はじめに
「うちの子、どうしてこんなに勉強が苦手なんだろう…」
宿題に時間がかかる、先生の指示がうまく聞き取れない、すぐに忘れてしまう。
そんなお子さんの様子を見て、不安や焦りを感じたことはありませんか?
実は、学習のつまずきの背景には「ワーキングメモリ(作業記憶)」の弱さが関係していることがあります。
ワーキングメモリとは、短期間で情報を保持しながら処理する能力のこと。
この力が弱いと、黒板に書かれた文字を覚えてノートに写す、先生の話を聞いて行動に移す、文章を読んで内容を理解する、といった学習に欠かせないスキルがうまく働かなくなります。
私の息子も、幼稚園で集団行動が苦手だったり、先生の指示がなかなか頭に入らなかったりと、さまざまな困難を抱えていました。
その原因を探るうちに、ワーキングメモリの重要性に気づきました。
今回は、ワーキングメモリと学習障害の関係を詳しく解説し、ご家庭や学校でできる具体的なサポート方法をご紹介します。
目次
- ワーキングメモリとは?
- ワーキングメモリが弱いと何が大変?
子どもに現れる5つの特徴 - 実際に試したワーキングメモリのトレーニング法
- ワーキングメモリ強化トレーニング3選
- ワーキングメモリを鍛えるおすすめツール・アプリ
- 教育現場でのサポートと連携
- IQとワーキングメモリ(WM)の関係
- ワーキングメモリが弱い子との関わり方の工夫
- よくある質問
- まとめ
1. ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは、情報を一時的に保持しながら処理する力のことです。
簡単に言うと「頭の中のメモ帳」のようなもので、指示を聞いて行動したり、計算をしたり、文章を読んで内容を理解するために必要な能力です。
発達障害のある子どもは、このワーキングメモリが弱いことが多く、注意がそれやすかったり、学習のつまずきにつながったりします。
2. ワーキングメモリが弱いと何が大変?子どもに現れる5つの特徴
ワーキングメモリが弱いと、以下のような困りごとが出やすくなります。
指示を忘れやすい
「靴を履いて、カバンを持ってきて」といった2ステップの指示を出した際に、最初の「靴を履く」はできても、その後の「カバンを持ってくる」を忘れてしまうことがあります。

作業の途中で何をしていたか分からなくなる
お絵描きや宿題の途中で別のことに気を取られ、元の作業に戻ったときに「何をしていたか」が分からなくなることがあります。
また、作業中に話しかけられると、もともと取り組んでいた内容を思い出せなくなることも。
読み書きの困難
音読の際に、前の文章の内容を保持できず意味を理解するのに時間がかかることがあります。
また、黒板の文字をノートに写す際に、書いている途中で「どこまで写したか」を忘れてしまい、抜け落ちたり順番がバラバラになったりすることがあります。

計算ミスが多くなる
計算の途中で途中の数字を忘れてしまったり、繰り上がりや繰り下がりを忘れたり、長い式を解く際に次の手順が分からなくなったりします。
文章問題では、問題文の情報を保持しながら計算するのが難しく、途中で混乱しやすくなります。
話の順序が飛ぶ・説明が苦手
話したいことがあっても、途中で何を言おうとしていたのか忘れてしまい、話の順序が飛んだり、途中で止まったりすることがあります。
また、長い説明を整理して伝えるのが苦手になりがちです。

マルチタスクが苦手
授業や日常生活で複数の指示を受けたとき、それらを順番に処理するのが難しく、次に何をすればよいか混乱することがあります。

このように、ワーキングメモリが弱いと、学習面だけでなく、日常生活でも「うっかり忘れる」「途中で混乱する」といった困りごとが生じやすくなります。
3. 実際に試したワーキングメモリのトレーニング法
ワーキングメモリを鍛えるために、我が家で実際に試したトレーニング法や工夫を紹介します。
シンプルな指示にする工夫
「靴を履いて、カバンを持ってきて」ではなく、「靴を履いてね。(終わったら)カバンを持ってきてね」と、一つずつ区切って伝えるようにしました。
また、最初に「全部で2つお願いがあるよ」と伝えると、意識しやすくなりました。

視覚的サポートを活用
言葉だけでなく、イラストや写真を使って「やることリスト」を作成しました。
例えば、
- 朝の支度(顔を洗う・歯を磨く・着替える)
- お片付けの手順(おもちゃを箱にしまう→絵本を棚に戻す)


このように視覚的に見せることで、記憶の補助になり、忘れにくくなりました。
短いゲームで鍛える
ワーキングメモリを鍛えるために、簡単なゲームを取り入れました。

- 神経衰弱:
絵柄を覚えながらカードをめくる遊びで、記憶力を鍛えました。 - 記憶力アプリ:
「どこに何があったか」を覚えるゲームアプリを活用し、楽しくトレーニングしました。
4. 家庭で簡単にできる!ワーキングメモリ強化トレーニング3選
ワーキングメモリを鍛えるために、親子で楽しく取り組める方法を紹介します。
音読の練習を段階的に進める
音読の練習は、短い文章から始め、少しずつ長い文章へとステップアップしながら進めるのが効果的です。
その過程で、内容について話し合うことで、理解力も深まります。
特に音読が苦手な子どもには、短い詩や簡単な文章から始め、徐々に長文へと移行することで、ワーキングメモリ(短期間で情報を保持し、処理する力)を鍛えることができます。
これにより、文章全体を把握し、記憶する力が向上します。

視覚的な補助を活用する
計算や問題解決には、図やイラスト、メモを使うと理解しやすくなります。
計算の途中経過を紙に書く習慣をつけると、次のステップに進みやすくなります。

タスクを細かく区切る
複数の指示を一度にこなすのが難しい場合は、タスクを小分けにして提示し、達成感を持たせるのが効果的です。

5. ワーキングメモリを鍛えるおすすめツール・アプリ
最新のテクノロジーを活用し、子どもが楽しくワーキングメモリを強化できるツール・アプリを紹介します。
Cogmed
ワーキングメモリ向上を目的としたトレーニングプログラム。
個別の進度に合わせたゲーム形式のトレーニングが特徴です。
Lumosity
認知能力を鍛えるゲームやワーキングメモリを強化するゲームが豊富に揃っています。
子どもでも楽しめるデザインと難易度で、日常的に取り入れることができます。
Peak
脳トレゲームを中心としたアプリで、ワーキングメモリに特化したゲームもあります。
短時間で取り組めるため、継続しやすいのが特徴です。

これらのツールを活用することで、子どもが無理なく楽しくワーキングメモリを鍛えることができます。
6. 教育現場でのサポートと連携

学校や幼稚園と連携することは、子どものワーキングメモリをサポートする上で重要です。
特にIEP(個別教育プログラム)とは、特別な支援が必要な子どもに対し、学校が個別に作成する学習計画のことを指します。
IEPを活用することで、子どもの特性に応じた環境を整え、学習の負担を軽減できます。
また、先生に子どものワーキングメモリの特性を理解してもらい、
✔ 視覚的な補助を使う(イラストや図表)
✔ 段階的な指示を出してもらう(1つずつ明確に指示)
などの工夫を取り入れてもらうと、学習のしやすさが大きく向上します。
家庭と学校が協力し、子どもが安心して学べる環境を作ることが、学習の困難を減らす大きな助けとなります。
7. IQとワーキングメモリ(WM)の関係

「IQが高いのに、どうしてこんなに忘れっぽいの?」
「話は理解しているはずなのに、なぜか指示が通らない…」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
実は、IQとワーキングメモリ(WM)は密接に関わっているものの、必ずしも比例するわけではありません。
ここでは、その関係性について分かりやすく説明します。
ワーキングメモリ(WM)とは?
ワーキングメモリとは、一時的に情報を保持しながら処理する能力のこと。
問題解決や学習、注意のコントロールに関わります。
IQ(知能指数)とは?
IQは知的能力を数値化した指標で、
✔ 言語理解(VCI)
✔ 知覚推理(PRI)
✔ ワーキングメモリ(WMI)
✔ 処理速度(PSI) の4つの指標に分かれます
(例:ウィスク検査)。
ワーキングメモリとIQの関係
✔ ワーキングメモリが低いとIQ全体のスコアに影響することがある
✔ただし、 IQが普通〜高めでも、ワーキングメモリだけが低いことはよくある
具体的なパターン
① IQが低く、ワーキングメモリも低い
→ 全体的に認知機能が低めで、学習や思考のスピードがゆっくり
② IQは普通だが、ワーキングメモリが低い(よくある!)
→ 「話を理解する力や知識はあるけど、複数の情報を同時に処理するのが苦手」
→ 例えば
📌 一度に複数の指示を聞くと忘れてしまう
📌 順番通りに作業するのが難しい
📌 計算はできるのに、暗算が苦手
📌 読み書きはできるのに、文章をまとめるのが苦手
③ IQが高いのに、ワーキングメモリが低い(発達特性のある子に多い)
→ 「考える力はあるけど、記憶の持続が難しい」
→ 例えば
📌 難しい質問には答えられるのに、簡単な指示を忘れる
📌 知識はあるけど、テストの時間内に解けない
📌 頭が良いのに、日常の段取りが苦手
まとめ
💡 ワーキングメモリはIQの一部だけど、IQ全体のスコアを決めるものではない
💡 IQが高くてもワーキングメモリが低いことはよくある
💡 ワーキングメモリが低いと「困りごと」は多くなるが、知的能力とは別
サポートのポイント
✔ 短い指示にする
✔ 視覚的サポートを増やす(イラスト・スケジュール表)
✔ 作業を小分けにする
ワーキングメモリが弱めの子には、こうした工夫を取り入れることで、日常生活や学習がスムーズになります😊
8. ワーキングメモリが弱い子との関わり方の工夫
ワーキングメモリが弱いと、日常のちょっとしたことでもつまずくことが多くなります。
そのため、親として気をつけている関わり方の工夫を紹介します。
1. 怒らず、繰り返し伝える
忘れたり、途中で抜けたりしても、「なんでできないの!」と怒らずに、「もう一度やってみようね」と落ち着いて伝えるように心がけています。

2. 短く、具体的に話す
長い説明や抽象的な言葉は理解しにくいため、「〇〇をしたら、次に〇〇しようね」とシンプルに伝えるようにしました。

3. 一つできたら褒める
少しでもできたら、「ちゃんと覚えてたね!すごいね!」とポジティブに声かけをすることで、自信につなげるようにしています。

9. よくある質問
ワーキングメモリとは何ですか?
短期間の記憶を保持しながら情報を処理する能力のことです。
学習や日常生活で重要な役割を果たします。ワーキングメモリが弱いとどんな影響がありますか?
読み書きの苦手さ、計算の困難、複数の指示を覚えられない、注意散漫などの問題が起こることがあります。
ワーキングメモリは鍛えられますか?
一定のトレーニングで向上が期待できます。音読やゲーム、視覚的なサポートなどが効果的です。
学習障害のある子どもにどんなサポートができますか?
タスクの分割、視覚的な補助、音読の工夫、計算の補助などが役立ちます。
アプリを使うとワーキングメモリが鍛えられますか?
「Cogmed」「Lumosity」「Peak」などのアプリは、ゲーム感覚で記憶力を向上させるのに役立ちます。
学校で先生に相談するときのポイントは?
具体的な困りごとを伝え、視覚的補助や個別対応の提案をすることが大切です。
幼稚園児でもワーキングメモリの問題はありますか?
はい。指示を覚えられない、集団行動が苦手、話が長くなると混乱するなどの兆候が見られることがあります。
ADHDの子どもはワーキングメモリが弱いですか?
ADHDの子どもはワーキングメモリの問題を抱えていることが多いですが、個人差があります。
家庭でできるワーキングメモリ強化の遊びは?
神経衰弱、しりとり、ストーリー作り、積み木遊びなどが効果的です。
どのくらいの期間でワーキングメモリは改善しますか?
個人差がありますが、継続的なサポートを行うことで徐々に改善が期待できます。
まとめ
ワーキングメモリが弱い子どもにとって、学習は想像以上に大きな負担になります。
私自身、息子の「できないこと」ばかりに目が向き、「なぜ?」と悩み続けていました。
しかし、それは彼の努力不足ではなく、情報を整理しにくい脳の特性によるものだったのです。
その気づきから、私たちは家庭でできる工夫を取り入れ始めました。
例えば、読み聞かせの途中で「次はどうなると思う?」と問いかけることで、記憶力や思考力を刺激するように。
また、視覚的なサポートとして、タスクを一つひとつステップごとに示したカードを使うことで、「次に何をすればいいか」が分かりやすくなりました。
また、遊び感覚で学べるアプリやゲームも取り入れてみました。
「Lumosity」や「Peak」などの脳トレアプリは、楽しみながら記憶力や認知力を鍛えるのにぴったり。
ゲーム要素があると、息子は目を輝かせて取り組み、学びへの意欲が自然と高まりました。
学習に困難を感じるお子さんのサポート方法は、一つではありません。
それぞれの子に合った工夫を取り入れながら、楽しみながら成長を見守っていきましょう。
家庭と幼稚園が協力することで、子どもは安心して成長できます。
完璧を目指すのではなく、「できること」を少しずつ増やしていくことが大切なのだと感じています。
もし、お子さんが「指示が通りにくい」「忘れっぽい」と感じる場合は、今回紹介した方法を試してみてください。
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次回予告
次回は、「空間認知能力を高める6つの遊び|ジャグリングやビジョントレーニングも紹介」です。
ぜひお楽しみに!