はじめに
「練習しているのに、なかなかできるようにならない」
「もっと頑張らせた方がいいのかな」
「同じように関わっているのに、きょうだいでこんなに違うんだ」
子どもの苦手なことを前に、親として迷うことはありませんか。
わが家の長男は発音が苦手で、なかなか「か」の音を出せませんでした。
一方、当時3歳だった弟は、特別に練習しなくても自然に「か」と言えるようになりました。その姿を見て、正直、少し切なく感じた時期があります。
長男は言語トレーニングに通いながら、家庭でも1年以上練習を続け、その後「か」をはっきり言えるようになりました。
言えたときの笑顔を見た喜びは、今も印象に残っています。

同時に、この経験は、私にとって「もっと頑張ればできる」と励ます前に、何を・どう取り組むかを考えるきっかけにもなりました。

この記事では、その体験を大切に振り返りながら、発達特性のある子の頑張りを、親や支援者がどう支えられるかを考えます。
※発音についてはわが家の体験であり、特定の診断や練習法の効果を示すものではありません。発音の困りごとに合う練習や相談先は、医師や言語聴覚士などと確認してください。
結論|努力の量を増やす前に、目標・方法・手助けを見直したい
発達特性のある子の苦手さを、できた・できないという結果だけで「努力不足」と決めつけたくないと思っています。
本人は取り組んでいても、やり方が分かりにくい、課題が難しすぎる、疲れているなど、別の困りごとがあるかもしれません。
頑張りを応援することと、本人に合う支援を用意することは、一緒に考えられます。
- 何のために取り組むのか
- 今の方法は本人に合っているか
- 大人や道具が手伝える部分はないか
- 休む、方法を変える選択はあるか
子どもだけが頑張る形から、大人も一緒に方法を考える形へ。 私が大切にしたいのは、その視点です。
【体験談】「か」の音が出なかった長男と、自然に言えた弟

同じ音でも、身につくまでの道のりが違った
長男は「か」の発音が難しく、言語トレーニングに通っていました。
同じ頃、当時3歳だった弟は、特別な練習をしなくても「か」と言えるようになりました。
弟ができたことは、もちろんうれしいことです。それでも、長男が時間をかけて取り組んでいる音を、弟が自然に使う姿を見て、胸が少し苦しくなりました。
「長男は頑張っているのにな」
「同じ音でも、こんなに違うんだな」
きょうだいを競わせたいわけではなくても、目の前の違いに気持ちが揺れたのだと思います。
その経験は、同じ結果に見えることでも、そこまでに必要な時間や支援は人によって違うと実感する出来事でした。
言語トレーニングと、1年以上の家庭での練習
長男は言語トレーニングに通い、家庭でも1年以上、練習を重ねました。
この記事で伝えたいのは、具体的な口の動かし方や、繰り返す回数ではありません。どんな練習が合うかは、その子の状態によって考える必要があるからです。
NIDCD(米国国立聴覚・伝達障害研究所)も、発音や言葉に心配がある場合は医師に相談し、必要に応じて言語の専門家による評価や、家庭でできる活動の助言につなぐ方法を案内しています。
わが家にとっても、家庭だけで何とかしようとするのではなく、専門的な支援につながりながら取り組んだことが、この経験の大切な部分でした。
参考:NIDCD「Speech and Language Developmental Milestones」
言えるようになったときの笑顔
練習を重ねるなかで、長男は「か」をはっきり言えるようになりました。
そのときの笑顔を見て、私もとてもうれしかったです。
当時は、「続けることには意味があるんだ」と強く感じました。息子が取り組んだ時間を、心から喜びたい気持ちでした。
今も、その喜びは変わりません。
そのうえで、今振り返ると、成長や言語トレーニング、家庭での取り組みなどが重なった経験だったとも思います。「1年以上続ければ言える」「続けさえすれば必ずできる」と、ほかの子に当てはめることはできません。
だからこそ、息子の頑張りを大切にしながら、必要な支援を受けてよいことも、一緒に伝えたいと思っています。
発音と吃音は、分けて考えたい
この記事で紹介したのは、「か」の音を出すことへの取り組みです。
息子には吃音もありますが、ここでの発音練習と、吃音への支援を同じものとして紹介しているわけではありません。
困っている内容に合う関わり方を確認し、普段の会話では、言い方だけでなく本人が伝えたいことにも耳を傾けたいと思っています。
「努力不足かどうか」より、どこで困っているかを見る

同じ「できない」でも、困っている部分は一つとは限りません。
たとえば、着替えなら、順番を思い出すこと、服の向きを確かめること、指先でボタンを扱うことなど、いくつもの工程があります。
そのため、同じ動作を繰り返す前に、どこで止まるかを一緒に見てみる方法があります。
下の表は、わが家の発音練習の記録ではなく、家庭で困りごとを整理する例です。
| 見えている様子 | 確かめたいこと | 工夫の例 |
|---|---|---|
| 取りかかれない | 何をするか分かるか | 見本や短い説明を用意する |
| 途中で止まる | 工程が多すぎないか | 一つずつ区切る |
| 分かっていても動作が難しい | 道具や手順が扱いやすいか | 大人が一部を手伝う、道具を見直す |
| 場所によって難しさが違う | 音や人数、刺激の影響はないか | 落ち着いて取り組める場所を探す |
| 繰り返しても負担が増える | 目標や方法を見直す必要はないか | 休み、支援者と相談する |
国立障害者リハビリテーションセンターも、発達障害のある人への支援として、環境調整、視覚的な情報、具体的で個別的な関わり、自己選択の機会などを紹介しています。
参考:国立障害者リハビリテーションセンター「支援方法の学習」
その子に合う頑張り方を、一緒に探す5つの視点
1.「何ができるようになりたいか」を確かめる
大人ができてほしいことと、本人が望んでいることは、いつも同じとは限りません。
「みんなができるから」だけで目標を決めず、本人の生活にどう役立つか、何をしたいのかを考えたいです。
本人が言葉にしにくい場合は、選択肢や実物を使いながら、気持ちを確かめる方法もあります。
安全や健康のために必要なことは、大人が分かりやすく伝え、負担を減らす手助けも一緒に考えます。
2.苦手を練習する時間と、好きなことを楽しむ時間を分ける
苦手なことを支えるのと同じように、好きな遊びや得意なことに取り組む時間も大切にしたいと思います。
すべての活動を、「できないことを直す練習」にする必要はありません。
好きなことに集中する。
自分の工夫を試す。
家族と楽しい時間を過ごす。
そうした経験も、その子の生活を豊かにします。
3.回数や時間を、一律のノルマにしない
「毎日5分」「必ず1回」と決めると取り組みやすい家庭もあると思いますが、その長さが全員に合うわけではありません。
特に専門的な練習では、担当の支援者と、家庭での内容・量・終わり方を確認したいです。
短く取り組む、見本を見るだけにする、その日は休むなど、本人の状態に合わせて考える余地を残します。
練習時間を増やす前に、「今の量で無理がないか」を確かめることも、頑張りを支える工夫です。
4.手助けや道具を使うことを、遠回りと思わない
見通しをカードで示す、手順を一つずつ見せる、扱いやすい道具に変えるなど、取り組みやすくする方法があります。
大人が支援を用意することは、子どもが努力しているかどうかとは別に必要なことです。支援を受けるために、頑張りを証明する必要はありません。
何も使わず一人でできることだけを目指さず、本人が参加しやすい方法を選べることも大切にしたいです。
▶ 手順を言葉だけで伝えるのが難しいときは、写真やイラストで示す方法もあります。
【無料教材】視覚支援カードの使い方も参考にしてください。
練習する前に、動きや手順を見せることが助けになる場合もあります。
▶ 子どもに見本を見せ、一緒に試す家庭での工夫では、幼稚園の準備と着替えの体験をまとめています。
5.続けるだけでなく、変える・休むことも選ぶ

取り組んでいても、今の方法が合わないことはあると思います。
量を減らす、目標を分ける、道具を変える、支援者に相談する。そうした見直しは、「諦めた」と決めつける必要のない選択です。
本人が嫌がる場面が増えたり、取り組む前から強く不安になったりする場合は、何が負担なのかを確かめたいです。
挑戦を避ける子への具体的な対応は、こちらで紹介しています。
▶ 失敗への不安から取り組めないときは、練習量を増やす前に、挑戦しやすい条件を整えることも大切です。
子どもが挑戦できないときの対応と声かけにまとめています。
結果が見えにくいとき、支援者に相談したいこと

うまく進まないときは、家庭で抱え込まず、「何を見直せるか」を支援者と話してみる方法があります。
次の質問は、今後相談するときに使える例です。わが家で実際にすべて確認した内容という意味ではありません。
| 相談したいこと | 聞き方の例 |
|---|---|
| 今の目標 | 「今は何を目指す段階ですか?」 |
| 家庭での方法 | 「家では、どんな方法で取り組むとよいですか?」 |
| 量や終わり方 | 「どのくらいで終え、嫌がるときはどうしたらよいですか?」 |
| 途中の変化 | 「結果以外に、どんな様子を見ておけばよいですか?」 |
| 見直す時期 | 「方法や目標を変える目安はありますか?」 |
| 別の手段 | 「難しい部分を補う道具や方法はありますか?」 |
「もっと練習すべきですか?」だけでなく、方法や負担、別の選択肢まで相談できると、家庭で考える道筋が見えやすくなります。
動画を見て考えた「努力の方向」と、子どもへの支援
私は、努力の種類や方向性、再挑戦する気持ちについて語る動画を見て、頑張り方を考えたこともあります。
そこから受け取ったのは、同じことを無理に続けるだけではなく、何に向かって取り組むかを考える視点でした。
一方で、子育てでは「できると思えばできる」と励ますだけでは難しい場面もあります。
動画から得た気づきと、息子に必要な支援は分けて考えたいです。本人の状態を見て、具体的な方法を専門家と相談する。そのうえで、取り組めたことを一緒に喜べたらと思います。
① 兼近さんの動画:頑張る量だけでなく、方向を考える
努力の「向き」や「角度」を意識することで、子どもも無理なく成果につなげられます。
親としても、「どんな方向に努力すればいいか」を一緒に考えることが、最初のstart(入口)になります。
💡大切なのは、「どこに向かってがんばるか」。
② 再挑戦の動画:「またやってみよう」と思える条件を整える
失敗しても落ち込まず、「またやってみよう」と思える心が、凡人でも圧倒的な結果を生むのです。
発達特性のある子どもにとっても、失敗やつまずきは当たり前。
でも、挑戦をやめないこと、前向きに取り組むことが、成長につながるのです。
💡「できると思えばできる。できないと思えばできない」
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「凡人が圧勝する」唯一の方法。
YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。
www.youtube.com
③ さんまさんの動画:成長が見えにくい日も、今日を大切にする
「今を認める力」の大切さが詰まっています。
子どもも親も、「今日のベスト」を積み重ねながら、明日を迎えていけたら素敵ですね✨
💡「その日が頂点。明日は明日でまた人生の頂点」
きょうだいや周りの子を見て、気持ちが揺れたときは
弟が自然に「か」と言えた姿を見て切なくなった気持ちは、私にとっても簡単に整理できるものではありませんでした。
比べない方がよいと分かっていても、違いが目に入ることはあります。
そんなときは、比べた自分まで責めず、「長男には長男に合う方法を考えよう」と、目の前の子に戻っていきたいです。
毎日、昨日よりできるようになった証拠を探す必要もないと思っています。休む日や、変化が見えにくい時期も含めて、本人の様子を見ていきたいです。
▶ 比べないようにしようと思っても、気持ちが追いつかない日もあります。
他の子と比べてしまってつらいときの考え方では、私自身の体験も紹介しています。
発達特性と努力について、よくある質問
発達特性のある子にも、努力は必要ですか?
大人が一律に「もっと頑張るべき」と決めるより、本人がしたいことや生活上の困りごとを確認し、必要な練習・支援・環境を一緒に考えたいです。頑張ることと、支援を受けることは両立できます。
練習してもできないのは、努力不足でしょうか?
結果だけでは判断できません。方法、課題の難しさ、本人の状態、必要な手助けなどを確認します。困難が続くときは、取り組み方を支援者と相談する方法があります。
「か」の発音が苦手なら、家で繰り返せばよいですか?
わが家の経験だけから、同じ方法や回数を勧めることはできません。発音が気になる場合は、医師や言語聴覚士などに相談し、その子に合う方法を確認してください。
1年以上続ければ、発音できるようになりますか?
わが家ではその期間を経て変化がありましたが、必要な期間や経過は一人ひとり異なります。期限を決めて同じ結果を求めるより、途中の様子も含めて専門家と確かめていくことが大切だと思います。
「頑張ったね」と伝える以外に、親ができることは?
説明を分かりやすくする、手助けを用意する、休めるようにする、本人の希望を聞くことなどがあります。
取り組んでいたことを言葉にしたいときは、幼児への褒め言葉7選|場面別の声かけと体験談も参考にしてください。
得意なことばかり楽しんでいてもよいですか?
好きなことを楽しむ時間も大切です。そのうえで、安全や生活上必要なこと、本人が困っていることには、無理のない方法や支援を考えます。すべての時間を苦手克服に使わなくてもよいと思います。
▶ 好きなことを楽しむ時間をつくりたいけれど、何に興味があるのか分からないこともあります。
子どもの「好き・得意」を見つけ、遊びを広げる関わり方も参考にしてください
まとめ|頑張る子どものそばで、大人も方法を考える
長男が「か」と言えるようになったときの笑顔は、私にとって大切な記憶です。
本人が取り組んできた時間を喜びながら、専門的な支援や、その子に合う方法を考えることの大切さも感じています。
できないことを前にしたときは、
- 目標が今の本人に合っているか
- 方法が分かりやすいか
- 大人や道具が手伝えるか
- 無理のない量か
- 変える・休む選択があるか
を、本人や支援者と一緒に確かめたいです。
頑張る形も、必要な支援も、人それぞれです。
子どもだけに「もっと努力して」と求めるのではなく、その子に合う道を一緒に探す。そんな支え方を、これからも大切にしていきたいと思います。