はじめに|ボールや形の遊びが、難しそうに見えるときに
「ボールが来ても、うまく受け取れない」
「見本と同じ場所に、物を置くことが難しい」
「間違い探しや点図形を、どう簡単にすればよい?」
そんなふうに迷うことはありませんか?
わが家でも、息子が物の配置を捉えにくそうに見えたり、準備や片付けに時間がかかったりすることがありました。
片足でバランスを取る運動や、ボール遊びにも苦労していました。
私も、療育や専門家から教わったことを手がかりに、親子で取り組める遊びを考えてきました。
ただし、こうした困りごとすべてを、空間認知だけで説明できるわけではありません。見ること、動きを考えること、体を動かすことなど、いくつもの働きが関わっています。
この記事では、空間認知を使う活動を含め、見る・位置を合わせる・目と手を一緒に使う6種類の遊びを紹介します。
難しい遊びを最後まで続けるより、本人が楽しめる部分と、取り組みやすい条件を探していきます。
※体験談はわが家の記録です。各遊びの手順は家庭で取り入れる場合の例で、6種類すべての効果を測定した記事ではありません。
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空間認知とは?物や自分の位置・向き・距離を捉えること
空間認知には、物同士や、自分と物との位置関係、向き、距離などを捉える働きが含まれます。
例えば、
- 箱の中に、どの向きなら物が入るか考える
- 見本と同じ位置に、積み木を置く
- 机の下や椅子の横など、場所の関係を捉える
といった場面です。
英国NHSの作業療法資料でも、視空間の位置関係を、自分や複数の物の関係を捉える働きとして説明しています。oxfordhealth.nhs.uk
空間認知・色の見分け・目の動きは、同じではない
今回紹介する遊びには、関連するさまざまな働きがあります。
| 働き | 遊びの中で行うこと |
|---|---|
| 位置・向き・距離を捉える | 見本と同じ場所に置く、近い・遠いを確かめる |
| 形や色の違いを見分ける | 同じ絵を探す、色で分ける |
| 目で対象を捉える・追う | 気になる物を見る、動く物を目で追う |
| 目と手を合わせて使う | 見た位置へ手を伸ばす、線を引く |
色を分ける遊びは、主に色の違いを見分ける活動です。空間認知を直接評価したり、鍛えたりする遊びと同じには扱いません。
また、ボールを受け取る活動には、見え方だけでなく、動くタイミングや姿勢、手の操作なども関わります。
一つの遊びが苦手だからといって、特定の能力が低いとは判断できません。
家庭で楽しむ6つの遊び|始め方と難しさの変え方
| 遊び | 主に行うこと | 簡単にする方法 |
|---|---|---|
| ① 物を見る・動きを追う遊び | 対象を見る、動きを目で追う | 一つの物を、ゆっくり動かす |
| ② ボール遊び | 距離や動きを見ながら受け渡す | 近い距離で、床を転がす |
| ③ 一つの布を投げて受ける遊び | 落ちてくる物に合わせて手を動かす | 大人が落とし、本人が受け取る |
| ④ 間違い探し | 二つの絵を見比べる | 見る範囲と違いの数を減らす |
| ⑤ 色分け遊び | 色を見分け、同じ仲間へ分ける | 二色から、見本と合わせる |
| ⑥ 点図形・位置合わせ | 見本の位置や線を確かめる | シールや指を使い、一部分だけ行う |
この表は、できる・できないを判定するためのものではありません。本人が気になった遊びを一つ選び、道具や手順を変えて試せます。
① 物を見る・動きを追う遊び|目の体操を課題にしすぎない

一つの物を見ることを「注視」、動く物を目で追うことを「追視」と呼びます。
家庭では、好きなおもちゃを見る、ゆっくり転がる物を見るなど、遊びの中で取り入れられます。
家庭での例
- 大人が持った好きなおもちゃを、一緒に見る
- おもちゃの車を、短い距離でゆっくり転がす
- 布をゆっくり動かし、本人が気づいた動きを楽しむ
顔や頭を動かして見ても構いません。「頭を動かさず、目だけで追って」と求める必要はありません。
また、小さな点を長く見つめる、遠近を何度も切り替えるといった練習を、家庭で一律に課すことは避けます。
見え方が気になる場合は、遊びで確かめ続けない
目を細める、片目を閉じる、物が二つに見えると話す、目の痛みを訴えるなど、見え方が気になる場合は眼科へ相談してください。
眼科で行う評価や治療と、家庭で物を見る遊びは分けて考えます。米国小児眼科斜視学会も、目の運動などを学習障害の改善方法として勧める科学的根拠は示されていないと説明しています。aapos.org
② ボール遊び|投げる前に、転がして受け渡す

ボールの場所や動きを見ながら、手を伸ばしたり、相手へ渡したりする遊びです。
最初は、近い距離で床を転がすところから始められます。
家庭での始め方
- 家具や足元を確認し、遊ぶ範囲を決める
- 親子で向かい合い、ゆっくり転がす
- 本人が受けやすい場所や速さへ調整する
大きさだけでなく、重さ、柔らかさ、転がる速さ、持ちやすさも確かめます。
NHSのボール遊びの資料でも、動きの遅い物を使う、距離を近くする、両手や容器で受けるなど、活動を調整する方法が紹介されています。Somerset NHS Foundation Trust
| 難しいところ | 変え方の例 |
|---|---|
| 飛んでくるボールが怖い | 投げずに転がす、先に合図する |
| 手からこぼれる | 軽く扱いやすい物にする、かごで受ける |
| 速くて間に合わない | ゆっくり動かす、距離を調整する |
| 投げる方向が定まらない | 近くの大きな目標へ転がす |
| 疲れたり嫌がったりする | 休む、別の遊びにする |
小さなボールや片手キャッチへ進むことを、必須の目標にはしません。
▶ ボールを受け取ることが難しいときの具体的な遊び方は、「ボールキャッチが苦手な子への遊び方|4歳の息子と試した道具・距離・受け方の工夫」にまとめています。
③ ジャグリングへの入口|一つの布を投げて受けるところから

複数のボールを投げ続けるジャグリングは、初めて取り組む幼児には難しい場合があります。
家庭では、まず一つの軽い布を、短く投げ上げたり、落ちてくるところを受けたりする遊びに変えられます。
これは、本格的なジャグリングとは分けた、投げて受ける活動の例です。
家庭での例
- 大人が布を落とし、本人が両手で受ける
- 本人が一つ投げ、大人が受ける
- 本人が小さく投げ、そのまま両手で受ける
難しい場合は、受け取らず、落ちる様子を見るところからでも構いません。
軽い布など、ゆっくり動く物を使う方法は、NHSの子どもの運動支援資料でも紹介されています。NHFT
個数を増やすことだけを目標にしない
二つ、三つと増やすより、本人が扱いやすい高さや動きかを見ます。
布は顔や首に巻かず、周囲にぶつからない範囲で遊びます。風船を使う場合は、割れた破片などが口に入らないよう、大人が管理します。
④ 間違い探し|全部見つけるより、見比べやすい絵を選ぶ

二つの絵を見比べ、違うところを探す遊びです。
形や細部、位置などを見る場面がありますが、違いを見つける速さだけで、空間認知や集中力を判断するものではありません。
家庭での始め方
- 絵の情報が少ない物を選ぶ
- 二つの絵を、近くに並べる
- 違いを一つだけ探す
- 見る範囲を、紙などで区切る
例えば、全体を何度も見回すことが難しければ、
「この動物の辺りを、一緒に見てみようか」
と、範囲を示せます。
本人が違いに気づいていても、指さす・丸を付ける操作が難しい場合があります。言葉で伝える、大人が印を付けるなど、答え方も変えられます。
⑤ 色分け遊び|速さを競わず、分け方を確かめる

色の違いを見分けて、物を分ける遊びです。
色の識別は空間認知と同じではありませんが、道具の見やすさや、選び方を考える活動として紹介します。
家庭での始め方
- 見分けやすい二色の、大きめの物を用意する
- それぞれの色の見本を、容器の前に置く
- 同じ色の物を、対応する容器へ入れる
色の名前を言うことまで求めず、見本と同じ物を選ぶ形にもできます。
| 難しいところ | 変え方の例 |
|---|---|
| 色の名前が分からない | 言葉だけでなく、実物の見本を示す |
| 色の違いが分かりにくい | 形や模様でも区別できるようにする |
| 物が多くて迷う | 出す数を減らす |
| ルールが途中で変わると困る | 一度の遊びでは、分け方をそろえる |
制限時間や「早く」という声かけを加えず、本人が見分けやすい色から楽しめます。細かな色合いの違いまで、正しく答えることを求める必要はありません。
⑥ 点図形・位置合わせ|線を描く前に、置く・指す方法も
点図形は、見本を見ながら、点の位置や線のつながりを写す活動です。見本と同じ位置に印を付けたり、点を線で結んで同じ形を描いたりします。
番号順に点を結んで絵を完成させる「点つなぎ」とは、取り組む内容が異なります。
NHSの視知覚に関する資料でも、見本を見て配置や模様を再現する活動が紹介されています。wsh.nhs.uk
線を引かなくても始められる

- 同じ位置の点を指さす
- 見本と同じ場所に、大きめのシールを貼る
- 少数の点の間を、指でたどる
- 大人が一部分を描き、本人が続きを選ぶ
鉛筆を使う場合も、点の数や線を減らし、一部分から試せます。
「位置が分かる」と「線を描ける」を分ける

場所を分かっていても、筆記具を動かすことが難しい場合があります。
「ここだと思う?」
と指さして確かめ、大人が線を引く方法もあります。
線が曲がることや、枠からはみ出すことだけで、空間認知の弱さを判断しないようにします。
わが家の経験から|苦手な遊びを増やすより、取り組み方を見る
息子は、物の配置を捉えることや、片足でバランスを取る運動、ボール遊びなどに苦労していました。
私も「練習する回数を増やした方がよいのかな」と考えたくなる場面がありました。
ただ、今振り返ると、何が難しいのかを一つずつ見ることも大切だったと思います。
- ボールが怖かったのか
- 速くて、動く時間が足りなかったのか
- 見本が遠く、見比べにくかったのか
- 手や体の操作が難しかったのか
同じ「できない」に見えても、必要な手助けは変わります。
親子で笑い合いながら取り組めた時間は、私にとって大切な思い出です。その一方で、遊びだけによる能力の変化を測定したわけではありません。
▶ 道具や手順の変え方は、家庭でできる療育遊び6選|発達が気になる子に合わせた遊び方と調整のコツでも紹介しています。
遊びを選ぶときのコツ|数・速さ・範囲を一つ変える
難しそうな場合は、励まして繰り返す前に、条件を変える方法があります。
| 変えること | 例 |
|---|---|
| 数 | ボール、カード、点を少なくする |
| 速さ | ゆっくり転がす、落ちるのが遅い物を使う |
| 距離 | 近い場所で受け渡す、見本を手元に置く |
| 見る範囲 | 一部分だけ示す、関係のない物を減らす |
| 操作 | 描く代わりに指さす、手の代わりに容器で受ける |
| 終わり方 | 一つできたところで終える、本人がやめたら休む |
一度に全部を変えず、一つ変えたときの様子を見ます。
「もう一回」と誘っても本人が嫌がるなら、休む、別の遊びにする、その日は終えることも選べます。
教材・道具を買う前に|何を取り組みやすくしたいか
家にある物で試した後、必要に応じて道具を選べます。
| 候補 | 購入前に確認したいこと |
|---|---|
| 柔らかいボール | 大きさ、重さ、転がる速さ、持ちやすさ、対象年齢 |
| 投げて受ける遊び用の布 | 大きさ、素材、用途、使用上の注意 |
| 間違い探しの本 | 絵の情報量、違いの数、見開きの見やすさ |
| 色分け用の道具 | 部品の大きさ、見分けやすさ、扱いやすさ |
| 点図形の教材 | 点の数、間隔、見本の位置、筆記の負担 |
小さな部品は、本人だけでなく、きょうだいが口に入れる可能性も考えます。
室内で転がして遊ぶボールを探している方へ
転がして受け渡す遊びには、本人が扱いやすいボールを選びます。購入前に、大きさ・重さ・素材・対象年齢と、使用する床に合うかを確認してください。
ゴール付きセットを検討する場合も、まずはボール単体で楽しめそうか、ゴールを置く場所があるかを考えます。ゴールへ投げ入れる遊びまで、最初から取り入れる必要はありません。
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見本を見て写す点図形の教材を探している方へ
対象年齢だけでなく、点の数や間隔、見本の位置、書く量を確認します。中面の見本があれば、本人が取り組めそうな課題かを見て選べます。
線を描くことが負担になる場合は、まず同じ位置を指さすなど、取り組み方を変えて試せます。
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価格:1460円 |
見え方や動きが気になるときは、相談してよい
家庭で遊び方を変えても、本人が困る場面が続くことはあります。
見え方が気になる場合は眼科へ、動作の難しさで生活に支障がある場合は、かかりつけ医や普段の支援先へ相談できます。
「空間認知が弱いと思います」だけでなく、
「近くで転がすボールは受けられますが、投げると顔を背けます」
「同じ場所は指させますが、線を描くと大きくずれます」
など、場面を伝えると、何を確かめるか考えやすくなります。
よくある質問
ボールが苦手だと、空間認知が弱いのでしょうか?
それだけでは判断できません。
見え方、タイミング、姿勢、手の操作、怖さなども関わります。難しい部分を分けて、取り組み方を調整します。
色分けも空間認知のトレーニングですか?
主に、色の違いを見分けて分類する遊びです。
位置や向きを捉える働きとは分けて考え、この記事では関連する視覚的な遊びとして紹介しています。
ジャグリングは、二つのボールから始めますか?
二つから始める必要はありません。
一つの布を落として受ける、親子で受け渡すなど、本人ができる動きに変えられます。
頭を動かさず、目だけで追わせた方がよいですか?
家庭の遊びでは、それを条件にする必要はありません。
専門家から個別の練習を提案されている場合は、その目的や方法を担当者へ確認してください。
点図形がうまく描けません
点の位置を捉えることと、線を描く操作のどちらが難しいかを見ます。
指さしやシールへ変える、点を少なくする、大人が一部分を描く方法もあります。
毎日、何分取り組めばよいですか?
この記事では、効果を保証する時間や回数を設定していません。
毎日の課題にせず、本人の興味や疲れ、大人の余裕に合わせて取り入れられます。
遊びで学力や姿勢も改善しますか?
この6種類の遊びから、学力や姿勢の改善を一律に約束することはできません。
読み書きや姿勢で困っている場合は、その活動で必要な支援を別に考えます。
まとめ|「できない」を一つの能力で説明しない
今回紹介したのは、
- 物を見る・動きを追う遊び
- ボール遊び
- 一つの布を投げて受ける遊び
- 間違い探し
- 色分け遊び
- 点図形・位置合わせ
の6つです。
それぞれに、位置や動きを見る、違いを見分ける、目と手を合わせて使う場面があります。
わが家でも、息子がボールやバランスの遊びに苦労する姿がありました。その経験から、練習する量だけでなく、道具や速さ、見本の示し方にも目を向けたいと思います。
まずは、本人が楽しめそうな遊びを一つ。難しい部分を少し変えながら、親子で過ごしやすい形を探していきたいです。
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参考資料
- Oxford Health NHS「Visual spatial relations skills」
- West Suffolk NHS「Visual Perception Skills」
- Somerset NHS「Ball skills」
- AAPOS「Vision Therapy」
情報確認日:2026年11月4日