はじめに
「朝の支度がなかなか進まない」
「服のチクチクが気になって着替えられない」
「言葉が詰まって、うまく話せない」
「幼稚園や集団生活で疲れやすい」
ASDのある子どもを育てていると、毎日の生活の中に小さなつまずきがたくさんあります。
わが家の息子も、幼児期からASDの特性があり、吃音、触覚過敏、集団生活の苦手さ、友達との距離感などに悩んできました。
特に大きかったのは、毎日の流れが見えないと不安になりやすいこと。
朝起きてから、幼稚園、児童発達支援、帰宅後、寝る前まで。
この流れをできるだけ同じにすることで、息子は少しずつ安心して動けるようになっていきました。
この記事では、ASD・吃音・触覚過敏がある息子の1日ルーティンと、家庭で実践してきた工夫を体験談としてまとめます。
「うちの子にも使えそう」と思えるヒントがあれば嬉しいです。
※この記事はわが家の体験談です。発達特性や必要な支援はお子さんによって異なります。気になる様子がある場合は、自治体の発達相談、保健センター、小児科、発達外来、言語聴覚士などに相談してください。
ASDの子にルーティンが大切だと感じた理由
ASDのある子は、見通しが立たないことや急な予定変更に不安を感じやすいことがあります。
政府広報オンラインでも、発達障害のある子どもには、予定を視覚的に伝えたり、短く具体的に説明したりする配慮が役立つと紹介されています。
参考:政府広報オンライン|発達障害って、なんだろう?
息子も、何をするのか分からないと動き出しにくいタイプでした。
「早くして」
「準備して」
「ちゃんとして」
こうした声かけでは、なかなか伝わりませんでした。
でも、
「まず着替え」
「次に朝ごはん」
「そのあと幼稚園」
のように、順番を分かりやすくすると、少しずつ動きやすくなりました。
わが家にとってルーティンは、子どもを管理するためのものではなく、息子が安心して1日を過ごすための土台でした。
息子の特性|吃音・触覚過敏・集団生活の苦手さ
触覚過敏
息子は、服のタグや縫い目、濡れた服が苦手でした。
少しでも服が濡れると、すぐに着替えたがる。
靴下や肌着の感触が気になって、朝の支度が止まる。
泥、のり、スライムなどの感触を強く嫌がる。
最初は「そんなに気になる?」と思ってしまうこともありました。
でも、感覚過敏について知ってからは、本人にとって本当に不快な刺激なのだと考えるようになりました。
吃音

息子は、言葉が詰まったり、音を繰り返したりする吃音がありました。
特に、朝や疲れているとき、急いで話そうとするときに出やすかったです。
話したい気持ちはあるのに、言葉がうまく出てこない。
そんな様子を見ると、親としても胸が苦しくなることがありました。
家庭では、言い直しを求めすぎず、最後まで聞くことを意識しました。
集団生活の苦手さ
幼稚園では、
- 身支度に時間がかかる
- 先生の全体指示を聞き逃す
- 友達との距離が近くなりすぎる
- ダンスや集団行動についていきにくい
- 姿勢を保つのが難しい
といった困りごとがありました。
ただ、外遊びや戦いごっこ、絵本、おしゃべりは大好きでした。
苦手なことだけでなく、好きなことや得意なことを生活の中に入れることで、1日が少し回りやすくなったと感じています。
ASDの息子の1日ルーティン
ここからは、わが家で実際にしていた1日の流れを紹介します。
家庭や園、療育のスケジュールによって違いはありますが、わが家では「同じ流れ」「選べる声かけ」「クールダウン」を大切にしていました。
朝のルーティン|安心して動き出すための工夫

朝は、息子にとって一番つまずきやすい時間でした。
眠い。
服が気になる。
朝ごはんを選びたい。
幼稚園に行く気持ちが整わない。
これが重なると、朝から親子で疲れてしまいます。
わが家の朝の流れ
起床
↓
テレビや好きな音でゆっくり目を覚ます
↓
朝ごはん
↓
着替え
↓
持ち物確認
↓
幼稚園へ出発
朝は、いきなり「起きて!」と声をかけるより、先に部屋を明るくしたり、好きな番組の音を流したりして、自然に起きられるようにしていました。
息子は、急に切り替えるのが苦手だったので、自分のタイミングで目を覚ませる流れの方がスムーズでした。
朝の声かけは「選べる形」にする
朝の声かけでは、選択肢を出すようにしていました。
たとえば、
「パンにする?おにぎりにする?」
「赤の服にする?青の服にする?」
「先に着替える?先にごはんにする?」
という形です。
どちらを選んでもOKにしておくと、息子も「自分で決めた」という感覚を持ちやすくなりました。
ただし、選択肢が多すぎると迷ってしまうので、基本は2択です。
吃音が出やすい朝は、聞き返しすぎない
朝は、息子の吃音が出やすい時間でもありました。
眠さや焦りがあると、言葉が詰まりやすくなるように感じていました。
そのため、朝はできるだけ、
- 急かさない
- 言い直しを求めない
- 最後まで聞く
- 目を見すぎず、自然に聞く
- うなずきながら待つ
ことを意識しました。
「早く言って」ではなく、
「聞いてるよ」という雰囲気を作ること。
これだけでも、本人の安心感が違うように感じました。
着替えルーティン|触覚過敏への工夫

着替えは、触覚過敏のある息子にとって大きなハードルでした。
服のタグ、縫い目、肌ざわり、濡れた感覚。
どれか一つでも気になると、そこで止まってしまいます。
服選びで意識したこと
わが家では、次のような服を選ぶようにしました。
- タグがない服
- 縫い目が少ない服
- 肌ざわりがやわらかい服
- 締め付けが少ない服
- 本人が気に入った服
- 着替えやすい服
特に、肌着や靴下はかなり重要でした。
見た目がかわいい服よりも、本人が「これなら着られる」と感じる服を優先しました。
予備の服を持っておく
外出先で服が濡れたり汚れたりすると、息子は強く嫌がることがありました。
そのため、予備の服を持っておくと親子ともに安心でした。
「着替えがあるよ」と分かっているだけで、本人も少し落ち着きやすかったです。
無理に慣らそうとしない
触覚過敏に対して、最初は「少しは慣れた方がいいのかな」と思ったこともあります。
でも、無理に我慢させると、かえって不安が強くなることがありました。
わが家では、
「苦手なんだね」
「じゃあこっちの服にしようか」
「少しだけ試して、嫌だったらやめよう」
という形に変えていきました。
無理やりではなく、安心を土台にして少しずつ。
その方が、結果的にできることが増えたように感じています。
幼稚園での生活|苦手と好きが混ざっていた時間
息子は幼稚園に通っていました。
幼稚園では、家とは違う困りごとが見えてきました。
幼稚園で苦手だったこと
息子が苦手だったのは、次のようなことです。
- 朝の身支度
- 先生の全体指示を聞くこと
- 姿勢を保つこと
- 友達との距離感
- 集団行動
- ダンスや運動会の動き
- 気持ちの切り替え
特に、全体指示は難しかったです。
先生がクラス全体に向けて話していると、自分に言われていると分かりにくいことがありました。
好きな活動も大切にした
一方で、息子は外遊びや戦いごっこ、絵本、おしゃべりが好きでした。
好きな活動があることで、幼稚園も「苦手だけの場所」ではなくなっていきました。
先生とも相談しながら、苦手な活動は無理に完璧を目指すのではなく、楽しめる形を探していきました。
たとえば、運動会のダンスも、最初は難しかったです。
でも少しずつ練習を重ねることで、息子なりに参加できる場面が増えていきました。
児童発達支援の日|幼稚園後の短時間支援

幼稚園後は、週に数回、児童発達支援に通っていました。
わが家の場合は、短時間の個別支援や小集団活動が、息子に合っていたと感じています。
児童発達支援で取り組んだこと
児童発達支援では、次のような内容に取り組みました。
- 順番を待つ
- 先生の話を聞く
- 2ステップの指示に慣れる
- 指先を使う活動
- 体の使い方
- 気持ちの切り替え
- 友達との関わり方
- 自己コントロール
特に、「何をするのか」が分かるように説明してもらえることが、息子の安心につながっていました。
家でも変化を感じたこと
児童発達支援に通う中で、家庭でも少しずつ変化が見えてきました。
- 指示を聞いて動ける場面が増えた
- 「できた!」の経験が増えた
- 癇癪の時間が少し短くなった
- 気持ちを言葉にする場面が増えた
- 苦手な活動にも挑戦できることが出てきた
もちろん、すぐに劇的に変わったわけではありません。
でも、小さな積み重ねが生活の中に少しずつ出てきたことは、親として大きな励みになりました。
夕方のルーティン|テンションが上がりすぎる時間への工夫
夕方は、息子のテンションが上がりやすい時間でした。
幼稚園や療育で頑張った反動なのか、帰宅後にエネルギーが爆発することがありました。
帰宅後は好きなことタイム
帰宅後すぐに、あれこれ指示を出すとうまくいかないことが多かったです。
そのため、まずは好きなことをする時間を入れていました。
- 戦いごっこ
- 好きなアニメ
- ゲーム
- 絵本
- おしゃべり
- お絵描き
「今日も頑張ったね」と受け止めてから、少しずつ次の行動に移る方がスムーズでした。
ゲームや動画は終わり方を決めておく
ゲームや動画は、息子にとってリセットにもなりますが、終わりにくい活動でもありました。
そのため、
「この1回で終わり」
「タイマーが鳴ったら終わり」
「終わったら絵本にしよう」
のように、終わり方を先に伝えるようにしました。
終わりが見えると、切り替えやすくなることがありました。
夜のルーティン|クールダウンと安心の時間

夜は、少しずつ刺激を減らしていくことを意識しました。
夕方から夜にかけてテンションが高いままだと、寝つきが悪くなることがありました。
夜の流れ
夕食
↓
お風呂
↓
静かな遊び
↓
絵本
↓
ぎゅータイム
↓
就寝
寝る前は、激しい遊びよりも、静かな活動に切り替えるようにしました。
寝る前の声かけ
寝る前には、できるだけ安心できる声かけを意識しました。
「今日もがんばったね」
「幼稚園で遊べたね」
「明日は〇〇があるよ」
「大丈夫、ママは見てるよ」
こうした声かけは、息子だけでなく、私自身の気持ちを整える時間にもなっていました。
スキンシップで安心する
寝る前の「ぎゅータイム」も、息子にとって大切な時間でした。
日中うまくいかなかったことがあっても、最後に安心して終われる。
その積み重ねが、親子にとって大事だったと感じています。
わが家で役立ったサポート道具
ASD・触覚過敏・吃音がある息子との生活で、役立ったものもあります。
視覚スケジュール
朝の流れや夜の流れを、絵やカードで見える形にしました。
言葉だけで伝えるより、目で見て分かる方が安心しやすいようでした。
タイマー
切り替えが苦手なときは、タイマーを使いました。
「あと5分」よりも、残り時間が見える方が分かりやすいことがあります。
予備の服
触覚過敏がある子には、予備の服があるだけで安心材料になります。
外出先で濡れたり汚れたりしたときに、すぐ着替えられるのは大きかったです。
絵カード・写真カード
言葉で伝えにくいときや、気持ちを整理したいときに、絵カードや写真カードが役立つことがありました。
「どれが嫌だった?」
「次はどれをする?」
と見ながら話せるので、親子で落ち着いて確認しやすかったです。
吃音への家庭での工夫
息子の吃音に対して、家庭では「話し方を直す」よりも、「安心して話せる環境」を意識していました。
話を最後まで聞く
言葉が詰まっても、できるだけ先回りして言わないようにしました。
親としては、つい助けたくなります。
でも、本人が言い切る経験も大切だと感じました。
急かさない
「早く言って」
「落ち着いて」
「もう一回言って」
こうした言葉は、本人にプレッシャーになることがありました。
わが家では、うなずいたり、表情で「聞いているよ」と伝えたりするようにしました。
家族もゆっくり話す
息子だけにゆっくり話させるのではなく、家族全体が少しゆっくり話すことも意識しました。
家庭全体の会話のテンポが落ち着くと、息子も話しやすそうに見えることがありました。
必要に応じて専門家に相談する
吃音には波があります。
良い時期もあれば、話しづらそうな時期もあります。
わが家では、言語聴覚士さんと相談しながら、構音や吃音への支援を続けてきました。
家庭だけで抱え込まず、専門家に相談できる場所があることは、親にとっても大きな安心でした。
ルーティンを作るときに大切だと感じたこと
ルーティンは、きっちり守らせるためのものではありません。
わが家では、次のことを大切にしていました。
- 完璧を目指さない
- 子どもの疲れ具合を見る
- 苦手なことは小さく分ける
- できたことを具体的に褒める
- 親も無理しすぎない
- 予定変更がある日は早めに伝える
- 好きな活動も必ず入れる
特に大切なのは、「うまくいかない日があってもOK」と思うことでした。
昨日できたことが、今日はできない。
朝はうまくいったのに、夕方に崩れる。
そんな日もあります。
でも、それは後退ではなく、子どものコンディションや環境によるものかもしれません。
ルーティンは、親子を縛るものではなく、安心するための道具として使うのがちょうどいいと感じています。
よくある質問
ASDの子どもにルーティンは必要ですか?
必ず全員に必要というわけではありませんが、見通しがあることで安心しやすい子は多いです。わが家の息子も、朝や夜の流れが決まっている方が動きやすくなりました。
朝の支度が進まないときはどうすればいいですか?
一度にたくさん言わず、「まず着替え」「次に朝ごはん」のように短く伝えると分かりやすいです。絵カードや写真カードで見える化するのもおすすめです。
触覚過敏で服を嫌がるときはどうしていますか?
タグなし、縫い目が少ない、やわらかい素材の服を選びました。無理に着せるより、本人が安心して着られる服を増やす方がスムーズでした。
吃音がある子に「ゆっくり話して」と言ってもいいですか?
言い方によってはプレッシャーになることがあります。わが家では、本人にゆっくり話させるより、家族がゆっくり聞く・待つことを意識しました。
幼稚園と児童発達支援の両立は大変ですか?
大変な面もあります。わが家では、子どもの疲れ具合を見ながら、無理のない範囲で通うことを大切にしました。疲れている日は予定を調整することもありました。
夕方にテンションが上がりすぎるときはどうしますか?
いきなり静かにさせるのではなく、好きなことをする時間を少し作ってから、絵本やお絵描きなど静かな活動に移るようにしました。
ゲームや動画をやめられないときはどうしていますか?
始める前に終わり方を決めておきます。「タイマーが鳴ったら終わり」「この1回で終わり」など、終わりを見える形にすると切り替えやすいことがあります。
視覚スケジュールは手作りでもいいですか?
手作りで十分です。写真、イラスト、簡単なメモでも使えます。大切なのは、子どもが見て分かる形にすることです。
ルーティンが崩れた日はどうすればいいですか?
崩れる日があっても大丈夫です。予定変更がある日は早めに伝えたり、終わった後に「今日はいつもと違ったね」と振り返ったりすると、次につながりやすいです。
親が疲れている日はどうしたらいいですか?
完璧にやろうとしなくて大丈夫です。冷凍食品、動画、短い声かけ、簡単な支度でもOKの日があっていいと思います。親が倒れないことも大切な支援です。
まとめ|ルーティンは親子が安心するための道具
ASD・吃音・触覚過敏がある息子との毎日は、予定通りに進まないこともたくさんありました。
でも、朝の流れ、着替えの工夫、幼稚園後の児童発達支援、夕方のクールダウン、寝る前の安心時間を少しずつ整えていくことで、息子は少しずつ動きやすくなっていきました。
ルーティンは、子どもをきっちり動かすためのものではありません。
「次に何をするのか分かる」
「苦手なことに備えられる」
「安心して1日を終えられる」
そのための道具です。
わが家も、今でもうまくいかない日はあります。
それでも、日々の小さな工夫を重ねることで、親子ともに少し楽になる瞬間が増えてきました。
同じように悩んでいる方にとって、この記事が少しでもヒントになれば嬉しいです。