はじめに|「ママ以外と話せない」のは、ただの恥ずかしがり?
「家ではよく話すのに、外では黙ってしまう」
「ママには話せるのに、おばあちゃんや親せきには話せない」
「先生に聞かれても固まってしまう」
「吃音があるから、人前で話すのを避けている気がする」
そんな姿を見ると、親として心配になりますよね。
わが家の息子も、6歳頃まで「ママ以外と話す」ことに強い緊張がありました。
ASD・ADHD・吃音があり、家ではよく話すのに、親せきや久しぶりに会う人の前では、私の後ろに隠れてしまうことがありました。
最初は、
「恥ずかしがり屋なのかな」
「ちゃんと挨拶できるように練習した方がいいのかな」
「このまま人と話せなくなったらどうしよう」
と不安でした。
でも療育の先生や言語聴覚士さんと関わる中で、少しずつ分かってきました。
息子は「話したくない」のではありません。
安心できる相手や場面では、ちゃんと話せる。
でも、緊張が強い場面では、言葉が出にくくなる。
つまり、必要なのは「無理に話させること」ではなく、安心して話せる土台を作ることでした。
この記事では、ママ以外と話せない子どもの背景、恥ずかしがり屋・場面緘黙・ASD/ADHD・吃音との関係、家庭でできる声かけや支援法を、わが家の体験談を交えて紹介します。
※この記事は診断を目的としたものではありません。園や学校で長期間話せない、生活に支障がある、不安が強い場合は、園・学校、発達相談、言語聴覚士、医療機関などに相談してください。
ママ以外と話せない子に見られやすい姿
ママ以外と話せない子には、次のような姿が見られることがあります。
- 家ではよく話す
- ママには自分の気持ちを伝えられる
- 外では小さな声になる
- 親せきや祖父母の前で固まる
- 先生に聞かれてもうなずくだけになる
- 初対面の人には目を合わせにくい
- 話しかけられるとママの後ろに隠れる
- 慣れた友達とは話せる
- 好きな話題なら少し話せる
- 吃音が出そうな場面で黙ってしまう
このような姿を見ると、大人はつい、
「挨拶しなさい」
「ちゃんと答えて」
「恥ずかしがらないで」
と言いたくなります。
でも、子ども本人は「話さない」のではなく、「話したいけれど言葉が出ない」「どう返せばいいか分からない」「失敗したらどうしよう」と感じている場合があります。
「恥ずかしがり屋」と「場面緘黙」はどう違う?
ママ以外と話せない子を考えるとき、よく出てくる言葉が「恥ずかしがり屋」と「場面緘黙」です。
恥ずかしがり屋の場合
恥ずかしがり屋の子は、初対面や慣れない場面で緊張しやすいものの、時間がたつと少しずつ話せることがあります。
たとえば、
- 最初は黙っているけれど、慣れると話す
- 親がそばにいると少し話せる
- 好きな話題なら話せる
- 相手がやさしく待ってくれると声が出る
といった様子です。
慎重で、相手をよく見てから関わるタイプとも言えます。
場面緘黙が疑われる場合
場面緘黙は、家庭など特定の場所では話せるのに、園や学校など特定の場面で継続して話せない状態を指します。
「恥ずかしいから黙っている」というより、不安が強く、話そうとしても声が出にくい状態です。
国立特別支援教育総合研究所の資料でも、声を出すことにこだわらず、絵カードや身振りなど別の表現方法を使うことや、集団から距離を取りながら少しずつ発言しやすい環境を作る例が紹介されています。
参考:国立特別支援教育総合研究所「すけっとセミナー Q&A」
家庭では話せるのに、園や学校で長期間ほとんど話せない場合は、「性格だから」と片づけず、先生や専門機関に相談すると安心です。
ASD・ADHD・吃音がある子が話せなくなる理由

わが家の息子には、ASD・ADHD・吃音があります。
ママ以外と話せない背景には、いくつかの特性が重なっていたように感じます。
ASDの特性|何を話せばいいか分からない
ASD傾向がある子は、相手との距離感や会話の流れをつかむのが難しいことがあります。
「こんにちは」と言われたら何と返すのか。
どのくらいの声で話せばいいのか。
相手がどんな反応をするのか。
そうしたことが分かりにくいと、言葉を出す前に緊張してしまいます。
息子も、祖母が「こんにちは」と声をかけてくれても、私の後ろに隠れることがありました。
でも、祖母が息子の好きなキャラクターの話をしてくれたとき、小さな声で反応できたことがあります。
「話せない」のではなく、「安心できる入口」が必要だったのだと思います。
ADHDの特性|会話のタイミングを逃しやすい
ADHD傾向がある子は、注意がそれやすかったり、会話のタイミングをつかみにくかったりすることがあります。
話しかけられた瞬間に、
「何て言えばいい?」
「今答えるの?」
「違うことを言ったらどうしよう」
と考えているうちに、タイミングを逃してしまうことがあります。
大人から見ると「無視している」ように見えても、本人は返事を考えている途中かもしれません。
吃音の不安|詰まったらどうしようと思う
吃音がある子は、「うまく言えるかな」「詰まったらどうしよう」「笑われたら嫌だな」という不安を持つことがあります。
吃音ポータルサイトでは、子どもに「ゆっくり」「落ち着いて」と言うより、大人側がゆったり話すこと、子どもの話を最後まで聞くことが提案されています。
参考:吃音ポータルサイト「お子さんとの接し方の提案」
息子も、話したい気持ちはあるのに、言葉が出る前に体が固まるような場面がありました。
吃音そのものより、「詰まったらどうしよう」という予期不安が、話すことのハードルを高くしていたのだと思います。
わが家の体験談|ママの後ろに隠れていた息子
息子は、家では本当によく話します。
好きなキャラクターのこと。
ゲームのこと。
弟とのやりとり。
幼稚園であったこと。
私やパパ、弟、療育の先生、慣れた先生、仲良しの友達とは、冗談を言ったり、自分の気持ちを伝えたりできます。
でも、親せきや久しぶりに会う人の前では、急に言葉が出なくなります。
おばあちゃんが、
「こんにちは」
「大きくなったね」
「何が好きなの?」
とやさしく話しかけてくれても、息子は私の後ろに隠れてしまいました。
私は最初、
「ちゃんと挨拶して」
「ほら、ありがとうって言おう」
「何か言ってごらん」
と言いたくなりました。
でも、それを言えば言うほど、息子の表情が固くなることに気づきました。
そこで、私が代わりに、
「今ちょっと恥ずかしいみたい」
「慣れたら話せると思う」
「マリオの話なら好きだよ」
と橋渡しするようにしました。
すると、ある日、親せきが息子に「マリオ好きなの?」と聞いてくれたとき、息子が小さな声で、
「ワリオとクッパ」
と答えたのです。
大人から見れば、たった一言かもしれません。
でも、息子にとっては大きな一歩でした。
「話せたね!」
「好きなこと言えたね」
とあとでそっと伝えると、息子は少し照れたように笑っていました。
私はそのとき、無理に話させるより、話せる入口を作ることの方が大切なのだと感じました。
家庭でできるサポート方法

1. 無理に話させない
ママ以外と話せない子にとって、「話してごらん」はプレッシャーになることがあります。
特に人前で、
「挨拶しなさい」
「ちゃんと答えなさい」
「恥ずかしがらないの」
と言われると、さらに緊張が強くなることがあります。
おすすめの声かけは、
「今はママが言っておくね」
「言いたくなったらで大丈夫だよ」
「うなずくだけでもいいよ」
「ママがそばにいるよ」
です。
まずは、話せない自分でも受け入れられる安心感を作ります。
2. 代弁して橋渡しする
子どもが話せないとき、親が全部代わりに話すことに不安を感じるかもしれません。
でも、代弁は「甘やかし」ではなく、会話の橋渡しになることがあります。
たとえば、
「今は緊張しているみたいです」
「好きなキャラクターの話なら答えやすいです」
「うなずきで答えられます」
「慣れるとよく話します」
と相手に伝えます。
子どもは、「ママが分かってくれている」と感じることで、少しずつ安心しやすくなります。
3. 好きな話題から始める
子どもが話しやすいのは、自分の好きなことです。
息子の場合は、ゲームやキャラクターの話題だと、言葉が出やすくなりました。
たとえば、
「マリオの中で誰が好き?」
「恐竜なら何が好き?」
「今、何のゲームしてるの?」
「好きなキャラクターを教えて」
などです。
いきなり「今日は何してたの?」と聞かれるより、答えが出やすいことがあります。
4. 返事の方法を言葉だけにしない
声で答えるのが難しいときは、別の方法でもOKにします。
- うなずく
- 首を振る
- 指差しする
- 絵カードを見せる
- 親に耳打ちする
- 小さな声で言う
- 選択肢から選ぶ
「声を出す」だけをゴールにすると、子どもは苦しくなります。
まずは「気持ちを伝えられた」を大切にします。
5. 話せた瞬間を大げさにしすぎず認める
子どもが話せたとき、親はうれしくて大きく褒めたくなります。
でも、子どもによっては注目されることで、次からまた緊張してしまうことがあります。
おすすめは、あとでそっと伝えることです。
「さっき小さな声で言えたね」
「好きなこと話せたね」
「ママ、ちゃんと聞こえたよ」
「がんばったね」
その場で大げさにするより、安心できる場所で認める方が合う子もいます。
6. 事前に見通しを伝える
親せきの集まり、帰省、行事、園の発表、病院など、いつもと違う場面では不安が強くなりやすいです。
事前に、
「今日はおばあちゃんに会うよ」
「最初はママのそばにいていいよ」
「挨拶はうなずくだけでもいいよ」
「慣れたら好きな話をしてもいいよ」
「困ったらママに耳打ちしてね」
と伝えておくと、子どもは心の準備ができます。
吃音がある子への声かけで気をつけたいこと

吃音がある子には、話し方を直そうとするより、安心して話せる環境を作ることが大切です。
家庭で意識したいのは、
- 最後まで聞く
- 途中で言葉を先取りしない
- 「ゆっくり言って」と何度も言わない
- 話の内容に反応する
- 大人がゆったり話す
- 話せたかどうかより、伝えようとした気持ちを見る
ことです。
たとえば、子どもが、
「き、きょ、きょ……」
と言い始めたとき、
「今日のこと話したいんだね。聞いてるよ」
と待ちます。
言葉がスムーズに出たかどうかではなく、「話したい気持ち」を受け止めることが大切です。
日本吃音・流暢性障害学会でも、吃音についての基本情報や対応方法がまとめられています。
参考:日本吃音・流暢性障害学会「吃音について」
園・学校・療育の先生への伝え方
ママ以外と話せない子は、家庭と園・学校で様子が違うことがあります。
家庭では話せるのに、園では黙っている。
療育では話せるのに、親せきの前では話せない。
この差を先生に伝えておくと、対応してもらいやすくなります。
伝え方の例:
家ではよく話しますが、慣れない人や集団の前では緊張して声が出にくいことがあります。無理に発言を促されると固まりやすいので、うなずきや指差しでも答えられる形にしてもらえると助かります。慣れた相手とは少しずつ話せます。
吃音がある場合は、次のように伝えるとよいです。
吃音があり、話し始めに言葉が詰まることがあります。途中で言い直させたり、急がせたりせず、最後まで聞いてもらえると安心します。
先生に伝えるポイントは、
- 話せない場面
- 話しやすい相手
- 話しやすい話題
- 返事しやすい方法
- 避けてほしい声かけ
- 家庭でうまくいっている対応
を具体的にすることです。
相談した方がよい目安
次のような場合は、家庭だけで抱えず相談して大丈夫です。
- 園や学校で長期間ほとんど話せない
- 家では話すのに、特定の場所で声が出ない状態が続く
- 本人が強い不安を感じている
- 行事や登園・登校を嫌がる
- 吃音への不安が強く、話すことを避けている
- 友達関係や園生活に支障が出ている
- 親もどう関わればよいか分からず疲れている
相談先は、
- 園や学校の先生
- 特別支援教育コーディネーター
- スクールカウンセラー
- 発達相談センター
- 小児科
- 児童精神科
- 言語聴覚士
- 療育機関
などです。
「診断をつけるため」だけではなく、子どもに合う関わり方を一緒に考えるために相談して大丈夫です。
よくある質問
ママ以外と話せないのは場面緘黙ですか?
必ずしも場面緘黙とは限りません。恥ずかしがり屋、不安の強さ、発達特性、吃音などが関係していることもあります。ただし、家では話せるのに園や学校など特定の場面で長期間話せない場合は、専門機関に相談すると安心です。
恥ずかしがり屋の子に挨拶を練習させた方がいいですか?
練習自体は悪くありませんが、人前で無理に言わせるとプレッシャーになることがあります。家庭でロールプレイをしたり、うなずきや手を振る挨拶から始めたりすると安心です。
親が代わりに話すと、子どもがますます話さなくなりませんか?
代弁の仕方によります。すべてを先回りするのではなく、「今は緊張しているみたい」「好きな話題なら答えやすいです」と橋渡しする形なら、子どもの安心につながることがあります。
吃音がある子には「ゆっくり話して」と言ってもいいですか?
何度も「ゆっくり」「落ち着いて」と言うと、かえって話し方を意識しすぎることがあります。大人側がゆったり話し、最後まで聞くことを意識すると安心しやすいです。
家族以外と話す練習はどうすればいいですか?
まずは短時間・少人数・好きな話題から始めます。ビデオ通話で一言だけ、親せきに好きなキャラクターを見せる、ママに耳打ちして伝えるなど、小さな成功体験を作るのがおすすめです。
園や学校ではどんな配慮をお願いできますか?
うなずき、指差し、選択肢、カード、先生への耳打ち、発表の代替方法などが考えられます。無理に声を出すことだけを目標にせず、本人が安心して表現できる方法を相談しましょう。
ママ以外と話せない子は将来も人付き合いが苦手になりますか?
必ずしもそうではありません。慎重で、信頼関係を大切にするタイプの子もいます。安心できる経験を積むことで、少しずつ関われる相手や場面が広がることがあります。
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参考資料
まとめ|話せない子に必要なのは、練習より先に安心
ママ以外と話せない子を見ると、親は心配になります。
「挨拶できないと失礼かな」
「このままで大丈夫かな」
「もっと練習させた方がいいのかな」
と思うこともあります。
でも、話せない子にまず必要なのは、無理に話す練習をさせることではなく、安心していられる関係と環境です。
大切なのは、
- 話せないことを責めない
- 無理に人前で話させない
- 親が代弁して橋渡しする
- 好きな話題から始める
- 言葉以外の表現も認める
- 吃音がある場合は最後まで待つ
- 園や学校と対応を共有する
- 必要なら専門家に相談する
ことです。
わが家の息子も、最初はママの後ろに隠れていました。
でも、好きな話題をきっかけに小さな声で話せた経験が、少しずつ自信につながっていきました。
「話せない」は「話したくない」ではない。
その子にとって、まだ安心の準備をしている途中なのかもしれません。
焦らず、その子のペースで、話せる相手と場所を少しずつ広げていけるといいですね。