「授業で分からなくても、先生に聞けずに止まってしまう」
「忘れ物や失敗を隠し、家に帰ってから分かることがある」
「困ったら先生に言ってね、と伝えても声をかけられない」
そんな悩みはありませんか?
わが家には、ASD・ADHD・DCD・吃音のある小学1年生と、4歳の子どもがいます。
私は児童発達支援アドバイザーの資格を持ち、家庭でも子どもの特性に合わせた声かけや視覚支援を試してきました。
小学1年生にとって、困っていることを先生へ伝えるのは簡単ではありません。
自分が何に困っているか気づき、助けてくれる人を探し、声をかけるタイミングを見て、必要なことを言葉にする必要があるからです。
言葉が浮かばない、先生が忙しそうで近づけない、間違いや失敗を知られたくないなど、さまざまな負担が重なることもあります。
この記事では、小学1年生が困っても「助けて」と言えない理由と、学校で先生へ伝える練習方法を紹介します。
話すことだけに限定せず、指差す・カードを見せる・決めた場所へ行く方法や、担任へ相談するときの文例もまとめました。
※助けを求めにくい理由や、学校で使える方法は一人ひとり異なります。安全や体調に関わること、いじめなどが疑われる場合は、本人が詳しく説明できるまで待たず、学校や相談機関へご相談ください。
結論|「助けてと言って」ではなく、誰に・いつ・どう伝えるかを決めよう
「困ったら先生に言ってね」だけでは、子どもが次に何をすればよいか分からない場合があります。
次の4つを具体的に決めると、行動へ移しやすくなります。
- どのようなときに助けを求めるか
- 誰に伝えるか
- どのタイミングで伝えるか
- 話す・指差す・カードを見せるなど、どの方法を使うか
| 困っていること | 最初に試したいこと |
|---|---|
| 分からなくても黙っている | 「分かりません」の短い言葉を一つ決める |
| 先生へ近づけない | 最初に伝える先生と場所を決める |
| 先生が忙しいと諦める | 待つ場所や、別の大人を決める |
| 言葉が出てこない | カードを見せる、指差す方法を用意する |
| 失敗を隠す | 責めず、伝えた後に何が起きるか説明する |
| 困っていることに気づきにくい | 困った場面の例を絵で確認する |
| 声が出にくい | 小さな声、カード、連絡メモなどを相談する |
| 家でしか話せない | 家庭で聞いた内容を担任へ共有する |
助けを求める方法は、大きな声で「助けて」と言うことだけではありません。
指差す、カードを渡す、決めた大人の近くへ行くことも、本人に合った伝え方になります。
小1が困っても「助けて」と言えない8つの理由
1.自分が困っていることに気づきにくい
「何となく嫌」「動けない」と感じていても、何が分からないのか、どこを手伝ってほしいのかを自分で整理できないことがあります。
困りごとに気づいたときには、時間がかなり過ぎている場合もあります。
2.何と言えばよいか分からない
困っていることは分かっていても、説明する言葉が浮かばないことがあります。
「助けて」だけではなく、「分かりません」「もう一度教えて」「一緒にしてください」など、場面に合う言葉を選ぶ負担もあります。
3.誰に伝えればよいか分からない
担任が教室にいない、交流学級にいる、休み時間で先生が変わるなど、学校では場面によって周囲の大人が変わります。
助けを求める相手がはっきりしていないと、動けない場合があります。
4.声をかけるタイミングが分からない
先生がほかの子と話している、授業中で静かにしている、教室が騒がしいなど、いつ声をかけてよいか判断できないことがあります。
「先生が空くまで待つ」こと自体が難しい子もいます。
5.間違いや失敗を知られたくない
忘れ物や失敗を伝えると、叱られる、やり直しになる、できなかったことが残ると考え、隠すことがあります。
伝えた後に何が起こるか分からないことも、不安につながります。
6.自分でできなければならないと思っている
「一年生だから自分で」「もう分かるでしょう」と言われた経験から、助けを求めることを悪いことだと感じる子もいます。
助けを借りながら取り組むことも、学び方の一つです。
7.人に注目されることや声を出すことが負担
教室で手を挙げる、みんなの前で話す、先生に聞かれることへ強く緊張する子もいます。
吃音、発音のしにくさ、声の出にくさがあり、言葉を急かされることを不安に感じる場合もあります。
8.以前、伝えてもうまくいかなかった
勇気を出して伝えたのに気づいてもらえなかった、うまく説明できなかった、強く注意されたなどの経験から、次に頼りにくくなることがあります。
「言わない」と責める前に、どこで止まっているかを確認しましょう。
まず決めたい「助けを求める4つの要素」
1.どのようなとき?
子どもが分かりやすい具体的な場面を決めます。
- 問題の意味が分からない
- 読む場所が分からない
- 必要な物が見つからない
- 忘れ物をした
- けがや体調不良がある
- 友達とのことで困った
- 音や人の多さがつらい
すべてを一度に覚えず、現在困っている場面から一つ選びます。
2.誰に?
最初に伝える大人を決めます。
- 担任
- 支援学級の先生
- 交流学級の先生
- 養護教諭
- 補助の先生
- 学童や放課後等デイサービスの職員
その先生がいない場合の「次の人」も一人決めておくと安心です。
3.いつ?
声をかけるタイミングを具体的にします。
- 先生が一人になったとき
- 授業が始まる前
- 問題を配り終わった後
- 休み時間
- 帰りの会の後
緊急時は待たずに伝えることも、あわせて確認します。
4.どうやって?
本人が使いやすい方法を選びます。
- 言葉で伝える
- 手を挙げる
- 先生の近くへ行く
- 指差す
- カードを見せる
- 連絡メモを渡す
- タブレットなど学校で認められた方法を使う
話す方法だけに限定せず、学校と相談して選びましょう。

学校で使いやすい短い言葉7つ
長く説明する前に、困っていることを知らせる短い言葉を練習します。
- 「分かりません」
- 「もう一度教えてください」
- 「一緒にしてください」
- 「見つかりません」
- 「忘れました」
- 「少し休みたいです」
- 「困っています」
敬語を完璧に言うことより、困っていることが相手へ伝わることを優先します。
言葉が長い場合は、「分からない」「手伝って」「休みたい」など、本人が使える長さにして構いません。
家庭でできる「助けて」の練習7つ
1.実際に困る前に練習する
混乱している最中ではなく、落ち着いているときに短く練習します。
一回言えたら終わりにし、何度も繰り返させる必要はありません。
2.大人が困る役をする
大人が鉛筆を探すふりをして、「見つかりません。手伝ってください」と見本を見せます。
子どもへすぐ同じように言わせず、まず助けを求める姿を見せます。
3.場面を一つに絞る
最初は、本人が実際に困りやすい場面だけ練習します。
例えば忘れ物なら、
「先生、ノートを忘れました」
の一文だけで構いません。
4.二択から方法を選ぶ
「言葉で伝える?カードを見せる?」のように、二つから選べるようにします。
選択肢が多いと迷う場合は、その日に使う方法を一つに決めます。
5.言えた後の流れまで練習する
先生へ伝えた後に何が起こるかも、簡単に確認します。
- 「忘れました」と伝える
- 先生の話を聞く
- 借りる・別の紙を使うなどの方法を選ぶ
- おしまい
見通しがあると、伝えた後への不安を減らしやすくなります。
6.できた事実を短く伝える
- 「先生役にカードを見せられたね」
- 「分からないと言えたね」
- 「言葉が出ないときに指差せたね」
大げさに褒められることを嫌がる場合は、できた事実だけを伝えます。
7.家庭でできても学校でできるとは限らないと考える
家庭は静かで相手も決まっていますが、学校には音・人・時間の制限があります。
家で言えたのに学校で言えなくても、練習不足と決めつけず、学校の環境に合う方法を相談しましょう。
「困った→大人を探す→伝える」の視覚支援

言葉だけの説明が分かりにくい場合は、次の流れを絵で示します。
1.困ったことに気づく
「分からない」「見つからない」「痛い」「怖い」など、自分の状態を確認します。
2.決めた大人を探す
担任、支援学級の先生など、最初に相談する大人を探します。
3.伝える方法を選ぶ
言葉で言う、カードを見せる、指差すなどから選びます。
4.大人と次の方法を決める
一緒に行う、もう一度説明を聞く、少し休むなど、次の行動を決めます。
カードを持たせるだけで使えるとは限りません。誰に見せるか、見せた後に先生がどう対応するかまで、学校と共有しておきましょう。
話せないときに使えるカードの例
カードの言葉は、本人が学校で困っている場面に合わせます。
- てつだってください
- わかりません
- もういちど おしえてください
- みつかりません
- わすれました
- すこし やすみたいです
- せんせいと はなしたいです
文字だけでは分かりにくい場合は、絵や色を添えます。
カードを周囲に見られたくない子もいるため、筆箱や連絡袋に入れる、机上の小さな印で知らせるなど、本人が使いやすい方法を相談してください。
わが家で意識したこと
長男は、失敗や間違いを指摘されることを強く嫌がることがありました。
そのため、「困ったら言えばいい」と伝えるだけでは、失敗を知られる不安が先に立ち、助けを求めにくい場面もあると考えました。
わが家では、
- 何に困っているのか
- 誰に伝えるのか
- 何と言えばよいのか
- 伝えた後にどうなるのか
を一つずつ分けて考えるようにしました。
「助けて」と言えなくても、指差す、カードを見せる、大人の近くへ行くことも伝え方として受け止めました。
毎回自分だけで解決することより、難しいときに助けを借りられることを大切にしました。
避けたい対応
「どうして言わなかったの?」と責める
言えなかった理由をすぐ説明できるとは限りません。
まず何が起きたかを確認し、次回使える方法を一つ決めます。
大きな声で言わせる
相手に届く方法は、声量だけではありません。
小さな声、カード、指差しなど、本人が使える方法から始めます。
長い説明を覚えさせる
困っているときに長い文章を組み立てることは負担になります。
最初は「分かりません」など、短い合図で大人が状況を確認できるようにします。
家でできたから学校でもできると考える
学校では、周囲の音や視線、先生との距離などの条件が異なります。
使えなかったときは、本人の努力ではなく環境や方法も見直します。
カードを見せたら、必ず言葉でも言わせる
カードで困りごとが伝わったなら、まずその伝達を受け止めます。
言葉の練習は、落ち着いた別の時間に行えます。
失敗しないよう大人が先回りし続ける
安全に関わらない範囲では、本人が助けを求める機会も残します。
ただし、伝えられなかったことを責めず、必要に応じて大人が橋渡しします。
担任へ相談するときの伝え方
「助けを求められません」だけでなく、どの場面で止まり、どの方法なら伝えられそうかを共有します。
連絡帳・連絡アプリの文例
学校で困ったときの伝え方について、ご相談があります。
本人は、分からないことや忘れ物があっても、先生へ声をかけられず、そのまま黙っていることがあります。何と言えばよいか分からないことや、失敗を知られる不安もあるようです。
家庭では、「分かりません」「手伝ってください」など短い言葉を練習しています。言葉が出ないときは、カードを見せる方法も使えればと考えています。
学校で困りやすい場面、最初に相談する先生、カードを見せるタイミングや対応について、ご相談させてください。
学校と確認したいこと
- 学校でどのような場面に止まっているか
- 最初に伝える大人は誰か
- 担任がいない場合は誰へ伝えるか
- 先生へ近づくタイミング
- カードや指差しを使えるか
- カードをどこへ入れておくか
- 見せた後に先生がどう応じるか
- 緊急時はどのように知らせるか
- 家庭と学校で同じ言葉を使えるか
すべてを一度に決めず、現在最も困っている場面から一つ相談します。
文部科学省は、一人ひとりの教育的ニーズを踏まえて学びを整える考え方を示しています。また、特別支援教育教材ポータルには、「教えて」「もう一回」などのやり取りを情報機器等で支える実践例も掲載されています。
発達が気になる子への工夫
発達が気になる子の場合も、診断名だけで助けの求め方を決める必要はありません。
本人の得意な伝え方や、困りやすい場面に合わせて調整します。
- 困る場面を写真や絵で示す
- 伝える相手の写真を確認する
- 短い言葉を一つだけ決める
- 指差しやカードを認める
- 先生へ近づく位置を決める
- 待つ場所を決める
- 伝えた後の流れを見える化する
- 使えなかった日は責めず、理由を確認する
- 学校と家庭で同じ合図を使う
吃音がある場合は、つかえを急かす、言い直させる、代わりに最後まで言ってしまうことを避けます。
本人が安心して使える伝え方を、担任や言語聴覚士などと相談してください。
相談を考えてよい様子
助けを求めにくいことだけで、心配しすぎる必要はありません。
ただし、次のような状態が続き、学校生活や安全に影響している場合は相談して構いません。
- 体調が悪くても大人へ伝えられない
- けがやトイレを長時間我慢する
- いじめや嫌なことがあっても黙っている
- 分からないまま授業が長時間止まる
- 忘れ物や失敗を強く隠す
- 学校へ行くことを嫌がる
- 帰宅後に強く泣く、怒る状態が続く
- 本人が「誰にも言えない」「自分はだめ」と話す
相談先には、担任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラー、通級指導教室、小児科、地域の発達相談などがあります。
よくある質問
「困ったら先生に言って」と毎日伝えても言えません
誰に、いつ、何と言うかが分からない可能性があります。
「算数が分からないときは、担任へ『分かりません』と言う」など、一つの場面へ絞って練習してみてください。
カードを使うと、言葉で言わなくなりませんか?
カードは、困っていることを伝える方法の一つです。
まず伝わる経験を作り、言葉の練習は落ち着いた時間に行えます。毎回、カードの後に言葉を強制する必要はありません。
先生が忙しそうで声をかけられないようです
待つ場所、カードを置く場所、別に相談できる大人を学校と決めておく方法があります。
子どもだけにタイミングの判断を任せず、先生側から確認する場面を作れるかも相談しましょう。
家では話せますが、学校では黙ってしまいます
家庭と学校では、音・人・緊張などの条件が異なります。
家庭で聞いた困りごとを担任へ伝え、学校で使いやすい方法を一緒に考えて構いません。
忘れ物を隠すときは、厳しく注意した方がよいですか?
隠した行動だけを注意しても、次に伝えられるとは限りません。
忘れたときに誰へ何と言うか、伝えた後にどう対応するかを具体的に確認しましょう。
毎回大人が助けると、自立できなくなりませんか?
必要な助けを自分から求めることも、自立に必要な力です。
すべてを代わるのではなく、本人ができる部分を残しながら、難しい部分を支えます。
声を出せないときは、どうすればよいですか?
カード、指差し、メモ、先生の近くへ行く方法などがあります。
学校で認められる方法と、先生が気づいた後の対応を事前に相談してください。
関連記事・無料教材
学校であったことを家で話せない場合はこちらをご覧ください。
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まとめ|助けを求める方法は「声で言う」だけではない
小学1年生が困っても「助けて」と言えないときは、単に我慢している、やる気がないとは限りません。
- 困っていることに気づきにくい
- 何と言えばよいか分からない
- 誰に伝えるか分からない
- 声をかけるタイミングが分からない
- 失敗を知られたくない
- 自分で解決しなければならないと思っている
- 人に注目されることや声を出すことが負担
- 以前伝えてもうまくいかなかった
など、さまざまな理由が考えられます。
家庭と学校では、次の点を具体的に決めてみましょう。
- どのようなときに助けを求めるか
- 誰に伝えるか
- いつ伝えるか
- 言葉・指差し・カードなど、どの方法を使うか
- 伝えた後に何が起こるか
大きな声で上手に説明できなくても、カードを見せる、指差す、大人の近くへ行くことで困りごとが伝われば、大切な一歩です。
子どもだけに頑張らせず、先生が気づきやすい合図や、相談しやすい場所も一緒に整えてみてください。
参考資料
- 文部科学省|障害のある子供の教育支援の手引
- 文部科学省|発達障害の可能性のある児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮研究事業
- 国立特別支援教育総合研究所|特別支援教育教材ポータルサイト
- 発達障害情報・支援センター
※本記事は、子どもへ助けを求めることを強制するものではありません。本人が困りごとを伝えやすくするために、家庭と学校で方法や環境を整える工夫を紹介しています。