はじめに
「車に乗ると、子どもが『おうちに帰って』と泣いてしまう」
「いつもと違う道を走るだけで、不安そうになる」
「出かける前に、どう説明したらよいのだろう?」
わが家の次男にも、3歳のころ、車でいつもと違う道を走ると泣いてしまうことがありました。
後部座席から聞こえてくるのは、
「おうち、かえって…」
という、不安そうな声です。
この記事では、そんな次男の様子を見て私が考えたことと、行き先や予定を伝えるために意識している関わり方を紹介します。
すぐに泣かなくなった、という成功談ではありません。「何が心配なのだろう」と考え、安心できる経験を少しずつ増やしたいと思っている途中の記録です。
なお、車で泣く理由は、不安だけとは限りません。車酔いや体調、座席の不快感などを確かめる視点も、あわせてまとめました。
3歳が車で泣いたら|予告の前に確かめたいこと
子どもが泣いているときは、「わがまま」「繊細だから」と決める前に、様子を確かめます。小さな子は、怖さだけでなく、気持ち悪さや痛みも、うまく説明できない場合があります。
| 気になる様子 | 確認すること |
|---|---|
| 顔色が悪い、冷や汗、あくび、吐き気がある | 車酔いや体調不良がないか |
| 服やベルトを気にする、暑そうにする | 衣服の挟まり、座り方、車内の温度など |
| 行き先を何度も聞く、違う道で泣く | 何を心配しているか、予定が伝わっているか |
| 急に泣き方が変わった、痛がる、ぐったりしている | 「いつもの不安」と扱わず、状態に応じて医療機関へ相談する |
米国小児科学会の保護者向け情報でも、幼い子の車酔いでは、青白い顔色、落ち着かなさ、あくび、泣くことなどが見られると説明されています。
参考:HealthyChildren.org「Car Sickness」
走行中に運転者が後ろを振り返って確認したり、チャイルドシートを外してあやしたりしないことが前提です。 必要があれば、安全に停車できる場所へ止めてから対応します。
泣いていてもチャイルドシートは適切に使います。ベルトが気になる場合も、走行中に緩めて対応せず、停車してから製品の説明書に沿って装着を確認してください。
参考:消費者庁「チャイルドシートを正しく使用し安全なお出かけを!」
【体験談】違う道になると「おうち、かえって…」と泣く次男
「反抗」より、不安そうな表情が気になった
車に乗り、いつもと少しでも道が違うと、次男は後部座席から「おうち、かえって…」と言うようになりました。
次第に声が大きくなり、泣き出してしまうことも頻繁にありました。
私も最初は、
「ただのわがままなのかな?」
「甘やかしすぎなのかな?」
と考えることがありました。
でも、表情は怒っているというより、怖がっているように見えました。暴れて困らせようとしているのではなく、何かを心配しているのかもしれない。そう思い直したのです。
内緒で病院や歯医者へ行ったことを、振り返った
思い当たったのは、それまでに何度か、行き先を内緒にして病院や歯医者へ連れて行ったことでした。
車に乗る。
いつもと違う道を走る。
着いたら、本人にとって嫌だったり怖かったりする場所だった。
その経験から、「今日も、どこへ連れて行かれるのだろう」と感じているのかもしれないと思いました。
ただし、次男がそう説明したわけではなく、私が考えた可能性の一つです。 内緒の受診が原因だと確認されたわけでも、トラウマと診断されたわけでもありません。
それでも、今後は行き先を隠すより、分かる言葉で伝えていこうと思うきっかけになりました。
過去の伝え方だけで、親が自分を責め続ける必要はありません。私も、これからどう伝えるかを考えるようにしています。
泣くことで、心配を伝えているのかもしれない
「怖いよ」
「また嫌な所へ行くの?」
そんな気持ちがあるのかもしれない、と想像しています。
もちろん、泣いている理由を全部分かったつもりにはなれません。それでも、「泣くのをやめさせる」ことだけでなく、本人が何を伝えたいのかを考えるようになりました。
わが家で意識している4つの予告と声かけ
① 行き先を内緒にせず、短く伝える
まず意識しているのは、病院や歯医者へ行くときも、行き先を隠さないことです。
「今日は病院に行くよ」
「先生に診てもらうよ」
と、短く伝えます。
泣かないように別の行き先を告げるより、本人がこれからのことを知れるようにしたいと思っています。
医療機関での処置について分からない場合は、事前にスタッフへ相談できます。「絶対に痛くない」「見るだけ」と、確認できない内容を約束しないようにします。
フィラデルフィア小児病院の案内でも、受診で何をするかを把握し、子どもへ正直に説明することが紹介されています。
参考:Children’s Hospital of Philadelphia「When Your Child Is Afraid of the Doctor」
② 普段の外出でも「どこへ行くか」を伝える

病院の日だけでなく、普段の外出でも、車に乗る前に行き先を伝えるようにしています。
「これからスーパーに行くよ」
「今日はおうちに帰るよ」
「お迎えに行くよ」
道が変わるときも、「工事をしているから、今日は違う道を通るよ」など、分かっていることを一言添えます。
「ちょっとそこまで」では伝わりにくいときは、場所の名前を具体的に伝える。長く説明するより、本人が知りたいことを短く伝えるようにしています。
③ 泣いたときは、気持ちを否定しない
泣き出すと、つい「大丈夫でしょ」「また泣いているの?」と言いたくなることもあります。
でも、私には平気な道でも、本人は心配しているのかもしれません。
「怖くなったんだね」
「心配だったんだね」
と受け止めることを意識しています。
本人の気持ちが分からないときは、「何が心配かな」「気持ち悪いのかな」など、様子に合う言葉で確かめます。理由を何度も答えさせたり、すぐ落ち着くよう求めたりする必要はないと思っています。
共感しても泣き続ける日はあります。声かけだけで落ち着かせることを、親の課題にし過ぎないようにしたいです。
④ 行き先だけでなく、その後の予定も伝える

「何をしたら終わるのか」「その後はどうするのか」も、分かっている範囲で伝えます。
「買い物が終わったら、おうちに帰る予定だよ」
「先生に診てもらったら、次の予定を確認しようね」
といった伝え方です。
「すぐ帰る」「絶対にここだけ」と約束しても、診察や道路の状況によって変わる場合があります。確実でないことを保証するより、予定が変わったときに説明し直すことも大切にしたいです。
車に乗る前の予告は「行き先・すること・その後」で考える
ここからは、わが家で意識していることをもとにした、家庭で使える伝え方の例です。下の道具や方法をすべて実践して、効果を確かめたという意味ではありません。
伝え方の例
| 場面 | 伝える例 |
|---|---|
| スーパーへ行く | 「スーパーで買い物をして、おうちに帰る予定だよ」 |
| 病院へ行く | 「病院で先生に診てもらうよ。終わった後のことは、先生の話を聞いて伝えるね」 |
| 歯医者へ行く | 「歯医者さんへ行くよ。今日は何をするか、一緒に聞こうね」 |
| お迎えへ行く | 「〇〇のお迎えに行って、一緒に帰るよ」 |
| 道を変える | 「今日は工事で通れないから、別の道で行くよ。行き先は同じだよ」 |
| 予定が増えた | 「予定が変わったよ。帰る前に薬局へ寄ることになったよ」 |
処置など、すでに分かっていることは、分からないふりをせず、医療スタッフの説明を参考に本人が理解できる形で伝えます。
「10分前が正解」とは決めない
出発の直前では切り替えにくい場合は、少し前に伝え、乗る前にもう一度短く確かめる方法があります。
ただし、早く知らせるほど安心できるとは限りません。長く待つことが負担になったり、繰り返す説明がかえって気になったりする子もいます。
時間が分かりにくい場合は、「この絵本が終わったら出発しよう」など、今の活動と結び付けて考える方法もあります。本人の様子を見て、伝える時期と回数を調整します。
言葉だけでは分かりにくいときは、写真や絵で示す

行き先の写真や、紙に描いた簡単な絵を、乗る前に見せる方法もあります。
例えば、紙に「スーパーの絵」「家の絵」を並べ、大人が「買い物の後はおうち」と説明します。三つも多ければ、行き先一つの写真からで構いません。
道具をそろえる前に、手元の紙やスマートフォンの写真を、停車中に一緒に見るところから試せます。 車酔いが疑われる場合は、走行中に下を向いてカードや画面を見続ける方法を勧めず、出発前の確認に使います。
▶ 実際の行き先を写真で伝えたい方は、無料のフォトカードメーカーも使えます。
スーパーや病院などの写真をカードにして、出発前に親子で確認する方法があります。
予告しても泣くときは|説明を増やす前に見直すこと
予告したから必ず落ち着くとは限りません。泣き続ける場合は、説明の回数だけを増やさず、体調や予定の負担も考えます。
体の不快感がないか、改めて確認する
吐き気、顔色、暑さ、痛み、眠気、座り方などを、安全に停車してから確かめます。気になる症状が続く場合は、小児科などへ相談します。
予告は、不快な座り方や車酔いそのものを解決する方法ではありません。
必要な受診は、病院や歯科へ困りごとを伝える
「行き先を伝えたら泣くから、必要な受診をやめる」と一人で判断するのではなく、受診先へ相談する方法があります。
相談する文章の例
3歳の子どもが、病院へ向かう車の中で強く不安がり、泣くことがあります。来院前に何を伝えるとよいか、当日の流れや待ち方について相談したいです。
待ち時間や処置の説明、本人が苦手なことを共有すると、対応を一緒に考えられる場合があります。具体的な配慮の可否は、医療機関へ確認してください。
変更できる外出は、移動や用事を減らす
複数の場所を回る予定を一つにする、寄り道を減らすなど、調整できることを考えます。
いつも同じ道しか使えないように固定することを目標にせず、「今日は別の道だけれど、行き先は同じ」と説明できる形を探します。道へのこだわりが強く生活に支障がある場合は、無理に慣らすより、支援者と進め方を相談します。
▶ 「どこまで本人に選んでもらう?」「どこは大人が支える?」と迷ったときは、親はどこまで手伝う?幼児・小学生の自立を支える5つの関わり方も参考にしてください。子どもが選べる部分を残しながら、必要な手助けを考えるヒントを紹介しています。
泣かなかったかだけで評価しない
本人の様子を見るなら、例えば次のようなことを記録しておくと、相談するときにも伝えやすくなります。
- いつ、どの道や行き先で泣いたか
- 乗る前に何を伝えたか
- 体調や睡眠、吐き気などはどうだったか
- どんな言葉や確認を本人がしたか
これは「予告を続ければ、この順に改善する」という表ではありません。わが家でも、決まった期間で泣かなくなったと確認できたわけではありません。
繊細さや脳の働きだけで、泣く理由を決めつけない
私は次男を「繊細だな」と感じていますが、それは家庭で見ている印象です。車で泣く様子だけから、脳の特定の部分が過敏に働いていることや、診断の有無を判断することはできません。
幼い子が、心配や怖さを言葉にしにくいことはあります。それでも、「3歳ならみんな同じ」「繊細な子は必ずこうなる」とは考えず、本人の体験と今の様子を見る必要があります。
「泣くのは脳が育っている証拠」と決めるより、「今、何を支えればよいだろう」と考えたいです。
不安が強い、長く続く、悪化する、外出や園生活などに影響する場合は、予告だけで何とかしようとせず、小児科や地域の子育て相談窓口などへ相談できます。
NHSの保護者向け案内でも、不安が強く続いたり、日常の活動を妨げたりする場合には支援を求めることが説明されています。
予告に使う道具は、必要を感じたら足す
予告を始めるために、専用教材を一式買う必要はありません。手持ちの紙や写真で伝えてみて、繰り返し使うなら保管しやすい道具を検討できます。
写真カードをまとめるケースやファイル
購入する場合は、カードの大きさに合うか、見せたい枚数を入れられるか、開け閉めが負担にならないかを確かめます。
小さな留め具や長いひもがある物は、子どもの扱い方にも配慮します。走行中に見せ続ける道具や、シートに独自の方法で取り付ける物ではなく、まずは出発前に大人と確認する用途で考えます。
▶ カードケースの対応サイズ・開閉方法を確認する
価格:671円 |
病院や歯医者の流れを知る絵本
受診のイメージを知るため、本人に合う絵本を一緒に見る方法もあります。購入前に、描かれる処置や年齢の目安を確認し、実際の受診と違う部分は大人が補足します。
「本ではこうだったから、必ず同じ」と約束するための物ではありません。怖く感じる描写がある場合は、別の伝え方に替えて構いません。
▶ 絵本の内容・対象年齢の目安を確認する
価格:1188円 |
よくある質問
3歳が車で泣くのは、よくあることですか?
車で泣く理由は、行き先への不安、車酔い、体調、座席の不快感などで異なります。年齢だけで「問題ない」と判断せず、本人の様子や生活への影響を見て、気になる場合は相談しましょう。
いつもと違う道で泣くのは、トラウマですか?
それだけでは分かりません。わが家では、内緒で病院や歯医者へ行った経験との関係を考えましたが、原因が確認されたわけではありません。泣く場面や体調などを整理し、困りごとが続く場合は相談できます。
何分前に予告するのがよいですか?
全員に共通の正解はありません。少し前と乗る前に短く伝えるなど、本人が受け取りやすい時期と回数を考えます。長い説明や繰り返しが負担になる場合もあります。
病院や歯医者と伝えると泣きます。隠した方がよいですか?
わが家では行き先を隠さず、分かる範囲を短く伝えるようにしています。何を説明するか迷う場合は受診先へ相談し、「絶対に痛くない」など確認できないことを約束しないようにします。
泣いたら予定を変えるべきですか?
体調や移動の安全、予定の必要性によって考えます。変更できる外出は負担を減らし、必要な受診などは医療機関へ相談します。泣くかどうかだけで、すべての予定を決める必要はありません。
泣くので、抱っこして乗ってもよいですか?
走行中にチャイルドシートを外して抱っこする対応はしません。確認やあやすために必要なら、安全に停車してから対応します。チャイルドシートは製品の説明に従って適切に使ってください。
ASDやHSCと関係がありますか?
車で泣く、道の変更を嫌がるという様子だけでは、診断や気質は判断できません。「繊細」という呼び方で理由を一つにせず、本人が何に困っているかを具体的に見て相談することが大切です。
いつ相談したらよいですか?
不安が強く続く、悪化する、通園や受診などに支障がある、親子の負担が大きい場合は、かかりつけ小児科や地域の相談窓口へ相談できます。体調の異変があるときは、不安の問題と決めず、状態に応じて医療機関に相談してください。
まとめ|すぐに変化を求めず、分かる範囲を正直に伝える
3歳の次男が、いつもと違う道で「おうち、かえって…」と泣くようになり、私は行き先の伝え方を見直しました。
意識しているのは、次のことです。
- 行き先を隠さず、短く伝える
- 予定が変わったら、分かる範囲で説明し直す
- 泣く気持ちを否定せず、体の不快感も確認する
- その後の予定も伝え、確実でないことは約束しない
すぐに泣かなくなることを目標にせず、伝えたことと実際の経験が少しずつ結び付いていけばよいなと思っています。
繊細さを弱さと決めつけず、同時に、泣くことを成長の証拠として片付けない。本人が困っていることを知り、必要な支えを考えていきたいです。
予告は、子どもを泣かせないための約束ではなく、これからのことを一緒に確かめる手段の一つ。 わが家も、親子で無理のない伝え方を探しているところです。