「学校から帰ると、ランドセルを玄関へ置いたまま遊び始める」
「プリントや連絡帳が、ランドセルの中に入ったままになる」
「毎日『水筒を出して』『明日の準備をして』と言い続けることに疲れた」
そんな悩みはありませんか?
わが家には、ASD・ADHD・DCD・吃音のある小学1年生と、4歳の子どもがいます。
私は児童発達支援アドバイザーの資格を持ち、家庭でも子どもの特性に合わせた学習方法や視覚支援を試してきました。
小学1年生は、学校で一日過ごしたあとに、ランドセルを片付ける、提出物を出す、水筒を運ぶ、翌日の予定を確認するなど、複数の行動を求められます。
大人には簡単な流れに見えても、疲れている子どもにとっては、何から始めるかを考えるだけでも負担になることがあります。
わが家でも、帰宅後に一度遊び始めると、ランドセルの中身を出すことへ切り替えにくい日がありました。
この記事では、小学1年生が帰宅後の片付けを進めにくい理由と、置き場所や順番を見える化する方法を紹介します。
毎日同じ注意を繰り返さずに済む声かけや、発達が気になる子への工夫もまとめました。
※家庭の間取りや学校の持ち物はそれぞれ異なります。すべての作業を子ども一人に任せることを目標にせず、今できる範囲に合わせて調整してください。
結論|帰宅後は「全部片付けて」ではなく、順番と置き場所を見える化しよう
帰宅後の片付けが進まないときは、「早く片付けて」と繰り返すより、次の二つを分かりやすくします。
- 最初に何をするか
- それをどこへ置くか
例えば、帰宅後の流れを次のように4つへ絞ります。
- ランドセルを置く
- プリント・連絡帳を出す
- 水筒・給食袋を出す
- おしまいカードを裏返す
一度に全部を伝えず、「まず、ランドセルを置こう」と一つだけ示して構いません。
| 困っていること | 最初に試したいこと |
|---|---|
| 玄関へランドセルを置いたままにする | 玄関から近い場所に定位置をつくる |
| プリントを出し忘れる | プリント専用トレーを置く |
| 水筒を出さない | 水筒を置く場所へ写真や印を付ける |
| 一度遊ぶと戻れない | 遊ぶ前に一つだけ片付ける |
| 指示を何度も忘れる | 帰宅後カードを1枚ずつ見せる |
| 全部自分ですると疲れる | 親子で役割を分ける |
| 日によって持ち物が違う | 毎日の物と特別な物を分ける |
片付けの目的は、きれいな状態を保つことだけではありません。
必要な物が見つかり、翌朝の準備を少し楽にできれば十分です。
小1が帰宅後の片付けをできない8つの理由
1.学校で一日過ごして疲れている
小学1年生は、授業を受けるだけでなく、時間割に合わせて行動する、先生の話を聞く、友達と過ごすなど、多くのことへ力を使っています。
帰宅したときには、考える力や切り替える力が残っていない場合があります。
2.「片付ける」に複数の行動が含まれている
「ランドセルを片付けて」という一言の中には、
- ランドセルを決まった場所へ運ぶ
- ふたを開ける
- 連絡袋を探す
- プリントを出す
- 水筒や給食袋を出す
- 明日の予定を確認する
など、複数の行動が含まれています。
どこから始めればよいか分からず、止まっていることもあります。
3.置き場所が曖昧になっている
「その辺に置いて」「いつもの場所へ持っていって」という指示では、場所を判断しにくい子もいます。
置き場所が日によって変わると、自分で片付けることがさらに難しくなります。
4.目の前の遊びへ気持ちが向いている
帰宅すると、好きなおもちゃ、動画、おやつなどが目に入ります。
片付けより魅力のあるものへ注意が向き、ランドセルの存在を忘れる場合があります。
5.学校と家庭の切り替えに時間がかかる
家へ着いた瞬間に、学校モードから家庭での行動へ切り替えられるとは限りません。
少し座る、水を飲む、保護者へ話すなどの時間が必要な子もいます。
6.何を持ち帰ったか把握できていない
毎日同じ持ち物だけではなく、図工の作品、体操服、上履き、図書の本など、日によって異なる物があります。
ランドセルの中と手提げ袋の両方を確認することが難しい場合もあります。
7.大人が声をかけてくれる流れになっている
毎日「次は水筒」「プリントも出して」と伝えていると、子どもは大人の声を次の合図として待つようになることがあります。
これは怠けているというより、行動の手がかりが大人の声になっている状態です。
8.片付けた後の終わりが分からない
プリントを出したあとに、宿題、翌日の準備、着替えなどが続くと、「いつ終わるのか分からない」と感じることがあります。
最初は、帰宅後の片付けと宿題を分け、「ここまでで帰宅後の片付けはおしまい」と示す方法があります。
まず確認したい|帰宅後のどこで止まっている?
玄関で止まる
靴を脱いだあと、ランドセルや荷物を置いて、そのまま別の部屋へ行く場合です。
玄関からランドセル置き場までが遠い、両手がふさがっているなど、動線も確認します。
ランドセルを開ける前に止まる
置き場所までは行けても、中身を出す作業へ移れない場合です。
「ランドセルを置く」と「中身を出す」を別の行動として示してみましょう。
プリントを探すところで止まる
連絡袋、教科書、ノートの間から必要な物を探すことが負担になっている場合があります。
学校でプリントを入れる場所を一つにできるか、先生へ相談する方法もあります。
水筒や給食袋を出すところで止まる
ランドセル以外の手荷物は、視界から外れると忘れやすくなります。
水筒と給食袋の置き場所を近くにまとめると、確認しやすくなります。
宿題まで一度に求められて止まる
帰宅後すぐに片付けと宿題を続けて行うことが負担な子もいます。
片付けが終わったら一度休み、宿題は別の時間に始めても構いません。
帰宅後の片付けを進めやすくする8つの工夫

1.ランドセルの定位置を一つにする
ランドセルを置く場所を、できるだけ毎日同じにします。
収納棚へきれいに入れることが難しければ、最初は大きなかごや箱でも構いません。
置けたかどうかが分かりやすく、子どもが一人で扱える高さを選びます。
2.置き場所へ写真やマークを付ける
ランドセル、水筒、給食袋、プリントの置き場所へ、それぞれの写真や簡単なイラストを貼ります。
文字だけで分かる子には、「ランドセル」「プリント」と書いたラベルでも構いません。
実物の写真を使ったカードを作りたい場合は、こちらの無料ツールも利用できます。
▶ 写真で作るフォトカードメーカー|L版印刷できる記念カード・視覚支援カード
3.プリントを入れるトレーを用意する
保護者へ渡すプリントを、机の上へ置く、手渡すなどの曖昧な方法にすると、途中で忘れる場合があります。
「学校から持ち帰った紙は、すべてこのトレーへ入れる」と決めると、判断する回数を減らせます。
不要なプリントを分ける作業は、あとから大人と一緒にしても構いません。
4.帰宅後カードは3~4項目から始める
最初から細かな作業をすべて並べると、見るだけで負担になることがあります。
例えば、次の4枚から始めます。
- ランドセルを置く
- プリントを出す
- 水筒を出す
- おしまい
できるようになった行動は、カードから外したり、複数の行動を一枚にまとめたりできます。

5.カードは一枚ずつ見せてもよい
一覧表を見ると「こんなにしなければならない」と感じる子には、今するカードだけを見せます。
終わったらカードを裏返し、次の一枚を出します。
「次は何だった?」と試すのではなく、カードを一緒に確認しましょう。
6.遊ぶ前にすることを一つに絞る
帰宅直後に全部できない場合は、「遊ぶ前に水筒だけ出す」など、一つに絞ります。
一つの行動が定着したら、プリントを出す行動を追加できます。
7.親子で役割を分ける
全部を子どもだけで行わせる必要はありません。
例えば、
- 子ども:ランドセルを置き、連絡袋を出す
- 大人:プリントを確認する
- 子ども:水筒をキッチンへ運ぶ
のように分けます。
学年が上がったら、本人の様子に合わせて任せる範囲を変えれば十分です。
8.前日の準備へつなげる物だけ確認する
帰宅後の片付けを、翌日の準備とつなげます。
プリントを出したら予定を確認し、洗う必要がある給食袋や水筒を出します。
ただし、帰宅直後に翌日の準備まで行うと負担が大きい場合は、時間を分けて構いません。
朝の持ち物確認を子ども自身で進めやすくする方法は、こちらの記事で紹介しています。
▶ 【小1】忘れ物が多い子へ|持ち物を自分で確認できる視覚支援
帰宅後カードの作り方
子どもが実際に使う物を写す
一般的なイラストより、自宅のランドセル置き場、水筒、プリントトレーなどの写真が分かりやすい子もいます。
背景に物が多く写る場合は、対象の物だけが大きく見えるように撮ります。
一枚に一つの行動を入れる
「ランドセルを置いて、プリントと水筒を出す」と一枚にまとめるより、最初は行動ごとに分けます。
- ランドセルを置く
- プリントを出す
- 水筒を出す
文字を読める場合も、短い表現にします。
置き場所の近くへ貼る
カードを見るために別の部屋へ移動する必要があると、途中で忘れる場合があります。
ランドセル置き場の近くや、帰宅後に必ず通る場所へ貼ります。
終わったことが分かる形にする
終わったカードを裏返す、横へ移す、洗濯ばさみを付けるなど、完了を見えるようにします。
すべて終わったら「おしまい」が見える形にすると、見通しを持ちやすくなります。
声かけを短くする方法
視覚支援を使っても、最初は大人の声かけが必要です。
一度に複数の指示を伝えず、今することだけを短く伝えます。
| 長くなりやすい声かけ | 短い声かけの例 |
|---|---|
| ランドセルを置いてプリントと水筒も出して | まず、ランドセルを置こう |
| 何回言ったら水筒を出すの? | 水筒カードを見よう |
| 早く片付けないと遊べないよ | あと一つでおしまい |
| また玄関に置きっぱなしだよ | ランドセルの場所はどこかな |
| 全部終わった? | おしまいカードを確認しよう |
言葉を減らすことは、冷たく接することではありません。
子どもが次の行動を理解しやすい量へ整える工夫です。
帰宅後すぐに休みたがるときは?
帰宅後すぐの片付けが難しい子には、短い休憩を先に入れる方法があります。
ただし、休憩後に戻ることが難しい場合は、次のように分けます。
- 帰宅したら、水筒だけ出す
- 10分休む
- プリントを出す
- 片付けはおしまい
「休んだら全部する」ではなく、休憩の前後に一つずつ置くと、負担を小さくできます。
タイマーを使う場合も、音で焦る子や、残り時間を気にし続ける子には無理に使わないでください。
できない日があっても、仕組みを失敗にしない
視覚支援カードを作っても、毎日同じようにできるとは限りません。
疲れ、空腹、学校での出来事、持ち物の多さなどによって変わります。
できない日があったときは、
- カードの数が多すぎなかったか
- 置き場所が遠くなかったか
- 休憩が必要ではなかったか
- 大人が一緒にする部分を増やした方がよいか
を確認します。
カードを使えば一人でできるはず、と考えず、その日の状態に合わせて手伝って構いません。
発達が気になる子への工夫
発達が気になる子の片付けも、診断名だけで方法を決める必要はありません。
今どこで困っているかを確認し、次の中から合う方法を選びます。
- 口頭指示を一つにする
- 実物の写真を使う
- 置き場所へ色や枠を付ける
- 今するカードだけを見せる
- 終わったカードを裏返す
- 収納場所を子どもの動線へ近づける
- 書類を分類せず、一つのトレーへ入れる
- 疲れた日は大人と一緒に行う
国立特別支援教育総合研究所の支援例でも、複数の内容を含む指示は難しくなることがあり、絵や順番を書いた視覚的な手がかり、具体的で簡潔な指示などが紹介されています。
家庭では、カードを使うことそのものを目的にせず、本人が次の行動を理解しやすくなるかを見ながら調整しましょう。
学校へ相談してもよいこと
家庭でプリントを見つけられない日が続く場合は、学校でどこへ入れているかも確認します。
相談できる内容には、次のようなものがあります。
- 配布プリントを連絡袋へまとめられるか
- 宿題を入れる場所を決められるか
- 下校前に持ち物を確認する方法があるか
- 忘れやすい物をチェック表で確認できるか
- 学校でも片付けや準備に時間がかかっているか
連絡帳・連絡アプリの文例
持ち帰る物の確認についてご相談があります。
帰宅後、配布プリントや宿題がランドセルのどこに入っているか分からず、見つけるまでに時間がかかることがあります。
家庭では、プリントを出す場所を一つにし、写真カードで帰宅後の流れを示しています。
学校では配布物や宿題をどこへ入れているか、また下校前に確認できる方法があるか教えていただけると助かります。
学校へすべて対応してもらうという伝え方ではなく、家庭で行っている工夫と困っている場面を具体的に共有します。
相談を考えてもよい様子
片付けが苦手なことだけで、心配しすぎる必要はありません。
ただし、次のような状態が続き、本人や家庭の負担が大きい場合は、担任、特別支援教育コーディネーター、小児科、地域の発達相談などへ相談して構いません。
- 学校と家庭の両方で、持ち物を頻繁に失う
- 短い一つの指示でも行動へ移ることが難しい
- 帰宅後に毎日強い怒りや混乱がある
- 片付けや準備へ非常に長い時間がかかる
- 忘れ物によって学校生活へ大きな影響がある
- 子どもが「自分は何もできない」と話す
- 家庭だけでは対応が難しく、保護者の負担が大きい
困った場面、取り組めた方法、必要だった時間を簡単に記録しておくと、相談時に伝えやすくなります。
よくある質問
小学1年生なら、帰宅後の片付けを一人でするべきですか?
すべてを一人で行う必要はありません。
ランドセルを置くところだけ本人が行い、プリントの確認は大人と一緒にするなど、役割を分けて構いません。
毎日言わないと動きません
大人の声が行動の合図になっている可能性があります。
声かけを急にゼロにせず、「カードを見よう」と短く伝え、少しずつ視覚的な手がかりへ移してみましょう。
帰宅後すぐに遊びたがります
遊ぶ前にする行動を一つだけ決める方法があります。
「水筒を出したら休憩」など、本人が取り組める量から始めてください。
ランドセルはリビングに置いてもよいですか?
家庭で扱いやすく、翌日の準備に困らなければ、リビングでも構いません。
見た目より、子どもが自分で置けて、必要な物を確認しやすい場所を優先しましょう。
プリントを一枚ずつ分類させた方がよいですか?
最初は、持ち帰った紙をすべて一つのトレーへ入れるだけでも十分です。
分類が必要な場合は、あとから大人と一緒に行えます。
視覚支援カードはいつまで使いますか?
決まった終了時期はありません。
カードがなくてもできる行動は外し、新しく困っている部分だけ残すなど、成長に合わせて変えられます。
写真とイラストはどちらがよいですか?
本人が分かりやすい方を選びます。
実際の置き場所が分かりやすい子には写真、情報量を減らした方が見やすい子にはシンプルなイラストが候補になります。
片付けができなかった日は、親がしてもよいですか?
構いません。
疲れている日は一緒に行う、子どもが一つだけ行い残りを大人が行うなど、負担を調整してください。
小1の生活と準備に役立つ記事
朝の支度に時間がかかり、登校時刻に間に合わなくなる場合はこちらをご覧ください。
▶ 【小1】朝の支度が遅い子へ|時間に間に合わないときの視覚支援と声かけ
持ち物を自分で確認し、忘れ物を減らす工夫はこちらで紹介しています。
▶ 【小1】忘れ物が多い子へ|持ち物を自分で確認できる視覚支援
学校へ着いた後の行動を見える化したい場合は、こちらのカードも利用できます。
宿題へ取りかかるまでに時間がかかる場合はこちらをご覧ください。
▶ 【小1】宿題を始められない子へ|やることが分かる視覚支援と声かけ
まとめ|帰宅後は「片付けなさい」より、最初の一つを分かりやすくしよう
小学1年生が帰宅後の片付けを進められないときは、単にだらしない、やる気がないとは限りません。
- 学校で一日過ごして疲れている
- 「片付ける」に複数の行動が含まれている
- 置き場所が分かりにくい
- 遊びへ注意が向いている
- 家庭への切り替えに時間がかかる
- 何を持ち帰ったか把握しにくい
など、さまざまな理由が考えられます。
家庭では、次のような工夫ができます。
- ランドセルの定位置を一つにする
- 置き場所へ写真やマークを付ける
- プリント専用トレーを用意する
- 帰宅後カードを3~4項目に絞る
- 必要ならカードを一枚ずつ見せる
- 遊ぶ前にすることを一つにする
- 親子で役割を分ける
- 翌日の準備につながる物を確認する
毎日すべてを一人でできることより、必要な物を決まった場所へ戻し、翌朝に見つけられることを大切にしましょう。
子どもが止まっている場面を一つ選び、「まず、ランドセルを置く」から始めてみてください。
参考資料
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター|指示を理解するための指導・支援
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター|指示を理解することが苦手なのですが…
- 文部科学省|障害種ごとの教育活動全般にわたる配慮事項のイメージ(資料4・PDF)
※視覚支援は、すべての子どもへ同じ方法を求めるものではありません。本人の理解しやすさや家庭の状況に合わせてご利用ください。