「ゲームに負けると、泣いたり怒ったりして終われない」
「工作や絵が思いどおりにならないと、全部壊してしまう」
「間違いを伝えただけなのに、『もうやらない』と投げ出してしまう」
そんな悩みはありませんか?
わが家には、ASD・ADHD・DCD・吃音のある小学1年生と、4歳の子どもがいます。
私は児童発達支援アドバイザーの資格を持ち、家庭でも子どもの特性に合わせた声かけや視覚支援を試してきました。
小学1年生の長男は、宿題の答えが違っていることを伝えられると、強く怒ることがありました。
特に、プリントへ×や印が残ることを嫌がり、「×は付けないで」「印を付けないで」と訴えることがありました。
大人には小さな間違いに見えても、本人には、頑張ったことを全部否定されたように感じるほどつらかったのかもしれません。
失敗したときに泣いたり怒ったりする姿は、宿題だけでなく、ゲーム・運動・工作・友達との遊びなどでも見られることがあります。
この記事では、小学1年生が失敗や間違いを受け入れにくい理由と、怒っている最中・落ち着いた後の関わり方を紹介します。
「もう一回やる」「手伝ってもらう」「今日はやめる」から選べる視覚支援や、学校へ相談するときの文例もまとめました。
※感情の表れ方や背景には個人差があります。激しい状態が続く場合や、自分や周囲を傷つける行動がある場合は、家庭だけで抱え込まず、学校・小児科・地域の相談窓口などへご相談ください。
結論|怒っている最中に「失敗を受け入れさせる」必要はない
子どもが失敗して強く怒っているときは、正しい考え方を説明するより、まず安全を確保して落ち着くのを待ちます。
興奮している最中に、
- 「失敗は誰にでもある」
- 「負けても怒らないの」
- 「もう一回やればいいでしょう」
- 「そんなことで泣かない」
と説明しても、受け取る余裕がない場合があります。
落ち着いてから、何がつらかったのか、次にどうしたいかを一つずつ確認しましょう。
| 困っていること | 最初に試したいこと |
|---|---|
| ゲームに負けると怒る | 結果の話をせず、いったんゲームから離れる |
| 間違いを指摘すると泣く | その場の訂正を止め、落ち着いてから一か所だけ見る |
| 工作が崩れると全部壊す | 作品と道具を安全な場所へ移し、直すか休むか後で選ぶ |
| もう一回を強く拒否する | 「やり直す・手伝ってもらう・今日は終わる」から選ぶ |
| 自分を責める | 否定せず、「そう思うほど嫌だったんだね」と短く返す |
| 失敗しそうな活動を避ける | 小さな部分だけ参加する方法を用意する |
| 同じ場面が繰り返される | 起きる前の疲れ・難しさ・見通しを記録する |
目標は、「失敗しても泣かない子」にすることではありません。
気持ちが大きくなったときに安全に休み、落ち着いてから「次にどうするか」を選べることを目指します。
小1が失敗すると泣く・怒る7つの理由
1.失敗を「自分がだめ」と受け取る
大人は一つの結果について話していても、子どもは自分全体を否定されたように感じることがあります。
正解や勝敗へのこだわりが強いほど、間違いや負けを大きな出来事として受け取る場合があります。
2.結果が予想と違い、切り替えにくい
「勝てると思っていた」「ここまで作れば完成すると思っていた」など、頭の中にあった予定と現実が違うと、気持ちを切り替えにくいことがあります。
結果だけでなく、予定が崩れたこと自体が負担になっているのかもしれません。
3.間違いや失敗の跡が残ることがつらい
×印、消し跡、壊れた作品、低い点数などが目に入るたびに、失敗を思い出す子もいます。
わが家では、答えの違いだけでなく、プリントに印が残ることへの負担も大きいようでした。
4.どう直せばよいか分からない
「違うよ」「もう一回」と言われても、次に何を変えればよいか分からない場合があります。
同じ失敗を繰り返す不安から、やり直し自体を拒否することもあります。
5.体を動かすことや書くことが難しい
頭では分かっていても、線を思う場所へ引く、ボールを狙った方向へ投げる、細かな物を組み立てることが難しい場合があります。
努力と結果が結びつきにくいと、悔しさが強くなることがあります。
6.疲れや空腹で余力が少ない
学校で一日頑張った後や、眠い・空腹・暑いときは、普段なら受け流せる失敗でも大きく反応することがあります。
同じ活動でも、時間帯によって反応が違う場合は、疲れや体調も確認しましょう。
7.過去に間違いを強く注意された経験がある
間違えたときに笑われた、何度も言い直された、全部やり直しになったなどの経験から、失敗する前から緊張する子もいます。
原因を決めつけず、「失敗した場面」だけでなく、その前後の状況も見てみましょう。
怒った直後の対応
1.やり直しと説明を止める
強く怒っているときは、活動を続けず、いったん止めます。
「今は止めよう」「落ち着いてから考えよう」と短く伝えます。
失敗したときに、自分から「助けて」と言うことが難しい子もいます。
言葉で伝えるだけでなく、指差しやカードも使いながら、大人へ助けを求める練習はこちらで紹介しています。
▶ 【小1】困っても「助けて」と言えない子へ|学校で先生に伝える練習と視覚支援
2.安全を確保する
物を投げる、作品を壊す、人をたたく、自分を傷つけようとする場合は、危険な物を遠ざけます。
必要な制止は短い言葉で行い、安全の確保を優先します。
- 「鉛筆はここに置くよ」
- 「たたくのは止めるよ」
- 「安全な場所へ移ろう」
長い説得や反省は、落ち着いた後にします。
3.気持ちを決めつけない
「負けて悔しいんでしょう」と言われること自体を嫌がる子もいます。
その場合は、見えた事実を短く返します。
- 「負けたところで、ゲームを止めたくなったんだね」
- 「線がずれて、紙を置いたんだね」
- 「今はやり直したくないんだね」
4.落ち着き方を選べるようにする
- 静かな場所へ移る
- 水を飲む
- クッションへ座る
- 大人から少し離れる
- 大人の近くで休む
選択肢は二つ程度にすると、選びやすくなります。
5.その日は終えてもよい
落ち着いた後も再開できないことがあります。
家庭の遊びや自主的な活動なら、「今日はここまで」にして構いません。
宿題や学校の課題は、どこまで取り組む必要があるかを担任へ確認しましょう。

落ち着いた後にできる7つの関わり方
1.何が嫌だったかを一つだけ確認する
「何で怒ったの?」と広く聞かず、選べる形にします。
- 負けたことが嫌だった?終わることが嫌だった?
- 間違ったことが嫌だった?印が残ることが嫌だった?
- もう一回するのが嫌だった?やり方が分からなかった?
答えたくない場合は、無理に聞きません。
2.次にすることを具体的に示す
「頑張ってもう一回」ではなく、変える部分を小さく示します。
- この一問だけ一緒に見る
- 倒れた二つだけ戻す
- 次は大人と一回練習する
- 最初の一歩だけやってみる
3.三つの方法から選ぶ
次にどうするかを、次の三つから選べるようにします。
- もう一回やる
- 手伝ってもらう
- 今日はやめる
必ず再挑戦を選ばせるためのカードにせず、「今日はやめる」も実際に選べるようにします。

4.成功しやすい大きさへ分ける
一度に完成させようとせず、課題を小さく分けます。
工作なら「部品を一つ付ける」、運動なら「近い場所から一回投げる」、勉強なら「一問だけ一緒に見る」などです。
5.結果以外の事実を伝える
大げさに褒められることを嫌がる子には、できた事実をそのまま伝えます。
- 「途中で手伝ってと言えたね」
- 「怒った後に道具を置けたね」
- 「一問だけ見直せたね」
- 「今日は終わると選べたね」
6.大人の小さな失敗を見せる
大人が間違えたときに、落ち着いて直す姿を見せます。
「間違えちゃった。ここだけ直そう」のように短く言い、失敗談を長く聞かせる必要はありません。
7.次回の見通しをつくる
同じ活動を再び行う前に、終わり方や困ったときの方法を確認します。
- ゲームは二回したら終わる
- 負けたら一度休む
- 分からなければ「手伝って」のカードを出す
- 壊れたら、直すか箱へ入れるか選ぶ
場面別|家庭で試せる工夫
ゲームに負けると怒る
始める前に、回数と終わりを決めます。
「負けても怒らない」と約束させるより、負けた後にできる行動を具体的にします。
- 一回休む
- 水を飲む
- 見る役になる
- 今日は終わる
勝たせ続ける必要はありませんが、毎回負ける難易度のゲームになっていないかも確認しましょう。
工作や絵が思いどおりにならない
完成例と同じにすることだけを目標にせず、材料を替える、途中で保存する、大人が一部を手伝う方法があります。
作品を壊しそうなときは、「捨てるか残すか」をその場で決めず、いったん箱へ入れて後で選びます。
運動でできないと泣く
距離、速さ、回数を小さくします。
体の動かし方が難しい場合は、言葉だけで説明せず、大人がゆっくり見せる、目印を置くなどの方法があります。
友達との遊びで負けを受け入れられない
怒っている最中に謝罪を求めず、まず遊びから離れて落ち着きます。
落ち着いた後に、「相手はどう思った?」と正解を求めるより、「次は何て言う?」を一緒に考えます。
- 「もう一回やりたい」
- 「少し休む」
- 「今日は終わる」
宿題の間違いで怒る
×を付けず、付箋や別紙で確認する場所を示す方法があります。
具体的な丸つけと間違い直しの工夫はこちらで紹介しています。
▶ 【小1】宿題の丸つけで怒る子へ|×を嫌がる・間違い直しを拒否するときの対応
「もう一回・手伝って・今日はやめる」視覚支援
言葉で説明する余裕がないときは、次の3枚のカードから選べるようにします。
もう一回やる
同じ活動へもう一度挑戦します。最初から全部ではなく、一部分だけでも構いません。
手伝ってもらう
大人が一緒に行う、手本を見せる、難しい部分だけ代わるなど、必要な助けを選びます。
今日はやめる
家庭の遊びや自主的な活動なら、その日は終わりにします。
学校の課題で中止や量の変更が必要な場合は、担任と相談してください。
カードは、怒っている最中に何度も選ばせるのではなく、少し落ち着いてから提示します。
わが家で意識したこと
長男は、宿題の答えが違っていること以上に、プリントへ×や印が残ることを嫌がりました。
そこで、「間違いを受け入れさせなければ」と急ぐより、何が負担なのかを分けて考えました。
- 答えが違うことが嫌なのか
- 親から指摘されることが嫌なのか
- 紙に印が残ることが嫌なのか
- 消して書き直すことが嫌なのか
- 終わったと思った後に直しが始まることが嫌なのか
印を付ける前に確認する、一問だけ一緒に見る、難しい日は学校へそのまま提出して相談するなど、親子でぶつかり続けない方法を選びました。
「×に慣れること」より、落ち着いた状態で一問を見直せることを目標にしました。
この考え方は、ゲームや工作など、宿題以外で失敗した場面にも応用できます。
避けたい対応
怒っている最中に教訓を伝える
「失敗は成功のもと」などの言葉も、興奮しているときには受け取りにくい場合があります。
まず休み、落ち着いてから短く振り返ります。
わざと負けさせて慣れさせる
本人に知らせず負ける経験を増やすと、不信感や不安が強くなることがあります。
練習する場合は、安心できる場面で、回数や終わり方を先に伝えます。
すぐにやり直させる
やり直しが必要な場合でも、落ち着く時間を取ります。
再開するときは、全部ではなく一部分から始めます。
「泣いたら負け」と責める
泣くことと、ルールを守ることは分けて考えます。
泣いたり悔しがったりしても、人や物を傷つけず、安全に休めた行動へ目を向けます。
きょうだいや友達と比べる
同じ年齢でも、失敗の受け止め方や切り替えに必要な時間は異なります。
比較ではなく、その子が前回より助けを求めやすかったかなどを見ます。
必ず再挑戦させる
毎回やり直すことが、失敗への強さにつながるとは限りません。
休む、助けを求める、今日は終わることも大切な選択です。
学校へ相談するときの伝え方
家庭だけでなく学校でも困っている場合は、どの場面で、どのような反応があり、何ならできたかを伝えます。
連絡帳・連絡アプリの文例
失敗や間違いがあったときの対応について、ご相談があります。
家庭では、答えの違いやゲームの負けを伝えられると、強く泣いたり怒ったりし、次の活動へ切り替えにくいことがあります。特に、間違いの印が残ることや、すぐにやり直すよう求められることを負担に感じているようです。
少し休んだ後に、直す場所を一つだけ示す、もう一回するか手伝ってもらうかを選ぶ方法では取り組めることがあります。
学校で同じような様子があるか、また家庭と学校で共通してできる対応があるか、ご相談させてください。
学校と確認したいこと
- 学校でも失敗したときに強く反応するか
- どの教科・活動で起きやすいか
- その前に疲れや難しい課題がなかったか
- どのような声かけなら落ち着けるか
- 一度に直す量を減らせるか
- 休む場所や助けを求める方法を決められるか
- 本人が得意な方法から取り組めるか
文部科学省の通級指導ガイドでも、子どもの困難さとその要因を整理し、本人の状況や願いに応じた支援を考えることが示されています。
相談を考えてよい目安
失敗して泣いたり怒ったりすることだけで、すぐに専門的な支援が必要とは限りません。
ただし、次のような状態が続き、本人や家族の生活に大きく影響している場合は相談して構いません。
- 小さな失敗でも長時間激しく混乱する
- 人をたたく、物を投げる、自分を傷つける
- 失敗を恐れて学校や習い事へ行けない
- 新しい活動へほとんど挑戦できない
- 「自分はだめ」「いなくなりたい」などの言葉が続く
- 睡眠や食欲に変化がある
- 家庭と学校の両方で困りごとがある
- 家族だけでは安全を保つことが難しい
相談先には、担任、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、小児科、地域の発達相談などがあります。
自分や人を傷つける危険が差し迫っている場合は、活動の継続より安全を優先し、地域の緊急相談先や医療機関へ相談してください。
よくある質問
失敗すると怒るのは、わがままですか?
わがままと決めつける必要はありません。
予想と違う結果への切り替え、間違いへの不安、課題の難しさ、疲れなどが重なっている場合があります。
負ける経験を増やせば慣れますか?
経験を増やすだけで慣れるとは限りません。
始める前に回数を示す、負けた後の休み方を決めるなど、安全に終われる方法も一緒に練習しましょう。
泣いても、最後までやらせた方がよいですか?
強く混乱しているときは、いったん止めて構いません。
落ち着いてから一部分だけ再開する、手伝ってもらう、その日は終えるなど、活動の目的に合わせて選びます。
間違いを指摘しない方がよいですか?
間違いを隠す必要はありません。
ただし、本人が受け取りにくい方法で指摘を重ねるより、落ち着いてから直す場所と次の行動を一つだけ示しましょう。
毎回勝たせてもよいですか?
最初にルールを理解するため、大人が難易度を調整することはできます。
ただし、勝つことだけが目的にならないよう、協力型のゲームを選ぶ、短い時間で終えるなどの方法もあります。
「今日はやめる」を選ばせると、逃げ癖になりませんか?
安全に中止し、後で再開時期を考えることも自己調整の一つです。
毎回同じ活動を避ける場合は、難しさや負担を確認し、必要なら学校や支援者へ相談しましょう。
発達障害と関係がありますか?
失敗を嫌がることだけで発達障害とは判断できません。
発達特性がある子に、切り替えや見通し、読み書き・運動などの難しさが重なる場合はありますが、診断名ではなく本人の困り方に合わせて支援します。
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宿題の×や印を強く嫌がる場合はこちらをご覧ください。
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▶ 【小1】学校から帰ると機嫌が悪い・荒れる子へ|帰宅後に怒る理由と休ませ方
まとめ|失敗に慣れさせる前に、立て直せる方法を増やそう
小学1年生が失敗すると泣いたり怒ったりするときは、単に負けず嫌いやわがままとは限りません。
- 失敗を自分への否定と感じる
- 予想と違う結果へ切り替えにくい
- 間違いの跡が残ることがつらい
- どう直せばよいか分からない
- 書くことや体を動かすことが難しい
- 疲れや空腹で余力が少ない
- 過去の経験から間違いを怖がっている
など、複数の理由が考えられます。
家庭では、次の対応を試せます。
- 怒っている最中は活動を止める
- 安全を確保する
- 長い説明や説得をしない
- 落ち着き方を選べるようにする
- 次にすることを一つだけ示す
- もう一回・手伝って・今日はやめるから選ぶ
- 結果以外のできた事実を伝える
目指すのは、失敗しても何も感じないことではありません。
悔しいときに安全に休み、助けを求め、落ち着いてから次の方法を選べることが大切です。
親子だけで対応し続けることが難しい場合は、どの場面で、どの方法なら立て直せたかを学校や相談先へ伝えてみてください。
参考資料
※本記事は、子どもの怒りを我慢させる方法ではなく、失敗した後に安全に落ち着き、次の行動を選びやすくする家庭での工夫を紹介しています。