズルを組み立てる、図形の向きを考えるような力です。
VSIは、算数の図形、板書、工作、地図、スポーツ、身の回りの空間把握など、さまざまな場面に関係することがあります。
WISCの5つの指標の中でVSIはどんな位置づけ?
WISC-Vでは、主に次の5つの指標を見ます。
| 指標 | 読み方 | 見る力の目安 |
|---|---|---|
| VCI | 言語理解 | 言葉の理解、語彙、説明する力 |
| VSI | 視空間 | 目で見た形や位置関係をとらえる力 |
| FRI | 流動性推理 | ルールや関係性を見つけて考える力 |
| WMI | ワーキングメモリ | 情報を一時的に覚えて使う力 |
| PSI | 処理速度 | 見た情報を素早く正確に処理する力 |
VSIは、「見て分かる力」に関係しやすい指標です。
ただし、見る力といっても、視力そのものとは違います。
目で見た情報を、頭の中でどう整理するか、形や位置をどう理解するかに関係します。
そのため、視力に問題がなくても、VSIが低めだと図形や位置関係で困ることがあります。
VSIで行う主な課題
VSIでは、形や位置関係を見て考える課題が行われることがあります。
ただし、実際の検査問題を詳しく知りすぎると、正確な結果が出にくくなることがあります。
ここでは、家庭でイメージしやすい範囲で説明します。
見本と同じ形を作る課題
積み木や図形を使って、見本と同じ形を作るような課題です。
この課題では、
- 見本を見る
- 形を分解して考える
- 部分と全体を比べる
- 向きや位置を合わせる
- 手を動かして再現する
といった力が関係します。
図形やパズルを見て考える課題
いくつかの図形を見て、どの形が合うか、どう組み合わせるかを考えるような課題です。
この課題では、
- 図形の特徴をとらえる力
- 頭の中で形を動かす力
- 向きや配置を考える力
- 全体像をイメージする力
が関係します。
VSIの結果には、視覚認知、手先の器用さ、注意力、作業スピードなども影響することがあります。
VSIが高い子の特徴
VSIが高い子は、目で見た形や位置関係をとらえることに強みがある場合があります。
たとえば、次のような姿が見られることがあります。
- パズルやブロックが得意
- 図形問題が得意
- 地図やルートを覚えやすい
- 形の違いに気づきやすい
- 工作や組み立てが好き
- 見本を見て再現しやすい
- 頭の中で形をイメージしやすい
- 図や表で理解しやすい
VSIが高い子は、言葉で長く説明されるよりも、図や見本を見せるとすぐに理解できることがあります。
そのため、学習では、
- 図解
- イラスト
- 表
- 色分け
- 見本
- 写真
- 実物
を使うと力を発揮しやすい場合があります。
ただし、VSIが高いからといって、すべてが得意というわけではありません。
言葉で説明すること、時間内に書くこと、複数指示を覚えることなどは別の力も関係します。
VSIが低い子の特徴
VSIが低めの子は、形や位置関係をとらえることに負担がかかりやすいです。
たとえば、次のような姿が見られることがあります。
- 図形問題が苦手
- パズルやブロックで迷いやすい
- 板書を写すと位置がずれやすい
- ノートのマスから文字がはみ出す
- 地図や方向が分かりにくい
- 左右や上下の理解に時間がかかる
- 工作や折り紙で手順が分かりにくい
- 文字の形や向きを間違えやすい
- 机やランドセルの中を整理しにくい
これは「見ていない」「不器用なだけ」とは限りません。
目で見た情報を整理したり、形や位置関係を頭の中で組み立てたりすることに負担がかかっている場合があります。
VSIが低めの子には、見やすく整理された情報や、手順を小さく分ける支援が合うことがあります。
VSIが低い子が学習で困りやすい場面

算数の図形問題
図形問題では、形、向き、辺、角、位置関係を見て考える必要があります。
VSIに負担がある子は、
- 図形の向きが変わると分からない
- どこを見ればよいか分からない
- 展開図がイメージしにくい
- 定規やコンパスの使い方で混乱する
- 図を写すのに時間がかかる
ことがあります。
板書やノート
板書では、黒板の情報を見て、ノートのどこに書くかを考えながら写します。
VSIが低めの子は、
- 行がずれる
- どこを写しているか分からなくなる
- 文字や図の位置が乱れる
- 表やグラフを写しにくい
- 板書に時間がかかる
ことがあります。
生活の整理整頓
視空間の力は、整理整頓にも関係することがあります。
物の位置や入れる場所を把握しにくいと、
- ランドセルの中がぐちゃぐちゃになる
- 机の中を整理しにくい
- 物を探すのに時間がかかる
- どこに片付ければよいか分からない
ことがあります。
VSIとDCD・不器用さとの関係
VSIが低い子は、不器用さやDCD(発達性協調運動症)と関係して見えることがあります。
ただし、VSIが低いだけでDCDと判断することはできません。
DCDは、運動の協調や日常動作の不器用さなどを含めて、医師や専門家が総合的に判断します。
VSIに負担がある子では、
- 見本通りに作る
- 手元を見ながら調整する
- 形や位置を合わせる
- 体の動きと視覚情報を合わせる
場面で苦労することがあります。
そのため、書字、工作、運動、道具操作などで困りごとが出ることがあります。
気になる場合は、学校、療育、作業療法士、医療機関などに相談すると安心です。
VSIとASD・ADHDとの関係
VSIの結果は、発達特性を理解する手がかりになることがあります。
ただし、VSIだけでASDやADHDを診断することはできません。
診断は、医師が問診、行動観察、生活の様子、他の検査などを総合して判断します。
ASDとの関係
ASDのある子では、視覚的な情報に強みがある子もいれば、図形や空間把握に苦手さがある子もいます。
視覚情報が得意な場合、写真や予定表、図解が理解の助けになることがあります。
一方で、細部に注目しすぎて全体像をつかみにくい場合もあります。
ADHDとの関係
ADHD傾向がある子では、注意のそれやすさによって、見落としや位置のずれが起こることがあります。
VSIの問題というより、注意の持続や確認の苦手さが影響している場合もあります。
そのため、VSIの数値だけでなく、日常の様子と合わせて見ることが大切です。
VSIが低い子への家庭でのサポート

VSIが低めの子には、「見て分かりやすい環境」を整えることが大切です。
1.見本を近くに置く
遠くの黒板や説明を見て再現するのが難しい場合、手元に見本があると取り組みやすくなります。
家庭学習でも、
- 完成見本を置く
- 手順を写真で見せる
- 書く場所に薄く線を引く
- 図の見本を横に置く
といった工夫が役立ちます。
2.色分けする
情報が多いと、どこを見ればよいか分からなくなることがあります。
その場合は、
- 大事なところに色をつける
- 行ごとに色を変える
- 図形の辺や角を色分けする
- 持ち物の場所を色で分ける
と、注目しやすくなります。
3.手順を小さく分ける
折り紙、工作、図形問題などは、手順が多いと混乱しやすいです。
「まず半分に折る」
「次に角を合わせる」
「最後に線のところを見る」
のように、小さく分けて伝えると取り組みやすくなります。
4.実物を使って考える
頭の中だけで形をイメージするのが難しい場合は、実物を使うと分かりやすくなります。
- 積み木
- ブロック
- 図形カード
- タイル
- 折り紙
- 方眼紙
などを使って、手で動かしながら考えると理解しやすいことがあります。
5.整理整頓は場所を固定する
片付けが苦手な場合は、物の場所を固定します。
- 文房具は同じ箱へ
- プリントは同じファイルへ
- ランドセル置き場を決める
- 写真ラベルを貼る
- 引き出しの中を区切る
「どこに置くか」を見える化すると、探す負担が減ります。
VSIが低い子への学校での支援

学校では、板書、図形、工作、体育、整理整頓など、VSIに関係する場面が多くあります。
板書の支援
板書が苦手な子には、次のような支援が役立つことがあります。
- 板書をプリントで配布する
- 写す量を減らす
- 書く場所を指定する
- ノートの見本を見せる
- マス目や罫線が分かりやすいノートを使う
- 写真で後から確認できるようにする
板書を写すことに力を使いすぎると、授業内容を聞く余裕がなくなることがあります。
図形や工作の支援
図形や工作では、
- 完成見本を見せる
- 手順を写真で示す
- 1工程ずつ確認する
- 補助線を入れる
- 大きめの教材を使う
- 実物を触りながら考える
といった支援が合うことがあります。
先生へ相談するときの文例
学校へ相談するときは、具体的な困りごとと支援方法を短く伝えると分かりやすいです。
いつもありがとうございます。
WISC検査で、視空間(VSI)に苦手さがある可能性が分かりました。
家庭でも、図形や位置関係、板書を写すこと、整理整頓で時間がかかることがあります。
学校でも、板書や図形問題、工作の手順などで困っているかもしれません。
可能な範囲で、見本を近くに置く、手順を小さく分ける、板書量を調整する、図や場所を色分けするなど、ご相談できると助かります。
わが家の体験談
わが家の息子は、WISCでVSIに苦手さが見られました。
もともと、図形や空間の課題、体の使い方、不器用さには気になるところがありました。
検査結果を見て、
「だから図形やパズルでつまずきやすかったのか」
「見本通りに作るのが大変だったのか」
と納得する部分がありました。
家庭では、
- 手順を写真や絵で見せる
- 図形は実物を使う
- 書く場所を分かりやすくする
- 片付け場所にラベルを貼る
- できたところを言葉で確認する
ことを意識しています。
VSIの結果を知ったことで、「できない」のではなく、「形や位置をとらえるところに負担があるのかもしれない」と考えられるようになりました。
検査結果は、子どもを決めつけるものではなく、支援方法を考えるためのヒントだと感じています。
よくある質問
VSIとは何ですか?
VSIは視空間指標のことです。
目で見た形や位置関係をとらえ、頭の中で整理する力を見ます。
VSIが高い子にはどんな特徴がありますか?
パズル、ブロック、図形問題、地図、工作などが得意な場合があります。
図や見本を見せると理解しやすい子もいます。
VSIが低い子にはどんな特徴がありますか?
図形問題、板書、位置関係、整理整頓、工作、折り紙などで困りやすいことがあります。
ただし、VSIだけで子どもの力を決めることはできません。
VSIが低いと算数が苦手になりますか?
算数の中でも、図形、表、グラフ、位置関係などでつまずきやすいことがあります。
ただし、計算や文章題など別の分野は得意な場合もあります。
VSIと空間認知は関係ありますか?
関係することがあります。
VSIは、目で見た形や位置関係をとらえる力に関係するため、空間認知の苦手さを考える手がかりになります。
VSIとDCDは関係ありますか?
関係して見えることはありますが、VSIが低いだけでDCDと判断することはできません。
不器用さや運動面の困りごとが強い場合は、専門家に相談すると安心です。
VSIが低いと板書が苦手になりますか?
板書で困りやすくなることがあります。
黒板の情報を見て、ノートのどこに写すかを考える必要があるためです。
家庭でできるVSI支援はありますか?
見本を近くに置く、色分けする、手順を小さく分ける、実物を使う、片付け場所を固定するなどが役立ちます。
学校ではどんな支援が合いますか?
板書プリント、ノートの見本、補助線、色分け、手順写真、作業を小さく分ける支援などが合うことがあります。
VSIの結果はどう活かせばいいですか?
VSIの数値だけで判断せず、図形、板書、工作、整理整頓など、どの場面で困っているかを見て、支援方法を考えることが大切です。
まとめ|VSIは形や位置の理解を知るヒント
WISCのVSI(視空間指標)は、目で見た形や位置関係をとらえる力を見る指標です。
VSIが高い子は、パズル、図形、ブロック、地図、見本の再現などに強みがあることがあります。
VSIが低めの子は、図形問題、板書、工作、整理整頓、位置関係の理解などで困りやすいことがあります。
でも、VSIの数値だけで子どもの力を決める必要はありません。
大切なのは、
- どんな場面で困りやすいか
- どんな見せ方だと分かりやすいか
- どんな支援があると取り組みやすいか
- ほかの指標とのバランスはどうか
を見ていくことです。
検査結果は、子どもを評価するためではなく、支援を考えるためのヒントです。
その子に合った見せ方や環境を整えながら、「できた」と感じられる経験を増やしていけるといいですね。
関連記事
WISC検査の基本情報、対象年齢、費用、結果の見方を知りたい方はこちらです。
WISC検査とは?子どもの対象年齢・費用・結果の見方をわかりやすく解説
実際にWISC検査を受けた流れや、結果説明で感じたことはこちらにまとめています。
【体験談】発達検査WISC(ウィスク)の流れと結果|就学判断・診断の参考に
WISCのほかの指標について知りたい方はこちらも参考になります。
【発達検査WISC-Ⅴ】VCI(言語理解)とは?意味・特徴・結果の見方と家庭でできるサポート法と体験談
発達検査WISCでわかるFRI(流動性推理)|家庭・学校での支援法と体験談
【発達検査WISC-Ⅴ】WMI(ワーキングメモリ)とは?意味・特徴・結果の見方と家庭でできるサポート法と体験談