「先生の説明を聞いていたはずなのに、何をするのか分かっていない」
「『教科書とノートを出して、日付を書いて』と言われると途中で止まってしまう」
「周りの子を見てから動くことが多い」
そんな悩みはありませんか?
わが家には、ASD・ADHD・DCD・吃音のある小学1年生と、4歳の子どもがいます。
私は保育士ではありませんが、児童発達支援アドバイザーの資格を持ち、家庭でも子どもの特性に合わせた学習方法や視覚支援を試してきました。
長男は、言葉で一度に複数のことを伝えられると、最初の一つはできても、その後の行動が抜けることがあります。
大人から見ると短い指示でも、子どもは先生の声へ注意を向け、内容を理解し、順番を覚え、行動へ移さなければなりません。
そのため、動かなかったからといって、話を聞く気がなかったとは限りません。
この記事では、小学1年生が先生の指示を理解しにくい理由と、家庭や学校で試せる工夫を紹介します。
指示を一つずつ示す方法、「聞く→見る→一つする」の視覚支援、担任へ相談するときの文例もまとめました。
※指示の理解や行動の速さには個人差があります。学校生活で困りごとが続く場合は、担任・特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラーなどへご相談ください。
結論|「聞いていない」と決めず、どこで止まったのかを分けよう
先生の指示どおりに動けないときは、「ちゃんと聞きなさい」と繰り返すより、どの段階で困っているかを確認します。
指示を聞いて行動するまでには、次のような段階があります。
- 先生が話していることに気づく
- 先生の声へ注意を向ける
- 言葉の意味を理解する
- することと順番を覚える
- 必要な物や場所を見つける
- 最初の行動へ移る
- 終わったら次の行動へ進む
どこか一つで止まると、外からは「指示を聞いていない」「ぼんやりしている」ように見えることがあります。
| 子どもの様子 | 最初に試したいこと |
|---|---|
| 先生が話し始めても気づかない | 名前を呼ぶ、近くで合図してから伝える |
| 最後まで聞くと最初を忘れる | 指示を短くし、一つずつ伝える |
| 複数の指示で途中から止まる | 絵や文字で順番を残す |
| 周りの子を見てから動く | 最初にすることを具体的に示す |
| 「あれ」「それ」で迷う | 物や場所を具体的に伝える |
| 分からなくても黙っている | 「もう一回」「どこから?」の伝え方を決める |
| 始められるが次へ進めない | 終わったら確認する場所を決める |
目標は、長い指示を我慢して最後まで覚えることではありません。
その子が理解しやすい伝え方を用意し、自分で次の一つへ進める状態をつくりましょう。
先生の指示が分からない7つの理由
1.先生が話していることに気づきにくい
教室には、友達の声、椅子を動かす音、掲示物、窓の外など、注意を引くものが多くあります。
先生がクラス全体へ話し始めても、「自分に向けられた話」と気づかない場合があります。
国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育推進センターでも、全体への指示を自分に向けられたものとして捉えにくい子がいることや、名前を呼び、注意が向いたことを確認してから話す支援が紹介されています。
2.必要な声だけを聞き取ることが難しい
周囲の音と先生の声が同じように入ってくると、必要な言葉を選びにくくなります。
静かな場所や一対一では理解できても、教室全体では聞き取りにくい子もいます。
3.聞いた言葉の意味を理解しにくい
「準備してください」「いつものようにしましょう」などの曖昧な表現では、具体的に何をすればよいか分からないことがあります。
「それをこちらへ」のような指示代名詞も、何を指しているのか迷いやすい表現です。
4.聞いた内容を覚えておきにくい
言葉の意味は分かっていても、行動するまで覚えておくことが難しい場合があります。
特に、「教科書を出して、32ページを開いて、ノートに日付を書きましょう」のような複数の指示では、最初か最後の一つだけが残ることがあります。
5.する順番が分からない
必要な行動を覚えていても、どれから始めるか分からず止まることがあります。
「片付けて移動する」だけでも、鉛筆をしまう、教科書を閉じる、机へ入れる、椅子を戻すなど、複数の行動が含まれています。
6.最初の行動へ切り替えにくい
指示は理解していても、今していることを止めて、別の行動へ移るまでに時間が必要な子もいます。
この場合は、説明を何度も繰り返すより、「あと一つで終わり」「次はノート」と切り替えを示す方が分かりやすいことがあります。
7.分からないことを伝えられない
指示を聞き逃しても、「もう一回お願いします」と言えず、周囲の子を見て合わせることがあります。
話しかけるタイミングや言葉が分からない場合は、指差しやカードも含めて伝え方を決めておきます。
▶ 【小1】授業で分からないと言えない子へ|先生に質問できない理由と家庭でできる練習
指示を「聞く・覚える・動く」に分けて確認しよう
聞く段階で困っている場合
- 名前を呼ぶと気づく
- 近くで話すと聞ける
- 静かな場所では理解できる
- 絵や文字を見ながらなら分かる
このような場合は、先生の声へ注意を向けやすくする工夫が候補になります。
覚える段階で困っている場合
- 一つの指示ならできる
- 二つ以上になると抜ける
- 聞いた直後は言えるが、動く途中で忘れる
- 順番を入れ替えてしまう
このような場合は、指示を一つずつ出す、絵や文字で残す方法が考えられます。
動く段階で困っている場合
- することを説明できるのに始めない
- 今の活動を止められない
- 必要な物を探すところで止まる
- 終わっても次へ進めない
このような場合は、最初の一つを示す、必要な物の置き場所を決める、終わりと次を見えるようにします。
家庭で試せる8つの工夫
1.注意が向いてから話す
別の物を見ているときに、離れた場所から指示を重ねないようにします。
近くへ行き、名前を呼ぶ、肩をたたかず視界に入る、指差しで知らせるなど、その子が気づきやすい方法を使います。
視線を合わせることが負担な子には、目を見ることを強制する必要はありません。
大人の声や、見せる物へ注意が向いたことを確認できれば十分です。
2.一度に一つ伝える
「ランドセルを置いて、プリントと水筒を出して、手を洗って」ではなく、最初は次のように伝えます。
「ランドセルを置こう」
終わったら、次を伝えます。
「プリントを出そう」
一つずつできるようになった後、必要に応じて二つへ増やします。
3.短く、具体的な言葉にする
「ちゃんとして」「早く準備して」では、何をすればよいか分かりにくいことがあります。
次のように行動が分かる言葉へ変えます。
- 「準備して」→「算数の教科書を机に出す」
- 「片付けて」→「鉛筆を筆箱へ入れる」
- 「あれを持ってきて」→「机の上の赤いファイルを持ってくる」
- 「早くして」→「靴下を履く」
4.言葉と一緒に実物や場所を示す
「ノートを出して」と言いながらノートの置き場所を指差すなど、見る手がかりを加えます。
言葉だけで分からないときも、実物、写真、絵、文字があると確認しやすくなります。
5.順番を絵や文字で残す
口頭の指示は、話し終わると消えてしまいます。
複数の行動が必要なときは、次のように紙へ書きます。
1.ランドセルを置く
2.プリントを出す
3.水筒を出す
4.おしまい
文字だけでは分かりにくい場合は、写真や簡単な絵を添えます。
6.子どもに短く確認してもらう
「分かった?」だけでは、反射的に「分かった」と答えることがあります。
テストのように問い詰めず、次の一つを確認します。
「最初は何をする?」
言葉で答えにくい場合は、カードや物を指差してもらっても構いません。
7.最初の一つだけ一緒に行う
何をするか分かっていても始められない場合は、大人が最初だけ手伝います。
例えば、教科書を置く場所を示す、ランドセルのファスナーを一緒に開けるなど、行動の入口を作ります。
全部を代わりに行うのではなく、動き始めたら少しずつ任せます。
8.できなかったときは情報量を戻す
一つの指示でできるようになっても、疲れている日や環境が違う日は難しくなることがあります。
できなかったから練習が無駄になったのではありません。
もう一度、一つずつ伝える、絵を使うなど、理解しやすい段階へ戻して構いません。
「聞く→見る→一つする」の視覚支援

指示を受けてから行動する流れを、3つに絞って見せます。
1.聞く
大人が話し始めたことに気づきます。
耳の絵や「きく」のカードを使っても構いませんが、見ることを強制するためのカードにしないようにします。
2.見る
することを、実物・黒板・カード・手順表で確認します。
聞いた内容をすべて覚えるのではなく、必要なときに見直せるようにします。
3.一つする
表示された中から、最初の一つへ取り組みます。
終わったらカードを裏返す、チェックする、次のカードを見るなど、終わりも分かるようにします。
複数の指示を見える化する方法

「まず・つぎ」で示す
二つの指示なら、次のようにします。
まず:ノートを出す
つぎ:日付を書く
すべての予定を一度に見せると負担になる子には、「まず」と「つぎ」だけにします。
一つ終わったら外す
終わったカードを外す、裏返す、箱へ入れる方法があります。
残っている行動が見えるため、「あといくつか」を確認しやすくなります。
最初にするものを強調する
複数のカードを並べる場合は、今するカードへ枠を付ける、左端へ置くなど、最初の一つを分かりやすくします。
完成した状態を見せる
説明だけでなく、準備が終わった机や、片付いた棚の写真を見せる方法もあります。
完成の基準が分かると、自分で確認しやすくなる子もいます。
学校でお願いできる可能性がある工夫
学校の状況や本人の様子によって、次のような工夫を相談できます。
- 名前を呼び、注意が向いてから指示する
- 指示を短く、一つずつ伝える
- 「あれ」「それ」ではなく具体的に言う
- 口頭の指示を黒板にも書く
- 絵や写真で順番を示す
- 最初にする場所へ印を付ける
- 子どもが次にすることを確認する
- 周囲を見て動く前に個別の合図を出す
- 指示を聞き逃したときの質問方法を決める
- 活動の終わりと次の予定を知らせる
発達障害教育推進センターでは、指示を理解しにくい場合に、子どもへ近づいて注意を向ける、関係する絵を用意する、黒板へ順番に指示を書くといった支援例が示されています。
また、必要な情報を短く・はっきり・ゆっくり話すことや、複数の指示は一つの行動ができてから次を伝えることも挙げられています。
指示を聞き逃したときの伝え方も用意する
聞き取る工夫だけでなく、分からなかったときに知らせる方法も必要です。
言葉の例:
- 「もう一回お願いします」
- 「最初は何ですか?」
- 「次は何ですか?」
- 「どこを見ますか?」
言葉で伝えにくい場合は、次の方法も考えられます。
- 「もう一回」のカードを見せる
- 黒板や手順表を指差す
- 先生が近くへ来たときに聞く
- 分からない場所へ付箋を貼る
▶ 【小1】困っても「助けて」と言えない子へ|学校で先生に伝える練習と視覚支援
わが家で試していること
長男は、複数の指示を一度に伝えると、途中の行動が抜けることがあります。
そこで家庭では、「全部言ったのだから覚えているはず」と考えず、次のような方法を試しています。
- 近くで短く伝える
- 最初の一つだけ言う
- 終わったら次を伝える
- 帰宅後や翌日の準備は順番を見せる
- できないときは、本人がどこまで分かっていたかを確認する
毎回同じ方法でうまくいくわけではありません。
疲れている日は、普段できる流れでも止まることがあります。その場合は、指示をさらに短くする、最初だけ一緒に行うなど、その日の状態に合わせます。
「一度で全部できること」より、「次にする一つが分かること」を大切にしています。
避けたい対応
同じ長い指示を繰り返す
一度で理解できなかった指示を、同じ長さのまま大きな声で繰り返しても、分かりやすくなるとは限りません。
短くする、一つにする、見える形に変える方法を試します。
「ちゃんと聞いて」とだけ言う
聞く姿勢を求めても、必要な声を選ぶことや、複数の内容を覚えることの難しさは解消しない場合があります。
どの段階で止まったかを確認しましょう。
何度も「分かった?」と聞く
子どもが「分かった」と答えても、次の行動が分かっているとは限りません。
「最初は何をする?」と一つ確認するか、カードを選んでもらいます。
周囲と同じ速さを求める
指示を理解して行動へ移るまで、少し時間が必要な子もいます。
待つ時間をつくり、急かす言葉を重ねないようにします。
周りを見て動けたから問題ないと考える
友達を見て合わせることは、その場を乗り切る工夫です。
ただし、毎回周囲へ頼っている場合は、本人が指示を理解できる方法も用意しましょう。
視覚支援を罰や監視に使う
カードは、できなかったことを責めるためのチェック表ではありません。
本人が次にすることを確認するための手がかりとして使います。
担任へ相談するときの伝え方
「話を聞きません」ではなく、どのような指示で止まり、どの方法なら動けるかを伝えます。
連絡帳・連絡アプリの文例
授業中の指示についてご相談があります。
一つの短い指示であれば動けることがありますが、複数のことを一度に伝えられると、途中の行動が抜けたり、周囲の子を見てから動いたりすることがあるようです。
家庭では、注意が向いてから一つずつ伝える、する順番を絵や文字で示す方法だと取り組みやすいことがあります。
学校ではどのような場面で困っているか、また、口頭の指示を黒板や簡単な手順でも確認できるか、ご相談させてください。
学校と確認したいこと
- 一つの指示なら理解できているか
- どの教科や活動で止まりやすいか
- 全体指示と個別指示で違いがあるか
- 周囲の音が少ないと理解しやすいか
- 絵や板書があると動けるか
- 何個までの指示なら覚えられるか
- 最初にすることを示してもらえるか
- 聞き逃したときに使える合図
- 学校で既に行っている支援
一度にすべての変更を求めるのではなく、本人が最も困っている場面から相談します。
発達が気になる子への工夫
診断名だけで支援方法を決める必要はありません。
実際の困り方を見ながら、次のような工夫から選びます。
- 注意が向いてから話す
- 指示を一つにする
- 短く具体的に伝える
- 話す速さを少し落とす
- 実物や場所を指差す
- 絵・写真・文字を併用する
- 最初にすることを強調する
- 終わったカードを外す
- 完成した見本を示す
- 切り替え前に予告する
- 聞き逃したときのカードを用意する
視覚支援は、言葉を理解させるために大量のカードを見せることではありません。
本人が必要な情報を見つけられるよう、数を絞り、使わなくなった表示は整理しましょう。
相談を考えてよい様子
次のような困りごとが続き、本人の学習や学校生活へ影響している場合は、学校へ相談して構いません。
- 全体への指示を頻繁に聞き逃す
- 一対一でも言葉の意味を捉えにくい
- 一つの指示でも行動へ移れない状態が続く
- 複数の指示で強く混乱する
- 周囲の子を見なければ動けないことが多い
- 学習の準備や提出が頻繁に抜ける
- 分からないまま長時間止まる
- 指示されること自体を強く嫌がる
- 学校での疲れや不安が強い
- 本人が「何をすればよいか分からない」と困っている
相談先には、担任、特別支援教育コーディネーター、通級指導教室、スクールカウンセラー、小児科、地域の発達相談などがあります。
よくある質問
指示どおりに動けないのは、話を聞いていないからですか?
話を聞く気持ちだけが理由とは限りません。
先生の声へ注意を向けにくい、言葉の意味を理解しにくい、聞いた内容を覚えておきにくい、行動へ切り替えにくいなどの可能性があります。
何度も同じことを言えば覚えられますか?
同じ長い指示を繰り返すより、短く一つずつ伝え、絵や文字でも確認できるようにする方が分かりやすい場合があります。
一度に何個まで指示してよいですか?
決まった数はありません。
まず一つで確実に取り組めるかを見て、余裕があるときに二つへ増やします。疲れや環境によっても変わります。
子どもに復唱させた方がよいですか?
次にすることを短く確認する方法はありますが、毎回正しく復唱させる練習にする必要はありません。
言葉で答えにくい場合は、実物やカードを指差す方法でも構いません。
絵カードを使うと言葉を聞かなくなりませんか?
絵カードは、口頭の情報を確認できる形で残す手がかりです。
言葉と一緒に使い、理解しやすくなった部分は必要に応じて表示を減らせます。
友達を見て動けているなら、様子を見てもよいですか?
友達を見ることで参加できている場合もあります。
ただし、本人が毎回不安を感じている、学習内容が分からない、友達がいないと動けない場合は、本人向けの手がかりも検討しましょう。
学校へどこまでお願いしてよいですか?
まず家庭で見られる具体的な様子と、理解しやすかった方法を共有します。
学校での様子や実施可能な方法を担任と確認し、最も必要な一つから相談しましょう。
指示が分からないのに、本人が質問しません
話しかけるタイミングや伝える言葉が分からない場合があります。
「もう一回お願いします」、指差し、カードなど、本人が使える方法を先生と決めておきます。
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まとめ|長い指示を覚えさせるより、次の一つを分かるようにしよう
先生の指示どおりに動けないときは、話を聞く気がないと決めつける必要はありません。
- 先生が話していることに気づきにくい
- 必要な声へ注意を向けにくい
- 言葉の意味を理解しにくい
- 聞いた内容を覚えておきにくい
- する順番が分からない
- 最初の行動へ切り替えにくい
- 分からないことを伝えられない
など、さまざまな理由が考えられます。
家庭や学校では、次のような工夫を試せます。
- 注意が向いてから話す
- 指示を一つずつ伝える
- 短く具体的な言葉にする
- 実物や場所を示す
- 絵や文字で順番を残す
- 最初にすることを一つ確認する
- 始めにくいときは入口だけ手伝う
- 難しい日は情報量を減らす
一度で全部を理解し、覚えて、すぐ動くことだけを目標にしなくて大丈夫です。
「聞く→見る→一つする」のように流れを小さく分け、その子が次にすることを確認できる方法を探してみてください。
参考資料
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター|指示を理解するための指導・支援
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター|指示を理解することが苦手なのですが
- 文部科学省|障害のある子供の教育支援の手引
※本記事は、子どもへ指示に従うことを一方的に求めるものではありません。どこで理解しにくくなっているかを整理し、本人が行動しやすい伝え方を学校と相談するための家庭での工夫を紹介しています。