1. はじめに:ワーキングメモリと学習障害の関係
発達障害や学習障害(LD)を抱える子どもたちにとって、日常の中で記憶や注意を維持することは大きな課題です。
特に学習の場面では、こうした困難が顕著に現れることが少なくありません。
前回の記事「ワーキングメモリを鍛える!神経衰弱やものがたり、積み木を使った効果的なトレーニング方法」でもご紹介した通り、家庭で楽しみながらワーキングメモリを鍛える方法はありますが、学習障害の背景にはこのワーキングメモリ(作業記憶)の弱さが深く関連していることがあります。
ワーキングメモリとは、短期間で情報を保持し、同時に操作するための能力です。
この機能がうまく働かないと、次々に出される情報を処理できず、混乱やフラストレーションを引き起こしてしまいます。
私の息子も幼稚園で集団活動や指示に従う場面で困難を感じることがありましたが、それは彼のワーキングメモリの弱さが原因でした。
今回は、ワーキングメモリと学習障害の関係についてさらに深掘りし、家庭や学校で実践できる具体的なサポート方法をご紹介します。
目次
- はじめに:ワーキングメモリと学習障害の関係
- ワーキングメモリが学習に与える影響
- 家庭でできるワーキングメモリ強化法
- ワーキングメモリを強化するためのアプリ紹介
- 教育現場でのサポートと連携
- まとめ
- 次回予告
2. ワーキングメモリが学習に与える影響
ワーキングメモリは学習の基礎となる重要な機能で、記憶力や集中力、認知能力を支えています。
この機能が弱いと、以下のような学習活動で困難が見られます。
読み書きの困難
ワーキングメモリが弱い子どもは、音読の際に文章全体を把握するのが難しいです。
文章を読み進める中で、前に読んだ部分の意味や内容を保持できず、混乱しやすい。
計算や数学の問題
計算の手順やステップを頭の中で保持しながら進めるのが難しいため、途中でつまづきがちになります。
例えば、長い式や問題の解答途中で次に進むべきステップがわからなくなることがよくあります。
マルチタスクの困難
授業や日常の場面で、複数の指示を同時に受けた際に、それらを頭の中で保持して順番に処理することが難しいです。
そのため、次に何をすべきかで混乱しやすくなります。
こうした困難を抱える子どもたちにとって、家庭や学校でのサポートが不可欠です。
3. 家庭でできるサポート方法
ワーキングメモリを強化するためには、日常生活の中で簡単に取り入れられる方法はたくさんあります。
特別な訓練を必要とせず、親子で楽しみながら行えるトレーニングや工夫を紹介します。
音読の練習を少しずつ進める
短い文章から始めて徐々に長くし、内容を一緒に話し合います。
音読が苦手な子どもは、短い文章や詩を読み上げることから始め、少しずつ長い文章や話を読み進めることで、ワーキングメモリを鍛え、文章全体を保持する力を養います。
視覚的な補助を使う
計算や問題解決では、目で見て理解しやすい図やイラスト、メモを活用することが効果的です。
計算の途中経過をメモする習慣をつけると、次のステップに進みやすくなります。
タスクを明確に区切る
複数の指示や作業を一度にこなすのが難しい子どもには、タスクを細かく分けて提示し、達成感を持たせる方法が効果的です。
たとえば、「まず机を片付けてから、ノートを出そう」と一つずつ取り組ませることで成功体験を積み重ねられます。
4. ワーキングメモリを強化するためのツールとアプリの紹介
現代のテクノロジーを活用し、子どもが楽しみながらワーキングメモリを鍛えられる手段やアプリをご紹介します。
Cogmed
ワーキングメモリ向上を目的としたトレーニングプログラムです。
個別の進度に合わせたトレーニングをゲーム感覚で行えます。
Lumosity
認知能力を鍛えるゲームやワーキングメモリを強化するゲームが豊富です。
子どもでも楽しめるデザインと難易度で、日常的に取り入れることができます。
Peak
脳トレゲームを中心としたアプリで、ワーキングメモリに特化したゲームもあります。
短時間で楽しくの脳を鍛えることができるアプリで、子どもも取り組みやすいのが魅力です。
これらのツールを日常生活に取り入れることで、子どもが楽しくワーキングメモリを鍛える機会を提供できます。
5. 教育現場でのサポートと連携
学校や幼稚園の先生とも連携を図ることが、子どものワーキングメモリをサポートする重要なポイントです。
特に、IEP(個別教育プログラム)を活用することで、子どもの特性に応じた学習環境を整えられます。
先生に子どものワーキングメモリの弱さについて理解を求め、授業中に視覚的な補助や段階的な指示を出してもらうなどのサポートが有効です。
家庭と学校が協力し合い、子どもが自信を持って学べる環境を作り出すことが、学習障害を抱える子どもたちにとっての大きな支えになります。
6. まとめ
ワーキングメモリと学習障害へのサポートは、私たち家族にとっても大きなテーマです。
息子が幼稚園で集団行動が苦手だったり、家で癇癪が増えたりしたとき、「どうしてこうなってしまうのだろう」と悩みました。
しかし、これらの行動は単なる「困ったこと」ではなく、彼の中で情報が整理できていないサインだと気づいたのです。その背景にある一つの要因がワーキングメモリの弱さでした。
私たちはまず、家でできる小さな工夫から始めました。
毎晩の読み聞かせは、息子にとってお話を楽しむだけでなく、記憶力や集中力を養う大切な時間です。
読み聞かせの途中で「次はどうなると思う?」と問いかけることで、息子の考える力を引き出すことも心がけています。
また、遊び感覚で学べるアプリやゲームも取り入れてみました。
「Lumosity」や「Peak」といったアプリは、息子が楽しみながら自然と脳をトレーニングできるので、遊びと学びを上手に組み合わせる大切さを実感しました。
ゲーム要素があると、息子は楽しそうに目を輝かせて取り組みます。
こうした工夫は、息子が自分から興味を持つきっかけになり、負担感なく成長を支える方法だと感じています。
最近では、視覚的なサポートも取り入れています。たとえば、タスクを一つひとつステップごとに確認できるカードや図を用意し、「次はこれをするんだね」と視覚的に分かりやすく工夫しています。
こうした取り組みを日々の生活に取り入れることで、息子の学びや社会的スキルを少しずつ支えていけると信じています。
さらに、幼稚園の先生方とも連携し、息子への理解とサポートをお願いしています。
家庭と幼稚園の協力体制が整うことで、息子の成長を見守る安心感が増しました。
親としては、完璧を目指さず、彼が楽しみながら成長できるよう、長い目で見守っていくことが大事だと感じています。
次回予告
次回は、「空間認知能力を高める6つの遊び|ジャグリングやビジョントレーニングも紹介」です。ぜひお楽しみに!