はじめに|「今日、いいことあった?」と聞いても答えが出ないときに
「今日、何かいいことあった?」
そう聞いても、
「べつに……」
「忘れた」
「なかった」
と返ってくることはありませんか?
わが家でも、嫌だったことや失敗したことはよく覚えているのに、楽しかったことや頑張れたことは、意外と思い出せないことがありました。
そこで取り入れたのが、「1日3つのいいこと」を見つける時間です。
ただし、三つ答えられたら成功、答えられなければ失敗、というものにはしたくありません。
この記事では、わが家でのやり取りを交えながら、子どもと一日を振り返る方法、記入例、思いつかない日の声かけを紹介します。
継続による変化や効果は、まだ分からない部分があります。
「自己肯定感が上がった」という成果報告ではなく、親子で取り組む際の工夫としてまとめています。
「1日3つのいいこと」とは?
その日にあった、うれしかったことや、よかったと思う出来事を三つ振り返る方法です。
例えば、
- 今日うれしかったこと。
- 楽しかったこと。
- 自分なりに頑張ったこと。
- できたこと。
- 誰かに助けてもらったこと。
- ほっとしたこと。
などを考えます。
難しい文章や、特別な出来事でなくても構いません。
「好きなおやつがおいしかった」
「虫を見つけた」
「お友達にありがとうと言えた」
といった、身近なことで十分です。
親が褒めたい行動だけでなく、本人が「よかった」と感じたことを聞く時間にします。
1日3つのいいことに効果はある?研究で分かること
心理学では、「Three Good Things」という取り組みが知られています。よかった出来事と、その理由などを記録する方法です。
気分や幸福感との関係が研究されていますが、結果や持続期間は一律ではありません。
日本の成人を対象とした研究でも、取り組み直後の前向きな感情の変化が、その後も維持されたわけではありませんでした。www.rieti.go.jp
そのため、
「寝る前に3分話せば、必ず自己肯定感が高まる」
「ASDやADHDのある子の不安が改善する」
とまでは言えません。
この記事の会話や一言メモは、家庭で取り入れやすく調整した方法です。研究と同じ手順・効果を示すものではありません。
家庭では、効果を急ぐよりも、子どもが何を楽しみ、何をうれしいと感じたのかを知る機会として考えたいと思います。
親子で振り返るときに大切にしたい7つの視点
① 「できなかったこと」以外にも目を向ける
注意されたことや失敗したことが気になっていると、ほかの出来事を思い出しにくい日もあります。
そんなときに、
「今日、自分なりにやってみたことはあった?」
と聞いてみる方法があります。
字を一文字丁寧に書こうとしたこと、困ったときに聞けたことなど、結果だけでなく取り組んだことも振り返れます。
ただし、何かができた日だけに価値があるわけではありません。
② 日常の小さな楽しみに気づく
いいことは、賞を取る、テストで満点を取るといった出来事だけではありません。
「好きな歌を聴いた」
「給食に好きなものが出た」
「おもしろい形の雲を見つけた」
なども候補になります。
子どもの答えから、大人が気づかなかった楽しみを知ることもあると思います。
③ 気持ちを切り替えようと急がない
よかったことを思い出して、ほっとする場合もあるかもしれません。一方、話すことが負担になる日もあります。
「いいことを言えば、嫌な気持ちが消える」とは考えず、その日の様子を見ます。
不安やつらさを話し始めたら、無理によい話へ戻さなくて構いません。
④ 好きなことや、自分なりの工夫を見つける
同じ遊びや活動の話が何度も出てくると、本人の関心を知る手がかりになります。
余裕があれば、
「どんなところがおもしろかった?」
「どうやってできたの?」
と聞いてみます。
すぐに「得意なことを伸ばそう」と課題を増やさず、好きな気持ちを受け止めたいですね。
▶ 子どもが話してくれたことに、どんな言葉を返そうか迷ったら、幼児への褒め言葉7選|「すごいね」に添える場面別の声かけと体験談も参考にしてください。毎回褒める言葉を探さず、「そうだったんだね」と聞く時間があってもよいと思います。
⑤ 気持ちを、本人に合う方法で表す
「うれしかった」
「楽しかった」
「安心した」
などの言葉を添える方法もあります。
言葉が出にくい場合は、絵で表したり、親が代筆したりしても構いません。
ASDやADHDなどの診断名だけで方法を決めず、思い出す・話す・書くことのどこが負担かを見ながら調整します。
⑥ 親子で、出来事を聞き合う
「虫を見つけた!」
「体育が楽しかった!」
「お友達と鬼ごっこした!」
そんな話を、親がゆっくり聞く時間にできます。
子どもだけに答えを求めず、親も自分のよかったことを一つ話してみる方法があります。
会話が広がらない日も、長く話すことを目標にしなくてよいと思います。
⑦ 困った日は、休む・助けを求める選択も残す
嫌なことがあった日にも、よかった出来事を思い出せることはあるでしょう。
ただし、それをもって「立ち直る力が育った」と判断することはできません。
本人が困っている場合は、いいこと探しよりも、休むことや困りごとへの対応を優先します。
わが家で意識していること|「楽しいこと」だけに限定しない

最初は、
「楽しかったことを3つ言ってね」
としていました。
しかし、
「今日は楽しいことなかった……」
と言う日もありました。
そこで、「楽しかったことだけでなく、いいと思ったことなら何でもよい」と考えるようにしました。
例えば、
- 朝起きられた。
- 給食を食べられた。
- お友達に「おはよう」と言えた。
- 体育を頑張った。
- 弟におもちゃを貸してあげた。
などです。
大人から見れば小さなことでも、本人が話したい出来事なら大切にしたいと思います。
一方で、「給食を全部食べた」「学校へ行けた」ことを、毎日の達成条件にはしません。できなかった日でも、本人が楽しんだことや、安心できたことを選べます。
「それより、もっといいことがあったでしょ」と、親の答えへ誘導しないことも意識したいです。
▶ 子どもが何を楽しみ、何に興味を持っているかも、振り返りの手がかりになります。比較しない子育て|子どもの「好き・得意」を見つける4つの関わり方では、普段の遊びや会話から興味を見つける工夫を紹介しています。
子どもと取り組む、簡単な3ステップ
① 話せそうな時間を選ぶ
寝る前はタイミングの一つですが、眠いときに無理に続ける必要はありません。
夕食後やお風呂の後など、親子が話しやすい時間でも構いません。
② まず一つ聞いてみる
最初から三つ求めず、
「今日、よかったと思うことは一つある?」
と聞いてみます。
出てきたら「そうだったんだね」と受け止め、本人が話したそうなら続きを聞きます。
③ 残したければ、一言だけ記録する
会話だけで終える日も、ノートに残す日も選べます。
書く場合も、長い日記にする必要はありません。子どもが話した言葉を、そのまま短く残す方法があります。
【記入例】「今日のいいこと」をノートに書くなら

以下は説明用の例で、わが家の実際の記録ではありません。
| 今日のいいこと | 添えられそうなら、気持ちや理由 |
|---|---|
| 虫を見つけた | 近くで見られてうれしかった |
| 分からない問題を聞けた | 教えてもらって、少し分かった |
| 好きな本を読んでもらった | お話がおもしろかった |
理由や気持ちが出てこなければ、出来事だけでも構いません。
コピペして使えるテンプレート
【今日のいいこと】
日付:
① よかったと思ったこと:
② よかったと思ったこと:
③ よかったと思ったこと:
話したいときだけ
・どんなところがよかった?
・そのとき、どんな気持ちだった?
一つでも、空欄でも、今日は休んでもOK。
親が代筆する場合は、立派な文章に直しすぎず、本人の言葉を残します。
書けない・思いつかない日は、一つでも休んでもよい

毎日三つ書こうとすると、
「思いつかない」
「面倒くさい」
と感じることもあると思います。
そんなときは、次のように変えられます。
| 子どもの反応 | 声かけ・対応の例 |
|---|---|
| 「忘れた」 | 「帰ってからは何をしていた?」と場面を絞る |
| 「書くのが嫌」 | 「話すだけにする? ママが書こうか?」 |
| 一つしか出てこない | 「今日は一つ残しておこうか」 |
| 「なかった」 | 「今日は思いつかないんだね。休んでもいいよ」 |
| 眠そう・疲れている | 振り返りを切り上げて休む |
親が、
「今日はママのいいことは、○○だったよ」
と話してみる方法もあります。ただし、それを聞いた子どもが、必ず答えなければならないわけではありません。
大切なのは、完璧に続けることより、親子にとって負担のない振り返り方を探すことだと思います。
▶ 出来事や気持ちを言葉にしにくいときは、表情の絵を指さして伝える方法もあります。幼児・小学生向けの感情カードは、無料教材検索で「感情」と入力して探せます。いいことを答えさせるためではなく、今の気持ちを聞く手がかりとして使ってみてください。
嫌だったことを話す日も、大切にする
「今日は嫌なことしかなかった」
と言われたら、
「でも、いいこともあったでしょ」
と、急いで切り替えなくて構いません。
「そんなに嫌だったんだね」
「話したい? 今日は休みたい?」
と、本人の気持ちを確かめます。
嫌な出来事を話す時間と、よかったことを振り返る時間は、どちらもあってよいものです。
いじめや継続する困りごとなど、対応が必要な話が出た場合は、記録を続けることより、状況の確認や相談を優先します。
これからの変化は、実際の記録をもとに残していきたい
この方法について考える中で、
「まずは親の私もやってみよう」
と思いました。
正直なところ、どれくらい変化があるのかは、まだ分かりません。
すぐに変化が見られないこともあると思います。それでも、親子で一日の出来事を聞き合う時間を、無理のない形で持てたらと思っています。
今後は、
- どんな話題が出てきたか。
- 思いつかない日に、どんな対応をしたか。
- 会話と記録のどちらが取り組みやすかったか。
- 親子の負担になっていないか。
などを、実際の様子に沿って追記していきたいです。
変化があっても、成長や日々の経験も重なっています。「この習慣だけの効果」と決めつけず、わが家の記録として残していこうと思います。
記録用ノートは必要?家にある物から始められる
専用の日記帳や、有料の教材は必須ではありません。家にあるノートや紙でも始められます。
買い足す場合は、次の点を見ると選びやすくなります。
| 確認すること | 選ぶ際のポイント |
|---|---|
| 日付欄 | 書かない日があっても使える、日付なしの形式か |
| 記入量 | 一言や絵で残せるか、欄が多すぎないか |
| 開きやすさ | 子どもが書くときや、親が代筆するときに扱いやすいか |
| 大きさ | 使う場所や収納場所に合うか |
「買えば自己肯定感が上がる」という道具ではなく、記録しやすくするための物として選びます。
書くことが負担なら、ノートを買わず、会話から始める方法もあります。
よくある質問
毎日続けないと意味がありませんか?
家庭の取り組みとして、毎日を義務にする必要はありません。書ける日だけ、一つだけなど、負担に合わせて調整できます。ただし、頻度を変えても研究と同じ効果があると保証されるものではありません。
何も思いつかない日は?
一日の場面を絞って聞く方法があります。それでも思いつかなければ、休んで構いません。親が答えを作って埋める必要はありません。
ノートに書かないとダメですか?
親子で振り返る会話として取り入れられます。ただし、会話だけで、記録を用いた研究と同じ効果が得られるとは言えません。
何歳からできますか?
年齢だけでなく、出来事を思い出したり、伝えたりする際に何が負担かを見ます。会話・絵・親の代筆など、本人に合う方法を選べます。
遊びや食べ物の話ばかりでもよいですか?
本人がよかったと感じることなら、候補になります。毎回、勉強や人への優しさにつなげなくても構いません。
ASDやADHDのある子にもおすすめですか?
診断名だけでは判断できません。思い出すことや、質問に答えることが負担になる子もいます。本人の反応を見ながら調整し、療育や治療の効果を期待して無理に続けないようにします。
自己肯定感は、どれくらいで上がりますか?
期間を決めて約束することはできません。自己肯定感の変化を急いで測るより、本人が安心して話せる時間になっているかを確認したいと思います。
親も一緒に取り組んでよいですか?
親も自分の出来事を振り返れます。ただし、子どもに親を喜ばせる答えや、親への感謝を求める時間にはしないようにします。
まとめ|「三つ答える」より、子どもの話を聞く時間に

「1日3つのいいこと」は、うれしかったことや、よかったと思う出来事を振り返る方法です。
家庭で取り入れるなら、
- 小さな出来事も候補にする。
- 本人がよかったと感じることを聞く。
- 話す・書く・絵にするなど、表し方を選ぶ。
- 一つの日や、休む日があってもよい。
- 嫌だった気持ちも否定しない。
ということを大切にしたいと思います。
わが家でも、どんな変化があるかを急がず、
「今日は、そんなことがあったんだね」
と聞き合う時間から、親子に合う続け方を探していきたいです。
あわせて読みたい
研究・参考資料
- Seligmanほか(2005)「Positive psychology progress: empirical validation of interventions」
- RIETI「Does the Three Good Things Exercise Really Make People More Positive and Less Depressed? A study in Japan」
- UC Berkeley・Greater Good in Action「Three Good Things」
情報確認日:2026年10月27日。