はじめに|「危ない!」を何度言っても伝わらなかった息子
「道路に飛び出しそうになる」
「狭い場所でふざけてぶつかりそうになる」
「砂を投げてしまう」
「友達との距離が近すぎて、押してしまう」
子どものこうしたヒヤッとする行動に、毎日ハラハラしていませんか?
わが家の息子も、もうすぐ6歳になる頃まで、危険予測が苦手な場面がたくさんありました。
何度も「危ないよ」と伝えているのに、同じことを繰り返す。
そのたびに、私もつい強い口調で叱ってしまうことがありました。
「どうして分からないの?」
「何回言えばいいの?」
「私のしつけが足りないのかな?」
そんなふうに悩んだ時期もあります。
でも、発達特性について学ぶうちに、子どもが危険を予測する力は、経験や脳の発達とともに少しずつ育つものだと知りました。
特にASD、ADHD、DCDなどの発達特性がある子は、危険を想像する力、衝動を止める力、体の距離感をつかむ力に苦手さが出ることがあります。
この記事では、わが家の体験談を交えながら、危険予測が苦手な子どもの行動の理由と、家庭でできる安全サポートを紹介します。
※この記事は医療的な診断を目的としたものではありません。危険行動が多い、事故につながりそうで不安が強い場合は、園・学校・療育機関・医療機関などに相談してください。
この記事でわかること
- 危険予測が苦手な子どもに多い行動
- 「危ない」と言っても伝わりにくい理由
- 発達特性と危険行動の関係
- 家庭でできる安全ルールの教え方
- 飛び出し・砂投げ・ふざけすぎへの具体的な対応
- 親が罪悪感を抱えすぎないための考え方
危険予測が苦手な子どもに見られる行動
危険予測が苦手な子どもは、大人から見ると「わざと危ないことをしている」ように見えることがあります。
でも実際には、危険だと分かっていない、分かっていても止められない、次に何が起こるか想像しにくいことがあります。
たとえば、次のような行動です。
- 道路や駐車場で急に走り出す
- 狭い場所でふざけて人にぶつかる
- 砂や小石を投げる
- 帽子の紐や棒状のものを振り回す
- 友達を押す、近づきすぎる
- 高い場所に登りたがる
- 周りを見ずに走る
- 危ないと言われても同じことを繰り返す
わが家でも、息子が砂場で砂を投げてしまったり、テンションが上がると周りを見ずに走り出したりすることがありました。
私から見ると「危ないに決まってる」と思うことでも、息子の中では、
「楽しい」
「やってみたい」
「今それが気になった」
「相手がどう感じるか分からない」
という気持ちが先に立っていたのだと思います。
危険予測ができないのはなぜ?

子どもが危険を予測できない背景には、いくつかの理由があります。
1. 「このあとどうなるか」を想像する力が育ち途中
危険予測には、今の行動の先に何が起こるかを想像する力が必要です。
砂を投げる
→ 友達の目に入るかもしれない
→ 痛い思いをするかもしれない
道路に飛び出す
→ 車が来るかもしれない
→ ぶつかるかもしれない
大人はこの流れを瞬時に想像できますが、子どもはまだそこまで先を読む力が育っていません。
特に幼児期は、「今やりたい」「今楽しい」が強く、未来の危険まで考えることが難しいことがあります。
2. 衝動を止める力が未発達
「やりたい」と思ったことを止めるには、ブレーキの力が必要です。
でも、幼児期の子どもはこのブレーキ機能がまだ発達途中です。
ADHD傾向がある子は、特に衝動性が出やすく、
「走りたい」
「触りたい」
「投げたい」
と思った瞬間に、体が先に動いてしまうことがあります。
本人もあとから「やっちゃった」と思っていることがあります。
3. 体の距離感や力加減が分かりにくい
DCDや感覚統合の苦手さがある子は、自分の体がどこまで動くか、相手との距離がどれくらいかをつかみにくいことがあります。
そのため、
- 近づきすぎる
- 強く押してしまう
- ぶつかってしまう
- 物を振り回して当ててしまう
ということが起こりやすくなります。
わが家の息子も、友達と遊びたい気持ちはあるのに、距離が近すぎたり、力が強くなりすぎたりすることがありました。
悪気があるというより、「ちょうどいい距離」「ちょうどいい力」がまだ分かりにくかったのだと思います。
4. 注意がそれやすい
周りの音、友達の動き、気になるものがあると、目の前の危険から注意が外れてしまうことがあります。
たとえば駐車場で、
「手をつないで歩こうね」
と伝えていても、向こうに好きなものが見えた瞬間、そちらに意識が向いて走り出してしまう。
これは、約束を忘れたというより、注意の切り替えが難しい状態です。
5. 「危ない」という言葉があいまい
大人は「危ないよ」と言えば、いろいろな危険を含めて伝えたつもりになります。
でも子どもにとって、「危ない」はとてもあいまいな言葉です。
何が危ないのか。
何をやめればいいのか。
代わりに何をすればいいのか。
そこまで具体的に分からないと、行動につながりにくいことがあります。
「危ない!」だけでは伝わりにくい理由
私も以前は、息子に何度も「危ない!」と言っていました。
でも、息子はなかなか行動を変えられませんでした。
今振り返ると、「危ない!」という言葉だけでは、息子には情報が足りなかったのだと思います。
たとえば砂を投げたときに、
「危ない!」
だけでは、
- 何が危ないのか
- 誰が困るのか
- どんな結果になるのか
- 次はどうすればいいのか
が分かりにくいです。
そのため、わが家では少しずつ言い方を変えました。
「砂は投げないよ。目に入ると痛いよ」
「走るのは広い場所でしよう」
「道路では手をつなぐよ」
「棒は下に向けて持とうね」
「押したくなったら、『どいて』って言おう」
このように、行動を具体的に伝える方が、息子には理解しやすかったです。
家庭でできる危険予測のサポート方法

危険予測が苦手な子には、「危ないからダメ」と叱るだけではなく、どうすれば安全なのかを具体的に教えることが大切です。
1. 危険を具体的な言葉で伝える
まずは、「危ない」をできるだけ具体的にします。
| よくある声かけ | 伝わりやすい声かけ |
|---|---|
| 危ないよ | 道路では手をつなぐよ |
| やめて | 砂は下に置こうね |
| ふざけないで | 狭いところでは歩こうね |
| ちゃんとして | 棒は下に向けて持とうね |
| ダメ | こっちでやろうね |
ポイントは、禁止だけで終わらせないことです。
「何をしないか」だけでなく、「代わりに何をするか」まで伝えると、子どもは動きやすくなります。
2. OK・NGを見える化する

言葉だけで伝わりにくい子には、視覚支援が役立ちます。
たとえば、場所ごとにルールをカード化します。
公園のルール
- 砂は投げない
- 順番を待つ
- 棒は持って走らない
- 帰るときは大人と一緒に出る
道路のルール
- 手をつなぐ
- 白線の内側を歩く
- 止まる場所で止まる
- 駐車場では走らない
家の中のルール
- 狭い場所では走らない
- 人に向けて物を投げない
- ドアの近くでふざけない
イラストや写真で見せると、子どもは「今なにを守ればいいか」が分かりやすくなります。
わが家でも、言葉で何度も言うより、カードや写真で見せた方が落ち着いて確認できる場面がありました。
写真で作る場合は、実際の公園、玄関、道路、園バッグなどを使うと、子どもが自分ごととして理解しやすくなります。
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3. 代替行動を用意する
危険行動を減らすには、「やめて」だけでなく、代わりにできる安全な行動を用意することが大切です。
| 困った行動 | 代替行動 |
|---|---|
| 砂を投げる | スコップで掘る、型抜きをする |
| 物を投げる | ボールを投げる場所を決める |
| 走り出す | 走っていい場所を決める |
| 紐を振り回す | 紐なし帽子にする、手で握れる安心グッズを持つ |
| 友達を押す | 「どいて」「貸して」と言う練習をする |
| 高い場所に登る | 登っていい遊具を決める |
息子も、ただ「砂を投げない」と言われるより、
「砂はケーキにしよう」
「ここに山を作ろう」
「投げるならボールにしよう」
と別の行動を示した方が切り替えやすかったです。
4. 事前に約束を確認する
危険行動が起きてから注意するより、出かける前に短く確認しておく方が効果的です。
たとえば公園に行く前に、
「今日は3つだけ約束ね」
「砂は投げない」
「道路では手をつなぐ」
「帰るときはママと一緒に出る」
と確認します。
長い説明は覚えにくいので、約束は少なめにします。
わが家では「今日の安全ミッション」として、1つだけ決めることもありました。
「今日は道路で止まる練習をしよう」
「今日は砂を投げずに遊べたら成功」
「今日は友達に近づきすぎない練習」
一度に全部を直そうとしない方が、親も子も楽でした。
5. 危険が起きた後に一緒に振り返る
危険行動の直後は、子どもも興奮していて話が入りにくいことがあります。
その場ではまず安全確保を優先します。
落ち着いてから、
「さっき砂を投げたら、目に入りそうだったね」
「道路に出たとき、車が来ていたね」
「友達がびっくりしていたね」
「次はどうしたらいいかな?」
と短く振り返ります。
責めるのではなく、出来事と結果をつなげるイメージです。
うまく答えられない場合は、親が選択肢を出します。
「次は、砂を投げる?スコップで掘る?」
「道路では、走る?手をつなぐ?」
選べる形にすると、子どもも考えやすくなります。
6. できた瞬間を具体的に褒める
危険行動が多い子は、注意される回数がどうしても増えがちです。
だからこそ、できた瞬間を見逃さないことが大切です。
「道路の前で止まれたね」
「砂を投げずに遊べたね」
「友達にぶつからないように歩けたね」
「棒を下に向けて持てたね」
「ママの声で止まれたね」
こうした具体的な声かけは、子どもにとって「何がよかったのか」が分かりやすいです。
わが家でも、叱るよりも「止まれたね」「守れたね」と伝える方が、次につながりやすいと感じました。
飛び出しが心配なときの対策
道路や駐車場での飛び出しは、命に関わるため、最優先で対策したい行動です。
家庭でできる対策
- 道路では必ず手をつなぐ
- 駐車場では抱っこ・手つなぎ・近くで見守る
- 「止まる場所」を毎回同じにする
- 「赤は止まる」「白線で止まる」など視覚的に伝える
- 飛び出しそうな場所では、先に大人が位置取りする
- 必要に応じて迷子防止グッズや子ども用GPSも検討する
「もう年長だから大丈夫」と思わず、その子の発達段階に合わせて安全対策をすることが大切です。
子ども用GPSや迷子防止グッズは、子どもを縛るためではなく、親子の安全と安心を守る補助として考えると取り入れやすいです。
砂投げ・物を投げる行動への対応
砂や物を投げる行動は、周りの子にケガをさせる可能性があるため、早めに対応したい行動です。
ただし、子どもにとっては、
- 感触が楽しい
- 飛ぶ様子がおもしろい
- 注目してほしい
- 気持ちが高ぶっている
- 投げていい物とダメな物の区別が曖昧
という理由が隠れていることがあります。
声かけ例
「砂は投げないよ。目に入ると痛いよ」
「投げたいときはボールにしよう」
「砂はスコップで入れよう」
「ここでは投げない。広い場所でボールを投げよう」
「投げる手を止められたね」
禁止だけでなく、「投げたい気持ち」を安全な遊びに変えるのがポイントです。
狭い場所でふざける子への対応
狭い場所でふざけると、ぶつかる、転ぶ、物が落ちるなどの危険があります。
でも子どもは、「狭いから危ない」という空間の感覚がまだ分かりにくいことがあります。
対応のポイント
- 「ここは歩く場所」と先に伝える
- 走っていい場所とダメな場所を分ける
- 狭い場所では大人が近くに立つ
- ふざけ始める前に切り替える
- 広い場所に移動してから体を動かす
声かけは、
「ここは狭いから歩こう」
「走るなら外に出てからにしよう」
「ここでは体を小さくして歩くよ」
のように、場所と行動をセットで伝えると分かりやすいです。
叱ると教えるを使い分ける
危険行動への対応で難しいのが、「どこまで叱るか」です。
私も、命に関わる場面では大きな声で止めたことがあります。
でも、いつも強く叱っていると、子どもも親も疲れてしまいます。
わが家では、次のように分けて考えるようにしました。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 道路への飛び出し | 短く強く止める |
| 人に物が当たりそう | すぐ止める |
| 高い場所で危ない | まず安全確保 |
| 命の危険はない失敗 | 落ち着いて説明 |
| ルールを忘れた | 見える化して確認 |
| できた場面 | 具体的に褒める |
命に関わる危険は、真剣に止めて大丈夫です。
ただ、そのあとに、
「びっくりして大きい声になったよ」
「ケガをしてほしくなかったんだよ」
「次は道路の前で止まろうね」
と伝えると、子どもは安心して学びやすくなります。
ママが罪悪感を抱えすぎなくていい理由
危険な行動があると、親はどうしても自分を責めてしまいます。
「私の教え方が悪いのかな」
「しつけが足りないのかな」
「また怒ってしまった」
私も何度もそう思いました。
でも、危険予測が苦手なことは、親のせいだけではありません。
子どもの脳の発達、感覚の特性、衝動性、注意の向きやすさなど、いろいろな要素が関係しています。
もちろん、安全を守るための対応は必要です。
でも、親が全部を完璧に防ごうとすると、心が持ちません。
「今日は道路で手をつなげた」
「砂を投げそうになったけど止まれた」
「危ない場面を一つ防げた」
それだけでも十分です。
危険予測が苦手な子を育てる毎日は、本当に気が張ります。
だからこそ、家庭だけで抱えず、園や療育先、支援機関と共有しながら進めていくことが大切です。
園や療育と共有しておきたいこと
危険行動がある場合は、園や療育先と同じ対応をすることで、子どもが混乱しにくくなります。
共有しておくとよい内容は、次の通りです。
- どんな場面で危険行動が出やすいか
- どんな声かけだと止まりやすいか
- どんな代替行動が使えるか
- 視覚支援カードを使っているか
- 飛び出しやすい場所があるか
- 友達との距離感で困ることがあるか
伝え方の例:
「道路や園庭の出入り口で急に走り出すことがあります。家庭では『ストップ』『手をつなぐ』という短い言葉で伝えています。園でも同じ言葉で声をかけてもらえると助かります。」
家庭と園で同じ言葉を使うと、子どもはルールを覚えやすくなります。
危険予測力は少しずつ育つ
危険を予測する力は、一度教えたらすぐ身につくものではありません。
経験を重ねながら、
「ここでは止まる」
「これは投げない」
「人に当たると痛い」
「道路では手をつなぐ」
「走っていい場所とダメな場所がある」
ということを、少しずつ覚えていきます。
わが家の息子も、すぐに変わったわけではありません。
何度も同じことを伝えました。
何度もヒヤッとしました。
私も怒ってしまう日がありました。
それでも、少しずつ「止まる」「見る」「手をつなぐ」ができる場面が増えてきました。
危険予測が苦手な子に必要なのは、根気と工夫と、分かりやすい経験の積み重ねなのだと思います。
よくある質問
危険予測が苦手なのは発達障害のサインですか?
危険予測が苦手なことだけで発達障害と判断することはできません。ただし、飛び出し、衝動性、感覚過敏、距離感の苦手さ、集団生活での困りごとなどが重なる場合は、園や自治体の発達相談に相談してみると安心です。
「危ない」と何度言っても同じことをするのはなぜですか?
「危ない」という言葉だけでは、何をやめればよいのか分かりにくいことがあります。「砂は投げない。目に入ると痛いよ」「道路では手をつなぐよ」など、具体的に伝える方が理解しやすいです。
飛び出しがある子にはどう対応すればいいですか?
道路や駐車場では、まず安全確保を優先します。手をつなぐ、止まる場所を決める、視覚的なルールカードを使う、必要に応じて迷子防止グッズや子ども用GPSを検討するなど、複数の対策を組み合わせると安心です。
砂を投げる子にはどう声をかければいいですか?
「砂は投げないよ。目に入ると痛いよ」と具体的に伝えたうえで、「スコップで掘ろう」「型抜きしよう」など代わりの遊びを提案します。投げたい気持ちが強い場合は、投げてよいボール遊びに切り替えるのも一つです。
厳しく叱った方が危険行動は減りますか?
命に関わる場面では、短く強く止めることが必要です。ただし、毎回強く叱るだけでは、次にどうすればよいかが学びにくいことがあります。安全確保の後に、落ち着いて代替行動を教えることが大切です。
危険予測は何歳くらいでできるようになりますか?
個人差があります。幼児期はまだ危険を予測する力や衝動を止める力が育ち途中です。小学生以降も経験を重ねながら少しずつ安定していく子が多いです。
視覚支援カードは危険行動にも使えますか?
使えます。公園、道路、駐車場、家の中など、場所ごとのルールを写真やイラストで見える化すると、子どもが行動をイメージしやすくなります。
友達を押してしまうときはどうしたらいいですか?
まず安全を確保し、その後で「押す」以外の伝え方を教えます。「どいて」「貸して」「やめて」など、短い言葉を家庭で練習しておくと、実際の場面で使いやすくなります。
園の先生には相談した方がいいですか?
相談した方がよいです。どんな場面で危険行動が出やすいか、家庭ではどんな声かけをしているかを共有すると、園でも同じ対応をしてもらいやすくなります。
親が疲れてしまったときはどうすればいいですか?
危険行動への対応は、親の神経をとても使います。完璧に防ごうとしすぎず、園や療育、発達相談などを頼ってください。「今日も命を守れた」と思うだけでも十分です。
まとめ|危険予測が苦手な子には「安全のやり方」を具体的に教える
危険予測が苦手な子どもは、わざと危ないことをしているとは限りません。
危険を想像する力。
衝動を止める力。
体の距離感をつかむ力。
注意を向け続ける力。
そうした力が、まだ育っている途中なのです。
だからこそ、家庭でできるサポートはたくさんあります。
- 「危ない」ではなく具体的に伝える
- OK・NGを視覚支援カードで見える化する
- 危険行動の代わりになる安全な行動を教える
- 出かける前に約束を短く確認する
- できた瞬間を具体的に褒める
- 園や療育と同じ声かけで連携する
危険行動があると、親はどうしても焦ります。
でも、「まだできない」は「ずっとできない」ではありません。
小さな経験を積み重ねることで、子どもは少しずつ安全に行動する力を身につけていきます。
今日できた小さな一歩を見つけながら、親子で少しずつ「安全力」を育てていきましょう。